StudyMed医師国家試験

感染直後の最前線に立つのは誰か―自然免疫と獲得免疫を「時間軸」で分ける

第115回医師国家試験 F問題 第31問

国試問題にチャレンジ

第115回 F問題 第31問

ウイルスに初感染した際に感染初期から働く免疫担当細胞はどれか。2つ選べ。

  1. a.B細胞
  2. b.T細胞
  3. c.NK細胞
  4. d.形質細胞
  5. e.マクロファージ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は免疫の基本中の基本、自然免疫と獲得免疫の違いを問う問題だ。着眼点は「初感染」と「感染初期」という2つの言葉。どの細胞が、感染からどれくらいの時間で働き始めるのかを意識して考えてみよう。
医学生医学生
ウイルスと戦う細胞というと、まず細胞傷害性T細胞が思い浮かびます。感染細胞を殺す主役ですよね。
ドクタードクター
そう考える人は多いね。確かにウイルス排除の主役の一つではあるけれど、初感染のときにはすぐには働けないんだ。なぜだと思う?
医学生医学生
基礎医学の免疫学の講義で、T細胞は抗原提示を受けてから増殖すると習いました。その準備に時間がかかるということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。T細胞やB細胞は、一つ一つが特定の抗原だけを認識する受容体をもっている。初めて出会う病原体の場合、それに反応できるクローンは体内にごくわずかしかいない。樹状細胞などから抗原提示を受けて活性化し、クローン増殖してエフェクター細胞に分化するまで、数日から1週間程度かかるんだ。これが獲得免疫の特徴だよ。
医学生医学生
じゃあ、感染直後の数日間は誰が体を守っているんですか。
ドクタードクター
そこで働くのが自然免疫だ。自然免疫の細胞は、ウイルスの二本鎖RNAのような病原体に共通する分子パターンを、Toll様受容体などのパターン認識受容体で感知する。あらかじめ準備ができているから、侵入後数分から数時間で動き出せる。担い手はマクロファージ、樹状細胞、好中球、NK細胞などだ。
医学生医学生
選択肢の中だと、NK細胞とマクロファージが自然免疫側ですね。でもNK細胞ってリンパ球なのに自然免疫なんですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。NK細胞はリンパ球の仲間だけれど、T細胞のような抗原特異的な受容体はもたず、事前の感作なしに働く。ウイルス感染細胞ではMHCクラスI分子の発現が下がることが多く、NK細胞はこれを「自己の目印がない」と感知して、パーフォリンやグランザイムで感染細胞を壊すんだ。インターフェロンγを出してマクロファージを活性化する役割もある。
医学生医学生
ウイルスがMHCクラスIを下げてT細胞から逃げようとすると、今度はNK細胞に見つかる、という仕組みですね。
ドクタードクター
そう、うまくできているよね。マクロファージは血中の単球が組織に移行して分化した細胞で、感染直後から病原体や感染細胞の残骸を貪食し、TNF-α、IL-1、IL-12などのサイトカインで炎症反応やNK細胞の活性化を促す。さらに抗原提示細胞として獲得免疫の起動にも関わるんだ。
医学生医学生
病理実習で炎症組織を見たとき、泡沫状の大きな細胞がマクロファージだと教わりました。B細胞と形質細胞はどうでしょう。
ドクタードクター
B細胞も獲得免疫の細胞で、抗原を特異的に認識したものがヘルパーT細胞の助けを受けて増殖し、抗体を作る形質細胞に分化する。形質細胞はその最終分化段階だから、初感染で出現して最初のIgMを作るまでには数日かかる。どちらも「感染初期から」とは言えないね。
医学生医学生
だから急性感染の診断ではIgM抗体の上昇を見るんですね。感染直後だとまだ陰性のこともある、と臨床検査の講義で聞きました。
ドクタードクター
まさにそれが臨床的な意味だよ。発展として、ウイルス感染初期にはⅠ型インターフェロンも重要だ。感染細胞や形質細胞様樹状細胞が産生して、周囲の細胞を抗ウイルス状態にし、NK細胞も活性化する。また、NK細胞は抗体が結合した標的を壊す抗体依存性細胞傷害、つまりADCCにも関わっていて、自然免疫と獲得免疫は連携しているんだ。
医学生医学生
2回目の感染だと話が変わりますか。
ドクタードクター
変わるよ。獲得免疫には免疫記憶があるから、同じ病原体が再び来ると記憶細胞が速く強く反応する二次応答が起こる。ワクチンはこれを利用している。だから問題文の「初感染」という言葉が大事なんだ。なお細菌感染の初期防御では、これらに加えて好中球が主役になることも押さえておこう。
医学生医学生
「初感染の初期は自然免疫、時間が経つと獲得免疫、再感染は記憶で速い」と時間軸で整理すると覚えやすいです。

まとめ

ウイルスに初めて感染した直後に働くのは、病原体に共通する分子パターンをパターン認識受容体で感知する自然免疫であり、NK細胞とマクロファージがその中心です。NK細胞はMHCクラスIの発現が低下した感染細胞を事前の感作なしに傷害し、マクロファージは貪食・サイトカイン産生・抗原提示によって初期防御と獲得免疫への橋渡しを担います。T細胞・B細胞・形質細胞は獲得免疫の担い手で、初感染ではクローン増殖と分化に数日〜1週間程度を要するため感染初期には働けません。再感染では免疫記憶による二次応答が速やかに起こり、これがワクチンの原理でもあります。免疫応答を「時間軸」で整理する視点は、抗体検査の解釈や感染症診療の理解にも直結します。

