時計の文字盤が乱視を暴く―視力表に隠れた検査ツールを読み解く
第113回医師国家試験 D問題 第4問
国試問題にチャレンジ
視力表を別に示す。 視力検査において乱視の軸の決定に必要な部分はどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
視力表には、視力を測るLandolt環・ひらがな視標のほか、屈折矯正や眼位検査のための視標が組み込まれています。乱視は経線ごとに屈折力が異なる状態で、方向によって線の見え方が変わるため、放射状の線を時計の文字盤状に並べた乱視表で最も濃く見える線の方向を答えてもらい、乱視の軸を決定します(雲霧下で、時計の数字の小さい方×30がマイナス円柱レンズの軸の目安)。赤緑テストは色収差を利用した球面度数の過矯正・低矯正の確認、固視灯は眼位検査や赤ガラス試験の注視目標です。正乱視は円柱レンズで矯正できる一方、円錐角膜などの不正乱視にはハードコンタクトレンズが必要になります。各視標の原理と目的を理解しておくと、自覚的屈折検査の流れ全体を体系的に把握できます。
解答・解説
正解はeです
問われていること
視力検査室に掲示される視力表には、視力そのものを測る部分のほかに、屈折異常の矯正が適切かを確かめる部分や眼位検査に用いる部分などが組み込まれている。本問は、そのうち乱視の軸(乱視を矯正する円柱レンズの向き)を決めるのに使う部分を選ばせる問題である。
考え方
乱視とは、角膜や水晶体の屈折力が経線(方向)によって異なるため、一点に像を結ばない状態である。乱視眼では、ある方向の線ははっきり見え、それと異なる方向の線はぼやけて見える。この性質を利用し、放射状(時計の文字盤状)に多数の線を並べた乱視表を見せて、どの方向の線が濃く鮮明に見えるかを答えてもらえば、屈折力の強い経線・弱い経線の向き、すなわち乱視の軸を推定できる。 図の各部分は、①ひらがな視力表、②Landolt環視力表、③赤緑テスト、④固視灯、⑤放射状の線からなる乱視表である。放射状の線の配置をもつ⑤が乱視の軸の決定に用いられる。
選択肢考察
- ×a. ①
①はひらがな視力表である。Landolt環の切れ目の向きを答えるのが難しい幼児などで、ひらがなを読ませて視力を測定するのに用いる。視力とは、識別できる最小の視角(目と物体の両端を結ぶ2本の線がなす角度)を分単位で表したものの逆数である。視力の測定に用いる部分であり、乱視の軸の決定には用いないため誤りである。
- ×b. ②
②はLandolt環(ランドルト環)視力表で、わが国の視力検査の標準視標である。5mの距離で直径7.5mm、線の太さ1.5mm、切れ目の幅1.5mmのLandolt環の切れ目を判別できると、切れ目のなす視角は1分となり、その逆数から視力1.0とする。視力(最小分離閾)の測定に用いる部分であり、乱視の軸の決定には用いないため誤りである。
- ×c. ③
③は赤緑テスト(レッドグリーンテスト)である。眼の色収差(波長の短い緑の光は長い赤の光より手前で焦点を結ぶ性質)を利用して、赤と緑の背景上の視標のどちらが鮮明に見えるかを比べる。赤側が鮮明なら焦点が網膜より前にある(近視の低矯正)、緑側が鮮明なら焦点が網膜より後ろにある(近視の過矯正)と判断し、球面レンズによる矯正の過不足を確認するのに用いる。乱視の軸の決定には用いないため誤りである。
- ×d. ④
④は固視灯(固視点)である。眼位検査(遮閉試験など)や赤ガラス試験を行う際に、患者に注視させる目標として用いる。斜視や複視の評価に使う部分であり、乱視の軸の決定には用いないため誤りである。
- ○e. ⑤
⑤は放射状の線を時計の文字盤のように並べた乱視表である。乱視眼では、焦点が網膜に近い経線に対応する方向の線は濃く鮮明に、焦点が網膜から遠い経線に対応する方向の線は薄くぼやけて見える。どの方向の線が濃く見えるかを答えてもらうことで乱視の主経線の向き、すなわち乱視の軸を決定できる。実際には、まず凸レンズを加えて両方の焦点を網膜より前に置く雲霧法の状態で見せ、最も濃く見える線の時計の数字(小さい方)に30°を掛けた値を、矯正に用いるマイナス円柱レンズの軸の目安とする。乱視の軸の決定に必要な部分であり、正しい。
乱視の基礎
・正乱視:直交する2つの主経線で屈折力が異なるもの。円柱レンズで矯正できる。角膜の形状によるものが多い。 ・直乱視:垂直方向の経線の屈折力が強いもの。若年者に多い。 ・倒乱視:水平方向の経線の屈折力が強いもの。高齢者に多い。 ・斜乱視:主経線が斜め方向にあるもの。 ・不正乱視:円錐角膜や角膜瘢痕などで角膜表面が不整となり、主経線が直交しないもの。眼鏡では矯正できず、ハードコンタクトレンズが用いられる。
屈折検査の流れ(自覚的屈折検査)
1. 球面レンズで最良の視力が得られる度数を求める。 2. 雲霧法の状態で乱視表を見せ、乱視の有無と軸を調べる。 3. 軸の方向にマイナス円柱レンズを入れ、すべての線が均等に見えるまで度数を調整する。より精密にはクロスシリンダー法で軸と度数を微調整する。 4. 赤緑テストで球面度数の過矯正・低矯正を確認する。
他覚的検査
オートレフラクトメータや検影法(スキアスコピー)で屈折度を、ケラトメータで角膜の曲率(角膜乱視)を他覚的に測定できる。
視力の定義
視力=1/最小視角(分)。5mの距離で視角1分の切れ目を識別できれば視力1.0、視角2分なら0.5、視角10分なら0.1である。
POINT
・乱視の軸の決定には放射状の線からなる乱視表を用いる。濃く見える線の方向から主経線を判断する。 ・Landolt環・ひらがな視力表は視力の測定に用いる。5mで視角1分の切れ目が判別できれば視力1.0である。 ・赤緑テストは色収差を利用した球面度数の過矯正・低矯正の確認に用いる(赤が鮮明=近視低矯正、緑が鮮明=近視過矯正)。 ・固視灯は眼位検査や赤ガラス試験の注視目標である。
