StudyMed医師国家試験

喉頭は「噛まない」―気道と食道の分岐点が担う3つの仕事

第112回医師国家試験 F問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第112回 F問題 第22問

喉頭の機能として誤っているのはどれか。

  1. a.嚥下
  2. b.構音
  3. c.呼吸
  4. d.咀嚼
  5. e.発声

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、喉頭の機能として誤っているものを選ぶ問題だ。喉頭が首のどこにあって、何と何の境目に位置するかを思い浮かべれば、自然に答えが見えてくるよ。まず、喉頭の位置を確認しておこう。
医学生医学生
解剖実習では、甲状軟骨や輪状軟骨に囲まれた部分で、上は咽頭、下は気管につながっていました。
ドクタードクター
その通り。おおむね第4〜第6頸椎の高さにあって、空気の通り道であると同時に、食物の通り道との分岐点にある。この位置から、喉頭の3大機能は「呼吸」「嚥下時の気道防御」「発声」と整理できる。では、答えはどれだと思う?
医学生医学生
咀嚼は口の中で歯を使って噛む動作なので、喉頭は関係なさそうです。でも、嚥下も口の動きのような気がして少し迷いました。
ドクタードクター
いいところで迷ったね。咀嚼は口腔で歯が食物を噛み砕き、唾液と混ぜて食塊をつくる過程で、咬筋や側頭筋などの咀嚼筋が担う。これらは三叉神経第3枝、下顎神経の支配だ。喉頭は関与しないから、誤っているのは咀嚼で正解だ。一方、嚥下には喉頭が欠かせない。
医学生医学生
飲み込むときに喉仏が上がるのは、そのためですか。
ドクタードクター
そうなんだ。嚥下の咽頭期には、舌骨上筋群の働きで喉頭が前上方へ挙上し、喉頭蓋が倒れ込んで入口を覆い、さらに仮声帯と声帯が閉じる。気道を三重に閉じて、食塊が気管に入るのを防いでいるんだ。喉頭挙上は食道入口部を開く助けにもなる。
医学生医学生
リハビリ科の実習で嚥下造影を見学したとき、喉頭の挙上が弱い高齢の患者さんが誤嚥していました。
ドクタードクター
まさに喉頭の動きが嚥下に直結している例だね。摂食嚥下は先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期の5期に分けられ、咀嚼は準備期、喉頭が主に働くのは咽頭期だ。続いて呼吸はどうかな。
医学生医学生
喉頭は気道の一部なので、呼吸に関わるのは当然ですよね。声門が開かないと息ができないはずです。
ドクタードクター
その通り。吸気時には後輪状披裂筋が声門を開大させる。声門を開く筋はこれだけだから重要だよ。両側反回神経麻痺で声帯が正中付近に固定されたり、急性喉頭蓋炎で喉頭が腫れたりすると、吸気性喘鳴や窒息を起こす。喉頭が呼吸に不可欠であることがよくわかるね。
医学生医学生
発声は声帯の振動ですよね。でも構音は口や舌で音をつくることなので、喉頭の機能と言っていいのか疑問です。
ドクタードクター
鋭い指摘だ。発声は、閉じた声門に呼気を送って声帯を振動させ、声のもとになる喉頭原音をつくること。構音は、その原音を口唇・舌・軟口蓋などで加工して個々の語音にすることで、主役は確かに口腔と咽頭だ。ただ、「ば」と「ぱ」のような有声音と無声音の区別は声帯振動の有無で決まるし、ハ行の子音は声門でつくられる摩擦音だ。だから喉頭も構音に関与していると考えてよい。
医学生医学生
喉頭が「音源」、口が「加工」で、喉頭も一部は語音づくりに参加している、という理解ですね。
ドクタードクター
その理解で十分だ。臨床につなげると、発声の障害は嗄声などの音声障害、構音の障害は口蓋裂による開鼻声や運動障害性構音障害のように、症状の名前も分かれている。もう一つ大事なのが神経支配だ。反回神経は輪状甲状筋以外のすべての内喉頭筋を支配し、上喉頭神経外枝は輪状甲状筋で声の高さを調節する。
医学生医学生
左反回神経は大動脈弓を回るので、嗄声が胸の病気のサインになることがあるんですよね。
ドクタードクター
その通り。胸部大動脈瘤、肺癌、縦隔腫瘍、食道癌などで左反回神経麻痺が起こり、息もれ声の嗄声で見つかることがある。声がかれた患者を診たら、喉頭だけでなく胸部まで目を向けることを忘れないでほしい。

まとめ

喉頭は気道と食物の通り道の分岐点に位置し、呼吸(気道)、嚥下時の気道防御、発声の3つを主な機能とします。嚥下の咽頭期には喉頭挙上・喉頭蓋の反転・声門閉鎖で誤嚥を防ぎ、吸気時には後輪状披裂筋が声門を開きます。構音の主体は口腔・咽頭ですが、有声音と無声音の区別などで喉頭も関与します。一方、咀嚼は口腔で歯と三叉神経第3枝支配の咀嚼筋が担う機能で、喉頭は関与しません。喉頭の機能と神経支配を理解しておくと、誤嚥や嗄声、反回神経麻痺の原因検索など臨床の場面で役立ちます。

