胎嚢の数とλサイン―双胎の膜性は「最初の超音波」で決まる
第115回医師国家試験 F問題 第30問
国試問題にチャレンジ
双胎妊娠の超音波検査の結果(①~⑤)を下に示す。 2絨毛膜2羊膜性双胎と判断できるのはどれか。2つ選べ。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
双胎妊娠の膜性診断は、妊娠初期(おおむね14週ごろまで)の超音波検査が最も正確で、初期は胎嚢の数が絨毛膜の数を示します。胎嚢が2つで厚い隔壁がある場合や、隔膜の胎盤付着部が三角形に盛り上がるλサイン(twin-peak sign)を認める場合は2絨毛膜2羊膜双胎、薄い隔膜が直角に付着するTサインは1絨毛膜2羊膜双胎、隔膜がなければ1絨毛膜1羊膜双胎を考えます。1絨毛膜双胎は胎盤血管吻合による双胎間輸血症候群や一児死亡時の他児障害のリスクが高く、より頻回の超音波検査で厳重に管理する必要があります。また、膜性と卵性は一致せず、一卵性でも早期に分割すれば2絨毛膜2羊膜双胎になります。初期に膜性を確実に診断して記録することが、その後の妊娠管理と分娩方針を決める出発点になります。
解答・解説
正解はb, dです
双胎妊娠では、胎盤(絨毛膜)と羊膜をそれぞれいくつもつかという膜性診断が、妊娠管理の方針と予後予測の出発点となる。膜性は次の 3 型に分けられる。 ・2 絨毛膜 2 羊膜(DD:dichorionic diamniotic)双胎:胎盤も羊膜腔も 2 つずつ。 ・1 絨毛膜 2 羊膜(MD:monochorionic diamniotic)双胎:胎盤は 1 つを共有し、羊膜腔は 2 つ。 ・1 絨毛膜 1 羊膜(MM:monochorionic monoamniotic)双胎:胎盤も羊膜腔も 1 つを共有する。 膜性診断は超音波検査で行い、妊娠初期(おおむね妊娠 14 週ごろまで)が最も正確である。妊娠が進むと膜が薄く伸展し、2 つの胎盤が隣接して 1 つに見えることもあるため、判定が難しくなる。判定の手がかりは次のとおりである。
妊娠初期(7〜10 週ごろ)
胎嚢(GS:gestational sac)の数が絨毛膜の数を表す。胎嚢が 2 つで、その間を厚い高輝度の壁が隔てていれば DD 双胎である。胎嚢が 1 つで中に胎芽が 2 つあれば 1 絨毛膜双胎であり、さらに 2 児を隔てる羊膜があるか(卵黄嚢の数も参考になる)で MD か MM かを判断する。
妊娠 10〜14 週以降
両児を隔てる隔膜と、それが胎盤に付着する部位の形に注目する。 ・λ(ラムダ)サイン(twin-peak sign):2 つの羊膜の間に絨毛組織が入り込み、隔膜の胎盤付着部が三角形(λ 字形)に盛り上がって見える。隔膜は厚い(絨毛膜 2 枚+羊膜 2 枚の 4 層)。DD 双胎を示す。 ・T サイン:隔膜が胎盤表面にほぼ直角に付着し、付着部に三角形の突出がない。隔膜は薄い(羊膜 2 枚のみ)。MD 双胎を示す。 ・隔膜なし:両児の間に隔膜がなく、臍帯の相互巻絡がみられることもある。MM 双胎を示す。 ・胎盤が 2 か所に完全に離れて付着していれば DD 双胎である。 本問の 5 枚の画像を、上記の所見に当てはめて読み分ける。
選択肢考察
- ×a. ①
誤り。妊娠初期の像で、1 つの胎嚢の中に 2 つの胎芽が認められ、それぞれが羊膜に包まれている。胎嚢が 1 つであることから絨毛膜は 1 つであり、羊膜腔が 2 つあるので 1 絨毛膜 2 羊膜(MD)双胎と判断される。DD 双胎ではこの時期に胎嚢が 2 つ別々に描出され、間に厚い隔壁が見えるはずである。
