StudyMed医師国家試験

関節だけでは終わらない―関節リウマチが眼に起こす炎症は「強膜」と「虹彩毛様体」

第115回医師国家試験 A問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第115回 A問題 第12問

 関節リウマチの眼合併症はどれか。2つ選べ。

  1. a.強膜炎
  2. b.網膜炎
  3. c.緑内障
  4. d.眼球突出
  5. e.虹彩毛様体炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は関節リウマチの関節外症状のうち、眼に起こる合併症を問う問題だ。考え方のコツは、眼球のどの層に、どんな仕組みで炎症が起きるかをイメージすること。選択肢それぞれが「どの疾患でよく見る所見か」を思い浮かべると整理しやすいよ。
医学生医学生
関節リウマチの眼といえば、シェーグレン症候群を合併してドライアイになるイメージがあります。
ドクタードクター
いいスタートだね。続発性シェーグレン症候群による乾性角結膜炎は、実際に頻度の高い眼病変だ。ただ選択肢にはないから、ほかの代表的なものを考えよう。関節リウマチは自己免疫性の炎症や血管炎を背景に、眼の外壁や前部ぶどう膜にも炎症を起こすんだ。
医学生医学生
眼の外壁というと強膜ですか。解剖学で、眼球壁は外から線維膜、ぶどう膜、網膜の3層と習いました。
ドクタードクター
その通り。強膜炎は関節リウマチの代表的な眼合併症で、逆に強膜炎の患者さんの背景疾患として最も多い全身疾患の一つが関節リウマチなんだ。本態は強膜の血管炎で、夜間に増悪し眼球運動で響く強い眼痛と、深いところの暗赤色〜紫紅色の充血が特徴だ。
医学生医学生
結膜炎の充血とは見た目が違うんですね。上強膜炎というのも聞いたことがあります。
ドクタードクター
上強膜炎は強膜の表層の炎症で、軽症で自然に治ることも多い。一方、強膜炎は視機能を脅かしうる。特に壊死性強膜炎や、炎症所見に乏しいまま強膜が薄くなる穿孔性強膜軟化症は、罹病期間が長く血管炎を伴う重症例に多く、生命予後不良の指標ともされる。治療はステロイドや免疫抑制薬の全身投与が中心だ。
医学生医学生
もう一つの正解の虹彩毛様体炎は、ぶどう膜炎の一種ですよね。
ドクタードクター
そう、虹彩と毛様体の炎症で前部ぶどう膜炎ともよぶ。関節リウマチなどの自己免疫疾患を背景に起こりうる。毛様充血、羞明、眼痛、霧視、前房の炎症細胞などがみられ、治療はステロイド点眼と、虹彩後癒着を防ぐための散瞳薬が基本だ。
医学生医学生
眼科の臨床実習で、前部ぶどう膜炎といえば強直性脊椎炎やHLA-B27と教わったので、関節リウマチと結びつきませんでした。
ドクタードクター
その感覚は正しいよ。成人の関節リウマチでは虹彩毛様体炎の頻度は強膜炎ほど高くなく、特に多いのは強直性脊椎炎などの脊椎関節炎や、若年性特発性関節炎、なかでも抗核抗体陽性の少関節型だ。ただ、関節リウマチの眼合併症として挙げられる病変ではあるので、この問題では正解として選ぶことになる。
医学生医学生
網膜炎はどうでしょう。自己免疫で網膜にも炎症が起きそうな気がしますが。
ドクタードクター
網膜炎の代表的な原因は感染症なんだ。免疫不全患者のサイトメガロウイルス網膜炎、ヘルペス属ウイルスによる急性網膜壊死、トキソプラズマ、梅毒などだね。関節リウマチそのものの眼合併症としては挙げられない。海外でヒドロキシクロロキンによる網膜症が問題になることはあるけれど、これは炎症性の網膜炎とは別物だ。
医学生医学生
緑内障は、ステロイドを長く使っている患者さんなら起こりそうです。
ドクタードクター
鋭いね。ステロイドによる眼圧上昇や、虹彩毛様体炎に続発する緑内障は、関節リウマチ患者に二次的に生じうる。だから治療中の眼圧には注意が必要だけれど、疾患そのものの眼病変ではない。ステロイドの長期使用では後嚢下白内障もセットで覚えておこう。
医学生医学生
眼球突出は、CBTの勉強でBasedow病の甲状腺眼症として覚えました。
ドクタードクター
それでいい。ほかに眼窩腫瘍、眼窩蜂巣炎、IgG4関連眼疾患、多発血管炎性肉芽腫症の眼窩病変、頸動脈海綿静脈洞瘻などが原因になるけれど、関節リウマチではみられない。
医学生医学生
所見ごとに「この病気」と結びつけておくと、選択肢を一つずつ外せますね。
ドクタードクター
その通り。最後に臨床での注意点を。関節リウマチ患者が強い眼痛や深い充血を訴えたら、ただの結膜炎と決めつけず早めに眼科へ紹介すること。強膜炎、特に壊死性のものは全身の血管炎の活動性を反映していることがあるから、関節症状が落ち着いていても全身治療の見直しが必要になる場合がある。強膜炎に周辺部潰瘍性角膜炎が合併すると角膜穿孔の危険もあるんだ。
医学生医学生
眼の症状が全身の病勢のサインになるということですね。リウマチ内科と眼科の連携が大事なんだと分かりました。

