StudyMed医師国家試験

HPVの次に来るもの―子宮頸癌と結びつく生活習慣は「たばこ」

第112回医師国家試験 B問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第112回 B問題 第7問

子宮頸癌罹患と最も関連が深いのはどれか。

  1. a.飲酒
  2. b.喫煙
  3. c.睡眠
  4. d.塩分摂取
  5. e.身体活動

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は子宮頸癌のリスク因子を問う問題だ。最大の原因であるHPVが選択肢にないので、「生活習慣とそれに関連する癌の組み合わせ」を整理できているかがカギになる。まず、子宮頸癌の原因といえば何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
ヒトパピローマウイルス、HPVです。でも選択肢にはないので、少し戸惑いました。
ドクタードクター
そう、そこがこの問題のポイントだ。子宮頸癌の90%以上から高リスク型HPVが検出され、16型と18型が代表的だ。性交渉で感染するから、初交年齢が若いことや性交渉の相手が多いことがリスクになる。ただ、感染してもほとんどは自然に排除されて、持続感染した一部が前癌病変を経て癌になるんだ。
医学生医学生
その持続感染しやすくなる要因が、生活習慣の中にあるということでしょうか。
ドクタードクター
いい読みだね。HPVに次ぐ確立したリスク因子が喫煙なんだ。国際がん研究機関は喫煙を子宮頸癌の原因として十分な証拠があると評価しているし、国内のがんリスク評価でも関連は「確実」と判定されている。
医学生医学生
喫煙というと肺癌のイメージが強くて、婦人科の癌と結びつけていませんでした。
ドクタードクター
多くの人がそう感じるよ。でも、たばこ煙に含まれるニトロソアミンなどの発癌物質は子宮頸管粘液からも検出される。頸部上皮のDNAを傷つけるうえに、局所の免疫機能を落としてHPVを排除しにくくする。その結果、持続感染から前癌病変、癌へと進みやすくなると考えられているんだ。特に扁平上皮癌との関連が強い。
医学生医学生
HPVとは独立したリスク因子でありながら、HPVの持続感染も後押しするんですね。
ドクタードクター
その通り。では、ほかの生活習慣も確認しよう。飲酒はどんな癌と関係が深いかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、食道癌と肝癌と習いました。アセトアルデヒドが関係していたと思います。
ドクタードクター
よく覚えているね。口腔・咽頭・喉頭、食道、肝臓、大腸、乳房の癌のリスクを上げる。アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドの発癌性が主な機序と考えられている。ただ、子宮頸癌との関連ははっきりしていない。塩分摂取はどうだろう。
医学生医学生
塩分は胃癌ですよね。消化器内科の実習で、塩蔵食品とピロリ菌の話を聞きました。
ドクタードクター
そう。高濃度の食塩が胃粘膜を傷つけ、Helicobacter pylori感染と合わさって発癌を促すと考えられている。身体活動はむしろリスクを下げる側の因子で、結腸癌のリスク低下が最も確実とされる。睡眠については、夜勤による概日リズムの乱れと乳癌の関連などが研究されているけれど、子宮頸癌のリスク因子としては確立していない。
医学生医学生
子宮体癌のリスク因子と混同しないように気をつけたいです。体癌は肥満や未経産でしたよね。
ドクタードクター
大事な区別だね。体癌は肥満、未経産、エストロゲン過剰が主なリスクで、頸癌はHPVと喫煙。発生のしくみがまったく違うんだ。頸癌ではほかに多産、経口避妊薬の長期使用、HIV感染や臓器移植後などの免疫抑制状態もリスクになる。
医学生医学生
予防についても押さえておきたいです。
ドクタードクター
一次予防はHPVワクチンで、日本では2022年4月から定期接種の積極的勧奨が再開され、9価ワクチンも定期接種の対象になっている。二次予防は子宮頸がん検診で、20歳以上を対象に2年に1回の細胞診が基本だ。30〜60歳を対象にHPV検査単独法も導入されつつある。臨床では、喫煙している女性に禁煙を勧める理由として、肺癌だけでなく子宮頸癌のリスクも伝えられると説得力が増すよ。
医学生医学生
禁煙指導の場面で、婦人科の視点も添えられるようにします。

まとめ

子宮頸癌の最大の原因は性交渉で感染する高リスク型HPVの持続感染であり、喫煙はHPVと独立した確立したリスク因子です。たばこ煙中の発癌物質は子宮頸管粘液からも検出され、上皮のDNA損傷や局所免疫の低下を通じてHPVの持続感染と癌化を促すと考えられ、特に扁平上皮癌との関連が強いとされます。飲酒は食道癌・肝癌・大腸癌・乳癌、塩分は胃癌と結びつき、身体活動は結腸癌のリスクを下げる因子で、いずれも子宮頸癌との関連は確立していません。肥満や未経産が関わる子宮体癌との違いも含め、生活習慣と癌の組み合わせを整理しておくことは、HPVワクチンや検診、禁煙指導といった予防の実践につながります。

