StudyMed医師国家試験

「ショックが必要です」と言われる波形はたった2つ―心停止4波形の見分け方

第118回医師国家試験 D問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第118回 D問題 第3問

電気ショックが直ちに必要な心電図所見はどれか。

  1. a.心静止
  2. b.心房細動
  3. c.無脈性心室頻拍
  4. d.完全房室ブロック
  5. e.無脈性電気活動〈PEA〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、心電図の波形から電気ショックをすぐにかけるべきかを判断する問題だ。カギは「止めるべき異常な電気興奮があるか」と「脈が触れるか」の2点。まず、心停止は心電図波形でいくつに分類されるか覚えているかな。
医学生医学生
心室細動、無脈性心室頻拍、心静止、PEAの4つですよね。BLSの実習で何度も聞きました。
ドクタードクター
その通り。この4つは治療方針で2群に分かれる。電気ショックが効くショック適応リズムと、効かないショック非適応リズムだ。どれがどちらに入るか、考えてみよう。
医学生医学生
心静止は心臓が完全に止まっているので、一番強い刺激が必要そうです。電気ショックで動き出すイメージがあるんですが……。
ドクタードクター
ドラマでよく見る場面だね。でも、そこが典型的な誤解なんだ。電気ショックは心臓を「動かす」ものではなく、心筋全体を一度に脱分極させて、無秩序な興奮や異常な興奮の旋回をいったん「止める」治療だ。リセットした後、洞結節などの正常なペースメーカーから興奮が再開するのを期待している。
医学生医学生
止める治療なんですね。そうすると、そもそも電気活動がない心静止では止めるものがない、ということですか。
ドクタードクター
まさにそう。心静止では通電しても効果はない。だから治療は質の高い胸骨圧迫と人工呼吸を続けながら、できるだけ早くアドレナリンを投与することになる。ちなみに、細かい心室細動が平坦に見えることがあるから、誘導の外れや感度を確認し、複数の誘導で平坦であることを確かめるのも大切だ。
医学生医学生
では正解は無脈性心室頻拍ですね。心室で異常な興奮がぐるぐる回っているから、リセットする意味があると。
ドクタードクター
正解。心室頻拍で心拍数が極端に速くなると、拡張期に心室へ血液がたまる時間がなくなり、拍出が激減して脈が触れなくなる。いわば空打ちの状態だ。これは心室細動と同じく心停止として扱い、ただちに除細動を行う。除細動が1分遅れるごとに救命率は約7〜10%下がるとされているから、時間が勝負なんだ。
医学生医学生
PEAも心電図に波形が出ているので、迷いました。電気活動があるならリセットできそうな気もします。
ドクタードクター
PEAは心電図上はまとまった波形があるのに、心臓がポンプとして働けていない状態だ。原因は電気の異常ではなく、低循環血液量、低酸素血症、心タンポナーデ、緊張性気胸、肺血栓塞栓症、高カリウム血症などのことが多い。電気を整えても拍出は戻らないから、ショック非適応になる。
医学生医学生
だから原因検索の5H5Tが大事になるんですね。救急科の実習で、指導医の先生が蘇生中に「タンポナーデはエコーで見て」と指示していたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい経験をしているね。心静止とPEAでは、心肺蘇生とアドレナリン、そして治療可能な原因の是正が軸になる。では、心房細動はどうだろう。
医学生医学生
心房細動でも電気ショックをすると聞いたことがあります。循環器内科の実習で、カルディオバージョンを見学しました。
ドクタードクター
それは同期下カルディオバージョンだね。心房細動では心室は不規則ながら収縮していて脈も触れるから、心停止ではない。頻拍で血圧が下がるなど循環が不安定なときに、R波に同期させて通電する。T波の頂点付近の受攻期に通電して心室細動を誘発しないための工夫なんだ。非同期で行う除細動とは区別して覚えよう。発症から48時間以上たっていれば心房内血栓の心配があるので、事前の抗凝固や経食道心エコーでの確認も必要になる。
医学生医学生
完全房室ブロックは徐脈なので、電気ショックでリセットしても心拍数は増えなさそうです。
ドクタードクター
その通り。心房と心室の興奮が完全に切り離され、下位の補充調律でゆっくり拍動している状態だ。極端に遅いとアダムス・ストークス発作で失神することもある。治療はアトロピン、経皮ペーシングや一時的ペーシング、そして恒久的ペースメーカーの検討だ。電気を使うといっても、ショックではなくペーシングなんだ。
医学生医学生
整理すると、心停止のうちショック適応は心室細動と無脈性心室頻拍だけ。脈のある頻拍で不安定なら同期下カルディオバージョン、徐脈ならペーシング、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での注意点を。AEDは心電図を自動解析して、ショック適応リズムのときだけ通電を指示する。心静止なら「ショックは不要です」とアナウンスされるけれど、それは「蘇生をやめていい」という意味ではない。すぐに胸骨圧迫を続けることが大事だ。また、ショックの後もリズムを確認せずにただちに胸骨圧迫を再開し、約2分ごとに波形を確認する。難治性ならアドレナリンやアミオダロンを併用する。
医学生医学生
ショックを打った直後に脈を確認したくなりますが、まず圧迫再開なんですね。OSCEの練習でもそこで止まってしまった覚えがあります。
ドクタードクター
胸骨圧迫の中断を最小限にすることが、蘇生の質を左右するからね。強さ約5cm、テンポ100〜120回/分も合わせて体に染み込ませておこう。

