石が詰まる3つの関所と、精子が合流する丘―「発生」と「左右差」で解く泌尿生殖器の解剖
第114回医師国家試験 D問題 第13問
国試問題にチャレンジ
泌尿生殖器の解剖で正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.尿膜管は膀胱三角部に開口する。
- b.射精管は前立腺部尿道に開口する。
- c.右副腎静脈は右腎静脈に流入する。
- d.精巣動脈は内腸骨動脈から分枝する。
- e.尿管には3か所の生理的狭窄部位がある。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
尿管には腎盂尿管移行部、総腸骨動脈(外腸骨動脈)との交叉部、尿管膀胱移行部の3か所の生理的狭窄があり、最狭部の尿管膀胱移行部は結石の嵌頓好発部位です。射精管は精管と精嚢の導管が合流したもので、前立腺を貫いて前立腺部尿道後壁の精丘に開口します。一方、膀胱三角に開口するのは尿管で、尿膜管は膀胱頂部から臍へ向かい正中臍索となります。副腎静脈・性腺静脈は「右は下大静脈へ直接、左は左腎静脈へ」流入し、精巣動脈は胎生期の精巣下降を反映して腎動脈直下の腹大動脈から分枝します。発生の経緯と下大静脈の位置による左右差を理解しておくと、副腎静脈サンプリングの難しさや左精索静脈瘤の多さなど、臨床での現象まで筋道立てて説明できるようになります。
解答・解説
正解はb, eです
泌尿生殖器の基本的な解剖学的構造を問う問題である。腎・尿管・膀胱・尿道という尿路の走行と狭窄部位、男性生殖路(精管→射精管→尿道)の合流部位、副腎や精巣を栄養・還流する血管の起始と流入先、胎生期遺残構造である尿膜管の位置、という複数の領域の知識が必要となる。 考え方の要点は以下の通りである。 ・血管の左右差:副腎静脈と性腺静脈(精巣静脈・卵巣静脈)は、右は下大静脈に直接、左は左腎静脈に流入する。これは下大静脈が体の右側を走行するためである。 ・性腺の血管の起始:精巣は胎生期に腎の近く(後腹膜の高位)で発生し、のちに陰嚢へ下降する。そのため精巣動脈は腎動脈のすぐ下の高さで腹大動脈から直接起こる。 ・膀胱の部位:膀胱の上端(頂部・膀胱尖)には尿膜管の遺残(正中臍索)が付着し、膀胱底の後下部にある膀胱三角には左右の尿管口と内尿道口が位置する。 ・尿管の生理的狭窄:腎盂尿管移行部、総腸骨動脈(外腸骨動脈)との交叉部、尿管膀胱移行部の3か所で、結石が嵌頓しやすい。 これらを踏まえると、射精管の開口部位と尿管の生理的狭窄に関する記述が正しい。
選択肢考察
- ×a. 尿膜管は膀胱三角部に開口する。
誤り。尿膜管(urachus)は胎生期に尿膜(尿嚢)と膀胱の原基をつなぐ管で、膀胱の頂部(膀胱尖)から臍へ向かって前腹壁の内側を上行する。通常は出生前後に閉鎖して線維性の索状物である正中臍索となる。閉鎖が不完全だと尿膜管開存(臍からの尿漏出)、尿膜管嚢胞、尿膜管洞などが生じ、また遺残上皮から膀胱頂部に尿膜管癌(多くは腺癌)が発生しうる。膀胱三角部に開口するのは左右の尿管であり、三角の頂点には内尿道口がある。
- ○b. 射精管は前立腺部尿道に開口する。
正しい。精管は精管膨大部となった後、精嚢の導管と合流して射精管となる。左右の射精管は前立腺の後上方から前立腺実質内を斜めに貫き、前立腺部尿道後壁の隆起である精丘(verumontanum)に開口する。精丘の正中には前立腺小室(ミュラー管の遺残)が開き、その両脇に射精管口が位置する。また前立腺の導管も精丘周囲の前立腺部尿道に開口する。
