StudyMed医師国家試験

使うほど「効きすぎる」薬物―覚醒剤精神病と逆耐性現象

第115回医師国家試験 F問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第115回 F問題 第6問

逆耐性現象を示す精神病症状をきたすのはどれか。

  1. a.LSD
  2. b.大麻
  3. c.アルコール
  4. d.ジアゼパム
  5. e.メタンフェタミン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は依存性薬物の性質、なかでも「逆耐性現象」という言葉の意味と、それがどの薬物でみられるかを問う問題だ。普通の「耐性」と何が逆なのかを押さえれば、答えは自然に見えてくるよ。
医学生医学生
耐性は、繰り返し使ううちに効きにくくなって量が増えていくことですよね。逆耐性ということは、逆に効きやすくなるということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。繰り返し使ううちに、特定の作用がむしろ強く、早く出るようになる現象を逆耐性、あるいは感作と呼ぶ。代表が覚醒剤、つまりメタンフェタミンやアンフェタミンによる精神病症状だ。使い続けると、幻覚や妄想が以前より少ない量で現れるようになる。
医学生医学生
じゃあ答えはメタンフェタミンですね。でも、覚醒剤も使い続けると量が増えていくイメージがあったのですが。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。実は覚醒剤でも、多幸感や食欲を抑える作用には耐性がつく。だから快感を求めて使用量は増えていく。一方で精神病症状には逆耐性が生じる。同じ薬物でも、作用によって耐性がつくものと逆耐性を示すものがある、というのが大事なポイントなんだ。
医学生医学生
量が増えるうえに精神病症状は出やすくなるなんて、かなり危険な組み合わせですね。機序はどう考えられているんですか。
ドクタードクター
覚醒剤は神経終末からドパミンを放出させ、再取り込みも妨げて、ドパミン系を強く刺激する。これを繰り返すと中脳辺縁系のドパミン神経系が過敏になり、その変化が長く残ると考えられている。統合失調症のドパミン仮説と重なる部分があるから、症状が似るのも理解しやすいよね。
医学生医学生
薬理学の講義で、抗精神病薬はD2受容体を遮断すると習いました。覚醒剤はちょうどその逆方向に働くわけですね。
ドクタードクター
そういうこと。覚醒剤精神病では、意識ははっきりしたまま幻聴や被害妄想、追跡妄想、注察妄想が現れ、統合失調症によく似る。治療にも抗精神病薬を使う。さらに厄介なのが、長くやめていても、少量の再使用や飲酒、不眠、ストレスをきっかけに症状がすぐ再燃することだ。これをフラッシュバックと呼ぶ。
医学生医学生
フラッシュバックならLSDにもあったと思います。LSDも逆耐性を示すのでは?
ドクタードクター
そこは混同しやすいところだ。LSDはセロトニン5-HT2A受容体に作用する幻覚剤で、確かにフラッシュバックは知られている。でも耐性は数日のうちに急速につくのが特徴で、逆耐性ではない。フラッシュバックがあるかどうかと、逆耐性があるかどうかは別の話として整理しよう。
医学生医学生
大麻はどうでしょう。精神病症状を起こすこともあると聞きました。
ドクタードクター
大麻の主成分THCはCB1受容体を介して、多幸感や時間感覚のゆがみ、記憶力・集中力の低下を起こす。長期使用で意欲が低下する無動機症候群や、精神病症状、統合失調症の発症リスク上昇が指摘されている。連用で耐性や軽い離脱症状も生じうるけれど、逆耐性は特徴ではないんだ。
医学生医学生
アルコールとジアゼパムは中枢神経抑制薬なので、耐性と身体依存の典型という理解でいいですか。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。どちらも飲み続けると効きにくくなる耐性が生じ、急にやめると振戦やけいれん、せん妄などの離脱症状が出うる。アルコールでは幻覚症のような精神病症状が起こることもあるけれど、逆耐性は示さない。
医学生医学生
精神科の臨床実習で、アルコール離脱せん妄の患者さんを受け持ちました。抑制系は離脱が怖い、刺激系は精神病症状の再燃が怖い、と対比すると覚えやすいですね。
ドクタードクター
いい対比だね。発展として、逆耐性はコカインでもみられることを覚えておこう。コカインは皮膚の下を虫がはうような体感幻覚でも有名だ。また覚醒剤は精神依存が強い一方で身体依存は乏しく、急にやめると強いだるさや眠気、抑うつといった反跳現象が出る。オピオイドはあくび、流涙、散瞳、下痢などの離脱症状が特徴的で、薬物ごとの違いを表にしておくと国試でも役立つよ。
医学生医学生
臨床では、幻覚・妄想で受診した若い人を見たら、覚醒剤などの使用歴も確認しないといけないですね。
ドクタードクター
その通り。統合失調症と見分けがつきにくいことがあるから、使用歴の聴取は欠かせない。そして断薬後も再燃しやすいことを踏まえて、長期的な支援や再使用の防止まで視野に入れることが大切なんだ。

