StudyMed医師国家試験

「1人で捨てない」が鉄則―医療用麻薬の管理ルールを総点検

第115回医師国家試験 E問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第115回 E問題 第3問

医療機関における麻薬の管理・取扱いについて誤っているのはどれか。

  1. a.鍵をかけた堅固な設備に保管する。
  2. b.残った注射薬は研修医が1人で破棄する。
  3. c.紛失した場合は都道府県知事に届け出る。
  4. d.施用・交付時に診療録に必要事項を記載する。
  5. e.施用・交付には麻薬施用者免許が必要である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療機関で麻薬をどう扱うかという法規の問題だ。誤っているものを選ぶ形式だから、選択肢を一つずつ法のルールと照らし合わせていこう。麻薬の管理は、免許・保管・記録・廃棄・事故時の届出という5つの段階で考えると整理しやすい。
医学生医学生
公衆衛生の講義で麻薬及び向精神薬取締法を習いましたが、細かい規定は正直うろ覚えです。
ドクタードクター
大丈夫、一つずつ確認しよう。まず「誰が扱えるか」からだ。医師免許があれば麻薬を使えると思うかな。
医学生医学生
医師なら処方できるのでは……と思いましたが、別に免許が要るんでしたっけ。
ドクタードクター
そう、医師免許だけでは足りない。麻薬を施用・交付したり麻薬処方箋を出したりするには、都道府県知事から麻薬施用者免許を受ける必要がある。免許は従事する施設ごとに受けるもので、有効期間は免許を受けた日から翌々年の12月31日までだ。だからこの記述は正しい。
医学生医学生
保管については、鍵付きの金庫のようなところにしまうんですよね。病棟実習で、看護師さんが麻薬金庫の鍵を厳重に管理していたのを見ました。
ドクタードクター
よく観察していたね。麻薬は他の医薬品と区別して、鍵をかけた堅固な設備に保管する。簡単に持ち運べない金庫などが該当する。例外として覚醒剤は同じ保管庫に入れてよいとされている。この記述も正しい。
医学生医学生
診療録への記載も、普通の薬より項目が多いイメージがあります。
ドクタードクター
その通り。施用・交付したときは、患者の氏名・住所、病名、主要症状、麻薬の品名と数量、年月日を診療録に記載する。さらに施設では麻薬帳簿をつけて、受け入れ・払い出し・廃棄を記録していく。帳簿上の数と実際の在庫が合っていることが、横流しを防ぐ仕組みになっているんだ。
医学生医学生
紛失したら届け出るのも正しそうですね。届出先は厚生労働大臣かと迷いましたが。
ドクタードクター
医療機関、つまり麻薬診療施設の場合は都道府県知事に麻薬事故届を出す。滅失や盗難、所在不明などが起きたら速やかにだ。盗難なら警察への届出も必要になる。これも正しい記述だね。
医学生医学生
となると、残った注射薬を研修医が1人で破棄する、というのが誤りですね。
ドクタードクター
正解。ここがこの問題の核心だ。患者に使った後の残液は、麻薬管理者、置いていない施設なら麻薬施用者が、薬剤師など他の職員の立会いのもとで、回収できない方法で廃棄する。そして30日以内に調剤済麻薬廃棄届を都道府県知事に提出する。
医学生医学生
期限切れの未使用の麻薬を捨てるときも同じ手順ですか。
ドクタードクター
そこは少し違う。未使用の麻薬は、事前に都道府県知事に届け出たうえで、麻薬取締員など当該職員の立会いのもとで廃棄する。施用残液は事後届出、未使用品は事前届出と区別しておこう。どちらにも共通するのは、必ず誰かの立会いがあり、単独では処分できないという点だ。
医学生医学生
研修医が1人で、というのは二重にまずいわけですね。立会いがないうえに、研修医は麻薬管理者でもないので。
ドクタードクター
その理解でいい。現場では忙しさから自分で処理したくなる場面があるかもしれないが、麻薬の残液は自己判断で捨てず、施設の決められた手順に乗せる。数が合わなくなれば事故として扱われることもあるからね。
医学生医学生
麻薬施用者が複数いる施設に麻薬管理者を置く、というのも確かありましたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。麻薬施用者が2人以上いる麻薬診療施設には麻薬管理者を置き、保管や帳簿管理の責任を負わせる。毎年、前年の受け入れ・払い出し・在庫量を都道府県知事へ届け出る年間届もある。なお向精神薬は麻薬ほど厳格ではないが、施錠保管や一定量以上の紛失時の届出が定められている。
医学生医学生
緩和ケア科の実習でオピオイドをよく使っていましたが、その裏でこれだけの管理がされていたんですね。
ドクタードクター
そう。患者さんの痛みを取るために適正に使うことと、乱用や横流しを防ぐことは表裏一体だ。ルールを理解しておけば、ためらわずに必要な鎮痛を届けられるようになるよ。