まとめ

関節リウマチは関節外にも病変を起こす全身性自己免疫疾患で、眼では乾性角結膜炎(続発性シェーグレン症候群)、上強膜炎・強膜炎、虹彩毛様体炎、周辺部潰瘍性角膜炎がみられます。強膜炎は強膜の血管炎を本態とし、強い眼痛と深部の暗赤色の充血を呈し、壊死性強膜炎や穿孔性強膜軟化症は重症・長期罹患例に多く予後不良の指標となります。一方、網膜炎は主に感染症、眼球突出は甲状腺眼症の所見であり、緑内障はぶどう膜炎続発やステロイドの副作用として二次的に生じるもので、関節リウマチそのものの合併症ではありません。なお前部ぶどう膜炎は脊椎関節炎や若年性特発性関節炎で特に多い点も併せて押さえましょう。眼所見と全身疾患を対応づけて理解することは、膠原病診療で眼症状を見逃さず、全身の病勢評価につなげるうえで重要です。

解答・解説

正解はa, eです

関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis)は、滑膜炎による多関節炎を主体とする全身性自己免疫疾患であり、関節以外にもさまざまな臓器に病変(関節外症状)を起こす。眼はその代表的な標的臓器の一つである。 RAに伴う眼病変として押さえるべきものは、頻度の高い順におおむね次のとおりである。 ・乾性角結膜炎(ドライアイ):続発性シェーグレン症候群の合併による涙液分泌低下 ・上強膜炎・強膜炎:眼球の外壁を構成する強膜(およびその表層の上強膜)の炎症 ・ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎など) ・周辺部潰瘍性角膜炎:角膜周辺部が融解する重症病変で、強膜炎に合併しやすい これらはいずれも自己免疫性の炎症や血管炎を背景として生じる。一方、網膜炎、緑内障、眼球突出は、それぞれ感染症、眼圧上昇をきたす病態、甲状腺眼症などに代表される別の疾患群の所見であり、RAそのものの眼合併症としては挙げられない。本問は「RAに特徴的な眼の炎症はどこに起こるか」を問うており、強膜と前部ぶどう膜(虹彩・毛様体)を選べばよい。

選択肢考察

  1. ○a.  強膜炎

    強膜炎はRAの代表的な眼合併症であり、逆に強膜炎患者の背景疾患として最も多い全身疾患の一つがRAである。強膜の血管炎を本態とし、強い眼痛(夜間に増悪し、眼球運動で響く)と深在性の暗赤色〜紫紅色の充血を示す。表層の上強膜炎は軽症で自然軽快することも多いが、強膜炎は視機能を脅かしうる。とくに壊死性強膜炎や、炎症所見に乏しいまま強膜が菲薄化する穿孔性強膜軟化症は、罹病期間が長く血管炎を伴う重症RAに多く、生命予後不良の指標ともされる。治療はステロイドや免疫抑制薬の全身投与が中心となる。