解答・解説

正解はc, eです

本問は、自然免疫と獲得免疫(適応免疫)の違いを、反応が始まるまでの時間という観点から問うている。 病原体が体内に侵入すると、生体はまず自然免疫で応じる。自然免疫は病原体に共通する分子パターン(PAMPs:pathogen-associated molecular patterns、例えばウイルスの二本鎖RNAなど)を、Toll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体で感知するしくみであり、あらかじめ準備された細胞・分子が侵入後数分〜数時間のうちに働き始める。担い手はマクロファージ、樹状細胞、好中球、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)などである。ウイルス感染ではとくに、感染細胞を直接破壊するNK細胞と、貪食・サイトカイン産生・抗原提示を行うマクロファージが初期防御の中心となる。 一方、獲得免疫はT細胞やB細胞が抗原受容体で特定の抗原を認識し、その抗原に反応するクローンだけが増殖・分化してから働く。初感染ではこのクローン増殖とエフェクター細胞(細胞傷害性T細胞、形質細胞など)への分化に数日〜1週間程度かかるため、感染直後の段階ではまだ戦力にならない。 したがって「初感染時に感染初期から働く」細胞として選ぶべきは、自然免疫を担うNK細胞とマクロファージである。

選択肢考察

  1. ×a.  B細胞

    B細胞は獲得免疫(液性免疫)を担う細胞である。初感染では、ウイルス抗原を特異的に認識したB細胞がヘルパーT細胞の助けを受けて増殖し、抗体を産生する形質細胞へ分化するまでに数日を要する。感染初期から働く細胞ではないため誤り。

  2. ×b.  T細胞

    T細胞は獲得免疫(細胞性免疫)を担う。ナイーブT細胞は樹状細胞などから抗原提示を受けて初めて活性化し、クローン増殖を経て細胞傷害性T細胞(CD8陽性)やヘルパーT細胞(CD4陽性)として機能する。初感染ではこの過程に数日〜1週間程度を要するため、感染初期から働く細胞とはいえず誤り。

  3. ○c.  NK細胞

    NK細胞は自然免疫を担うリンパ球で、事前の感作を必要とせず感染直後から働く。ウイルス感染細胞ではMHCクラスI分子の発現が低下することが多く、NK細胞はこれを「自己の目印の欠如」として感知し、パーフォリンやグランザイムを放出して感染細胞を傷害する。また、インターフェロンγを産生してマクロファージを活性化する。感染初期のウイルス防御の主役の一つであり正しい。

  4. ×d.  形質細胞

    形質細胞は、抗原刺激を受けたB細胞が最終分化した抗体産生細胞であり、獲得免疫の担い手である。初感染で形質細胞が出現して抗体(まずIgM)を産生するまでには数日を要するため、感染初期から働く細胞ではなく誤り。

  5. ○e.  マクロファージ

    マクロファージは血中の単球が組織に移行して分化した細胞で、自然免疫の中心的な担い手である。パターン認識受容体でウイルス成分を感知し、感染直後から病原体や感染細胞の残骸を貪食するとともに、TNF-α・IL-1・IL-12などのサイトカインを産生して炎症反応やNK細胞の活性化を促す。さらに抗原提示細胞として獲得免疫の起動にもかかわる。感染初期から働く細胞であり正しい。

自然免疫と獲得免疫の比較

・自然免疫:反応開始は数分〜数時間。病原体に共通する分子パターンを認識し、特異性は低い。免疫記憶は基本的に形成されない(近年は「訓練免疫」として自然免疫にも一定の記憶様の現象があることが知られる)。担当細胞はマクロファージ、単球、樹状細胞、好中球、NK細胞、肥満細胞など。補体やインターフェロンなどの液性因子も含まれる。 ・獲得免疫:初回反応の成立に数日〜1週間程度。抗原受容体(T細胞受容体、B細胞受容体)により抗原を特異的に認識する。免疫記憶が形成され、2回目以降の同じ病原体の侵入には速く強く反応する(二次応答)。担当細胞はT細胞、B細胞、形質細胞。

ウイルス感染初期の防御

・Ⅰ型インターフェロン(IFN-α、IFN-β):感染細胞や形質細胞様樹状細胞が産生し、周囲の細胞を抗ウイルス状態にするとともにNK細胞を活性化する。 ・NK細胞:MHCクラスIの発現低下した細胞を傷害する。抗体が結合した標的を傷害する抗体依存性細胞傷害(ADCC)にも関与する。 ・マクロファージ・樹状細胞:貪食とサイトカイン産生、抗原提示によって獲得免疫への橋渡しをする。

細菌感染との違い

細菌感染の初期防御では、上記に加えて好中球が主役となる。

POINT

・感染初期(初感染直後)から働くのは自然免疫:マクロファージ、NK細胞、好中球、樹状細胞など。 ・T細胞・B細胞・形質細胞は獲得免疫を担い、初感染では働き始めるまでに数日を要する。 ・NK細胞はMHCクラスIの発現が低下したウイルス感染細胞を、事前の感作なしに傷害する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。