解答・解説

正解はdです

問われていること

喉頭の位置と構造から、喉頭が担う機能を判断する問題である。「誤っているもの」を選ぶ点に注意する。

喉頭の位置と構造

喉頭は頸部の前方、おおむね第4〜第6頸椎の高さにあり、上方は咽頭(喉頭咽頭)に、下方は気管に続く。甲状軟骨・輪状軟骨・喉頭蓋軟骨・披裂軟骨などの軟骨を骨組みとし、内腔には左右の声帯(声帯ヒダ)がある。声帯の間のすき間を声門といい、内喉頭筋(多くは迷走神経の枝である反回神経が支配)が声門の開閉と声帯の緊張を調節する。

喉頭の3大機能

喉頭は「空気の通り道」であると同時に「食物の通り道(咽頭)との分岐点」に位置するため、次の機能をもつ。 ①呼吸(気道としての機能):吸気時に声門が開大し、空気を下気道へ通す。 ②気道防御(嚥下時の誤嚥防止):嚥下の際に喉頭が挙上し、喉頭蓋が喉頭入口部を覆い、声門が閉鎖して食塊が気管へ入るのを防ぐ。咳反射で異物を排出する働きもある。 ③発声:呼気で声帯を振動させ、声の源となる音(喉頭原音)をつくる。 これに対し、咀嚼は食物を歯で噛み砕いて唾液と混ぜ、飲み込める食塊にする口腔での働きであり、喉頭は関与しない。よって誤っているのは咀嚼である。

選択肢考察

  1. ×a.  嚥下

    喉頭の機能として正しい。嚥下の咽頭期には、舌骨上筋群の働きで喉頭が前上方へ挙上し、喉頭蓋が倒れ込んで喉頭入口部を覆い、さらに仮声帯・声帯が閉じて気道を三重に閉鎖する。これにより食塊は気管へ入らず食道へ送られる。喉頭挙上は食道入口部(上部食道括約筋)の開大にも寄与する。喉頭の動きが障害されると誤嚥が起こるため、喉頭は嚥下に欠かせない器官である。

  2. ×b.  構音

    喉頭の機能として正しいと扱われる。構音とは、喉頭でつくられた原音を口唇・舌・軟口蓋・下顎などの動きで加工し、個々の語音(母音・子音)をつくることであり、その主役は口腔と咽頭である。しかし、声帯振動の有無によって有声音と無声音(例:「ば」と「ぱ」)が区別され、ハ行の子音[h]は声門で生じる摩擦音であるなど、喉頭も語音の形成に関与している。したがって構音も喉頭の機能に含まれる。

  3. ×c.  呼吸

    喉頭の機能として正しい。喉頭は上気道と下気道(気管)をつなぐ気道の一部で、吸気時には後輪状披裂筋(声門を開く唯一の筋)の働きで声門が開大し、空気が肺へ流れる。両側反回神経麻痺で声帯が正中付近に固定されたり、急性喉頭蓋炎で喉頭が腫脹したりすると、吸気性喘鳴や窒息をきたす。このことからも喉頭が呼吸に不可欠であることがわかる。

  4. ○d.  咀嚼

    喉頭の機能ではないため、本問の正解である。咀嚼は口腔で行われ、歯で食物を噛み砕き、唾液と混ぜて食塊を形成する過程である。下顎を動かす咀嚼筋(咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋。いずれも三叉神経第3枝の下顎神経支配)と、食物を歯列上に保持・移動させる舌・頰(頰筋)・口唇が協調して行う。喉頭は咀嚼が終わった後の嚥下の段階で働く器官である。

  5. ×e.  発声

    喉頭の機能として正しく、喉頭の最も特徴的な機能である。声門を閉じた状態で呼気を送ると声帯が振動し、喉頭原音が生じる。声の高さは主に輪状甲状筋(上喉頭神経外枝支配)による声帯の緊張で、声の大きさは呼気圧と声門抵抗で調節される。反回神経麻痺では声門閉鎖が不完全となり嗄声(息もれ声)をきたす。

発声と構音の違い

・発声:喉頭(声帯)で声のもととなる音(喉頭原音)をつくること。障害されると嗄声などの音声障害となる。 ・構音:喉頭原音や呼気流を、口唇・舌・歯・口蓋・咽頭などの構音器官で加工して語音をつくること。障害されると構音障害(口蓋裂による開鼻声、運動障害性構音障害など)となる。

摂食嚥下の5期

①先行期(認知期):食物を認識する。 ②準備期:口腔内で咀嚼し食塊をつくる。 ③口腔期:舌で食塊を咽頭へ送り込む。 ④咽頭期:嚥下反射により喉頭挙上・喉頭蓋の反転・声門閉鎖が起こり、食塊が咽頭を通過する。 ⑤食道期:蠕動運動により食塊が胃へ送られる。 咀嚼は準備期、喉頭が主に働くのは咽頭期である。

喉頭の神経支配

・反回神経(迷走神経の枝):輪状甲状筋以外のすべての内喉頭筋を支配。声門下の知覚。 ・上喉頭神経:内枝は声門上の知覚、外枝は輪状甲状筋(声の高さの調節)を支配。 ・左反回神経は大動脈弓を回るため、胸部大動脈瘤・肺癌・縦隔腫瘍・食道癌などで麻痺をきたしやすい。

POINT

・喉頭の3大機能は「呼吸(気道)」「嚥下時の気道防御」「発声」。 ・構音の主体は口腔・咽頭だが、有声音/無声音の区別などで喉頭も関与する。 ・咀嚼は口腔の機能で、咀嚼筋(三叉神経第3枝支配)・歯・舌などが担う。喉頭は関与しない。 ・声門を開く筋は後輪状披裂筋のみ。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。