StudyMed医師国家試験

「眼をえぐられる」痛みに間に合う治療とは―群発頭痛の発作は酸素と注射で止める

第115回医師国家試験 A問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第115回 A問題 第11問

急性期の群発頭痛の治療はどれか。2つ選べ。

  1. a.純酸素吸入
  2. b.NSAID内服
  3. c.バルプロ酸内服
  4. d.トリプタン皮下注
  5. e.三環系抗うつ薬内服

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は群発頭痛の発作が起きているその場で何を使うか、という問題だ。着眼点は「発作の持続時間」と「薬が効き始めるまでの時間」。この2つを比べると答えが自然に見えてくるよ。まず、群発頭痛がどんな頭痛か説明できるかな。
医学生医学生
片側の眼の奥がものすごく痛くなって、同じ側に涙や鼻水が出る頭痛ですよね。若い男性に多いと神経内科の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。三叉神経・自律神経性頭痛というグループに入る一次性頭痛で、眼窩部の激痛が15〜180分ほど続き、同側の結膜充血、流涙、鼻漏、縮瞳や眼瞼下垂といった自律神経症状を伴う。入眠後1〜2時間の夜間に起こりやすく、数週から数か月の「群発期」に連日のように発作が集中するのが特徴だ。
医学生医学生
痛み止めなら、まずはNSAIDを飲んでもらうのが普通かなと思ったんですが。
ドクタードクター
片頭痛や緊張型頭痛ならそれで良い場面も多い。でも群発頭痛の発作は短時間で痛みのピークに達して、長くても3時間ほどで終わる。内服薬は吸収されて効き始めるまでに時間がかかるから、効くころには発作のピークが過ぎてしまうんだ。しかも痛みが非常に強く、NSAIDではほとんど効果が期待できない。
医学生医学生
なるほど、「速く効く」ことが一番大事なんですね。そうなると注射か吸入でしょうか。
ドクタードクター
まさにそこ。有効性が確立している急性期治療の一つが純酸素吸入だ。100%酸素を非再呼吸式マスクで毎分7〜15L程度、15分ほど吸ってもらう。発作の始まりから早く開始するほど効果が高い。
医学生医学生
酸素で頭痛が止まるというのが不思議です。どういう仕組みなんですか。
ドクタードクター
完全には解明されていないけれど、脳血管の収縮、三叉神経終末からの神経ペプチド放出の抑制、亢進した副交感神経活動の抑制などが考えられている。副作用がほとんどなく、心血管疾患があってトリプタンが使えない人にも使えるのが大きな利点だ。在宅酸素療法として自宅で使うことも保険適用で認められているよ。
医学生医学生
もう一つの正解はトリプタンの皮下注ですね。薬理学でセロトニン受容体の作動薬と習いました。
ドクタードクター
そう、5-HT1B/1D受容体作動薬だ。1B受容体を介して拡張した頭蓋内血管を収縮させ、1D受容体を介して三叉神経終末からのCGRPなどの放出を抑える。スマトリプタン3mgの皮下注は10〜15分程度で効き始め、最も確実な急性期治療の一つだ。自己注射製剤もあるし、点鼻薬も選択肢になる。
医学生医学生
トリプタンでも飲み薬だとダメなんですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。NSAIDと同じ理由で、内服は効果発現が遅く群発頭痛の発作には推奨されない。同じ薬でも投与経路で使い分けるという点は大事なポイントだ。それと、血管収縮作用があるから、虚血性心疾患や脳血管障害、コントロール不良の高血圧では禁忌になる。
医学生医学生
バルプロ酸と三環系抗うつ薬は、片頭痛の予防薬として覚えていました。
ドクタードクター
正しい整理だ。どちらも主に片頭痛の予防に使う薬で、発作中の痛みを速やかに止める作用はない。バルプロ酸は群発頭痛の予防に有効という報告もあるけれど根拠は限られていて、アミトリプチリンも群発頭痛での有効性は確立していない。つまり「急性期か予防か」「そもそも群発頭痛に効くか」で振り分ければ外せるんだ。
医学生医学生
では群発頭痛の予防には何を使うんですか。
ドクタードクター
第一選択はカルシウム拮抗薬のベラパミルで、群発期の始めに副腎皮質ステロイドを短期間併用したり、炭酸リチウムを使ったりする。生活指導も大切で、群発期の飲酒や喫煙、不規則な睡眠、飛行機搭乗のような気圧の急変は誘因になるから避けてもらう。
医学生医学生
臨床実習の外来で、発作中に部屋を歩き回っていた患者さんがいたと指導医の先生から聞きました。片頭痛の人が暗い部屋でじっとしているのと逆ですね。
ドクタードクター
よく覚えているね。その落ち着きのなさは群発頭痛らしい所見で、問診でのヒントになる。若い男性が毎晩同じ時間帯に片側の眼の奥の激痛で目を覚ます、と聞いたら群発頭痛を思い浮かべ、発作時は酸素とトリプタン皮下注、群発期の予防はベラパミルとセットで考えよう。

