StudyMed医師国家試験

収縮が強すぎると胎児は息切れする―遅発一過性徐脈と子宮胎盤血流

第115回医師国家試験 F問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第115回 F問題 第5問

 胎児心拍数陣痛図の遅発一過性徐脈の原因となるのはどれか。

  1. a.過強陣痛
  2. b.臍帯圧迫
  3. c.児頭圧迫
  4. d.胎児貧血
  5. e.母体発熱

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はCTG、つまり胎児心拍数陣痛図の読み方の基本を問う問題だ。一過性徐脈には早発・遅発・変動の3つの型があって、それぞれ原因となる機序が違う。型と原因をセットで整理できているかがポイントだよ。
医学生医学生
遅発一過性徐脈は、子宮収縮より遅れて心拍が下がるタイプでしたよね。名前はなんとなく覚えているのですが、なぜ遅れるのかがピンときません。
ドクタードクター
そこを理解すると一気に覚えやすくなる。子宮が収縮すると、子宮筋の中を通る血管が圧迫されて、胎盤に流れ込む母体の血液が一時的に減るんだ。胎児は胎盤を介して酸素をもらっているから、収縮が起きてから少し遅れて酸素不足が胎児に届き、心拍が下がる。そして収縮が終わって血流が戻ってから、さらに少し遅れて心拍が回復する。
医学生医学生
だから最下点が収縮の頂点より後ろにずれるんですね。酸素が届くまでのタイムラグということですか。
ドクタードクター
そういうイメージでいい。つまり遅発一過性徐脈は、子宮胎盤循環の予備力が足りず、収縮のたびに胎児が低酸素になっているサインなんだ。では選択肢の中で、子宮胎盤血流を減らすものはどれだと思う?
医学生医学生
過強陣痛でしょうか。収縮が強くて頻回なら、血流が戻る暇がなさそうです。
ドクタードクター
正解。過強陣痛では収縮が強すぎる、間隔が短すぎる、持続が長すぎるといった状態になり、収縮の合間に胎盤の血流が回復しきらない。その結果、胎児が低酸素に陥って遅発一過性徐脈が出る。臨床では子宮収縮薬、たとえばオキシトシンの過量投与が原因になることがあって、その場合はまず減量や中止を考えるんだ。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で、陣痛促進中のCTGを先生と一緒に見ていたとき、「波形が怪しくなったらまず点滴を止める」と言われたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにその判断だね。ほかの選択肢も、どのCTG所見に結びつくかで整理しよう。臍帯圧迫はどうかな。
医学生医学生
臍帯圧迫は変動一過性徐脈ですよね。でも、臍帯が圧迫されたら胎児への酸素も減るので、遅発になってもおかしくない気がして少し迷いました。
ドクタードクター
いい疑問だ。臍帯圧迫ではまず壁の薄い臍帯静脈が閉じ、続いて臍帯動脈が閉じて胎児の血圧が急に上がる。これが圧受容体反射で迷走神経を刺激して、心拍が急に下がって急に戻る。反射が主体なので、収縮とのタイミングが一定せず、形も深さも毎回ばらばらになるのが変動一過性徐脈の特徴だ。羊水過少や臍帯巻絡が背景になりやすいね。
医学生医学生
児頭圧迫は早発一過性徐脈で、これも迷走神経反射でしたね。
ドクタードクター
そう。収縮で児頭が圧迫されて頭蓋内圧が上がり、迷走神経反射で心拍が下がる。収縮と鏡写しのように同時に始まって同時に戻るのが特徴で、児頭が深く下降した分娩後半によくみられる。基線細変動が保たれていれば、通常は胎児の低酸素を意味しない比較的良性の所見だ。
医学生医学生
胎児貧血と母体発熱は、一過性徐脈とは別の所見でしょうか。
ドクタードクター
その通り。重い胎児貧血では、基線が滑らかな正弦波のように規則的に揺れるサイナソイダルパターンがみられる。Rh式血液型不適合やパルボウイルスB19感染などが原因になるね。母体発熱では胎児の代謝も上がって基線が160 bpmを超える胎児頻脈になり、絨毛膜羊膜炎を疑うきっかけになる。
医学生医学生
早発は児頭、遅発は子宮胎盤血流、変動は臍帯、サイナソイダルは貧血、頻脈は発熱と、所見と原因を一対一で対応させればいいんですね。
ドクタードクター
その整理で十分戦える。発展として、遅発一過性徐脈の原因は過強陣痛だけではないことも押さえておこう。常位胎盤早期剥離、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全に伴う胎盤機能不全、過期妊娠、さらに仰臥位低血圧症候群や硬膜外麻酔による母体の血圧低下も、子宮胎盤血流を減らして同じ波形を生む。
医学生医学生
CBTの勉強では原因を丸暗記していましたが、全部「胎盤に届く血が減る」でまとめられるんですね。
ドクタードクター
そう考えると応用が利く。そして臨床で大事なのは、一過性徐脈の型だけでなく基線細変動を必ず一緒に見ることだ。細変動が消失して遅発一過性徐脈が繰り返されるなら、胎児のアシドーシスが進んでいる可能性が高い。日本では波形をレベル1から5に分類し、レベル3以上を胎児機能不全として、体位変換、酸素投与、子宮収縮薬の減量・中止、急速遂娩の準備などを段階的に検討するんだ。
医学生医学生
波形の名前を当てて終わりではなく、原因を推定して対応につなげるところまでがCTGの読影なんですね。
ドクタードクター
その通り。原因がわかれば、何をすれば胎児を楽にしてあげられるかも見えてくる。そこまで意識して覚えておこう。

