夢はいつ見る?深い眠りはいつ減る?―一晩の睡眠構造と年齢変化を読み解く
第112回医師国家試験 A問題 第6問
国試問題にチャレンジ
睡眠について正しいのはどれか。
- a.夢を体験するのは浅いノンレム睡眠の時期である。
- b.深いノンレム睡眠は朝方に向けて減少する。
- c.レム睡眠は緩徐な眼球運動が特徴である。
- d.乳幼児ではレム睡眠が成人より少ない。
- e.総睡眠時間は青年期以降一定である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠(N1〜N3)からなり、約90分の周期を一晩に4〜5回繰り返しますが、前半には深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が集中し、明け方に向けて徐波睡眠は減少してレム睡眠が長くなります。レム睡眠は急速眼球運動、覚醒時に似た脳波、抗重力筋の筋弛緩、鮮明な夢を特徴とし、緩徐な眼球運動は入眠期の所見です。新生児では睡眠の約半分をレム睡眠が占め、総睡眠時間は新生児期が最も長く加齢とともに短縮し、高齢者では徐波睡眠の減少、中途覚醒・早朝覚醒が増えます。この睡眠構造の知識は、ナルコレプシーやレム睡眠行動障害、夢遊病・夜驚症などの睡眠障害の理解や、高齢者の不眠への対応の基礎になります。
解答・解説
正解はbです
睡眠の基本構造(レム睡眠とノンレム睡眠)と、その一晩の中での分布、さらに年齢による変化を問う問題である。
睡眠の2つの状態
睡眠はレム睡眠(REM: rapid eye movement、急速眼球運動を伴う睡眠)とノンレム睡眠(non-REM sleep)に大別される。ノンレム睡眠は脳波の徐波化(ゆっくりした大きな波が増えること)の程度で段階分けされ、現在の米国睡眠医学会(AASM)の判定基準ではN1・N2(浅い睡眠)とN3(深い睡眠、徐波睡眠)の3段階に分ける。かつてはステージ1〜4の4段階に分類され、ステージ3・4が現在のN3に相当する。
一晩の睡眠の流れ
入眠するとまずノンレム睡眠が出現し、急速に深い段階(徐波睡眠)へ進む。その後浅くなってレム睡眠が出現し、このノンレム→レムの組合せ(睡眠周期)が約90分ごとに一晩で4〜5回程度繰り返される。周期を重ねるにつれて、深いノンレム睡眠は減り、レム睡眠は1回あたりの持続が長くなる。つまり「前半は深いノンレム睡眠が多く、後半(明け方)はレム睡眠が多い」という非対称な構造をとる。
考え方
この「前半に徐波睡眠、後半にレム睡眠」という分布と、レム睡眠の名称の由来(急速眼球運動)、年齢変化(新生児はレム睡眠の割合が高い、総睡眠時間は加齢で減少)を押さえておけば、各選択肢の正誤は判断できる。
選択肢考察
- ×a. 夢を体験するのは浅いノンレム睡眠の時期である。
誤り。夢を体験するのは主にレム睡眠の時期である。レム睡眠中は大脳皮質が覚醒時に近い活動を示し、この時期に起こすと、ストーリー性があり視覚的に鮮明で情動を伴う夢を報告することが多い。ノンレム睡眠中にも夢をみることはあるが、頻度は低く、内容も断片的で思考に近いものが多い。
- ○b. 深いノンレム睡眠は朝方に向けて減少する。
正しい。深いノンレム睡眠(徐波睡眠、N3)は、それまでの覚醒時間に応じて蓄積した睡眠の必要性(睡眠圧)を反映し、入眠直後の第1〜2周期に集中して出現する。睡眠が進んで睡眠圧が解消されるにつれて減少し、明け方の周期ではほとんどみられなくなる。代わりに明け方にはレム睡眠が増え、1回の持続も入眠直後の数分〜10分程度から明け方には20〜40分程度へと長くなる。