まとめ

群発頭痛は片側眼窩部の激痛に同側の流涙・鼻漏・結膜充血などの自律神経症状を伴う一次性頭痛で、20〜40歳代の男性に多く、夜間に群発期として発作が集中します。発作は15〜180分と短時間で急速にピークに達するため、急性期治療には即効性が求められ、純酸素吸入(100%、7〜15L/分程度、約15分)とスマトリプタン皮下注(または点鼻)が有効です。NSAIDやトリプタンの内服は効果発現が遅く発作に間に合わず、バルプロ酸や三環系抗うつ薬は主に片頭痛の予防薬で発作を止める作用はありません。予防の第一選択はベラパミルで、群発期には飲酒や喫煙を避けるよう指導します。頭痛の病型ごとに「急性期治療」と「予防療法」を分けて整理し、投与経路まで含めて薬を選ぶ視点は、頭痛診療全般に役立ちます。

解答・解説

正解はa, dです

群発頭痛(cluster headache)は、三叉神経・自律神経性頭痛(TACs:trigeminal autonomic cephalalgias)に分類される一次性頭痛である。片側の眼窩部から側頭部にかけて「眼をえぐられる」と表現される極めて強い痛みが15〜180分ほど続き、同じ側に結膜充血・流涙・鼻漏・鼻閉・縮瞳や眼瞼下垂(Horner様症候)などの自律神経症状を伴う。発作は夜間、とくに入眠後1〜2時間に起こりやすく、ある期間(群発期)に集中して連日出現する。 治療は、目の前の発作を止める「急性期(発作時)治療」と、群発期に発作を起こりにくくする「予防療法」に分けて考える。群発頭痛の発作は短時間で痛みのピークに達するため、急性期治療には「速く効く」ことが何より求められる。この条件を満たし有効性が確立しているのが、純酸素吸入とトリプタンの皮下注射(または点鼻)である。内服薬は吸収されて効き始めるまでに時間がかかり、その間に発作がピークを迎えてしまうため、急性期治療としては役に立ちにくい。 本問では、選択肢を「急性期に使うものか、予防に使うものか、そもそも群発頭痛に有効か」という観点で振り分けると正解に到達できる。

選択肢考察

  1. ○a.  純酸素吸入

    100%酸素を非再呼吸式のフェイスマスクで毎分7〜15L程度、約15分間吸入させる方法で、群発頭痛発作に対する代表的な急性期治療である。発作の始まりからできるだけ早く開始するほど効果が高い。作用機序は完全には解明されていないが、脳血管の収縮、三叉神経終末からの神経ペプチド放出(神経原性炎症)の抑制、亢進した副交感神経活動の抑制などが考えられている。副作用がほとんどなく、心血管疾患などでトリプタンが使えない患者にも用いることができる点が利点である。なお、在宅酸素療法として自宅で使用することも保険適用で認められている。

  2. ×b.  NSAID内服

    NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)は片頭痛や緊張型頭痛の急性期治療には用いられるが、群発頭痛の発作には効果がほとんど期待できない。痛みが非常に強いうえ、内服薬は効き始めるまでに時間を要し、15〜180分で終わる発作に間に合わないためである。同じ理由で、トリプタンであっても内服薬は群発頭痛の急性期治療としては推奨されない。