まとめ

遅発一過性徐脈は、子宮収縮に遅れて心拍数がゆるやかに低下し、収縮終了後に回復する波形で、子宮収縮のたびに子宮胎盤血流が減少して胎児が低酸素になることを示します。過強陣痛では収縮の合間に胎盤血流が回復しきらないため遅発一過性徐脈の原因となり、子宮収縮薬の過量投与が背景にあれば減量・中止を検討します。一方、臍帯圧迫は変動一過性徐脈、児頭圧迫は早発一過性徐脈、胎児貧血はサイナソイダルパターン、母体発熱は胎児頻脈と結びつけて整理しておきます。常位胎盤早期剥離、妊娠高血圧症候群、母体低血圧なども同じ機序で遅発一過性徐脈を生じます。波形の型と基線細変動を組み合わせて胎児の状態を評価し、原因に応じた対応につなげることが、分娩管理の基本となります。

解答・解説

正解はaです

胎児心拍数陣痛図(CTG:cardiotocogram)でみられる一過性徐脈の種類と原因の組み合わせを問う問題である。

一過性徐脈の3つの型と機序

一過性徐脈は、子宮収縮(陣痛)とのタイミングと波形の形で分類し、それぞれ原因となる機序が違う。 ・早発一過性徐脈:子宮収縮とほぼ同時に始まり、収縮の頂点と心拍の最も低い点(最下点)が一致し、収縮の終わりとともに元に戻る。下がり方はゆるやか(心拍数の低下開始から最下点まで30秒以上)。子宮収縮で児頭が圧迫されて迷走神経が刺激される反射によるもので、通常は病的な意味が少ない。 ・遅発一過性徐脈:子宮収縮より遅れて始まり、最下点が収縮の頂点より遅れ、収縮が終わった後に回復する。下がり方はゆるやか。子宮収縮のたびに子宮胎盤の血流が減り、胎盤を通じた酸素の受け渡しが足りなくなって胎児が低酸素状態になることで起こる。胎児の低酸素を示す重要な所見である。 ・変動一過性徐脈:子宮収縮との時間関係が一定せず、急に下がって急に戻る(低下開始から最下点まで30秒未満)。形も深さも毎回異なる。臍帯圧迫によるものが代表である。

解き方

遅発一過性徐脈は「子宮胎盤循環の予備力が足りず、子宮収縮のたびに胎児への酸素供給が不足する状態」で生じる。子宮収縮が強すぎたり、頻繁すぎたり、長く続きすぎたりする過強陣痛では、収縮の間に胎盤の血流が回復しきらず胎児が低酸素になるため、遅発一過性徐脈の原因となる。他の選択肢は、それぞれ別のCTG所見と結びつけて覚えておく。

選択肢考察

  1. ○a.  過強陣痛

    正しい。子宮が収縮すると子宮筋の中を通る血管が圧迫され、胎盤への母体血の流れ(子宮胎盤血流)が一時的に減る。通常は収縮の合間に血流が戻るので胎児は耐えられるが、過強陣痛では収縮が強すぎたり、間隔が短すぎたり、持続が長すぎたりして、胎盤での酸素の受け渡しが不足し、胎児が低酸素血症に陥る。その結果、収縮より遅れて心拍が下がる遅発一過性徐脈が出現する。子宮収縮薬(オキシトシンなど)の過量投与が原因となることがあり、その場合は投与の減量・中止を検討する。