まとめ

逆耐性現象とは、薬物を繰り返し使うことで特定の作用がかえって強く出るようになる現象で、覚醒剤(メタンフェタミン、アンフェタミン)やコカインの精神病症状が代表です。中脳辺縁系ドパミン系の感作が長期間残るため、少量でも幻聴や被害妄想などが出現し、断薬後も少量の再使用や飲酒・不眠・ストレスを契機に再燃(フラッシュバック)しやすくなります。一方で覚醒剤でも多幸感や食欲抑制作用には耐性がつき、LSDは耐性が急速に生じてフラッシュバックはあるものの逆耐性はなく、アルコールやジアゼパムは耐性と身体依存が中心です。薬物ごとの耐性・依存・離脱・フラッシュバックの特徴を整理しておくことは、統合失調症様の症状をみたときの鑑別や、依存症患者への長期的な支援を考えるうえで欠かせません。

解答・解説

正解はeです

依存性薬物の性質のうち、「逆耐性現象」が何か、どの薬物でみられるかを問う問題である。

耐性と逆耐性

・耐性:同じ薬物を繰り返し使ううちに効き目が弱くなり、以前と同じ効果を得るためにより多くの量が必要になる現象である。アルコール、ベンゾジアゼピン系薬、オピオイドなど多くの依存性薬物でみられる。 ・逆耐性(感作):反対に、繰り返し使ううちに特定の作用がむしろ強く出るようになる現象である。覚醒剤(アンフェタミン、メタンフェタミン)やコカインなどの中枢神経刺激薬を使い続けると、幻覚・妄想などの統合失調症によく似た精神病症状が、以前より少ない量で、より早く現れるようになる。さらに長いあいだ使わずにいた後でも、ごく少量の再使用や、飲酒・不眠・心理的ストレスなどをきっかけに、精神病症状がすぐに再び現れることがある(フラッシュバック、再燃)。

機序

覚醒剤は、神経終末からのドパミンの放出を促し、再取り込みを妨げることで、脳内のドパミン系を強く刺激する。これを繰り返すと中脳辺縁系のドパミン神経系が過敏になり(感作)、この変化が長期間残るため、逆耐性が生じると考えられている。

解き方

逆耐性といえば覚醒剤(メタンフェタミン)による精神病症状、と結びつけて覚えておけばよい。なお、覚醒剤でも多幸感や食欲を抑える作用などには耐性がつく。つまり、同じ薬物でも作用によって耐性がつくものと逆耐性を示すものがある点に注意する。

選択肢考察

  1. ×a.  LSD

    誤り。LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)は、主にセロトニン5-HT2A受容体に作用する幻覚剤で、色や形が変わって見えるといった強い知覚の変化や幻覚を起こす。耐性が数日のうちに急速に生じるのが特徴で、身体依存はほとんどない。使用をやめた後に幻覚体験が突然よみがえるフラッシュバックが知られているが、覚醒剤のような逆耐性現象はみられない。

