StudyMed医師国家試験

採血ひとつで腎機能を推し量る―eGFRの式に入る3つの数字

第114回医師国家試験 A問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第114回 A問題 第15問

成人の推算糸球体濾過量〈eGFR〉の計算に必要な項目はどれか。3つ選べ。

  1. a.年齢
  2. b.性別
  3. c.尿量
  4. d.尿蛋白量
  5. e.血清クレアチニン値

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、日常診療で毎日のように目にするeGFRが何から計算されているかを問う問題だ。式を丸暗記するより、なぜその項目が入っているのかを理解すると忘れにくい。まず、そもそもGFRを正確に測るにはどうすればいいか覚えているかな。
医学生医学生
イヌリンクリアランスがゴールドスタンダードだと腎生理の講義で習いました。イヌリンは糸球体で自由に濾過されて、再吸収も分泌もされないからですよね。
ドクタードクター
その通り。ただイヌリンクリアランスは持続点滴や時間を決めた採尿が必要で、外来で毎回やるのは現実的ではない。そこで、採血だけで分かる血清クレアチニン値からGFRを推し量ろうというのがeGFRだ。日本人成人向けの式では、血清クレアチニン値、年齢、性別の3つを使う。
医学生医学生
クレアチニンは筋肉でできる老廃物で、腎臓から出ていくから、腎機能が落ちると血中濃度が上がる、という理屈ですね。でも年齢と性別はなぜ必要なんでしょう。
ドクタードクター
そこがポイントだ。クレアチニンは筋肉量に比例して作られるから、筋肉の少ない人は腎機能が悪くても血清クレアチニンがあまり上がらない。加齢で筋肉量は減るし、女性は一般に男性より筋肉量が少ない。その差を近似的に補正するために、年齢と性別が式に組み込まれているんだ。
医学生医学生
だから同じクレアチニン値でも、高齢の人や女性のほうがeGFRは低く出るんですね。
ドクタードクター
そう。式では年齢がマイナスの指数で入っていて、女性は男性の値に0.739を掛ける。同じ0.9 mg/dLでも、20代の男性と80代の女性では意味がまったく違うということだ。では尿量はどうだろう。
医学生医学生
クレアチニンクリアランスを求めるときに蓄尿して尿量を測った気がします。eGFRにも必要かと迷いました。
ドクタードクター
いい混同ポイントだね。尿量が必要なのは、24時間蓄尿で実測クレアチニンクリアランスを出すときだ。尿中クレアチニン濃度×尿量÷血清クレアチニン濃度で計算する。eGFRは採尿なしで出せるのが最大の利点だから、尿量は式に入らない。
医学生医学生
尿蛋白量も、腎臓の評価では必ず見るので入っていそうに思えました。
ドクタードクター
臨床ではとても大事な項目だけれど、eGFRの計算式には含まれない。尿蛋白はeGFRとは独立した腎予後・心血管予後の因子で、CKDの重症度分類ではGFR区分とは別に蛋白尿区分として評価するんだ。
医学生医学生
原因、GFR、蛋白尿を組み合わせるCGA分類ですね。腎臓内科の実習でカンファレンスのたびに聞いていました。
ドクタードクター
そう、eGFRと蛋白尿を両方見て初めてCKDの重症度が分かる。だから正解は血清クレアチニン値、年齢、性別の3つだ。ちなみに体重や身長も式には入っていない。結果はmL/分/1.73m²、つまり標準体表面積あたりの値で示される。
医学生医学生
Cockcroft-Gaultの式には体重が入っていましたよね。あれとは別物なんですか。
ドクタードクター
よく覚えているね。Cockcroft-Gault式は蓄尿せずにクレアチニンクリアランスを推定する式で、体重が入り、体表面積の補正もされていない。薬剤の投与量調整で使われることがある。eGFRで薬の量を決めるときも、小柄な人や大柄な人では体表面積補正を外した値に換算する必要があるんだ。
医学生医学生
筋肉量で補正しているといっても、年齢と性別だけでは限界がありそうです。
ドクタードクター
鋭い指摘だ。筋肉量が多い人ではeGFRが過小評価され、四肢切断や長期臥床、サルコペニアなど筋肉が極端に少ない人では過大評価される。そういうときは、筋肉量の影響を受けにくいシスタチンCを使ったeGFRcysが役立つ。もう一つ大事なのは、急性腎障害のように腎機能が急に変化している時期には血清クレアチニンが平衡に達していないので、eGFRは実際のGFRを正しく反映しないという点だ。
医学生医学生
クレアチニンが上がりきる前は、eGFRがまだ良さそうに見えてしまうということですね。この式は小児にも使えますか。
ドクタードクター
この式は18歳以上の成人が対象で、小児には別の評価法を使う。数字だけを見て安心せず、その人の体格や経過と合わせて解釈することが大切だよ。

