StudyMed医師国家試験

直径およそ2.4cm―「24mm」が教えてくれる正視眼と屈折異常のしくみ

第120回医師国家試験 C問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第120回 C問題 第4問

成人眼球で正視の眼軸長に最も近いのはどれか。

  1. a.14mm
  2. b.24mm
  3. c.34mm
  4. d.44mm
  5. e.54mm

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、成人の正視眼の眼軸長を問う、一見シンプルな知識問題だ。ただ、この数字の背景には「眼の屈折力と長さのバランス」という屈折異常の本質が詰まっている。まず眼軸長が何を指すか、説明できるかな。
医学生医学生
角膜の頂点から網膜までの、眼球の前後方向の長さですよね。解剖学の講義で眼球模型を触ったのを思い出します。
ドクタードクター
その通り。正確には角膜頂点から中心窩付近の網膜までの距離だ。では正視とはどういう状態だったかな。
医学生医学生
調節を休ませた状態で、遠くからの平行光線がちょうど網膜上にピントを結ぶ状態です。
ドクタードクター
完璧だね。眼全体の屈折力は約60Dで、そのうち角膜が約43D、つまり約3分の2を担い、残りを主に水晶体が受け持つ。この屈折力で平行光線を曲げたとき、焦点がちょうど網膜に来る長さがおよそ24mmなんだ。だから答えは24mm。成人の眼球は直径約2.4cmの球とイメージしておくといい。
医学生医学生
思ったより小さいです。ピンポン玉が4cmなので、それよりひと回り小さいくらいですね。
ドクタードクター
いい比較だね。選択肢は10mm刻みだから、24mmを知っていればまず迷わない。ほかの値も検討しておこう。14mmはどうだろう。
医学生医学生
短すぎる気がします。赤ちゃんの眼ならそれくらいでしょうか。
ドクタードクター
惜しいけれど、新生児でも眼軸長は約17mmある。成人で14mmしかなければ、平行光線は網膜のはるか後方で結像して極めて強い遠視になる。小眼球症のような病的状態に相当する値だ。
医学生医学生
逆に34mmは長すぎて、強い近視になりますね。
ドクタードクター
そう。眼軸が長いと網膜の手前で結像する軸性近視になる。目安として眼軸長1mmの差は屈折にしておよそ3Dに相当するから、10mmもずれると極端な屈折異常だ。強度近視でもおおむね26〜30mm程度で、34mmは病的近視の中でもまれな値。44mmや54mmに至っては眼窩にも収まらず、ヒトの眼としてはありえない。
医学生医学生
1mmで3Dも変わるんですね。眼鏡の度数の違いが、眼球のわずかな長さの差で生まれていると考えると不思議です。
ドクタードクター
そこが面白いところだね。屈折異常には、眼軸長が原因の軸性と、角膜や水晶体の屈折力が原因の屈折性があり、日常よく見る近視の多くは軸性近視なんだ。では、新生児の約17mmから成人の約24mmになる過程で、屈折はどう変わると思う?
医学生医学生
眼軸が伸びるにつれて、遠視寄りから正視に近づいていくということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。これを正視化という。眼軸は学童期を通じて伸びて10代でほぼ成人の値に達し、基本的に短くなることはない。伸びすぎれば近視になるわけで、近年問題になっている学童期の近視増加も、本質は眼軸の過剰な伸長なんだ。
医学生医学生
臨床実習の眼科外来で、白内障手術の前に眼軸長を測っていたのを見ました。あれも関係がありますか。
ドクタードクター
大いにあるよ。眼内レンズの度数計算には眼軸長と角膜屈折力が欠かせない。測定は超音波Aモード法か、光干渉を利用した光学式眼軸長測定装置で行う。また、強度近視で眼軸が過度に伸びると網膜や脈絡膜が引き伸ばされ、近視性脈絡膜新生血管、網脈絡膜萎縮、網膜剝離、緑内障などのリスクが高まる。眼軸長は単なる数字ではなく、合併症リスクの指標でもあるんだ。
医学生医学生
24mmを基準に、長ければ近視、短ければ遠視、そして伸びすぎると病的近視の合併症にも注意、と整理しておきます。

まとめ

成人の正視眼の眼軸長は約24mmで、眼全体の屈折力約60D(うち角膜が約3分の2)で平行光線を曲げたとき、焦点がちょうど網膜に結ぶ長さに相当します。眼軸が長ければ網膜の前方で結像する軸性近視、短ければ後方で結像する軸性遠視となり、眼軸長1mmの差は屈折でおよそ3Dに相当します。新生児の眼軸長は約17mmで遠視寄りですが、成長とともに眼軸が伸びて正視化し、伸びすぎると近視となり、強度近視(26〜30mm程度)では網膜剝離や近視性脈絡膜新生血管などの合併症リスクが高まります。眼軸長は白内障手術の眼内レンズ度数計算にも必須の値であり、「24mm」という基準を軸に屈折異常のしくみを理解しておくことが、眼科臨床の土台になります。

