StudyMed医師国家試験

届出・入院・公費・検疫・予防接種―感染症を「どの法律の何の制度か」で仕分ける

第115回医師国家試験 C問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第115回 C問題 第15問

 感染症について正しいのはどれか。

  1. a.結核は検疫感染症である。
  2. b.コレラの治療医療費は全額公費負担となる。
  3. c.髄膜炎菌感染症は定期予防接種の対象である。
  4. d.マラリアは感染症法に基づく入院勧告の対象となる。
  5. e.新型インフルエンザは,診断後直ちに都道府県知事に届け出る。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、感染症に関わる制度を横断的に問う問題だ。登場するのは感染症法、検疫法、予防接種法の3つ。それぞれの選択肢が「どの法律の、どの制度の話をしているか」を見極めることがカギになる。
医学生医学生
感染症法の1類から5類の分類は覚えたつもりなんですが、類型ごとの措置になると混乱します。
ドクタードクター
そこを整理しよう。感染症法では、類型ごとに取れる措置が決まっている。入院勧告と、それに伴う入院医療費の公費負担は、原則として1類・2類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症が対象だ。3類と4類は入院勧告の対象外。一方、届出は1〜4類と新型インフルエンザ等感染症はすべて「直ちに」だよ。
医学生医学生
それなら、新型インフルエンザを診断したら直ちに都道府県知事に届け出る、というのは正しそうです。
ドクタードクター
正解だ。新型インフルエンザは「新型インフルエンザ等感染症」という独立した類型で、国民の大部分が免疫を持たず全国的に急速にまん延するおそれがある。診断した医師は直ちに、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出る。入院勧告や就業制限、外出自粛要請の対象にもなり、検疫感染症にも含まれる。
医学生医学生
では結核が検疫感染症というのはどうでしょう。2類なので重い扱いだと思ったのですが。
ドクタードクター
そこは間違えやすい。検疫感染症は、国内に常在しない感染症が国外から入り込むのを空港や港で防ぐためのものだ。1類感染症、新型インフルエンザ等感染症のほか、マラリア、デング熱、ジカウイルス感染症、チクングニア熱、MERS、鳥インフルエンザH5N1・H7N9などが該当する。結核は国内に常在しているから、水際で止める意義が乏しく、検疫感染症には入らない。
医学生医学生
「重いかどうか」ではなく「国内にあるかどうか」で決まるんですね。コレラの医療費の公費負担はどうですか。
ドクタードクター
コレラは3類感染症で、ほかに細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフスが仲間だ。3類は飲食物を扱う仕事などへの就業制限はあるけれど、入院勧告の対象ではない。だから感染症法による入院医療費の公費負担もなく、通常の医療保険で診療される。
医学生医学生
公費負担は入院勧告とセット、と覚えればよさそうです。1類や2類なら全額公費になるんですか。
ドクタードクター
そこも注意だ。1類・2類や新型インフルエンザ等感染症では医療保険が優先され、自己負担分を公費で負担する仕組みで、所得に応じた一部負担もある。全額公費となるのは新感染症だ。なお結核には、入院だけでなく通院医療にも公費負担制度があるよ。
医学生医学生
髄膜炎菌は、小児科実習で予防接種スケジュールを確認したとき見かけなかった気がします。
ドクタードクター
その記憶は正しい。髄膜炎菌ワクチンは日本では任意接種で、定期接種ではない。国内の発生が少ないからね。補体欠損症、エクリズマブなどの補体阻害薬を使っている人、無脾症や脾摘後の人、アフリカの髄膜炎ベルトなど流行地への渡航者、寮生活の学生などに推奨される。
医学生医学生
補体阻害薬の話は、血液内科で発作性夜間ヘモグロビン尿症の患者さんを担当したときに聞きました。投与前に接種するんですよね。
ドクタードクター
その通り。ちなみに侵襲性髄膜炎菌感染症は5類全数把握だけど、麻疹・風疹と並んで例外的に「直ちに」届け出る疾患だ。最後にマラリアの入院勧告はどうかな。
医学生医学生
マラリアは4類ですよね。蚊が媒介してヒトからヒトにはうつらないので、入院させて隔離する意味がない、ということでしょうか。
ドクタードクター
まさにそう。4類は動物や飲食物を介して感染し、ヒトからヒトへの直接感染はほとんど起こらない疾患群で、措置は媒介動物の駆除や消毒といった対物措置が中心だ。入院勧告や就業制限の対象にはならない。ただし検疫感染症ではあるし、全数を直ちに届け出る必要がある。
医学生医学生
マラリアは「検疫あり・入院勧告なし」、結核は「入院勧告あり・検疫なし」と対比すると覚えやすいですね。
ドクタードクター
いい整理だ。発展として予防接種法も確認しておこう。定期接種はA類とB類に分かれ、A類は集団予防や重篤疾患の予防が目的で努力義務がある。BCG、麻疹・風疹、水痘、日本脳炎、HPVなどだ。B類は個人予防が目的で、高齢者のインフルエンザや肺炎球菌、2024年度からの新型コロナ、2025年度からの帯状疱疹などが入る。臨床では、届出の遅れが地域の感染拡大につながりうるから、診断したらまず類型と届出期限を確認する習慣をつけよう。