  2. ×b.  大麻

    誤り。大麻の主な作用成分はTHC(テトラヒドロカンナビノール)で、カンナビノイドCB1受容体を介して、多幸感、時間や空間の感覚のゆがみ、眠気、記憶力・集中力の低下などを起こす。長期間使うと意欲が低下する(無動機症候群)ことや、精神病症状を起こしたり統合失調症の発症リスクを高めたりすることが指摘されている。使い続けると耐性や軽い離脱症状が生じることもあるが、逆耐性現象は特徴ではない。

  3. ×c.  アルコール

    誤り。アルコールは中枢神経を抑える作用をもち、精神依存と身体依存の両方を形成する。飲み続けるうちに同じ量では酔いにくくなる耐性が生じる。断酒すると、手のふるえ、発汗、けいれん、振戦せん妄などの離脱症状が現れる。アルコール幻覚症のような精神病症状は起こりうるが、逆耐性現象は示さない。

  4. ×d.  ジアゼパム

    誤り。ジアゼパムはベンゾジアゼピン系の抗不安薬である。GABA-A受容体の働きを強めることで中枢神経を抑え、抗不安・鎮静・抗けいれん・筋弛緩作用を示す。長く使うと耐性や精神依存・身体依存が生じ、急にやめると不安、不眠、けいれんなどの離脱症状が出ることがある。ただし、逆耐性現象はみられない。

  5. ○e.  メタンフェタミン

    正しい。メタンフェタミンは、日本で乱用される覚醒剤の代表であり、ドパミンなどのモノアミンを放出させ、再取り込みを妨げる中枢神経刺激薬である。使い続けると、幻聴や被害妄想(追跡妄想、注察妄想など)を中心とする統合失調症に似た精神病症状が、より少ない量で現れるようになる。これが逆耐性現象であり、使用をやめた後も、少量の再使用やストレスなどをきっかけに症状が再燃(フラッシュバック)しやすい。一方で、多幸感や食欲を抑える作用などには耐性が生じる。

主な依存性薬物の特徴

・覚醒剤(メタンフェタミン、アンフェタミン):中枢神経刺激薬。精神依存は強く、身体依存はないか乏しい。精神病症状に逆耐性を示し、フラッシュバックがある。急に使用をやめると、強いだるさ・眠気・抑うつ(反跳現象)が出る。 ・コカイン:中枢神経刺激薬。精神依存が強く、逆耐性がみられる。皮膚の下を虫がはうように感じる体感幻覚が知られている。 ・LSD:幻覚剤。精神依存はあり、身体依存はほとんどない。耐性がすぐにつく。フラッシュバックがある。 ・大麻:精神依存があり、無動機症候群がみられる。 ・アルコール、ベンゾジアゼピン系薬、バルビツール酸系薬:中枢神経抑制薬。精神依存・身体依存・耐性のいずれも生じ、離脱でけいれんやせん妄をきたしうる。 ・オピオイド(モルヒネ、ヘロイン):精神依存・身体依存・耐性がいずれも強い。離脱症状として、あくび、流涙、鼻漏、散瞳、鳥肌、下痢などが現れる。

覚醒剤精神病の特徴

意識がはっきりした状態で、幻聴、被害妄想・追跡妄想・注察妄想などが現れ、統合失調症によく似る。ただし、周囲との感情的な交流は比較的保たれやすいとされる。治療では抗精神病薬を用いる。

用語の整理

・フラッシュバック(自然再燃):使用をやめてしばらくたった後、少量の再使用や飲酒・不眠・ストレスなどをきっかけに、以前の幻覚・妄想などが再び現れること。覚醒剤やLSDでみられる。 ・逆耐性:繰り返し使うことで特定の作用(覚醒剤では精神病症状)が強く出るようになること。

POINT

・逆耐性現象=覚醒剤(メタンフェタミン、アンフェタミン)やコカインの精神病症状(幻覚・妄想)が、繰り返し使うことで少量でも出やすくなる現象。 ・覚醒剤でも多幸感や食欲を抑える作用には耐性がつく。 ・LSDは耐性が急速に生じ、フラッシュバックがあるが、逆耐性はない。 ・アルコール・ベンゾジアゼピン系薬は耐性と身体依存(離脱症状)がある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。