  2. ×b.  網膜炎

    網膜炎はRAの眼合併症ではない。網膜炎の代表的な原因は感染症であり、免疫不全患者のサイトメガロウイルス網膜炎、急性網膜壊死(単純ヘルペスウイルス・水痘帯状疱疹ウイルス)、トキソプラズマ、梅毒などが挙げられる。なお、RA治療でヒドロキシクロロキンを使用する国では薬剤性網膜症が問題となるが、これは炎症性の網膜炎とは異なる。

  3. ×c.  緑内障

    緑内障はRAの直接の合併症とはされない。ただし、虹彩毛様体炎に続発して眼圧が上昇する続発緑内障や、ステロイドの点眼・全身投与による眼圧上昇(ステロイド緑内障)が、RA患者に二次的に生じることはありうる。臨床的には治療中のRA患者で眼圧に注意を払う必要があるが、RAそのものの眼病変として挙げるのは適切でない。

  4. ×d.  眼球突出

    眼球突出はRAではみられない。代表的な原因は甲状腺眼症(Basedow病などに伴う外眼筋・眼窩脂肪の腫大)であり、ほかに眼窩腫瘍、眼窩蜂巣炎、IgG4関連眼疾患、多発血管炎性肉芽腫症の眼窩病変、頸動脈海綿静脈洞瘻などで生じる。

  5. ○e.  虹彩毛様体炎

    虹彩毛様体炎は虹彩と毛様体に起こる炎症で、前部ぶどう膜炎ともよばれる。RAなどの自己免疫疾患を背景に生じうる眼合併症である。毛様充血、羞明、眼痛、霧視、前房内の炎症細胞などを呈し、治療はステロイド点眼と散瞳薬(虹彩後癒着の予防)が基本となる。なお、成人のRAでは頻度は強膜炎ほど高くなく、虹彩毛様体炎は若年性特発性関節炎(とくに抗核抗体陽性の少関節型)や強直性脊椎炎などの脊椎関節炎で特に多い点も合わせて覚えておくとよい。

眼の構造と炎症部位

眼球壁は外側から、角膜・強膜(線維膜)、ぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜)、網膜の3層からなる。ぶどう膜のうち前方の虹彩・毛様体の炎症を前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)、脈絡膜の炎症を後部ぶどう膜炎とよぶ。

関節リウマチの主な関節外症状

・皮膚:リウマトイド結節(肘の伸側など圧のかかる部位) ・肺:間質性肺炎、胸膜炎、リウマトイド結節 ・眼:乾性角結膜炎(続発性シェーグレン症候群)、上強膜炎・強膜炎、周辺部潰瘍性角膜炎、虹彩毛様体炎 ・血管:リウマトイド血管炎(悪性関節リウマチ) ・血液:貧血、Felty症候群(脾腫・好中球減少) ・その他:二次性(AA)アミロイドーシス、心膜炎、末梢神経障害

全身疾患と眼病変の対応

・強膜炎:RA、多発血管炎性肉芽腫症、再発性多発軟骨炎、SLE ・前部ぶどう膜炎:強直性脊椎炎などの脊椎関節炎(HLA-B27)、若年性特発性関節炎、サルコイドーシス、Behçet病 ・眼球突出:甲状腺眼症 ・網膜炎:サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、トキソプラズマ、梅毒などの感染症

治療に伴う眼の副作用

ステロイドの長期使用では白内障(後嚢下白内障)と緑内障(眼圧上昇)が問題となる。

POINT

・関節リウマチの眼合併症:乾性角結膜炎(続発性シェーグレン症候群)、上強膜炎・強膜炎、虹彩毛様体炎、周辺部潰瘍性角膜炎。 ・壊死性強膜炎・穿孔性強膜軟化症は重症・長期罹患のRAに伴い、血管炎を示唆する。 ・網膜炎は感染症、眼球突出は甲状腺眼症を連想する。 ・緑内障はRAそのものではなく、ぶどう膜炎続発やステロイドの副作用として生じうる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。