まとめ

感染症の制度問題は、感染症法・検疫法・予防接種法のどれの話かを見極めると整理しやすくなります。新型インフルエンザ等感染症は1〜4類と同様に診断後直ちに保健所長経由で都道府県知事へ届け出る必要があり、入院勧告と入院医療費の公費負担の対象にもなります。入院勧告と公費負担は1類・2類・新型インフルエンザ等感染症・新感染症が対象で、3類のコレラは就業制限のみ、4類のマラリアは対物措置が中心です。検疫感染症は国内に常在しない感染症が対象のため、マラリアは含まれますが結核は含まれず、髄膜炎菌ワクチンは補体阻害薬使用者などに推奨される任意接種です。類型ごとの措置を対比して覚えることは、国試だけでなく、診断後の届出など臨床現場での正しい対応にも直結します。

解答・解説

正解はeです

本問は感染症対策に関わる3つの法律、すなわち感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)、検疫法、予防接種法の基本事項を横断的に問う問題である。 各選択肢がどの法律のどの制度を扱っているかを整理すると解きやすい。 ・a: 検疫法で定める「検疫感染症」に含まれるか。 ・b: 感染症法による医療費の公費負担の対象か。 ・c: 予防接種法に基づく定期接種の対象か。 ・d: 感染症法による入院勧告の対象か。 ・e: 感染症法による医師の届出の時期と届出先。 感染症法では、類型(1〜5類、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症)ごとに取りうる措置が決まっている。入院勧告とそれに伴う入院医療費の公費負担は、原則として1類・2類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症に限られ、3類・4類感染症は対象外である。届出は1〜4類と新型インフルエンザ等感染症ではすべて「直ちに」行う。この枠組みを押さえておけば、各選択肢の正誤を判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  結核は検疫感染症である。

    検疫感染症とは、国内に常在しない感染症の病原体が国外から入り込むのを防ぐため、検疫法に基づき空港・港の検疫所で検査や隔離・停留などの対象となる感染症である。具体的には1類感染症、新型インフルエンザ等感染症と、政令で定めるジカウイルス感染症、チクングニア熱、デング熱、マラリア、中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)である。結核は2類感染症であるが、日本国内に常在しており(中まん延国から低まん延国に移行したばかり)、水際で阻止する意義が乏しいため検疫感染症には含まれない。

  2. ×b.  コレラの治療医療費は全額公費負担となる。

    コレラは感染症法の3類感染症(ほかに細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス)である。3類感染症は特定の職業(飲食物の取り扱いなど)への就業制限の対象となるが、入院勧告の対象ではないため、感染症法による入院医療費の公費負担は受けず、通常の医療保険で診療が行われる。感染症法で入院医療費が公費負担となるのは、入院勧告・措置の対象となる1類・2類感染症、新型インフルエンザ等感染症および新感染症である(1類・2類などは医療保険を優先し、自己負担分を公費で負担する仕組み。新感染症は全額公費)。

