「中学校区」で支える老後―地域包括ケアシステムの“圏域”を見抜く
第112回医師国家試験 F問題 第17問
国試問題にチャレンジ
地域包括ケアシステムについて誤っているのはどれか。
- a.自立生活の支援を目指す。
- b.高齢者の尊厳の保持を目指す。
- c.住み慣れた地域での暮らしを支える。
- d.二次医療圏単位でサービスを提供する。
- e.医療・介護・予防・生活支援・住まいが一体的に提供される。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
地域包括ケアシステムは、高齢者が重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する体制で、尊厳の保持と自立生活の支援を基本理念とします。サービス提供の単位は二次医療圏ではなく、おおむね30分以内に必要なサービスが届く日常生活圏域(中学校区程度)であり、この点が本問の引っかけです。二次医療圏は入院医療を完結させる複数市町村単位、一次医療圏はおおむね市町村単位、三次医療圏は原則都道府県単位と整理しておくと混同を防げます。中核機関は保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員を配置する地域包括支援センターで、自助・互助・共助・公助の組み合わせで地域を支えます。病院での診療を患者さんの生活の場へつなぐ視点は、これからの医師に欠かせない素養です。
解答・解説
正解はdです
地域包括ケアシステムとは、高齢者が重度の要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるよう、「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」を一体的に提供する体制である。団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年を目途に構築が進められてきた。 この仕組みの根底にある理念は、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援である。また、提供単位は都道府県や医療圏のような広い範囲ではなく、おおむね30分以内に必要なサービスが届けられる「日常生活圏域」(具体的には中学校区程度)が想定されている。 本問は「誤っているもの」を選ぶ問題である。理念(尊厳・自立・住み慣れた地域)と構成要素(5つの要素の一体的提供)はいずれも正しく、提供単位を「二次医療圏」とする記述だけが誤りである。二次医療圏は複数の市町村からなる入院医療の単位であり、日常生活圏域よりはるかに広い。
選択肢考察
- ×a. 自立生活の支援を目指す。
正しい記述である。地域包括ケアシステムは、介護保険法の基本理念と同様に、高齢者がその有する能力に応じて自立した日常生活を営めるよう支援することを目指す。介護予防や生活支援サービスはまさに自立生活の維持を目的としたものである。
- ×b. 高齢者の尊厳の保持を目指す。
正しい記述である。尊厳の保持は、自立生活の支援と並ぶ地域包括ケアシステムの基本理念である。認知症や重度の要介護状態になっても、本人の意思や生き方が尊重された暮らしを地域で支えることを意味する。
- ×c. 住み慣れた地域での暮らしを支える。
正しい記述である。施設や病院への入所・入院に頼るのではなく、住み慣れた地域・自宅での生活を人生の最期まで継続できるよう支えることが、このシステムの中心的な目的である。在宅医療や在宅での看取りの推進もこの考え方に基づいている。
- ○d. 二次医療圏単位でサービスを提供する。
誤った記述であり、これが正解である。地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域を単位として想定しており、具体的には中学校区程度の範囲が基本とされる。二次医療圏は医療計画で定められる、一般的な入院医療を完結させるための複数市町村にまたがる圏域であり、日常の生活に密着したサービス提供の単位としては広すぎる。日常生活圏域は、市町村を単位とすることが多い一次医療圏よりもさらに狭い。
- ×e. 医療・介護・予防・生活支援・住まいが一体的に提供される。
正しい記述である。「住まい」を基盤として、「医療」「介護」「予防」「生活支援」の各サービスが切れ目なく一体的に提供されることが地域包括ケアシステムの構成要素である。これら5つの要素が日常生活圏域の中で連携して機能することが求められる。
地域包括ケアシステムの概要
・目的:重度の要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるようにすること。 ・目標時期:団塊の世代が75歳以上となる2025年。 ・構成要素:住まい、医療、介護、予防、生活支援の5つ。 ・圏域:おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(中学校区程度)。 ・主体:保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていく。 ・法的根拠:地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(医療介護総合確保推進法による改正、2014年)で定義が示されている。
支え合いの考え方
自助(自分のことは自分でする)、互助(住民同士の支え合い、ボランティア)、共助(介護保険・医療保険など社会保険)、公助(税による公的支援、生活保護など)の組み合わせで支える。
中核機関:地域包括支援センター
・2005年の介護保険法改正で創設され、市町村または市町村から委託を受けた法人が設置する。 ・保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)が配置される。 ・総合相談支援、権利擁護(虐待防止・成年後見制度の活用など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントを担う。 ・多職種で個別事例の検討や地域課題の把握を行う「地域ケア会議」の推進も役割の一つである。
医療圏の整理
・一次医療圏:日常的な外来診療などのプライマリケアの単位で、おおむね市町村単位。 ・二次医療圏:一般的な入院医療を完結させる単位で、複数の市町村からなる。基準病床数の算定単位である。 ・三次医療圏:高度・特殊な医療を提供する単位で、原則として都道府県単位(北海道は複数)。
POINT
・地域包括ケアシステム=住まい・医療・介護・予防・生活支援の一体的提供。 ・理念は「尊厳の保持」と「自立生活の支援」、住み慣れた地域で最期まで。 ・圏域は二次医療圏ではなく、30分以内でサービスが届く日常生活圏域(中学校区)。 ・中核機関は地域包括支援センター(保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員)。 ・目標年は2025年。
