StudyMed医師国家試験

「たばこ病」はどれだ?―原因で仕分ける呼吸器疾患とCOPD

第120回医師国家試験 E問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第120回 E問題 第15問

喫煙と発症の因果関係が強いのはどれか。

  1. a.胸膜プラーク
  2. b.サルコイドーシス
  3. c.慢性閉塞性肺疾患
  4. d.急性呼吸窮迫症候群
  5. e.ニューモシスチス肺炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、喫煙と呼吸器疾患の関係を問う問題だ。並んでいる5つの疾患は、どれも呼吸器の病気だけれど、原因がまったく違う。それぞれ「何が原因で起こるのか」で仕分けしていくと、答えは自然に見えてくるよ。
医学生医学生
喫煙が悪いのは肺全般だと思っていたので、全部少しずつ関係がありそうに見えてしまいます。
ドクタードクター
その感覚はよくわかる。喫煙は本当に多くの病気の危険因子だからね。でも問題が聞いているのは「因果関係が強い」もの、つまり喫煙が主な原因になっている疾患だ。では一つずつ見ていこう。まず胸膜プラークの原因は何だったかな。
医学生医学生
呼吸器内科の講義で、石綿曝露の指標になる所見と習いました。造船業や建設業の職歴を聞くように言われた覚えがあります。
ドクタードクター
その通り。胸膜プラークは主に壁側胸膜にできる限局性の線維性肥厚で、石灰化を伴うこともある。曝露から10〜20年以上たって現れるのが特徴だ。原因は石綿であって、喫煙ではない。ただし、石綿と喫煙が肺癌の発生に相乗的に働くことは別の話として覚えておこう。
医学生医学生
サルコイドーシスはどうでしょう。原因不明の肉芽腫性疾患なので、喫煙とは関係ない気がします。
ドクタードクター
いい判断だ。両側肺門リンパ節腫脹や眼病変、心病変などを起こす非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の病気で、アクネ菌などへの免疫反応や遺伝的素因が推定されている。面白いことに、喫煙者ではむしろ発症が少ないと報告されているんだ。
医学生医学生
逆の関係なんですね。それなら、肺炎や敗血症から起こる急性呼吸窮迫症候群も、喫煙が直接の原因ではないですよね。
ドクタードクター
そう。ARDSは肺炎、誤嚥、敗血症、重症外傷、急性膵炎などの侵襲をきっかけに、肺の血管透過性が亢進して非心原性肺水腫を起こす急性の重症呼吸不全だ。主役は基礎にある侵襲で、喫煙が発症の主因になるわけではない。
医学生医学生
ニューモシスチス肺炎は日和見感染なので、免疫不全が背景ですね。臨床実習で膠原病内科を回ったとき、ステロイド内服中の患者さんにST合剤で予防していました。
ドクタードクター
よく見ていたね。ニューモシスチス肺炎は真菌による肺炎で、HIV感染症でCD4陽性T細胞が200/μL未満になった場合や、ステロイド・免疫抑制薬・抗癌化学療法・臓器移植後などの細胞性免疫不全が背景になる。喫煙との因果関係はない。
医学生医学生
消去法で残るのは慢性閉塞性肺疾患、COPDですね。
ドクタードクター
正解。COPDはたばこ煙を主とする有害物質を長期間吸い込むことで起こる肺の炎症性疾患で、喫煙が最大の危険因子だ。日本の患者さんの大部分に喫煙歴があり、「たばこ病」と呼ばれることもある。喫煙量が多いほど発症リスクが上がるんだ。
医学生医学生
喫煙量はpack-yearsで評価するんでしたよね。1日の箱数かける喫煙年数で、OSCEの医療面接でも必ず聞くように練習しました。
ドクタードクター
そう、それが大事な情報になる。COPDでは末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で組み合わさり、完全には元に戻らない気流閉塞が起こる。診断には気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで1秒率が70%未満であることを確認し、ほかの気流閉塞を来す疾患を除外する。
医学生医学生
治療は吸入薬が中心でしょうか。
ドクタードクター
吸入薬も大切だけど、まず基本は禁煙だ。禁煙は呼吸機能低下の進行を抑える最も有効な介入とされる。そのうえで長時間作用性の抗コリン薬やβ2刺激薬、呼吸リハビリテーション、インフルエンザや肺炎球菌のワクチン、必要に応じて在宅酸素療法を組み合わせる。
医学生医学生
喫煙と強く関連する病気は、COPD以外にもたくさんありますよね。
ドクタードクター
その整理も公衆衛生では大事だ。呼吸器では肺癌、特に扁平上皮癌と小細胞癌、それから剥離性間質性肺炎や肺Langerhans細胞組織球症などの喫煙関連間質性肺疾患がある。ほかにも喉頭癌、食道癌、膀胱癌、膵癌、虚血性心疾患、脳卒中、Buerger病、腹部大動脈瘤などが挙がる。一方で、サルコイドーシス、過敏性肺炎、潰瘍性大腸炎は非喫煙者に多いとされ、「逆の関連」として出題されやすいから一緒に覚えておこう。
医学生医学生
「喫煙で増える病気」と「喫煙者に少ない病気」をセットで覚えておけば、ひっかけにも対応できそうです。

