「話す・聞く・食べる」の専門家―脳梗塞リハビリで言語聴覚士が担う役割
第114回医師国家試験 E問題 第23問
国試問題にチャレンジ
脳梗塞で入院した患者に対し,言語聴覚士が評価を行うのはどれか。
- a.見当識
- b.嚥下機能
- c.巧緻運動
- d.四肢筋力
- e.心理状態
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
言語聴覚士は言語聴覚士法に基づく国家資格で、失語症・構音障害・聴覚障害に加え、医師・歯科医師の指示の下で摂食・嚥下障害の評価と訓練を担う「話す・聞く・食べる」の専門職です。脳梗塞では球麻痺や偽性球麻痺による嚥下障害が多く、誤嚥性肺炎や低栄養を防ぐため、反復唾液嚥下テストや改訂水飲みテストで早期に評価し、必要に応じて嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を行います。四肢筋力や基本動作は主に理学療法士、手指の巧緻運動や日常生活動作は主に作業療法士が担当し、見当識や心理状態の評価は主に医師が中心となります。むせのない不顕性誤嚥もあるため、症状の有無にかかわらず評価が欠かせません。各職種の専門性を正しく理解することは、多職種連携によるリハビリテーションを円滑に進めるための基本です。
解答・解説
正解はbです
問われていること
リハビリテーションに関わる職種(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)が、それぞれどの機能を専門として評価・訓練するかを問う問題である。
言語聴覚士の業務
言語聴覚士(ST:speech-language-hearing therapist)は言語聴覚士法に基づく国家資格で、音声機能・言語機能・聴覚に障害のある人に対し、機能の維持向上を図るための言語訓練その他の訓練、それに必要な検査、助言・指導などを行う。さらに同法では、医師または歯科医師の指示の下で、診療の補助として嚥下訓練や人工内耳の調整などを行うことが認められている。すなわち言語聴覚士の専門領域は「話す・聞く・食べる(飲み込む)」にかかわる機能である。
脳梗塞患者で言語聴覚士が担う評価
脳梗塞では、失語症(言語中枢の障害による「話す・聞く・読む・書く」の障害)、構音障害(発声・発音にかかわる筋の麻痺や協調障害)、そして嚥下障害が高頻度にみられる。とくに急性期の嚥下障害は誤嚥性肺炎の原因となり予後を左右するため、早期に嚥下機能を評価し、食事形態の選択や嚥下訓練につなげることが重要である。したがって、選択肢の中で言語聴覚士が評価を行うのは嚥下機能である。
他職種との役割分担
四肢筋力や起居・歩行などの基本動作は主に理学療法士(PT)、手指の巧緻運動や日常生活動作(ADL)は主に作業療法士(OT)が評価・訓練を担う。見当識(意識・認知の評価)や心理状態の評価は医師が中心となり、看護師や公認心理師などが関与する。
選択肢考察
- ×a. 見当識
見当識とは、時間・場所・人物など自分が置かれている状況を正しく認識できているかどうかをいう。意識障害や認知機能障害の評価項目であり、Japan Coma Scale(JCS)やGlasgow Coma Scale(GCS)での意識レベル判定の一部として、主に医師や看護師が日常的に評価する。言語聴覚士も失語症などの高次脳機能評価の過程で認知機能に触れることはあるが、見当識の評価は言語聴覚士に特有の業務ではない。
- ○b. 嚥下機能
言語聴覚士法では、言語聴覚士が医師・歯科医師の指示の下で嚥下訓練を行うことが認められており、摂食・嚥下機能の評価と訓練は言語聴覚士の中心的な業務の一つである。脳梗塞では球麻痺・偽性球麻痺などにより嚥下障害が起こりやすく、誤嚥性肺炎や窒息、低栄養の原因となるため、入院早期に反復唾液嚥下テストや改訂水飲みテストなどで評価し、経口摂取の可否や食事形態を判断する。
- ×c. 巧緻運動
巧緻運動とは、ボタンをかける、箸を使う、字を書くといった手指の細かく協調した運動をいう。運動麻痺のほか、小脳障害などによる運動失調でも障害される。巧緻運動の評価や、それを含む日常生活動作(ADL)の訓練は主に作業療法士が担当する。
- ×d. 四肢筋力
四肢筋力は徒手筋力テスト(MMT:manual muscle testing、0〜5の6段階)などで評価する。医師が診察時に評価するほか、筋力増強訓練や起居・移乗・歩行などの基本動作訓練とあわせて主に理学療法士が評価する。言語聴覚士の業務ではない。
- ×e. 心理状態
脳卒中後には抑うつ(脳卒中後うつ)や不安が生じやすく、心理状態の評価はリハビリテーションの進行にも影響するため重要である。しかし、その評価は主に医師(精神科医を含む)が行い、公認心理師や看護師などが関与する。言語聴覚士の専門領域とは直接関係しない。
リハビリテーション関連職種の主な役割
・理学療法士(PT):起き上がり・立ち上がり・歩行などの基本動作能力の回復を目的に、運動療法や物理療法(温熱・電気など)を行う。筋力、関節可動域、バランスなどを評価する。 ・作業療法士(OT):食事・更衣・整容などの応用的動作や、手芸・工作などの作業を通じて、身体・精神機能や社会適応能力の回復を図る。手指の巧緻性やADLを評価する。 ・言語聴覚士(ST):失語症、構音障害、音声障害、聴覚障害、摂食・嚥下障害などの評価・訓練を行う。 ・視能訓練士(ORT):斜視・弱視の矯正訓練や、それに必要な眼科検査を行う。
摂食・嚥下機能の評価方法
1.スクリーニング検査(ベッドサイドで行える) ・反復唾液嚥下テスト(RSST):30秒間に空嚥下(唾液を飲み込む動作)が何回できるかを数える。2回以下で嚥下障害を疑う。 ・改訂水飲みテスト(MWST):冷水3mLを口腔内に入れて嚥下させ、嚥下の有無、むせ、呼吸の変化、湿性嗄声(ゴロゴロした声)の有無を観察して点数化する。 ・フードテスト:茶さじ1杯(約4g)のプリンなどを食べさせ、嚥下の有無、むせ、呼吸の変化に加えて、嚥下後の口腔内残留を確認する。 2.精密検査 ・嚥下造影検査(VF:videofluoroscopic examination of swallowing):造影剤を含む検査食をX線透視下で嚥下させ、口腔期から食道期までの動きや誤嚥の有無を観察する。 ・嚥下内視鏡検査(VE:videoendoscopic examination of swallowing):鼻から挿入した内視鏡で咽頭・喉頭を観察しながら、着色水や食物を嚥下させ、咽頭残留や誤嚥の有無を確認する。ベッドサイドで実施でき、被曝がない。
脳梗塞と嚥下障害
延髄の嚥下中枢や脳神経核が障害されると球麻痺、両側の皮質延髄路が障害されると偽性球麻痺となり、いずれも嚥下障害をきたす。誤嚥してもむせない不顕性誤嚥もあるため、症状がなくても評価が必要である。
POINT
・言語聴覚士(ST)は「話す・聞く・食べる(飲み込む)」の専門職であり、失語症・構音障害・聴覚障害・摂食嚥下障害を評価・訓練する。 ・嚥下訓練は言語聴覚士法で診療の補助として認められた業務である。 ・四肢筋力・基本動作は理学療法士(PT)、巧緻運動・ADLは作業療法士(OT)が主に担当する。 ・嚥下スクリーニング:反復唾液嚥下テスト(30秒で2回以下が異常)、改訂水飲みテスト(冷水3mL)、フードテスト。精密検査は嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査。