まとめ

日本人成人のeGFRは、血清クレアチニン値、年齢、性別の3項目から算出され、単位はmL/分/1.73m²の体表面積補正値です。クレアチニンは筋肉で産生されるため、筋肉量の違いを近似的に補正する目的で年齢と性別が式に組み込まれており、尿量や尿蛋白量、体重は含まれません。尿量は蓄尿による実測クレアチニンクリアランスに、体重はCockcroft-Gault式に必要な項目であり、尿蛋白はeGFRとは独立した予後因子としてCKD重症度分類の蛋白尿区分で評価します。筋肉量が極端に多い・少ない場合はシスタチンCによるeGFRcysが有用で、急性腎障害の時期にはeGFRが真のGFRを反映しない点にも注意が必要です。式の成り立ちを理解しておくと、腎機能の評価や薬剤投与量の調整で数字を適切に解釈できるようになります。

解答・解説

正解はa, b, eです

糸球体濾過量(GFR: glomerular filtration rate)は腎機能を最もよく表す指標であるが、イヌリンクリアランスなどで実測するには持続点滴や時間を決めた採尿が必要で、日常診療で繰り返し行うのは難しい。そこで、採血だけで得られる血清クレアチニン(Cr)値に、年齢と性別を組み合わせた推算式でGFRを推定したものが推算糸球体濾過量(eGFR: estimated GFR)である。 日本腎臓学会が日本人向けに作成した成人の推算式は次のとおりである。 eGFRcreat(mL/分/1.73m²)=194 × 血清Cr^(−1.094) × 年齢^(−0.287) 女性の場合はこれに0.739を掛ける。 この式に入るのは「血清Cr値」「年齢」「性別」の3項目だけである。血清Crは筋肉で産生される老廃物で、主に糸球体で濾過されて排泄されるため、GFRが低下すると血中濃度が上がる。ただし血清Crは筋肉量の影響を受けるので、筋肉量の違いを近似的に補正する目的で年齢(加齢で筋肉量が減る)と性別(女性は一般に筋肉量が少ない)が式に組み込まれている。体重・身長は式に含まれず、結果は標準体表面積1.73m²あたりの値として示される。 したがって、採尿を必要とする尿量や尿蛋白量はeGFRの計算には用いない。正解はa(年齢)、b(性別)、e(血清クレアチニン値)である。

選択肢考察

  1. ○a.  年齢

    必要である。推算式には年齢が指数(−0.287乗)として入っており、同じ血清Cr値でも高齢であるほどeGFRは低く算出される。加齢に伴う筋肉量減少によってCr産生量が減り、血清Cr値が腎機能の割に低めに出ることを補正する意味がある。

  2. ○b.  性別

    必要である。女性では男性用の式で得た値に係数0.739を掛ける。女性は一般に筋肉量が少なくCr産生量も少ないため、同じ血清Cr値であれば女性の方が腎機能は低いと推定される。

