StudyMed医師国家試験

青く見えるしみは「深い」―太田母斑と真皮メラノサイトーシスで整理する色素斑

第113回医師国家試験 D問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第113回 D問題 第3問

真皮メラノサイトが増生しているのはどれか。

  1. a.太田母斑
  2. b.表皮母斑
  3. c.扁平母斑
  4. d.色素性蕁麻疹
  5. e.café au lait斑

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は色素斑を「どの層で」「何が」増えているかで整理する問題だ。ポイントは、肉眼で見える色調と、組織学的な病変の深さを結びつけて考えること。まず基本から確認しよう。メラノサイトは正常ではどこにいるかな。
医学生医学生
表皮の基底層ですよね。組織学実習で、基底層に明るく抜けた細胞として散らばっているのを見ました。
ドクタードクター
その通り。だから色素斑は大きく2つに分けられる。1つは、メラノサイトの数はほぼ正常のまま、基底層の角化細胞に含まれるメラニンが増えるタイプ。もう1つは、本来いないはずの真皮にメラノサイトが存在・増生するタイプだ。
医学生医学生
真皮にメラノサイトがいるのは、どうしてなんでしょうか。
ドクタードクター
メラノサイトは胎生期に神経堤から表皮へ移動してくる。その途中で真皮にとどまってしまったものが真皮メラノサイトーシスだ。そして、ここが色調とつながる大事なところで、深い位置にあるメラニンは短波長の青い光を散乱しやすい。いわゆるチンダル現象で、皮膚の表面からは青色〜灰青色に見えるんだ。
医学生医学生
蒙古斑が青いのも同じ理由ですね。小児科実習で、赤ちゃんのお尻の青いあざを見せてもらいました。
ドクタードクター
まさにそれが代表例。では選択肢の中で、青みを帯びた色素斑はどれだと思う?
医学生医学生
太田母斑です。顔の片側に出る、青っぽいあざだったと思います。
ドクタードクター
正解。太田母斑は三叉神経第1・第2枝の領域、つまり眼瞼周囲や頬、前額などに片側性に生じる褐青色〜灰青色の色素斑だ。組織では真皮の上層から中層に、紡錘形のメラノサイトが膠原線維の間に散在している。比較的浅い層にもあるから、褐色と青色が混ざった色合いになる。白目、つまり強膜や口蓋粘膜に色素沈着を伴うこともあるよ。
医学生医学生
扁平母斑とカフェオレ斑も褐色のしみなので、メラノサイトが増えているのかと思っていました。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。どちらも表皮基底層のメラニンが増えているのが本態で、メラノサイトの数は正常かわずかに増える程度。真皮のメラノサイト増生はない。実は組織像は両者で同じで、神経線維腫症1型などの基礎疾患に伴うものをカフェオレ斑、単独のものを扁平母斑と呼び分けることが多いんだ。
医学生医学生
神経線維腫症1型では、カフェオレ斑の数と大きさが診断基準に入っていましたよね。
ドクタードクター
そう。思春期前なら最大径5mm以上、思春期以後なら15mm以上のものが6個以上、というのが診断基準の一項目だ。McCune-Albright症候群でも、境界が不整な大型のカフェオレ斑がみられる。では表皮母斑はどうかな。
医学生医学生
名前に「母斑」とありますが、メラノサイトではなく表皮そのものの病変でしょうか。
ドクタードクター
いい推論だ。表皮母斑は表皮の角化細胞が限局的に過形成を起こした過誤腫で、いぼ状の丘疹がBlaschko線に沿って線状に並ぶのが特徴。組織は乳頭腫状増殖と過角化で、メラノサイトが増えているわけではない。
医学生医学生
色素性蕁麻疹は、名前に「色素」とあるのでメラニン関係かと迷いました。
ドクタードクター
ひっかけポイントだね。色素性蕁麻疹は皮膚肥満細胞症の代表的な病型で、小児に多い。真皮に増えているのは肥満細胞で、病変をこするとヒスタミンなどが放出されて膨疹が出るDarier徴候が陽性になる。トルイジンブルー染色での異染性やc-kit(CD117)陽性で確認する。褐色に見えるのは基底層のメラニン増加によるもので、メラノサイトの増生ではないんだ。
医学生医学生
つまり、褐色は表皮の浅いところのメラニン、青色は真皮のメラノサイト、と色で深さを推定できるわけですね。
ドクタードクター
その通り。最後に臨床の話もしておこう。真皮メラノサイトーシスには、太田母斑のほかに蒙古斑、異所性蒙古斑、肩から上腕に出る伊藤母斑、成人女性の頬に両側性に出る後天性真皮メラノサイトーシス、真皮内で結節状に増える青色母斑がある。蒙古斑は多くが学童期までに自然消退するけれど、太田母斑は消えにくく、思春期に濃くなることもある。
医学生医学生
治療はレーザーですか。形成外科の見学で、Qスイッチレーザーの照射を見たことがあります。
ドクタードクター
そう、太田母斑の治療の第一選択はQスイッチレーザーで、よく反応する。一方で扁平母斑はレーザー後に再発しやすく、効果が一定しない。同じ「あざ」でも病変の深さと本態が違えば、経過も治療反応性も違う。病理と臨床がつながっていることを意識しておこう。