まとめ

喫煙は多くの疾患の危険因子ですが、呼吸器疾患のなかで喫煙が発症の主因と言えるのは慢性閉塞性肺疾患(COPD)であり、治療の基本も禁煙です。胸膜プラークは石綿曝露、急性呼吸窮迫症候群は肺炎・敗血症・外傷などの侵襲、ニューモシスチス肺炎は細胞性免疫不全、サルコイドーシスは原因不明と、それぞれ原因が異なります。喫煙関連疾患として肺癌(扁平上皮癌・小細胞癌)、喫煙関連間質性肺疾患、各種の癌、虚血性心疾患、Buerger病などを押さえ、逆に喫煙者に少ないとされるサルコイドーシス、過敏性肺炎、潰瘍性大腸炎も合わせて覚えておくと鑑別に役立ちます。疾患を「原因」で整理する習慣は、問診での喫煙歴・職業歴の聴取や予防医学の実践に直結します。

解答・解説

正解はcです

テーマ

各呼吸器疾患の主要な原因・危険因子を整理できているかを問う問題である。喫煙は多くの疾患の危険因子となるが、「発症との因果関係が強い」と言える代表的な呼吸器疾患は慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。

考え方

選択肢の疾患をそれぞれ「主な原因は何か」で分類するとよい。 ・胸膜プラーク:石綿(アスベスト)曝露 ・サルコイドーシス:原因不明(喫煙者ではむしろ少ないとされる) ・COPD:喫煙(最大の危険因子) ・急性呼吸窮迫症候群(ARDS):敗血症、肺炎、誤嚥、外傷などの基礎疾患・侵襲 ・ニューモシスチス肺炎:細胞性免疫不全(HIV感染症、免疫抑制療法など) このように整理すると、喫煙が発症の主因であるのはCOPDのみである。

選択肢考察

  1. ×a.  胸膜プラーク

    胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)は、主に壁側胸膜に生じる限局性の線維性肥厚で、しばしば石灰化を伴う。石綿(アスベスト)曝露の指標となる所見であり、曝露から通常10〜20年以上経って出現する。原因は石綿であり、喫煙との因果関係は強くない。なお、石綿曝露と喫煙は肺癌の発生に対して相乗的に作用することが知られているが、それは胸膜プラークそのものの原因とは別の話である。

  2. ×b.  サルコイドーシス

    サルコイドーシスは、肺・リンパ節(両側肺門リンパ節腫脹)・眼・皮膚・心臓など全身の臓器に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫ができる原因不明の疾患である。アクネ菌(Cutibacterium acnes)や抗酸菌などの微生物に対する免疫反応や遺伝的素因の関与が推定されている。喫煙者ではむしろ発症が少ないと報告されており、喫煙が原因となる疾患ではない。

  3. ○c.  慢性閉塞性肺疾患

    慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、たばこ煙を主とする有害物質を長期に吸入することで生じる肺の炎症性疾患であり、喫煙が最大の危険因子である。日本ではCOPD患者の大部分に喫煙歴があり、「たばこ病」とも呼ばれる。喫煙量(pack-years:1日の箱数×喫煙年数)が多いほど発症リスクが高く、禁煙は呼吸機能低下の進行を抑える最も有効な介入である。喫煙との因果関係が強い疾患として正しい。

  4. ×d.  急性呼吸窮迫症候群

    急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、肺炎、誤嚥、敗血症、重症外傷、急性膵炎、大量輸血などの侵襲をきっかけに、肺の血管透過性が亢進して非心原性肺水腫を来す急性の重症呼吸不全である。直接の原因はこれらの基礎疾患・侵襲であり、喫煙が発症の主因となる疾患ではない。

  5. ×e.  ニューモシスチス肺炎

    ニューモシスチス肺炎は真菌Pneumocystis jiroveciiによる肺炎で、免疫が正常な人にはほとんど発症しない日和見感染症である。HIV感染症(特にCD4陽性T細胞数が200/μL未満)、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の使用、抗癌化学療法、臓器移植後などの細胞性免疫不全が発症の背景となる。喫煙との因果関係はない。

COPDの概要

COPDは、たばこ煙を主とする有害物質の長期吸入によって起こる肺疾患で、末梢気道病変と気腫性病変(肺胞の破壊)がさまざまな割合で組み合わさり、完全には元に戻らない進行性の気流閉塞を示す。診断には、気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1/FVC)が70%未満であることが必要で、他の気流閉塞を来す疾患を除外する。治療の基本は禁煙であり、そのうえで長時間作用性気管支拡張薬(LAMA、LABA)、呼吸リハビリテーション、インフルエンザ・肺炎球菌ワクチン接種、必要に応じて在宅酸素療法などを行う。COPDは世界の死因の上位に位置し、高齢化と喫煙の影響で患者数は多い。

喫煙が強く関連する主な疾患

・呼吸器:COPD、肺癌(特に扁平上皮癌、小細胞癌)、気腫合併肺線維症、特発性肺線維症のリスク上昇、剥離性間質性肺炎・呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患・肺Langerhans細胞組織球症(いずれも喫煙関連間質性肺疾患) ・その他の癌:喉頭癌、口腔・咽頭癌、食道癌、膀胱癌、膵癌、腎盂・尿管癌など ・循環器:虚血性心疾患、脳卒中、閉塞性動脈硬化症、Buerger病(閉塞性血栓血管炎)、腹部大動脈瘤 ・その他:Crohn病の増悪、歯周病、骨粗鬆症、低出生体重児など

喫煙で発症が少ないとされる疾患

サルコイドーシス、過敏性肺炎、潰瘍性大腸炎などは非喫煙者に多いとされ、試験で「逆の関連」として問われることがある。

POINT

・COPDの最大の危険因子は喫煙であり、治療の基本も禁煙である。 ・胸膜プラーク→石綿曝露、ARDS→敗血症・肺炎などの侵襲、ニューモシスチス肺炎→細胞性免疫不全、サルコイドーシス→原因不明。 ・サルコイドーシスや過敏性肺炎、潰瘍性大腸炎はむしろ非喫煙者に多い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。