  3. ×c.  バルプロ酸内服

    バルプロ酸は抗てんかん薬で、片頭痛の予防薬として用いられる。群発頭痛の予防に有効であったとする報告もあるが、根拠は限定的であり、いずれにしても発作を頓挫させる急性期治療薬ではない。群発頭痛の予防薬として第一に選ばれるのはカルシウム拮抗薬のベラパミルであり、ほかに副腎皮質ステロイド、炭酸リチウムなどが用いられる。

  4. ○d.  トリプタン皮下注

    トリプタンはセロトニン5-HT1B/1D受容体の作動薬である。5-HT1B受容体を介して拡張した頭蓋内血管を収縮させ、5-HT1D受容体を介して三叉神経終末からのCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチド放出を抑えることで、三叉神経血管系の活性化を鎮める。スマトリプタン3mgの皮下注射は投与後10〜15分程度で効果が現れ、群発頭痛発作に対して最も確実な急性期治療の一つである。患者自身が使える自己注射製剤もある。点鼻薬も選択肢になるが、内服薬は効果発現が遅く不向きである。虚血性心疾患・脳血管障害・コントロール不良の高血圧などでは血管収縮作用のため禁忌となる。

  5. ×e.  三環系抗うつ薬内服

    三環系抗うつ薬のアミトリプチリンは、片頭痛や緊張型頭痛の予防薬として用いられる薬剤である。群発頭痛の予防薬としての有効性は確立しておらず、まして発作中の痛みを速やかに止める作用はないため、急性期治療には該当しない。

群発頭痛の概要

・有病率は約0.1%(1,000人に1人程度)とされ、20〜40歳代の男性に多い(男女比はおおむね3〜7:1)。 ・片側の眼窩部・眼窩上部・側頭部に生じる激痛で、持続は15〜180分。頻度は2日に1回から1日8回程度まで。 ・同側の結膜充血、流涙、鼻漏・鼻閉、眼瞼浮腫、前額・顔面の発汗、縮瞳・眼瞼下垂などの自律神経症状を伴う。 ・片頭痛の患者が暗い部屋でじっとしていたがるのとは対照的に、群発頭痛の患者は落ち着かず歩き回ったり頭を抱えたりする(restlessness)。 ・一定期間(数週〜数か月)発作が集中する群発期と、発作のない寛解期を繰り返す反復性群発頭痛が多い。寛解期が3か月未満、あるいは1年以上寛解がないものは慢性群発頭痛とよぶ。 ・季節の変わり目に群発期が始まりやすい。群発期にはアルコール、喫煙、気圧の急変(飛行機搭乗など)、不規則な睡眠が誘因となるため、これらを避けるよう指導する。 ・病態には視床下部の機能異常(概日リズムとの関連)と三叉神経・自律神経反射の活性化が関与すると考えられている。

治療の整理

・急性期:純酸素吸入(100%、7〜15L/分、約15分)、スマトリプタン皮下注(3mg)、ゾルミトリプタン・スマトリプタン点鼻 ・予防:ベラパミル(第一選択)、副腎皮質ステロイド(群発期の短期導入)、炭酸リチウム、抗CGRP抗体(ガルカネズマブ;海外で反復性群発頭痛に承認)など ・生活指導:群発期の飲酒・喫煙回避

片頭痛との対比

片頭痛の急性期にはNSAIDやトリプタン内服が有効で、予防にはバルプロ酸、プロプラノロール、アミトリプチリン、ロメリジン、抗CGRP関連抗体などを用いる。群発頭痛では内服の鎮痛薬が無効である点が大きな違いである。

POINT

・群発頭痛の急性期治療は「純酸素吸入」と「トリプタン皮下注(または点鼻)」。 ・内服薬(NSAID、トリプタン内服)は効果発現が遅く、短時間の激しい発作には間に合わない。 ・予防の第一選択はベラパミル。バルプロ酸・三環系抗うつ薬は主に片頭痛の予防薬。 ・20〜40歳代男性、片側の眼窩部の激痛+同側の自律神経症状、夜間発作、群発期の存在が特徴。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。