まとめ

心停止は心電図波形により心室細動、無脈性心室頻拍、心静止、PEAの4つに分類され、電気ショックの適応となるのは心室細動と無脈性心室頻拍だけです。電気ショックは心筋全体を同時に脱分極させて異常な興奮の旋回を止める治療であり、電気活動のない心静止や、ポンプ機能が破綻しているPEAには効果がなく、心肺蘇生とアドレナリン投与、5H5Tによる原因検索が治療の軸となります。脈のある心房細動などで循環が不安定な場合はR波に同期させた同期下カルディオバージョンを、完全房室ブロックなどの症候性徐脈ではペーシングを行い、非同期の除細動とは明確に区別します。除細動は1分の遅れが救命率を大きく下げるため、波形を見た瞬間に適応を判断できることが、BLS・ACLSを実践する医師にとって欠かせない基礎力です。

解答・解説

正解はcです

心停止は心電図波形によって4つに分類され、それぞれ治療方針が異なる。 【ショック適応リズム】心室細動(VF)、無脈性心室頻拍(pulseless VT) 【ショック非適応リズム】心静止(asystole)、無脈性電気活動(PEA:pulseless electrical activity) 電気ショック(除細動)は、高エネルギーの直流電流を心臓全体に流し、心筋全体を一度同時に脱分極させる治療である。これにより、無秩序な興奮や異常に速い興奮の旋回をいったん止め、洞結節などの正常なペースメーカーから興奮が再開するのを期待する。止めるべき異常な電気的興奮があり、それによって有効な拍出が失われている状態、すなわちVFと無脈性VTで効果がある。この2つでは、除細動が1分遅れるごとに救命率が約7〜10%低下するとされ、ただちに通電する必要がある。 一方、心静止のように電気活動がない場合や、PEAのように電気活動はあっても心臓のポンプ機能が働いていない場合は、リセットすべき異常興奮がないため、電気ショックは無効である。 したがって、心停止の4波形を区別し、「ショック適応はVFと無脈性VTだけ」と押さえておけば正解を選べる。脈のある不整脈(心房細動、完全房室ブロックなど)は心停止ではないので、そもそも「直ちに電気ショック」の対象にならない。

選択肢考察

  1. ×a.  心静止

    心静止は、心房にも心室にも電気的活動がなく、心電図がほぼ平坦になる状態である。心筋が脱分極していないため、電気ショックでリセットする対象となる興奮がなく、通電しても効果はない。治療は、質の高い胸骨圧迫と人工呼吸を中心とした心肺蘇生を続けながら、できるだけ早くアドレナリンを投与し、原因検索と是正を行うことである。なお、細かい心室細動が心静止に見えることがあるため、誘導の外れや感度設定を確認し、複数の誘導で平坦であることを確かめる必要がある。

  2. ×b.  心房細動

    心房細動は、心房筋が無秩序に興奮して有効な心房収縮が失われた状態である。心室は不規則なリズムながら収縮を続けており、心拍出は保たれ、脈も触れる。心停止ではないので、「直ちに」電気ショックをかける対象にはならない。治療の中心は心拍数の調節、リズムの調節、抗凝固療法による塞栓症の予防である。頻拍で血圧低下などの循環不全をきたした場合には電気的に洞調律へ戻すことがあるが、これはR波に合わせて通電する同期下カルディオバージョンであり、非同期で行う除細動とは区別する。また、発症から48時間以上たっている場合などは心房内血栓があるおそれがあり、事前の抗凝固や経食道心エコーでの確認が必要になる。