- ×c. 右副腎静脈は右腎静脈に流入する。
誤り。右副腎静脈は短く、下大静脈の後面に直接流入する。左腎静脈に流入するのは左副腎静脈である(左下横隔静脈と合流してから左腎静脈に入ることが多い)。右副腎静脈は極めて短いため、副腎静脈サンプリング(原発性アルドステロン症の局在診断)でのカテーテル挿入や、右副腎摘除術での処理が左に比べ難しいという臨床的意義がある。なお性腺静脈も同様に、右は下大静脈、左は左腎静脈に流入する。
- ×d. 精巣動脈は内腸骨動脈から分枝する。
誤り。精巣動脈は腎動脈起始部のやや下方(およそ第2腰椎の高さ)で腹大動脈の前面から左右1本ずつ分枝する。精巣が胎生期に腎の近くで発生し、陰嚢へ下降する際に血管を引き連れていくため、起始部が高位にある。精巣動脈は後腹膜を下行し、深鼠径輪から精索内に入って精巣に至る。内腸骨動脈は膀胱・前立腺・直腸下部・殿部などの骨盤内臓器や骨盤壁を栄養し、その枝の下膀胱動脈から精管動脈が出るが、精巣の主たる栄養血管ではない。
- ○e. 尿管には3か所の生理的狭窄部位がある。
正しい。尿管の生理的狭窄部位は、①腎盂尿管移行部、②総腸骨動脈(あるいは外腸骨動脈)と交叉する部位、③尿管膀胱移行部(膀胱壁を斜めに貫く壁内尿管部)の3か所である。このうち尿管膀胱移行部が最も狭く、尿管結石が嵌頓しやすい好発部位となる。結石の嵌頓部位によって疼痛の放散部位が異なり、下部尿管結石では下腹部・鼠径部・陰嚢(陰唇)への放散痛や膀胱刺激症状がみられることがある。
膀胱の区分と開口部
・膀胱頂部(膀胱尖):尿膜管の遺残である正中臍索が付着し、臍へ連なる。 ・膀胱体部:膀胱の主体部分。 ・膀胱底部(後下部):膀胱三角がある。左右の尿管口と内尿道口を結んだ三角形の領域で、他の部位と異なり粘膜が筋層に密着しヒダを作らない。
男性生殖路
精巣(精子形成)→精巣上体(精子の成熟・貯蔵)→精管(精索内を通り鼠径管を経て骨盤内へ)→精管膨大部→精嚢の導管と合流して射精管→前立腺を貫き精丘に開口→前立腺部尿道→膜様部尿道→海綿体部尿道。
左右差のある静脈還流
・右副腎静脈・右性腺静脈:下大静脈に直接流入。 ・左副腎静脈・左性腺静脈:左腎静脈に流入。 ・左腎静脈は腹大動脈と上腸間膜動脈の間を通って下大静脈に入るため、ここで圧迫されるとナットクラッカー現象(血尿、左精索静脈瘤など)が起こる。精索静脈瘤が左側に多いのは、左精巣静脈が左腎静脈に直角に流入し還流抵抗が高いことも一因である。
発生学的背景
膀胱と尿道の大部分は総排泄腔由来の尿生殖洞(内胚葉)から生じる。一方、膀胱三角と前立腺部尿道の後壁の一部は中胚葉性の中腎管(ウォルフ管)が取り込まれて形成され、のちに内胚葉性上皮に置き換わる。中腎管からは精管・精嚢・射精管・精巣上体が生じ、中腎管から出芽した尿管芽が尿管・腎盂・腎杯・集合管となる。
尿膜管遺残の病態
・尿膜管開存:臍からの尿漏出。 ・尿膜管洞:臍側のみ開存。 ・尿膜管憩室:膀胱側のみ開存。 ・尿膜管嚢胞:中間部が嚢胞化し、感染すると臍周囲の膿瘍となる。 ・尿膜管癌:膀胱頂部に発生する腺癌が多い。
POINT
・尿管の生理的狭窄は3か所:腎盂尿管移行部、腸骨動脈交叉部、尿管膀胱移行部(最狭部)。尿管結石の嵌頓好発部位である。 ・射精管(精管+精嚢の導管)は前立腺を貫き、前立腺部尿道後壁の精丘に開口する。 ・副腎静脈・性腺静脈は「右は下大静脈、左は左腎静脈」へ流入する。 ・精巣動脈は腹大動脈から直接分枝する(腎動脈のすぐ下)。 ・尿膜管は膀胱頂部から臍へ向かい、閉鎖後は正中臍索となる。膀胱三角部に開口するのは尿管である。