まとめ

医療用麻薬は麻薬及び向精神薬取締法により、免許・保管・記録・廃棄・事故届の各段階で厳しく管理されます。施用・交付には医師免許に加えて都道府県知事が交付する麻薬施用者免許が必要で、保管は他の医薬品と区別した施錠可能な堅固な設備で行い、施用・交付時には診療録に所定事項を記載します。紛失・盗難などの事故は都道府県知事へ届け出ます。廃棄は必ず立会いのもとで行い、施用残液は他の職員の立会いで廃棄して30日以内に届け出、未使用麻薬は事前届出のうえ麻薬取締員などの立会いで廃棄するため、研修医が単独で破棄することは認められません。こうした仕組みを理解することは、乱用を防ぎつつ緩和医療で必要な鎮痛を適正に提供するための前提となります。

解答・解説

正解はbです

テーマ

モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなどの医療用麻薬は、麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)によって、免許・保管・記録・廃棄・事故時の届出が厳しく規定されている。乱用・横流しを防ぐため、「誰が扱えるか(免許)」「どこにしまうか(保管)」「何を記録するか(記録)」「どう処分するか(廃棄)」「なくなったらどうするか(事故届)」の各段階にルールがある。

考え方

本問は「誤っているもの」を選ぶ。各選択肢を法の原則に照らすと、保管・事故届・診療録記載・免許の記述はいずれも法の規定どおりである。一方、廃棄は必ず他者の立会いのもとで行い記録・届出する仕組みになっており、研修医が単独で処分することは認められない。この点が誤りである。

選択肢考察

  1. ×a.  鍵をかけた堅固な設備に保管する。

    正しい記述である。麻薬は麻薬以外の医薬品(覚醒剤を除く)と区別し、鍵をかけた堅固な設備(容易に持ち運べない金庫など)に保管しなければならない。麻薬診療施設では、麻薬管理者(麻薬施用者が2人以上いる施設で置く)が保管・管理の責任を負う。

  2. ○b.  残った注射薬は研修医が1人で破棄する。

    誤った記述であり、これが正解である。患者に施用した後に残った注射液(施用残液)は、麻薬管理者(麻薬管理者を置かない施設では麻薬施用者)が、薬剤師など他の職員の立会いのもとで、回収困難な方法(放流・焼却など)で廃棄し、その後30日以内に都道府県知事へ調剤済麻薬廃棄届を提出する。また、期限切れなど未使用の麻薬を廃棄する場合は、事前に都道府県知事へ届け出たうえで、麻薬取締員など当該職員の立会いのもとで廃棄しなければならない。いずれの場合も一人で処分することは許されず、研修医が単独で廃棄するのは不適切である。

  3. ×c.  紛失した場合は都道府県知事に届け出る。

    正しい記述である。麻薬の滅失・盗難・所在不明(紛失)・その他の事故が生じたときは、品名・数量や事故の状況を、速やかに麻薬事故届として届け出なければならない。医療機関(麻薬診療施設)の場合、届出先は都道府県知事である。盗難の場合は警察署への届出も必要となる。

  4. ×d.  施用・交付時に診療録に必要事項を記載する。

    正しい記述である。麻薬施用者は麻薬を施用・交付したとき、診療録に患者の氏名・住所、病名、主要症状、施用・交付した麻薬の品名と数量、施用・交付の年月日を記載しなければならない。加えて麻薬診療施設では麻薬帳簿を備え、受け入れ・払い出し・廃棄などを記録する。

  5. ×e.  施用・交付には麻薬施用者免許が必要である。

    正しい記述である。医師免許だけでは麻薬を施用・交付したり、麻薬処方箋を交付したりすることはできず、都道府県知事から麻薬施用者免許を受ける必要がある。免許は従事する麻薬診療施設ごとに受け、有効期間は免許を受けた日からその翌々年の12月31日までである。

医療機関における麻薬管理の主な規定

・免許:麻薬施用者免許(医師・歯科医師・獣医師が対象)、麻薬管理者免許(医師・薬剤師などが対象)。いずれも都道府県知事が交付する。麻薬施用者が2人以上いる麻薬診療施設には麻薬管理者を置く。 ・保管:麻薬以外の医薬品(覚醒剤を除く)と区別し、施錠した堅固な設備に保管する。 ・記録:診療録への記載(患者情報・病名・主要症状・品名・数量・年月日)と麻薬帳簿の整備。 ・処方箋:麻薬処方箋には患者の住所、麻薬施用者の免許番号などの記載が必要である。 ・廃棄:未使用麻薬の廃棄は事前届出と当該職員の立会いが必要。施用残液や患者から返納された調剤済麻薬は、施設内で職員立会いのもと廃棄し、30日以内に届け出る。 ・事故:紛失・盗難・破損などは速やかに都道府県知事へ届け出る。 ・年間届:麻薬管理者(または施用者)は毎年、前年の麻薬の受け入れ・払い出し・在庫量などを都道府県知事に届け出る。

関連

向精神薬は麻薬ほど厳格ではないが、施錠できる場所での保管や、一定量以上の紛失時の届出などが定められている。覚醒剤(原料を含む)は覚醒剤取締法で規制され、覚醒剤は麻薬と同じ保管庫に保管することが認められている。

POINT

・麻薬の施用・交付には医師免許に加えて麻薬施用者免許(都道府県知事が交付)が必要。 ・保管は他の医薬品と区別し、鍵をかけた堅固な設備で行う。 ・施用・交付時は診療録に所定事項を記載する。 ・紛失・盗難などの事故は都道府県知事に届け出る。 ・廃棄は単独では行わず、必ず立会いのもとで行い、届け出る。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。