StudyMed医師国家試験

「明日から走るつもり」は何期?―行動変容ステージを時間軸で見抜く

第115回医師国家試験 E問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第115回 E問題 第4問

肥満のある高血圧症の患者が行動変容の準備期に入ったと考えられるのはどれか。

  1. a.毎食の塩辛い漬物がやめられない。
  2. b.1週間,食事の塩分制限を続けている。
  3. c.1年以上,ウォーキングを毎日続けている。
  4. d.明日から食後のジョギングを始めるつもりでいる。
  5. e.半年後にくる誕生日から間食を減らそうと思っている。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、生活習慣を変えようとする人がいま行動変容のどの段階にいるかを判定する問題だ。カギになるのは「まだ始めていないなら、いつ始めるつもりか」と「もう始めているなら、どのくらい続いているか」の2つの物差し。この2軸で選択肢を振り分けていこう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習ったプロチャスカのモデルですね。無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5段階だったと思います。
ドクタードクター
そう、トランスセオレティカルモデルとも呼ばれる。では各段階の境目を言えるかな。
医学生医学生
えっと、関心期と準備期の違いがあいまいです。どちらも「やろうと思っている」状態ですよね。
ドクタードクター
そこが一番問われるところだ。区切りは「いつ始めるつもりか」。6か月以内に変える意図がなければ無関心期、6か月以内に変えるつもりなら関心期、1か月以内に始めるつもりなら準備期と考える。準備期には、すでに小さな行動を試し始めている人も含まれるよ。
医学生医学生
なるほど、「6か月」と「1か月」で分けるんですね。始めたあとは、6か月未満なら実行期、6か月以上続いたら維持期でしょうか。
ドクタードクター
正解。では当てはめてみよう。毎食の塩辛い漬物がやめられない人は?
医学生医学生
変えるつもりも時期も語っていないので、無関心期ですね。
ドクタードクター
そうだね。この段階では、塩分と血圧の関係を伝えるなど、まず問題に気づいてもらう情報提供が中心になる。次に、1週間減塩を続けている人は?
医学生医学生
始めたばかりなので準備期かと思いましたが……実際に行動を始めて6か月未満なので実行期ですね。
ドクタードクター
その通り。「始めたばかり」は準備期と取り違えやすいけれど、実際に行動を変えていれば実行期だ。逆戻りしやすい時期だから、褒めて意欲を強化することが大切になる。1年以上ウォーキングを毎日続けている人は、6か月を超えているので維持期だね。
医学生医学生
半年後の誕生日から間食を減らそうと思っている人は、意図はあるけれど1か月以内ではないので関心期。そして明日からジョギングを始めるつもりの人が、1か月以内に始める意図があるので準備期、これが答えですね。
ドクタードクター
完璧だ。「半年後」という言葉に引っ張られて迷う人もいるけれど、1か月以内かどうかで線を引けば迷わない。
医学生医学生
臨床実習の総合診療科で、特定保健指導の面談を見学しました。保健師さんが最初に「いつ頃から始められそうですか」と聞いていたのは、ステージを見極めるためだったんですね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。ステージの判定はゴールではなく、それに合った支援を選ぶための手段なんだ。関心期なら変える利点と変えない不利益を整理して動機づけを高める。準備期なら、無理のない具体的な目標と行動計画を一緒に立て、周囲に宣言してもらうなど自己決定を後押しする。維持期なら逆戻りを防ぐ工夫や家族の協力の継続、自己効力感の維持がポイントだ。
医学生医学生
ステージは一方通行で進んでいくものなんでしょうか。
ドクタードクター
そうとは限らない。維持期から前の段階に戻ることも珍しくないし、それを失敗と責めずに、もう一度どこにいるかを確認して支援を組み直すことが大切だ。肥満を伴う高血圧なら、減塩、減量、運動、節酒が生活習慣修正の柱になるから、項目ごとにステージが違うこともあると意識しておくといい。
医学生医学生
減塩は実行期でも運動は無関心期、ということもあり得るわけですね。
ドクタードクター
その通り。患者さんを一つのラベルで決めつけず、行動ごとに丁寧に見ていく姿勢が、実際の生活指導では役に立つよ。