まとめ

色素斑は、表皮基底層のメラニンが増えるものと、真皮にメラノサイトが存在・増生するもの(真皮メラノサイトーシス)に大別できます。真皮の深い位置にあるメラニンはチンダル現象で青色〜灰青色に見えるため、三叉神経第1・2枝領域に片側性の褐青色斑を生じる太田母斑は真皮メラノサイトの増生を示す代表疾患です。扁平母斑とカフェオレ斑は基底層のメラニン増加で組織像は同じ、表皮母斑は角化細胞の過形成、色素性蕁麻疹は真皮の肥満細胞増殖(Darier徴候陽性)であり、いずれもメラノサイトの増生ではありません。太田母斑にはQスイッチレーザーが有効な一方、扁平母斑は再発しやすいなど、病変の深さは治療反応性にも直結します。「色調から深さを読む」視点は、色素性病変の診断と治療選択の基本となります。

解答・解説

正解はaです

問われていること

色素斑(茶色〜青色のしみ)を、病理組織学的に「どこで」「何が」増えているかで整理できるかを問う問題である。

考え方

メラノサイト(メラニン色素を産生する細胞)は、正常では表皮の基底層に散在している。色素性病変は大きく次の2つに分けて考えるとよい。 1. 表皮基底層のメラニン量が増えるもの:メラノサイトの数はほぼ正常で、産生されたメラニンが基底層の角化細胞に多く含まれる。肉眼では淡褐色〜褐色(茶色)に見える。扁平母斑、カフェオレ斑、雀卵斑(そばかす)などがこれにあたる。 2. 真皮内にメラノサイトが存在・増生するもの:胎生期に神経堤から表皮へ移動する途中のメラノサイトが真皮にとどまったもの(真皮メラノサイトーシス)。メラニンが皮膚の深い位置にあるため、光の散乱(チンダル現象)により青色〜灰青色に見える。太田母斑、異所性蒙古斑、伊藤母斑、青色母斑などがこれにあたる。 したがって「真皮メラノサイトの増生」という病理所見から、青色調の色素斑を選べばよい。選択肢の中でこれに該当するのは太田母斑である。肉眼の色調(褐色か青色か)と組織学的な病変の深さとを対応させて覚えることが、この分野を整理するうえで役立つ。

選択肢考察

  1. ○a.  太田母斑

    太田母斑は、三叉神経第1・第2枝の支配領域(眼瞼周囲、頬部、前額、鼻翼など)に片側性に生じる褐青色〜灰青色の色素斑である。組織学的には真皮の上層から中層にかけて、紡錘形の真皮メラノサイトが膠原線維の間に散在性に増えている。真皮の比較的浅い層にメラニンがあるため、褐色と青色が混在した色調になる。眼球結膜(強膜)や口蓋粘膜にも色素沈着を伴うことがある。自然消退は期待しにくく、Qスイッチレーザー(ルビー、アレキサンドライト、Nd:YAG)が治療の第一選択であり、よく反応する。真皮メラノサイトが増生する疾患であり、正しい。

  2. ×b.  表皮母斑

    表皮母斑は、表皮の角化細胞が先天的・限局的に過形成を起こす過誤腫(組織の構成成分が局所で過剰に増えたもの)である。出生時または幼児期から、褐色〜常色の疣状(いぼ状)丘疹が線状・帯状に配列することが多く、Blaschko線(胎生期の細胞移動の経路を示すとされる線)に沿う分布が特徴である。組織像は表皮の乳頭腫状増殖、表皮肥厚、過角化であり、色調が褐色にみえるのは基底層のメラニン増加による。真皮メラノサイトの増生はみられないため、誤りである。

