StudyMed医師国家試験

「世界中に広がって続く」がカギ―パンデミックと流行用語を2本の軸で整理する

第116回医師国家試験 C問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第116回 C問題 第7問

パンデミックについて適切なのはどれか。

  1. a.人への新しい種類の感染が確認された状態
  2. b.通常の予測以上に感染が拡大している状態
  3. c.特定の区域や集団内で予測以上に感染が拡大している状態
  4. d.特定の区域などで普段から継続的に感染が発生している状態
  5. e.特定の区域を超えて世界中で感染が拡大して持続している状態

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は感染症の流行を表す用語の定義を問う問題だ。似た言葉が並ぶけれど、「普段と比べてどれだけ多いか」という頻度の軸と、「どこまで広がっているか」という空間の軸の2つで整理すると迷わなくなるよ。
医学生医学生
新型コロナのときにパンデミックという言葉を毎日のように聞きましたけど、改めて定義を聞かれると少し自信がないです。
ドクタードクター
そういう人は多いと思う。まず語源から考えてみよう。パンデミックはギリシア語のpan、つまり「すべての」と、demos「人々」からできている。
医学生医学生
「すべての人々」ということは、世界中に広がっているイメージですね。
ドクタードクター
その通り。パンデミックの本質は空間的な広がりで、流行が国境や大陸を越えて世界規模に拡大し、しかもそれが持続している状態を指す。だから「特定の区域を超えて世界中で感染が拡大して持続している状態」が正解になる。
医学生医学生
では「通常の予測以上に感染が拡大している状態」も、パンデミックのときには当てはまるように思えますが、なぜ違うんですか。
ドクタードクター
鋭い質問だね。確かにパンデミックも予測を超えた発生ではあるけれど、それは頻度の軸だけの説明で、エピデミックやアウトブレイクに共通する一般的な定義なんだ。空間的な広がりが書かれていないから、局地的な流行でも当てはまってしまう。パンデミックの説明としては不十分というわけだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、エピデミックは「流行」と訳すと習いました。特定の地域や集団で予測以上に広がっている、という選択肢がそれに当たりますか。
ドクタードクター
そうだね。ある地域や集団で、普段の期待値を明らかに上回って患者が出ている状態がエピデミック。施設や学校のように限られた場所で短期間に集中して起こる場合は、アウトブレイク、つまり集団発生と呼ぶことが多い。どちらも範囲が限られている点でパンデミックとは異なるんだ。
医学生医学生
臨床実習で感染制御部の先生が、院内でノロウイルスの患者が続けて出たときに「アウトブレイク対応」と言っていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさに典型例だね。では、特定の地域で普段から継続的に発生している状態はどうだろう。
医学生医学生
予測を超えていないので流行とは違う……エンデミック、地方流行ですか。
ドクタードクター
正解。エンデミックは風土病的流行とも呼ばれ、一定の頻度で常に発生していて、発生数がおおむね予測できる状態だ。熱帯・亜熱帯地域のマラリアなどが例に挙がる。最後に、人への新しい種類の感染が確認された状態は?
医学生医学生
新型インフルエンザが動物から人に初めて感染した、という段階でしょうか。まだ世界に広がってはいないですよね。
ドクタードクター
その理解でいい。人から人への持続的な伝播や世界的な広がりはまだ示されていないから、パンデミックへの移行を警戒すべき前段階であって、パンデミックそのものではないんだ。
医学生医学生
整理すると、常在して予測どおりならエンデミック、予測を超えればエピデミック、限られた場所で集中すればアウトブレイク、世界規模に広がって続けばパンデミック、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、WHOとの関係も押さえておこう。COVID-19では、WHOは2020年1月に国際保健規則に基づく「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」、いわゆるPHEICを宣言し、同年3月に事務局長がパンデミックとみなせると表明した。PHEICとパンデミックは別の枠組みだという点は混同しやすいから注意してほしい。
医学生医学生
ニュースでは同じ意味のように聞こえていました。歴史的なパンデミックにはほかに何がありますか。
ドクタードクター
1918年のスペインかぜ、2009年の新型インフルエンザ、そして2020年以降のCOVID-19が代表例だ。関連して、新たに認知された新興感染症と、一度制圧されかけて再び増えた結核などの再興感染症という用語もセットで覚えておくといい。臨床では、院内で同じ感染症が続いたときに「普段より多いか」を早く察知できるかどうかが、アウトブレイク対応の第一歩になるよ。

まとめ

感染症の流行を表す用語は、「頻度(普段の予測を超えるか)」と「空間的な広がり(局地か世界か)」の2軸で区別できます。特定地域で常に予測どおり発生するのがエンデミック、地域や集団で予測を超えるのがエピデミック、限られた場所・集団で集中的に起こるのがアウトブレイクであり、それが国境や大陸を越えて世界規模に拡大し持続する状態がパンデミックです。新しい病原体による人への感染が確認されただけの段階はパンデミックの前段階にすぎず、またWHOのPHEIC宣言とパンデミック表明は別の枠組みである点にも注意が必要です。スペインかぜ、2009年の新型インフルエンザ、COVID-19といった実例と結びつけて理解しておくと、公衆衛生学の知識が院内感染対策や感染症報道の正しい理解にも生きてきます。