  2. ×b.  臍帯圧迫

    誤り。臍帯圧迫で起こるのは変動一過性徐脈である。臍帯が圧迫されると、まず壁の薄い臍帯静脈が閉じて胎児に戻る血液が減り、続いて臍帯動脈が閉じて胎児の血圧が急に上がる。これが圧受容体反射を介して迷走神経を刺激し、急な心拍低下が起こる。羊水過少、臍帯巻絡、臍帯脱出などが背景になる。

  3. ×c.  児頭圧迫

    誤り。児頭圧迫で起こるのは早発一過性徐脈である。子宮収縮や産道によって児頭が圧迫されると頭蓋内圧が上がり、迷走神経反射によって心拍が下がる。分娩第1期の終わりから第2期、児頭が骨盤内に深く下降した時期によくみられ、基線細変動が保たれていれば通常は胎児の低酸素を意味しない。

  4. ×d.  胎児貧血

    誤り。重い胎児貧血では、サイナソイダルパターン(基線が規則正しく滑らかな正弦波のように上下する波形)がみられる。胎児貧血の原因には、血液型不適合妊娠(Rh式など)、胎児母体間輸血症候群、パルボウイルスB19感染、双胎間輸血症候群などがあり、胎児水腫を伴うこともある。

  5. ×e.  母体発熱

    誤り。母体が発熱すると胎児の体温も上がり、代謝が亢進して胎児心拍数基線が上昇し、胎児頻脈(基線が160 bpmを超える状態)となる。絨毛膜羊膜炎などの子宮内感染を疑うきっかけになる。発熱そのものが遅発一過性徐脈の直接の原因になるわけではない。

CTGの基本

・胎児心拍数基線の正常範囲:110~160 bpm。110 bpm未満を徐脈、160 bpmを超えるものを頻脈とする。 ・基線細変動:心拍の細かな揺らぎであり、正常は振幅6~25 bpm。胎児の自律神経の働きが保たれ、胎児の状態が良好なことを示す最も大事な指標の一つである。消失している場合は胎児の低酸素・アシドーシスが強く疑われる。 ・一過性頻脈:胎動などに伴う一時的な心拍上昇で、胎児が元気であることを示す(リアシュアリング)。

遅発一過性徐脈を起こす要因

子宮胎盤の血流や胎盤機能が落ちる状態全般が原因となる。 ・子宮側:過強陣痛、子宮収縮薬の過量投与、子宮破裂 ・胎盤側:常位胎盤早期剥離、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全に関連する胎盤機能不全、過期妊娠 ・母体側:仰臥位低血圧症候群や硬膜外麻酔による低血圧、重い貧血、低酸素血症

その他のCTG所見と原因

・胎児頻脈:母体発熱、絨毛膜羊膜炎、胎児の低酸素の初期、母体に投与したβ刺激薬(リトドリン)、母体の甲状腺機能亢進症など ・サイナソイダルパターン:重い胎児貧血 ・遷延一過性徐脈:低下が2分以上10分未満続く徐脈。仰臥位低血圧、過強陣痛、臍帯脱出、急速な分娩進行など

過強陣痛

陣痛の強さ(子宮内圧)、周期、持続時間が、子宮口の開き具合ごとに定められた基準を超えて強すぎる・頻回すぎる・長すぎる状態である。子宮収縮薬の使用、児頭骨盤不均衡などの分娩の進みにくい状態が原因になりやすく、胎児機能不全や子宮破裂につながるおそれがある。

胎児機能不全の評価

分娩中は、基線細変動・心拍数基線・一過性徐脈の種類と程度を組み合わせて、胎児心拍数波形をレベル1(正常波形)からレベル5(異常波形〈高度〉)に分類する。レベル3~5(異常波形の軽度・中等度・高度)を胎児機能不全と判断し、体位変換、酸素投与、子宮収縮薬の減量・中止、急速遂娩の準備などの対応を行う。

POINT

・早発一過性徐脈=児頭圧迫(迷走神経反射、通常は良性) ・遅発一過性徐脈=子宮胎盤血流不全による胎児低酸素(過強陣痛、常位胎盤早期剥離、妊娠高血圧症候群、母体低血圧など) ・変動一過性徐脈=臍帯圧迫 ・サイナソイダルパターン=胎児貧血 ・胎児頻脈=母体発熱・絨毛膜羊膜炎など

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。