「病気の前・早期・障害の後」―予防の3段階は対象者の時間軸で見分ける
第120回医師国家試験 B問題 第3問
国試問題にチャレンジ
三次予防はどれか。
- a.高齢者への減塩教育
- b.子どもへの予防接種
- c.労働者への健康診断
- d.障害者への生活技能訓練
- e.高血圧症患者への服薬治療
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
疾病予防は、病気の自然史のどこに働きかけるかによって3段階に分けられます。一次予防は発生そのものを防ぐもので、減塩などの健康教育や予防接種が該当し、二次予防は健康診断やがん検診、早期の治療による進行・合併症の防止を指します。三次予防は障害が生じた後の機能回復・再発防止・社会復帰を目指すもので、リハビリテーションや職業訓練、そして障害者への生活技能訓練(SST)がその典型です。「治療だから三次予防」とは限らず、高血圧の服薬治療は二次予防(脳卒中から見れば一次予防)と捉えられる点に注意が必要です。対象者の状態と介入の目的という2つの軸で考える習慣は、公衆衛生の問題だけでなく、患者さんの生活全体を見据えた臨床の実践にも役立ちます。
解答・解説
正解はdです
問われていること
疾病予防の3段階(一次予防・二次予防・三次予防)の区別を問う問題である。
予防の3段階
疾病の自然史(健康な時期→病気が発生する時期→症状のない早期→症状が出る時期→回復・障害・死亡)のどの段階に働きかけるかによって、予防は3つに分けられる。この考え方はLeavellとClarkによって体系化された。 ・一次予防:病気がまだ発生していない段階で、発生そのものを防ぐ。健康増進(栄養・運動・休養などの生活習慣の改善、健康教育)と特異的予防(予防接種、事故防止、職業病対策、環境衛生の改善など)からなる。 ・二次予防:病気は発生しているがまだ早期の段階で、早期発見・早期治療により進行や重症化を防ぐ。健康診断・がん検診などのスクリーニングが代表で、適切な治療による悪化・合併症の防止も含まれる。 ・三次予防:病気が進行した後、あるいは障害が残った段階で、機能の回復、再発防止、社会復帰を図り、生活の質(QOL)を保つ。リハビリテーション、職業訓練、社会生活への適応支援などが該当する。
正解を導く考え方
各選択肢について、対象者が「病気になる前」「病気の早期」「障害がすでにある段階」のどこにいるか、そして介入の目的が「発生防止」「早期発見・進行防止」「機能回復・社会復帰」のいずれかを見極める。すでに障害のある人に対し、日常生活や社会生活を送るための技能を身につけてもらう生活技能訓練は、機能回復と社会復帰を目指す三次予防にあたる。
選択肢考察
- ×a. 高齢者への減塩教育
食塩の摂り過ぎは高血圧の主要な危険因子であり、減塩教育は高血圧やそれに続く脳卒中・心血管疾患の発生を未然に防ぐための健康教育である。病気が起こる前に生活習慣を改善させる取り組みであり、一次予防(健康増進)に分類される。
- ×b. 子どもへの予防接種
ワクチンで特定の病原体に対する免疫をあらかじめつけ、感染症の発症(および重症化)を防ぐ介入であり、一次予防のうち特異的予防の代表例である。
- ×c. 労働者への健康診断
労働安全衛生法に基づく一般健康診断などは、自覚症状のない段階の高血圧、脂質異常症、糖尿病などを見つけ出し、早期に治療や保健指導につなげることを主な目的とする。早期発見・早期治療をねらうスクリーニングであり、二次予防に分類される。
- ○d. 障害者への生活技能訓練
生活技能訓練(social skills training:SST)は、統合失調症などの精神障害をはじめとする障害のある人に対し、対人関係や日常生活に必要な技能を、ロールプレイなどの練習を通して身につけてもらう認知行動療法的なリハビリテーションである。すでに障害がある段階で、生活機能の回復、再発防止、社会復帰とQOLの向上を目指す介入であり、三次予防にあたる。
- ×e. 高血圧症患者への服薬治療
高血圧症と診断された段階で、降圧薬により血圧を管理し、病態の進行や臓器障害(脳卒中、心疾患、腎障害など)の発生を防ぐ治療である。疾病の早期に行う適切な治療による進行・合併症の防止であり、二次予防に分類される。なお、脳卒中という疾患から見れば、その危険因子を管理して発症を防ぐ一次予防とみなすこともできるが、いずれにしても障害が生じた後の機能回復や社会復帰を目的とする三次予防にはあたらない。
予防の段階と具体例の整理
・一次予防(発生予防) 健康増進:健康教育、栄養改善、運動習慣、禁煙・節酒、ストレス対策 特異的予防:予防接種、事故防止、職業病の予防(保護具の使用など)、環境衛生の改善、ヨード添加などの栄養補給、予防的な化学療法 ・二次予防(早期発見・早期治療) 健康診断、がん検診(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん)、新生児マススクリーニング、感染症の接触者健診、早期治療による合併症・後遺症の防止 ・三次予防(機能回復・再発防止・社会復帰) リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語聴覚療法)、生活技能訓練、職業訓練・就労支援、心筋梗塞後の心臓リハビリテーション、再発防止のための慢性疾患管理
紛らわしい例
・同じ行為でも、対象となる疾患をどれと見るかで分類が変わることがある。例えば高血圧の治療は、高血圧そのものに対しては二次予防だが、脳卒中に対しては一次予防とも捉えられる。試験では、問題文で示された対象者の状態(健康な人か、早期の病人か、障害のある人か)と介入の目的に注目して判断する。 ・感染症対策では、予防接種は一次予防、接触者健診による早期発見は二次予防である。
生活技能訓練(SST)について
・Libermanらが体系化した手法で、日本では精神科リハビリテーションとして広く行われ、入院生活技能訓練療法として診療報酬上も評価されている。 ・挨拶や頼みごと、断り方、服薬や症状の自己管理など、具体的な場面を設定してロールプレイを行い、正のフィードバックを与えながら技能の習得と般化を図る。
参考:ゼロ次予防
・個人の行動変容に頼らず、社会環境や生活環境そのものを整えて、健康を害する要因の発生自体を防ぐ考え方をゼロ次予防(primordial prevention)とよぶことがある。
POINT
・一次予防:発生を防ぐ(健康教育・生活習慣改善・予防接種)。 ・二次予防:早期発見・早期治療で進行を防ぐ(健康診断・がん検診、早期の治療)。 ・三次予防:障害が生じた後の機能回復・再発防止・社会復帰(リハビリテーション、生活技能訓練、職業訓練)。 ・判断の手がかりは「対象者の状態」と「介入の目的」である。 ・障害者への生活技能訓練(SST)は三次予防の典型例である。
