「15:2」と「2:15」―小児蘇生で換気を厚くする理由
第116回医師国家試験 B問題 第17問
国試問題にチャレンジ
小児の二次救命処置を2名で行う場合,人工呼吸と胸骨圧迫の比で正しいのはどれか。
- a.1:3
- b.1:15
- c.2:15
- d.2:30
- e.3:30
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
小児(乳児を含む)の心肺蘇生では、救助者が1人なら胸骨圧迫:人工呼吸=30:2、医療従事者が2人以上なら15:2で行い、本問の「人工呼吸:胸骨圧迫」表記では2:15が正解です。小児の心停止は呼吸不全やショックに続く低酸素によるものが多いため、成人より換気の比重を高くしており、2人いれば役割分担で圧迫の中断を増やさずに換気頻度を上げられます。成人は人数によらず30:2、新生児は3:1と、年齢区分ごとの比をセットで整理しておくことが大切です。小児では胸の厚さの約1/3の深さで100〜120回/分の圧迫を行い、高度な気道確保後は圧迫を連続させて換気を非同期で行います。比の数字を理屈とともに理解することは、試験での引っかけ対策だけでなく、実際の小児急変時に迷わず動くための基盤になります。
解答・解説
正解はcです
小児の心肺蘇生(CPR:cardiopulmonary resuscitation)における、胸骨圧迫と人工呼吸の回数比を問う問題である。設問は「人工呼吸:胸骨圧迫」の順で表記している点に注意する(ガイドラインでは一般に「胸骨圧迫:人工呼吸=15:2」と表記される)。 小児の心停止は、成人に多い不整脈(心室細動など)による突然の心停止よりも、呼吸不全やショックが進行した結果としての低酸素による心停止が多い。そのため小児では成人以上に換気(酸素化)の比重が大きく、医療従事者が2人以上で蘇生する場合は、胸骨圧迫15回ごとに人工呼吸2回を行う(15:2)。救助者が1人のときは、圧迫と換気を交互に入れ替える手間で胸骨圧迫が中断しがちになるため、成人と同じ30:2とする。 本問は「二次救命処置を2名で行う」場面であり、高度な気道確保(気管挿管など)が行われる前の段階として、人工呼吸:胸骨圧迫=2:15 が正しい。
選択肢考察
- ×a. 1:3
誤りである。人工呼吸1回に対し胸骨圧迫3回(胸骨圧迫:人工呼吸=3:1)は新生児の蘇生で用いる比である。新生児の心停止はほぼ呼吸の問題に起因するため換気の割合が特に高く、胸骨圧迫90回と人工呼吸30回を合わせて1分間に120回の動作となるリズム(「1、2、3、バッグ」)で行う。小児(乳児を含む)の CPR には用いない。
- ×b. 1:15
誤りである。現在の蘇生ガイドラインで、人工呼吸1回と胸骨圧迫15回を組み合わせる方法は推奨されていない。高度な気道確保がない状態での換気は、1回では十分な酸素化が得られにくいため、成人・小児とも2回を1セットとして行う。
- ○c. 2:15
正しい。医療従事者など救助者が2人以上で小児(乳児を含む)の CPR を行う場合、胸骨圧迫15回ごとに人工呼吸2回を行う。小児の心停止は低酸素によるものが多いため、1人法(30:2)よりも換気の頻度を上げている。2人いれば、一方が胸骨圧迫、もう一方がバッグ・バルブ・マスクで換気を担当できるため、役割交代による圧迫中断も少なくてすむ。人工呼吸は1回約1秒かけ、胸の上がりが目で確認できる程度の量で行い、過換気は避ける。気管挿管などの高度な気道確保がなされた後は、胸骨圧迫を中断せずに続け、換気は圧迫と同期させずに一定の間隔で行う。
- ×d. 2:30
誤りである。胸骨圧迫30回に人工呼吸2回(30:2)は、成人の CPR(救助者の人数によらない)と、小児の CPR を救助者1人で行う場合の比である。市民救助者による小児の一次救命処置でも、手順を単純にするため30:2 が用いられる。本問は2名で行う場合なので該当しない。
- ×e. 3:30
誤りである。人工呼吸3回と胸骨圧迫30回を組み合わせる方法は、どの年齢層の蘇生ガイドラインにも存在しない。人工呼吸の回数を増やすと胸骨圧迫の中断時間が長くなり、冠灌流圧・脳灌流圧が低下するため不利である。
年齢区分ごとの胸骨圧迫:人工呼吸比(高度な気道確保がない場合)
成人:30:2(救助者の人数によらない) 小児・乳児:救助者1人 30:2、医療従事者2人以上 15:2 新生児:3:1(1分間に圧迫90回+換気30回) ※蘇生ガイドラインでの区分は、乳児が1歳未満、小児が1歳から思春期(おおむね中学生)まで、それ以降は成人として扱う。
小児の質の高い胸骨圧迫
・部位:胸骨の下半分 ・深さ:胸の厚さの約1/3 ・テンポ:100〜120回/分 ・圧迫ごとに胸を元の高さまで戻し、中断を最小限にする。 ・乳児では、1人法は2本の指(指2本法)、2人法は胸郭を両手で包み込んで両母指で圧迫する方法(胸郭包み込み両母指圧迫法)を用いる。小児では体格に応じて片手または両手で圧迫する。
小児心停止の特徴
小児の心停止の多くは、呼吸障害や循環不全が進行して低酸素・アシドーシスに陥った結果として起こる。そのため初期心電図は心静止や無脈性電気活動(PEA)が多く、除細動の適応となる心室細動・無脈性心室頻拍は成人に比べて少ない。蘇生では早期の有効な換気・酸素化が重視され、心停止に至る前の呼吸不全・ショックの段階で認識し介入することが最も重要とされる。除細動のエネルギーは初回 2J/kg、2回目以降 4J/kg を目安とする。
高度な気道確保後
気管挿管や声門上気道デバイスで気道が確保された後は、胸骨圧迫を連続して行い、換気は圧迫と非同期で一定の間隔で行う。過換気は胸腔内圧を上げて静脈還流を減らすため避ける。
POINT
・小児(乳児を含む)の CPR:救助者2人以上なら胸骨圧迫:人工呼吸=15:2、1人なら30:2。 ・成人は人数によらず30:2、新生児は3:1。 ・設問が「人工呼吸:胸骨圧迫」の順で問うているため、比の向きを取り違えない(本問の正解は2:15)。 ・小児の胸骨圧迫は胸の厚さの約1/3の深さ、100〜120回/分。 ・小児心停止は低酸素によるものが多く、換気の重要性が成人より高い。