  3. ×c.  髄膜炎菌感染症は定期予防接種の対象である。

    髄膜炎菌ワクチン(4価結合型ワクチン、血清群A・C・Y・W)は日本では任意接種であり、予防接種法に基づく定期接種の対象ではない。日本国内での発生は少なく、接種が推奨されるのは、補体欠損症の患者、エクリズマブなどの補体阻害薬を使用している患者、無脾症・脾摘後の患者、流行地域(アフリカの髄膜炎ベルトなど)への渡航者、寮などで集団生活を送る学生などである。なお侵襲性髄膜炎菌感染症は5類全数把握疾患で、診断後直ちに届け出る必要がある。

  4. ×d.  マラリアは感染症法に基づく入院勧告の対象となる。

    マラリアは感染症法の4類感染症である。4類感染症は動物や飲食物などを介してヒトに感染し、ヒトからヒトへの直接感染はほとんど起こらない疾患群であり、措置の中心は媒介動物の駆除や消毒などの対物措置である。患者への入院勧告や就業制限の対象とはならない。マラリアはハマダラカが媒介し、ヒトからヒトへは原則として感染しない(輸血や母子感染などの例外を除く)。なお、マラリアは検疫感染症には含まれており、診断した医師は全数を直ちに届け出る。

  5. ○e.  新型インフルエンザは,診断後直ちに都道府県知事に届け出る。

    新型インフルエンザは感染症法の「新型インフルエンザ等感染症」に分類される。この類型は、国民の大部分が免疫を獲得していないため全国的かつ急速なまん延のおそれがある感染症であり、1類〜4類感染症と同様に、診断した医師は直ちに最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。さらに入院勧告、就業制限、外出自粛要請などの措置の対象となり、入院医療費は公費負担となる。検疫感染症にも含まれる。

感染症法の類型と主な措置

・1類感染症(エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱): 全数・直ちに届出。入院勧告(原則として第一種感染症指定医療機関)、就業制限、建物の立入制限・交通制限などが可能。 ・2類感染症(急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、SARS、MERS、鳥インフルエンザH5N1・H7N9): 全数・直ちに届出。入院勧告、就業制限。 ・3類感染症(コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス): 全数・直ちに届出。就業制限はあるが入院勧告はない。 ・4類感染症(マラリア、デング熱、狂犬病、日本脳炎、A型肝炎、E型肝炎、つつが虫病、レジオネラ症など): 全数・直ちに届出。消毒・媒介動物の駆除などの対物措置が中心。 ・5類感染症: 全数把握(原則7日以内、麻疹・風疹・侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに)と定点把握がある。 ・新型インフルエンザ等感染症: 全数・直ちに届出。入院勧告、就業制限、外出自粛要請。 ・新感染症: 1類に準じた措置。医療費は全額公費。

医療費の公費負担

入院勧告・措置による入院医療費は、1類・2類感染症、新型インフルエンザ等感染症では医療保険を優先し、自己負担分を公費で負担する(所得に応じた一部負担あり)。結核については、入院に加えて通院医療(一般患者の適正医療)にも公費負担制度がある。

検疫感染症

1類感染症、新型インフルエンザ等感染症、ジカウイルス感染症、チクングニア熱、デング熱、マラリア、MERS、鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)。新型コロナウイルス感染症は、2023年5月に5類感染症へ移行した際に検疫感染症から外れた。

予防接種法の定期接種

・A類疾病(主に集団予防・重篤な疾患の予防が目的、努力義務あり): ジフテリア、百日咳、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、B型肝炎、ロタウイルス感染症、結核(BCG)、麻疹、風疹、水痘、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス感染症など。 ・B類疾病(主に個人予防が目的、努力義務なし): 高齢者のインフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症、新型コロナウイルス感染症(2024年度から)、帯状疱疹(2025年度から)など。 髄膜炎菌、ムンプス、A型肝炎などのワクチンは任意接種である。

POINT

・新型インフルエンザ等感染症は、1〜4類と同様に診断後直ちに保健所長経由で都道府県知事へ届け出る。 ・入院勧告と入院医療費の公費負担は1類・2類・新型インフルエンザ等感染症・新感染症が対象。3類(コレラ等)は就業制限のみ、4類(マラリア等)は対物措置が中心。 ・結核は国内常在のため検疫感染症ではない。マラリアやデング熱は検疫感染症。 ・髄膜炎菌ワクチンは任意接種(補体欠損、補体阻害薬使用、無脾症などでは推奨)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。