口から入るのはAとE―感染経路で二分する肝炎ウイルスの整理術
第111回医師国家試験 I問題 第31問
国試問題にチャレンジ
感染経路として経口感染が主である肝炎ウイルスはどれか。2つ選べ。
- a.A 型
- b.B 型
- c.C 型
- d.D 型
- e.E 型
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
肝炎ウイルスは感染経路で整理すると理解しやすく、A型とE型は糞口(経口)感染、B型・C型・D型は血液・体液感染です。A型は汚染された水や貝類、E型は日本では豚レバーやイノシシ・シカ肉の生食・加熱不十分が主な感染源で、いずれも原則として急性肝炎で終わりますが、E型は妊婦で劇症化しやすい点が重要です。D型はHBs抗原を外殻に利用する欠損ウイルスのためHBV存在下でしか感染できず、経路もB型と同じです。A型・E型肝炎は4類感染症として直ちに届出が必要であり、感染経路・慢性化の有無・予防法を一続きで理解しておくことが、患者指導や医療者自身の感染対策にも直結します。
解答・解説
正解はa, eです
肝炎ウイルスはA型からE型までの5種類が代表的であり、感染経路によって大きく二群に分けて整理すると覚えやすい。 (1) 経口感染(糞口感染)するもの:A型(HAV)とE型(HEV)。ウイルスが便中に排泄され、汚染された水や食物を口にすることで感染する。原則として急性肝炎のみを起こし、慢性化はまれである。 (2) 血液・体液を介して感染するもの:B型(HBV)、C型(HCV)、D型(HDV)。輸血、針刺し、注射器の共用、性行為、母子感染などで感染し、慢性肝炎・肝硬変・肝細胞癌の原因となりうる。 「Aと E は口から(経口)、B・C・D は血液から」と対応させれば、正解はA型とE型である。
選択肢考察
- ○a. A 型
HAVは糞便中に排泄され、汚染された飲料水や生ガキなどの貝類、汚染食品を介して経口感染する。衛生環境の整っていない地域への渡航者や、家族内・施設内での集団発生が典型である。潜伏期は約2〜6週(平均4週前後)で、急性肝炎を起こすが慢性化はしない。まれに劇症化する。不活化ワクチンで予防できる。なお、男性間の性的接触(口や肛門を介した接触)による感染も近年問題になっているが、これも糞口経路の一型である。
- ×b. B 型
HBVは血液や体液(精液、腟分泌液など)を介して感染する。主な経路は母子感染(垂直感染)、性行為、輸血・針刺し事故などである。わが国ではかつて母子感染が持続感染(キャリア化)の主な原因であったが、1986年からの母子感染防止事業(HBグロブリンとワクチン)により激減した。2016年からはB型肝炎ワクチンが定期接種となっている。経口感染が主ではない。
- ×c. C 型
HCVは主に血液を介して感染する。過去の輸血や血液製剤、注射器・針の使い回し(覚醒剤の回し打ち)、入れ墨・ピアスなどが代表的な経路である。性行為や母子感染による感染は少ない。感染者の多くが慢性化し、肝硬変・肝細胞癌へ進展しうる。経口感染はしない。
- ×d. D 型
HDVは自身の外殻としてHBs抗原を利用する不完全なRNAウイルス(欠損ウイルス)であるため、HBV感染者にしか感染・増殖できない。HBVと同時に感染する場合(同時感染)と、HBVキャリアに後から感染する場合(重複感染)があり、後者では重症化・慢性化しやすい。感染経路はHBVと同じく血液・体液である。わが国ではまれである。
- ○e. E 型
HEVは経口感染する。途上国では汚染された飲料水による流行が主であるが、わが国では豚レバー、イノシシ肉、シカ肉などを生や加熱不十分な状態で食べることによる人獣共通感染症(動物由来感染症)としての発症が多い。原則として急性肝炎で慢性化しないが、妊婦では劇症化して死亡率が高いことが知られている。また臓器移植後など免疫抑制状態では慢性化することがある。
肝炎ウイルスの比較
・A型:RNAウイルス(ピコルナウイルス科)。経口感染。潜伏期約2〜6週。慢性化しない。診断はIgM型HA抗体。ワクチンあり。 ・B型:DNAウイルス(ヘパドナウイルス科)。血液・体液感染(母子、性行為など)。成人の初感染は多くが一過性だが、乳幼児期の感染はキャリア化しやすい。診断はHBs抗原、急性感染ではIgM型HBc抗体。ワクチンあり(定期接種)。 ・C型:RNAウイルス(フラビウイルス科)。血液感染。高率に慢性化。診断はHCV抗体、HCV-RNA。ワクチンはないが、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)でほとんどの例でウイルス排除が可能。 ・D型:RNAウイルス。HBV存在下でのみ感染。血液・体液感染。 ・E型:RNAウイルス。経口感染(豚・イノシシ・シカ肉の生食など)。原則慢性化しないが妊婦で劇症化しやすい。診断はIgA型HE抗体。
予防の観点
A型・E型は食品の十分な加熱、手洗い、安全な飲料水の確保で予防する。B型・C型・D型は血液曝露の防止(標準予防策)、ワクチン(B型)、母子感染対策が中心である。B型のワクチンでHBV感染を防げば、D型の感染も防ぐことができる。
届出
ウイルス性肝炎のうちA型肝炎とE型肝炎は感染症法の4類感染症であり、診断した医師は直ちに届け出る(4類感染症はすべて全数把握・直ちに届出)。それ以外のウイルス性肝炎(B型・C型・D型など)は5類感染症の全数把握対象であり、診断から7日以内に届け出る。
POINT
・経口感染:A型・E型(急性肝炎のみ、原則慢性化しない)。 ・血液・体液感染:B型・C型・D型(慢性化しうる)。 ・A型:生ガキ・汚染水。E型:豚レバー・イノシシ・シカ肉の生食、妊婦で劇症化。 ・D型はHBV存在下でのみ感染する。