解答・解説

正解はeです

感染症の流行は、発生の「頻度」(普段と比べて多いか)と「空間的な広がり」(局地的か世界的か)の二つの軸で言い分けられる。代表的な用語は、エンデミック(endemic:地方流行、風土病的流行)、アウトブレイク(outbreak:集団発生)、エピデミック(epidemic:流行)、パンデミック(pandemic:汎流行、世界的大流行)である。 エンデミックは、ある地域で一定の頻度で常に発生しており、その発生数がおおむね予測できる状態を指す。これに対し、普段の予測(期待値)を明らかに上回る発生がみられる場合をエピデミックという。そのうち、比較的限られた場所・集団(施設、学校、地域など)で短期間に起こる集中的な発生をアウトブレイクと呼ぶことが多い。そして、エピデミックが一つの国や地域にとどまらず、複数の大陸・世界規模に広がって持続している状態がパンデミックである。語源のギリシア語 pan(すべての)+ demos(人々)が示すように、「世界中の人々に及ぶ流行」という空間的な広がりが本質となる。 したがって、選択肢のうち「特定の区域を超えて世界中で感染が拡大して持続している状態」がパンデミックの説明として適切である。他の選択肢がそれぞれどの用語に対応するかを整理しながら読むと、確実に正解できる。

選択肢考察

  1. ×a.  人への新しい種類の感染が確認された状態

    新しい病原体(例えば動物由来の新しい亜型のインフルエンザウイルス)による人への感染が初めて確認されただけの段階であり、まだ人から人への持続的な伝播や世界的な広がりは示されていない。パンデミックへ移行する可能性を警戒すべき前段階(警戒期)にはあたるが、流行の広がりを表す用語としてのパンデミックの定義には該当しない。

  2. ×b.  通常の予測以上に感染が拡大している状態

    普段想定される発生数(期待値)を上回る発生という、エピデミックやアウトブレイクに共通する一般的な定義である。空間的な広がりについての記載がなく、「世界規模で拡大・持続している」というパンデミックの本質的な要素を含まない。予測を超えた発生であっても局地的にとどまっていればパンデミックとはいわない。

  3. ×c.  特定の区域や集団内で予測以上に感染が拡大している状態

    ある地域や集団の中で、通常の予測を明らかに超えて患者が発生している状態はエピデミック(流行)である。施設内や学校など限られた範囲での集中的な発生であれば、アウトブレイク(集団発生)と表現されることも多い。いずれにしても範囲が特定の区域・集団に限られている点で、世界規模のパンデミックとは異なる。

  4. ×d.  特定の区域などで普段から継続的に感染が発生している状態

    特定の地域で常在的に発生し、その発生頻度がほぼ一定で予測可能な状態はエンデミック(地方流行、風土病的流行)である。例として、熱帯・亜熱帯の流行地域におけるマラリアなどが挙げられる。発生数が予測の範囲内にあるという点で、予測を超えるエピデミックやパンデミックとは区別される。

  5. ○e.  特定の区域を超えて世界中で感染が拡大して持続している状態

    パンデミック(汎流行)は、エピデミックが国境や大陸を越えて世界の広い範囲に及び、多数の人が感染する状態が続いていることを指す。「特定の区域を超える」「世界中」「持続」という要素がそろっており、パンデミックの説明として適切である。代表例として、1918年のスペインかぜ(インフルエンザA/H1N1)、2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1pdm09)、2020年以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がある。

流行の規模を表す用語の整理

・エンデミック(地方流行):特定地域で常に一定頻度で発生。発生数は予測可能。 ・アウトブレイク(集団発生):限られた場所・集団・期間で、予測を超える患者が集中的に発生。 ・エピデミック(流行):地域・集団で、通常の予測を明らかに上回る発生。 ・パンデミック(汎流行):エピデミックが国境・大陸を越えて世界規模に拡大し持続。 なお、アウトブレイクとエピデミックは重なり合う概念で、文献によっては同義に用いられることもある。

WHOとパンデミック

WHO(世界保健機関)は新型インフルエンザを念頭に流行段階を区分しており、2009年の新型インフルエンザ流行時にはフェーズ1〜6の6段階区分が用いられ、フェーズ6がパンデミックとされた。その後、指針が改訂され、現在は「パンデミック間期」「警戒期」「パンデミック期」「移行期」という区分で、パンデミック期は新しい亜型のインフルエンザによる人での感染が世界的に広がった段階と位置づけられている。 COVID-19では、WHOは2020年1月30日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC:Public Health Emergency of International Concern)」を宣言し、同年3月11日に事務局長が現状はパンデミックとみなせると表明した。PHEICは国際保健規則(IHR)に基づく宣言であり、「パンデミック」という表現とは別の枠組みである点に注意する。

その他の関連用語

・散発(sporadic):時間的・空間的な関連なく、ぽつぽつと発生する状態。 ・新興感染症:新たに認知され公衆衛生上問題となった感染症(例:SARS、COVID-19)。 ・再興感染症:一度は制圧されかけたが再び増加した感染症(例:結核、デング熱)。

POINT

・パンデミック=国境・大陸を越えて世界規模で拡大し持続する流行(汎流行)。 ・エピデミック=地域・集団で通常の予測を超える流行。 ・アウトブレイク=限られた場所・集団での予測を超える集中的な発生。 ・エンデミック=特定地域での常在的・予測可能な発生(地方流行)。 ・流行用語は「頻度(予測を超えるか)」と「広がり(局地か世界か)」の2軸で区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。