  3. ○c.  無脈性心室頻拍

    心室頻拍は、心室を起源とする幅の広いQRS波が速いリズムで連続する不整脈である。心拍数が極端に速いと拡張期に心室へ血液がたまる時間がなくなり、拍出量が激減して脈が触れなくなる(いわゆる空打ちの状態)。これが無脈性心室頻拍で、心室細動と同じく心停止として扱う。心室では異常な電気興奮が旋回しているので、電気ショックで心筋全体を一度に脱分極させるとこの旋回が止まり、正常な調律の再開が期待できる。そのため、心停止の中でも心室細動とともにショック適応のリズムであり、ただちに除細動を行う。電気ショックの後は、リズムを確認せずにすぐ胸骨圧迫を再開し、約2分ごとに波形を確認する。除細動が効かない場合はアドレナリンや抗不整脈薬(アミオダロンなど)を併用する。

  4. ×d.  完全房室ブロック

    完全房室ブロック(III度房室ブロック)は、心房から心室への興奮伝導が完全に途絶え、心房(P波)と心室(QRS波)がそれぞれ独立したリズムで興奮する状態である。心室は下位の補充調律によって遅いながらも収縮を続けることが多い。補充調律がすぐに出ない場合や極端に遅い場合には、脳血流が減って失神(アダムス・ストークス発作)を起こすことがある。徐脈性不整脈であり、電気ショックで興奮をリセットしても心拍数は増えない。治療は、急性期にアトロピンや経皮ペーシング・一時的ペーシングを行い、恒久的ペースメーカー植込みを検討することである。

  5. ×e.  無脈性電気活動〈PEA〉

    PEAは、心電図上はある程度まとまった電気活動(心室細動や心室頻拍以外の波形)がみられるのに、有効な心拍出がなく脈が触れない状態である。電気的な興奮の異常が主因ではなく、低循環血液量、低酸素血症、心タンポナーデ、緊張性気胸、肺血栓塞栓症、高カリウム血症などによって、心臓がポンプとして働けなくなっていることが多い。電気ショックで興奮をリセットしても拍出は回復しないため、ショック非適応である。心静止と同じく、心肺蘇生を続けながらアドレナリンを投与し、治療可能な原因(いわゆる5H5T)を探して是正する。

心停止アルゴリズムの要点(一次救命処置・二次救命処置)

1. 反応がなく、普段どおりの呼吸がなければ心停止と判断し、ただちに胸骨圧迫を始め、AED(自動体外式除細動器)や除細動器を手配する。 2. 胸骨圧迫は、強さ約5cm(6cmを超えない)、テンポ100〜120回/分で、中断を最小限にする。 3. 心電図波形を確認する。 ・VF/無脈性VT → 電気ショック1回、その後ただちに胸骨圧迫を2分間再開する。続けてショックが必要な場合はアドレナリン(3〜5分ごと)、さらにアミオダロンなどの抗不整脈薬を投与する。 ・心静止/PEA → 電気ショックは行わない。心肺蘇生を続けながら、できるだけ早くアドレナリンを投与する。 4. 治療可能な原因を検索し是正する。 ・5H:低酸素血症(Hypoxia)、循環血液量減少(Hypovolemia)、水素イオン=アシドーシス(Hydrogen ion)、高・低カリウム血症(Hyper/Hypokalemia)、低体温(Hypothermia) ・5T:緊張性気胸(Tension pneumothorax)、心タンポナーデ(Tamponade)、毒物・薬物(Toxins)、肺血栓塞栓症(Thrombosis, pulmonary)、冠動脈血栓・急性冠症候群(Thrombosis, coronary)

AEDの働き

AEDは心電図を自動で解析し、VFや無脈性VTなどショックが必要なリズムを検出したときだけ通電を指示する。心静止など、ショック非適応のリズムでは「ショックは不要です」とアナウンスされ、心肺蘇生の継続が促される。

電気ショック(除細動)と同期下カルディオバージョンの違い

・除細動:R波に同期させず通電する。対象はVF、無脈性VT。 ・同期下カルディオバージョン:R波に同期させて通電し、T波の頂点付近(受攻期)への通電で心室細動を誘発するのを避ける。対象は、脈はあるが循環動態が不安定な頻拍(心房細動、心房粗動、発作性上室頻拍、脈のある心室頻拍など)。

徐脈性不整脈への電気的治療

完全房室ブロックなどの症候性徐脈では、アトロピン、経皮ペーシング、カテコラミン、一時的ペーシングを行う。電気ショックではない。

POINT

・心停止の4波形:VF、無脈性VT、心静止、PEA ・電気ショックの適応はVFと無脈性VTだけ(ショック適応リズム)。 ・心静止とPEAはショック非適応で、心肺蘇生とアドレナリン投与、原因検索(5H5T)を行う。 ・脈のある頻拍で循環動態が不安定なら、R波に同期させるカルディオバージョンを行う。 ・徐脈性不整脈(完全房室ブロック)の治療はペーシングである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。