- ×c. レム睡眠は緩徐な眼球運動が特徴である。
誤り。レム(REM)は rapid eye movement の略で、急速で不規則な眼球運動(急速眼球運動)がレム睡眠の特徴である。緩徐な眼球運動(slow eye movement)は、覚醒から入眠に移る時期や浅いノンレム睡眠(N1)でみられる所見であり、レム睡眠の特徴ではない。
- ×d. 乳幼児ではレム睡眠が成人より少ない。
誤り。乳幼児ではレム睡眠が成人より多い。新生児では総睡眠時間の約50%をレム睡眠(新生児期には動睡眠とも呼ばれる)が占め、入眠直後からレム睡眠が出現することもある。成長とともにその割合は低下し、思春期以降は総睡眠時間の約20〜25%程度でほぼ一定となる。レム睡眠は発達期の脳の成熟に関与すると考えられている。
- ×e. 総睡眠時間は青年期以降一定である。
誤り。総睡眠時間は新生児期が最も長く(1日16時間前後)、成長とともに短くなる。成人以降も一定ではなく、加齢に伴って緩やかに短くなっていく。高齢者では夜間の睡眠が浅く分断されやすく(中途覚醒の増加)、深いノンレム睡眠が減少し、睡眠の時間帯が前にずれて早朝に目覚めやすくなる(早朝覚醒)。寝床にいる時間は長くなりがちであるが、実際に眠っている時間は短くなる。
レム睡眠の特徴
・急速眼球運動がみられる。 ・脳波は覚醒時に似た低振幅の不規則な波(低振幅速波)を示す。 ・抗重力筋(頸部・四肢・下顎など)の筋緊張が著しく低下する(筋弛緩)。 ・自律神経活動が不安定になり、心拍・呼吸・血圧が不規則に変動する。陰茎勃起がみられる。 ・鮮明でストーリー性のある夢を伴うことが多い。 ・一晩で数回出現し、明け方ほど長く続く。
ノンレム睡眠の特徴
・脳波の徐波化の程度で N1〜N3 に分ける(N2 では睡眠紡錘波やK複合が、N3 では高振幅徐波(δ波)が特徴)。 ・筋緊張は覚醒時より低下するが保たれている。 ・副交感神経優位となり、心拍・呼吸は遅く規則的になる。 ・深いノンレム睡眠中に成長ホルモンが多く分泌される。 ・夢は少なく、あっても断片的である。
年齢による睡眠の変化
・新生児: 総睡眠時間が長く、多相性(昼夜を問わず何回にも分かれて眠る)で、レム睡眠の割合が高い。 ・小児〜思春期: 総睡眠時間が短縮し、レム睡眠の割合も低下する。深いノンレム睡眠は小児期に最も多い。 ・成人〜高齢者: 総睡眠時間は緩やかに減少し、深いノンレム睡眠が減って浅い睡眠が増え、中途覚醒・早朝覚醒が多くなる。睡眠相が前進し、早寝早起き傾向となる。
臨床との関連
・レム睡眠に関連する疾患: ナルコレプシー(入眠時レム睡眠、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺)、レム睡眠行動障害(筋弛緩が起こらず夢の内容どおりに体が動く。パーキンソン病やレビー小体型認知症の前駆症状として重要)。 ・深いノンレム睡眠に関連する疾患: 睡眠時遊行症(夢遊病)、睡眠時驚愕症(夜驚症)。これらは徐波睡眠の多い睡眠前半に起こりやすく、小児に多い。
POINT
・一晩の睡眠では、前半に深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が多く、明け方に向けてレム睡眠が増える。 ・レム睡眠 = 急速眼球運動、筋緊張低下、覚醒様の脳波、鮮明な夢。 ・緩徐な眼球運動は入眠期(浅いノンレム睡眠)の所見である。 ・新生児ではレム睡眠が睡眠の約半分を占め、成長とともに減る。 ・総睡眠時間は加齢とともに減少し、高齢者では徐波睡眠減少・中途覚醒・早朝覚醒が増える。