解答・解説

正解はbです

子宮頸癌の発生に最も深く関わる要因は、性交渉で感染する高リスク型ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)の持続感染である。しかし本問の選択肢にHPVは含まれておらず、生活習慣の中から子宮頸癌のリスク因子を選ばせる問題になっている。 喫煙はHPVに次ぐ「確立したリスク因子」として位置づけられている。国際がん研究機関(IARC)は喫煙を子宮頸癌の原因として十分な証拠があると評価しており、日本の科学的根拠に基づくがんリスク評価でも、喫煙と子宮頸癌の関連は「確実」と判定されている。 選択肢のほかの生活習慣も、それぞれ特定の癌とは関連がある。飲酒は食道癌・大腸癌・乳癌など、塩分摂取は胃癌、身体活動は大腸(結腸)癌などとの関連が知られる。解き方としては、「生活習慣とそれに関連する癌の組み合わせ」を整理しておき、子宮頸癌と結びつくものを選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  飲酒

    飲酒によって上がるのは、口腔・咽頭・喉頭・食道(特に扁平上皮癌)、肝臓、大腸、乳房の癌のリスクである。アルコールの代謝でできるアセトアルデヒドに発癌性があることが、主な機序と考えられている。子宮頸癌との関連ははっきりしていない。

  2. ○b.  喫煙

    喫煙は、肺癌、頭頸部癌、食道癌、胃癌、膵癌、膀胱癌など多くの癌のリスクを上げる。子宮頸癌についても、HPV感染とは独立したリスク因子であることが確立している。たばこ煙に含まれる発癌物質(ニコチン由来のニトロソアミンなど)は子宮頸管粘液からも検出される。そのため、頸部上皮のDNA損傷に加え、局所の免疫機能の低下を通じてHPVが排除されにくくなり、持続感染から前癌病変、癌へと進みやすくなると考えられている。特に扁平上皮癌との関連が強い。

  3. ×c.  睡眠

    睡眠不足や夜勤(概日リズムの乱れ)が免疫機能やホルモン分泌に影響し、発癌に関わる可能性は議論されている。夜勤と乳癌の関連が研究されている例もある。しかし、子宮頸癌のリスク因子として確立したものではない。

  4. ×d.  塩分摂取

    塩分のとりすぎ(塩蔵食品を含む)は胃癌のリスクを上げることが確実視されている。高濃度の食塩が胃粘膜を傷つけ、Helicobacter pyloriの感染と合わさって発癌を促すと考えられる。子宮頸癌との関連は示されていない。

  5. ×e.  身体活動

    身体活動はリスクを下げる側の因子で、結腸癌のリスク低下が最も確実とされる。日本の大規模コホート研究では、男性で結腸癌・肝癌・膵癌、女性で胃癌のリスク低下も報告されている。しかし、子宮頸癌の罹患との関連は示されていない。

子宮頸癌のリスク因子

・高リスク型HPVの持続感染:子宮頸癌の90%以上からHPVが検出される。16型と18型が代表的で、子宮頸癌全体の約6〜7割を占める。HPVは性交渉で感染するため、初交年齢が若いこと、性交渉の相手が多いことがリスクになる。 ・喫煙:HPVと並ぶ確立したリスク因子で、特に扁平上皮癌と関連する。 ・その他:多産、経口避妊薬の長期使用、免疫抑制状態(HIV感染、臓器移植後など)、低い社会経済的状態(検診の受診率が低いことが一因)。

組織型と好発部位

子宮頸癌の多くは扁平上皮癌で、扁平円柱上皮境界(SCJ)の移行帯に発生する。腺癌も増えており、腺癌はHPV非依存性のものも含み、細胞診で見つけにくい。

予防

・一次予防:HPVワクチン。日本では2022年4月から定期接種の積極的勧奨が再開され、9価ワクチンも定期接種の対象となっている。 ・二次予防:子宮頸がん検診。20歳以上を対象に2年に1回の細胞診を行う。近年は30〜60歳を対象としたHPV検査単独法も導入されつつある。

生活習慣と癌の主な関連

・喫煙:肺、頭頸部、食道、胃、膵、肝、膀胱、子宮頸部など ・飲酒:口腔・咽頭・喉頭、食道、肝、大腸、乳房 ・塩分:胃 ・肥満:大腸、子宮体部、閉経後乳癌、肝など ・身体活動(リスクを下げる):結腸

POINT

・子宮頸癌の最大の原因は高リスク型HPV(16型・18型など)の持続感染である。 ・喫煙は、HPVに次ぐ子宮頸癌の確立したリスク因子である。 ・飲酒は食道癌・肝癌・大腸癌・乳癌、塩分は胃癌、身体活動の不足は結腸癌と結びつけて覚える。 ・子宮体癌のリスク因子(肥満、未経産、エストロゲン過剰)とは区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。