- ○b. ②
正しい。妊娠初期の像で、胎芽を 1 つずつ含む胎嚢が 2 つ描出され、両者の間には絨毛膜を含む厚い高輝度の隔壁がある。隔壁が胎盤(絨毛)側に移行する部分は三角形に盛り上がり、λ サインに相当する所見である。胎嚢(絨毛膜)が 2 つ、それぞれの胎嚢に胎芽が 1 つずつであることから、2 絨毛膜 2 羊膜(DD)双胎と診断できる。
- ×c. ③
誤り。1 つの胎嚢(羊膜腔)の中に 2 児が接して存在し、両児の間に隔膜が見られない。したがって 1 絨毛膜 1 羊膜(MM)双胎と考えられる。ただし、羊膜は非常に薄く描出されにくいことがあるため、MM 双胎の診断は断面を変えて隔膜の有無を繰り返し確認し、慎重に行う必要がある。臍帯の相互巻絡が確認されれば MM 双胎を強く支持する。
- ○d. ④
正しい。両児の間に厚い隔膜があり、その胎盤付着部では隔膜が三角形状に広がって胎盤へ移行している。これは 2 枚の羊膜の間に絨毛組織が入り込んだ λ サイン(twin-peak sign)であり、2 絨毛膜 2 羊膜(DD)双胎と判断できる。隔膜が厚いことも、絨毛膜 2 枚と羊膜 2 枚の計 4 層からなる DD 双胎の隔膜に合致する。
- ×e. ⑤
誤り。両児を隔てる隔膜は細く薄い線状で、胎盤表面にほぼ直角に付着しており、付着部に三角形の絨毛組織の入り込みがない。これは T サインであり、隔膜が羊膜 2 枚のみからなる 1 絨毛膜 2 羊膜(MD)双胎の所見である。
双胎の成り立ちと膜性
・二卵性双胎:2 つの受精卵がそれぞれ着床するため、必ず DD 双胎となる。 ・一卵性双胎:1 つの受精卵が分割する時期で膜性が決まる。受精後およそ 3 日以内の分割で DD、4〜8 日ごろで MD(一卵性で最も多い)、8〜13 日ごろで MM、それ以降の不完全な分割では結合双胎となる。 したがって DD 双胎でも一卵性のことがあり、膜性と卵性は同じではない。
膜性ごとのリスク
・1 絨毛膜双胎(MD・MM)では、共有する胎盤の中で両児の血管がつながっている(胎盤血管吻合)ため、双胎間輸血症候群(TTTS:一方の児から他方へ血液が偏って流れ、供血児は羊水過少・発育不全、受血児は羊水過多・心不全を来す)、一児死亡時の他児の脳障害や死亡、選択的胎児発育不全などが起こりうる。 ・MM 双胎では、これらに加えて臍帯相互巻絡による突然の胎児死亡の危険が高い。 ・DD 双胎は双胎の中では最もリスクが低いが、単胎に比べると早産、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全などのリスクは高い。
管理上の意義
膜性によって妊婦健診・超音波検査の間隔、管理入院の目安、分娩時期・分娩方法の方針が変わる。1 絨毛膜双胎では TTTS の早期発見のため、より頻回(2 週ごとなど)の超音波検査で羊水量や胎児発育を確認する。このため、妊娠初期に膜性を確実に診断して記録しておくことが重要である。
POINT
・膜性診断は妊娠初期(14 週ごろまで)の超音波検査が最も正確である。 ・妊娠初期:胎嚢が 2 つ → DD 双胎。胎嚢 1 つに胎芽 2 つ → 1 絨毛膜双胎(羊膜の有無で MD/MM)。 ・λ サイン(twin-peak sign)・厚い隔膜・離れた 2 つの胎盤 → DD 双胎。 ・T サイン・薄い隔膜 → MD 双胎。 ・隔膜なし → MM 双胎(羊膜の見落としに注意)。 ・1 絨毛膜双胎は胎盤血管吻合により TTTS などのリスクが高く、厳重な管理を要する。