まとめ

プロチャスカらの行動変容ステージモデルでは、行動を変える意図と実行の期間によって、無関心期(6か月以内に変える意図なし)、関心期(6か月以内に変える意図あり)、準備期(1か月以内に始める意図あり)、実行期(開始後6か月未満)、維持期(6か月以上継続)の5段階に分けます。「明日から始めるつもり」は1か月以内の具体的な意図があるため準備期、「半年後から」は関心期、「1週間続けている」は実行期、「1年以上続けている」は維持期と判定できます。各段階には適した支援があり、無関心期には情報提供、関心期には動機づけ、準備期には具体的な目標設定と計画づくり、実行期には強化と環境調整、維持期には逆戻り防止が中心となります。ステージは逆戻りもありうるため、行動ごとに現在の段階を見極めて支援を選ぶ視点が、特定保健指導や日常診療での生活指導に欠かせません。

解答・解説

正解はdです

テーマ

プロチャスカ(Prochaska)らが提唱した行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)では、人が生活習慣を変えていく過程を、行動を変える「意図」と「実際に行動を始めてからの期間」によって次の5段階に分ける。 ・無関心期(前熟考期):6か月以内に行動を変えるつもりがない。 ・関心期(熟考期):6か月以内に行動を変えるつもりがある。 ・準備期:1か月以内に行動を変えるつもりがある(すでに小さな行動を試み始めている場合も含む)。 ・実行期:行動を変えて6か月未満である。 ・維持期:行動を変えて6か月以上続いている。

考え方

各選択肢を「まだ始めていないなら、いつ始めるつもりか」「すでに始めているなら、どのくらい続いているか」の2点で振り分ける。準備期の鍵は「1か月以内という近い将来に始める意図がある」ことであり、これに合致するものを選ぶ。

選択肢考察

  1. ×a.  毎食の塩辛い漬物がやめられない。

    減塩という行動を変える意図や時期が示されておらず、現状の食習慣を続けている状態であるため、無関心期と考えられる。この段階では、高血圧と塩分摂取の関係などの知識・情報を提供し、問題点に気づいてもらう支援(意識の高揚)が中心となる。

  2. ×b.  1週間,食事の塩分制限を続けている。

    すでに減塩を始めているが、継続期間は1週間と6か月未満であるため実行期にあたる。行動が後戻りしやすい時期であり、実行を褒めて意欲を強化することや、続けやすい環境を整えることが重要である。

  3. ×c.  1年以上,ウォーキングを毎日続けている。

    運動習慣が6か月以上続いているため維持期にあたる。この段階では、逆戻り(再発)を防ぐための工夫や、家族など周囲の協力を継続的に得ることが支援の中心となる。

  4. ○d.  明日から食後のジョギングを始めるつもりでいる。

    まだ行動は始めていないが、「明日から」と1か月以内に開始する具体的な意図があるため準備期にあたる。この段階では、無理のない具体的な目標を一緒に設定し、実行計画を立てること、周囲に宣言するなど自己決定を後押しする(自己の解放)支援が有効である。

  5. ×e.  半年後にくる誕生日から間食を減らそうと思っている。

    行動を変える意図はあるが、開始時期は半年後と、1か月以内ではなく6か月以内の範囲にとどまるため関心期にあたる。行動を変える利点と変えない不利益を整理し、動機づけを高める支援が中心となる。

各ステージで有効な支援の例

・無関心期:情報提供、問題点の指摘、生活習慣が健康に及ぼす影響を感情的にも実感させる働きかけ。 ・関心期:行動変容の利点(メリット)と障害(デメリット)の整理、自分にとっての意味を考えさせる動機づけ。 ・準備期:具体的な目標設定と行動計画の作成、実行を周囲に宣言させるなどの自己決定の支援。 ・実行期:行動の強化(称賛や褒美)、誘惑となる刺激の制御、代替行動の提案、ソーシャルサポートの活用。 ・維持期:逆戻り防止策、周囲の協力の継続、自信(自己効力感)の維持。

補足

ステージは一方向に進むとは限らず、維持期から前の段階に戻ること(逆戻り)も珍しくない。特定保健指導などの保健指導では、対象者がどのステージにいるかを見極め、それに合った支援を選ぶことが求められる。肥満を伴う高血圧では、減塩、減量、運動、節酒などが生活習慣修正の柱となる。

POINT

・無関心期:6か月以内に行動を変える意図なし。 ・関心期:6か月以内に変える意図あり。 ・準備期:1か月以内に変える意図あり。 ・実行期:行動変容を始めて6か月未満。 ・維持期:6か月以上継続。 ・ステージだけでなく、各段階に適した支援方法もセットで覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。