解答・解説

正解はbです

問われていること

眼軸長(がんじくちょう)とは、角膜の頂点から網膜(中心窩付近)までの、眼球の前後方向の長さである。眼の屈折状態(正視・近視・遠視)は、角膜と水晶体がもつ屈折力と、この眼軸長とのバランスで決まる。

正視とは

調節(ピント合わせ)を休ませた状態で、無限遠から来る平行光線がちょうど網膜上に焦点を結ぶ状態を正視という。成人の眼全体の屈折力は約60D(ジオプトリー、焦点距離の逆数でメートル単位)であり、これに見合う眼軸長がおよそ24mmである。つまり「成人の眼球は直径約2.4cmの球」とイメージしておけばよい。

考え方

選択肢は10mm刻みで並んでおり、24mmを知っていれば迷わない。眼軸長が1mm変化すると屈折はおよそ3D変化するため、10mmずれた眼は正視どころか極端な屈折異常となり、現実的な数値ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  14mm

    短すぎる。新生児の眼軸長でも約17mmあり、14mmは成人正視眼の値としてありえない。成人でこれほど眼軸が短ければ、平行光線は網膜よりはるか後方に結像し、極めて強い遠視となる(小眼球症などの病的状態に相当する)。

  2. ○b.  24mm

    成人の正視眼の眼軸長は約24mmであり、これが最も近い。角膜(約43D)と水晶体(約20D前後)を合わせた眼全体の屈折力約60Dで平行光線を屈折させたとき、焦点がちょうど網膜上に来る長さがこの程度である。

  3. ×c.  34mm

    長すぎる。眼軸長が正視眼より長いと平行光線は網膜の手前で結像し、軸性近視となる。強度近視眼でも眼軸長はおおむね26〜30mm程度であり、34mmは病的近視の中でもまれな極端な値で、正視眼の値ではない。

  4. ×d.  44mm

    ヒトの眼球の大きさとしては非現実的な値である。正視眼の約24mmより20mmも長く、眼窩(眼球を収める骨のくぼみ)にも収まらない大きさである。

  5. ×e.  54mm

    正視眼の2倍以上の長さであり、ヒトの眼軸長としてありえない。

眼軸長と屈折異常

・眼軸が長い(例: 26mm)→ 平行光線が網膜の前方で結像 → 近視(軸性近視) ・眼軸が短い(例: 22mm)→ 平行光線が網膜の後方で結像 → 遠視(軸性遠視) ・目安として、眼軸長1mmの差は屈折にしておよそ3Dの差に相当する。 ・屈折異常には、眼軸長の異常による「軸性」と、角膜や水晶体の屈折力の異常による「屈折性」がある。日常的にみられる近視の多くは軸性近視である。

眼軸長の発達

・新生児の眼軸長は約17mmと短く、そのため新生児・乳児は遠視寄りである。 ・成長とともに眼軸は伸長し(短縮することはない)、学童期を通じて伸び、10代でほぼ成人の値に達する。この過程で遠視が減り正視に近づくことを正視化という。 ・眼軸が伸びすぎると近視となる。近年、学童期の近視の増加が問題となっており、近視進行の本質は眼軸長の過剰な伸長である。

強度近視・病的近視

・強度近視では眼軸長がおおむね26〜27mm以上、30mm前後に達することもある。 ・眼軸が過度に伸びると網膜・脈絡膜が引き伸ばされ、近視性脈絡膜新生血管、網脈絡膜萎縮、網膜剝離、緑内障などの合併症のリスクが高まる(病的近視)。

眼軸長の測定

・超音波Aモード法、または光干渉法による光学式眼軸長測定装置で測定する。 ・白内障手術で挿入する眼内レンズの度数計算には、眼軸長と角膜屈折力が必須である。

POINT

・成人正視眼の眼軸長は約24mm。 ・新生児は約17mmで遠視寄り、成長に伴い眼軸が伸びて正視化する。 ・眼軸が長い→近視、短い→遠視。眼軸長1mmで屈折はおよそ3D変化する。 ・強度近視では眼軸長が26〜30mm程度に延長し、病的近視の合併症リスクが上がる。 ・眼全体の屈折力は約60Dで、そのうち角膜が約2/3を担う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。