  3. ×c.  扁平母斑

    扁平母斑は、境界明瞭で隆起しない均一な淡褐色〜褐色の色素斑である。組織学的には表皮基底層のメラニン色素が増加しているが、メラノサイトの数は正常かわずかな増加にとどまり、真皮内のメラノサイト増生はない。わが国では、神経線維腫症1型などの基礎疾患に伴うものをカフェオレ斑、単独で生じるものを扁平母斑と呼び分けることが多いが、組織像は同じである。表皮の病変であるため、誤りである。なお、思春期以降に肩などに生じ多毛を伴う遅発性扁平母斑(Becker母斑)も同様に基底層のメラニン増加を示す。

  4. ×d.  色素性蕁麻疹

    色素性蕁麻疹は、皮膚肥満細胞症(皮膚に肥満細胞がクローン性に増殖・集積する疾患)の代表的な病型で、小児に多い。褐色の斑や丘疹が多発し、病変部をこすると肥満細胞からヒスタミンなどが放出されて膨疹・発赤を生じる(Darier徴候陽性)。組織学的には真皮上層に肥満細胞が増えており、トルイジンブルー染色で異染性を示す顆粒やトリプターゼ・c-kit(CD117)陽性で確認される。色調が褐色なのは基底層のメラニン増加による。増えているのは肥満細胞であってメラノサイトではないため、誤りである。

  5. ×e.  café au lait斑

    カフェオレ斑は、ミルクコーヒー色の境界明瞭な扁平な色素斑で、組織学的には扁平母斑と同じく表皮基底層のメラニン色素が増加したものである。真皮メラノサイトの増生はないため、誤りである。臨床的には神経線維腫症1型(von Recklinghausen病)との関連が重要で、思春期前で最大径5mm以上、思春期以後で15mm以上のカフェオレ斑が6個以上あることが診断基準の一項目となっている。McCune-Albright症候群でも、境界が不整(「メイン州の海岸線」様)な大型のカフェオレ斑がみられる。

色素性病変の病変部位による整理

1. 表皮基底層のメラニン増加(褐色調) ・扁平母斑、カフェオレ斑:基底層のメラニン増加。メラノサイト数はほぼ正常。 ・雀卵斑(そばかす):日光露光部の小色素斑。紫外線で増悪する。 ・肝斑:中年女性の顔面に左右対称性に生じる。女性ホルモンや紫外線が関与する。 ・老人性色素斑(日光黒子):慢性的な紫外線曝露による。 2. 真皮メラノサイトーシス(青色〜灰青色調) ・蒙古斑:仙骨部・殿部に生じ、多くは学童期までに自然消退する。仙骨部以外に生じるものは異所性蒙古斑と呼ばれ、消えにくいものがある。 ・太田母斑:三叉神経第1・2枝領域。思春期に濃くなることがあり、自然消退しにくい。 ・伊藤母斑:肩峰・鎖骨上・上腕外側(後鎖骨上神経・外側上腕皮神経領域)に生じる。太田母斑と同様の組織像を示す。 ・後天性真皮メラノサイトーシス:成人女性の頬部などに両側性に生じる小斑。 ・青色母斑:真皮内の紡錘形メラノサイトが結節状に増生する青色の小結節。 3. 母斑細胞(メラノサイト系細胞)の増殖 ・色素細胞母斑(ほくろ):病変の位置により境界母斑(表皮真皮境界部)、複合母斑、真皮内母斑に分類される。

青く見える理由

真皮の深い位置にあるメラニンは、短波長の青色光を散乱しやすい(チンダル現象)ため、皮膚表面からは青色〜灰青色に見える。メラニンが浅いほど褐色、深いほど青色に近づく。

治療の目安

太田母斑、異所性蒙古斑などの真皮メラノサイトーシスにはQスイッチレーザーが有効である。一方、扁平母斑はレーザー治療後の再発が多く、効果が一定しない。

POINT

・真皮メラノサイトの増生(真皮メラノサイトーシス)を示すのは、太田母斑、蒙古斑、伊藤母斑、青色母斑など、青色〜灰青色調の色素斑である。 ・扁平母斑、カフェオレ斑は表皮基底層のメラニン増加であり、両者の組織像は同じである。 ・表皮母斑は表皮角化細胞の過形成(乳頭腫状増殖)で、Blaschko線に沿って配列する。 ・色素性蕁麻疹は真皮の肥満細胞の増殖であり、Darier徴候が陽性となる。 ・太田母斑の治療第一選択はQスイッチレーザーである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。