  3. ×c.  尿量

    不要である。尿量は、24時間蓄尿で実測クレアチニンクリアランス(Ccr)を求める場合に必要な項目である(Ccr=尿中Cr濃度×尿量÷血清Cr濃度)。eGFRは採血のみで算出できる点が利点であり、尿量は式に含まれない。

  4. ×d.  尿蛋白量

    不要である。尿蛋白(またはアルブミン尿)はeGFRとは独立した腎予後・心血管予後の規定因子で、慢性腎臓病(CKD)の重症度分類ではGFR区分(G)と並ぶ蛋白尿区分(A)として別に評価される。eGFRの計算式そのものには含まれない。

  5. ○e.  血清クレアチニン値

    必要である。eGFR(eGFRcreat)の基本となる項目である。Crは筋肉中のクレアチンから一定の速度で生じ、主に糸球体で濾過されて尿中へ排泄されるため、GFRが低下すると血清Cr値は上昇する。式では血清Cr値の−1.094乗が用いられ、Cr値が高いほどeGFRは低くなる。

GFRの評価法の整理

・イヌリンクリアランス:イヌリンは糸球体で自由に濾過され、尿細管で再吸収も分泌もされないため、GFR測定の基準(ゴールドスタンダード)とされる。 ・実測クレアチニンクリアランス(Ccr):24時間蓄尿などで尿中Cr濃度と尿量を測定して求める。Crは糸球体濾過に加えて近位尿細管からも一部分泌されるため、CcrはGFRを過大評価する。腎機能が低下するほど分泌の占める割合が増え、過大評価の程度は大きくなる。GFRの目安としてCcrに0.715(約0.7)を掛けることがある。 ・Cockcroft-Gault式:蓄尿せずにCcrを推定する式で、推定Ccr(mL/分)=(140-年齢)×体重(kg)÷(72×血清Cr)、女性では×0.85とする。体重が入り、体表面積補正はされていない。薬剤の投与量調整で用いられることがある。 ・eGFRcreat:本問の式。単位はmL/分/1.73m²で、標準体表面積に補正された値である。薬剤投与量を決める際など、患者個人の値が必要なときは体表面積補正を外した値(mL/分)に換算して用いる。 ・eGFRcys:血清シスタチンCを用いる推算式。シスタチンCはほぼすべての有核細胞で一定の速度で産生され、筋肉量の影響を受けにくい。四肢切断、長期臥床、るい痩、サルコペニアなど筋肉量が極端に少ない人や、逆に筋肉量の多い人ではeGFRcreatの信頼性が下がるため、eGFRcysが有用である。必要に応じて両者の平均を用いることもある。

eGFRcreatの注意点

・筋肉量が多いと血清Crが高くなりeGFRは低く(過小評価)、筋肉量が少ないと血清Crが低くなりeGFRは高く(過大評価)算出される。 ・急性腎障害(AKI)のように腎機能が急速に変化している時期には、血清Crが平衡状態に達していないため、eGFRは実際のGFRを正しく反映しない。 ・本式は18歳以上の成人が対象であり、小児には別の評価法を用いる。

CKDの重症度分類

原因(Cause)、腎機能(GFR区分:G1〜G5)、蛋白尿(A1〜A3:糖尿病では尿アルブミン、それ以外では尿蛋白で評価)を組み合わせたCGA分類で評価する。eGFRと蛋白尿はそれぞれ独立した予後因子であるため、両方を併せて評価することが重要である。

POINT

・日本人成人のeGFR=194×血清Cr^(−1.094)×年齢^(−0.287)(女性は×0.739) ・必要なのは「血清クレアチニン値・年齢・性別」の3項目。尿検査も体重も不要 ・単位はmL/分/1.73m²(体表面積補正値) ・尿量は実測Ccrに、体重はCockcroft-Gault式に必要 ・尿蛋白はeGFRとは独立した予後因子で、CKD重症度分類のA区分として別に評価する ・筋肉量の影響を受けにくい指標としてシスタチンCによるeGFRcysがある

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。