StudyMed医師国家試験

白血球3,800は「病気」か―基準値の意味と、骨髄検査の前に踏むべき3つのステップ

第111回医師国家試験 F問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第111回 F問題 第25問

43歳の女性。1か月前の健康診断で異常を指摘され来院した。健診の報告書を示す。 基準値 あなたの値  白血球(/μL) 4,000~8,000 3,800        要精査。医療機関を受診してください。 患者への説明として誤っているのはどれか。

  1. a.「病気ではなくても4,000を下回ることがあります」
  2. b.「以前の検査結果との比較が重要です」
  3. c.「本日も同じ検査をしましょう」
  4. d.「白血球の種類を調べましょう」
  5. e.「骨髄の検査が必要です」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、健康診断で白血球数がわずかに基準値を下回った人に、外来でどう説明しどう評価するかを問う問題だ。ポイントは「基準値とは何か」を正しく理解しているかどうか、そして検査を負担の少ない順に進められるかどうか。まず、この値を見てどう感じたかな。
医学生医学生
下限より200低いだけなので、それほど心配はなさそうな気がします。でも「要精査」と書かれていると、患者さんは不安になりますよね。
ドクタードクター
そうだね。患者さんの不安に寄り添いつつ、正しく評価することが大切だ。では、そもそも基準値はどうやって決められているか覚えているかな。
医学生医学生
臨床検査医学の講義で習いました。健常者の測定値の中央95%、平均±2標準偏差の範囲ですよね。
ドクタードクター
その通り。つまり健常者でも約5%は範囲から外れるし、下側だけでも約2.5%は下限を下回る。だから「病気ではなくても4,000を下回ることがあります」という説明は、統計的にも正しく、患者さんの不安を和らげる意味でも適切なんだ。白血球数には体質的な個人差があり、日内変動や運動、ストレスでも変わるからね。
医学生医学生
健診は項目が多いので、どれか1つくらい外れる人は珍しくないということですね。
ドクタードクター
そう。項目が増えるほど、健常者でも「どれかが範囲外」になる確率は上がる。では、わずかな逸脱が病的かどうかを見極めるには何をすればいいと思う?
医学生医学生
まずは過去の健診結果を見せてもらうことでしょうか。
ドクタードクター
いいね。以前から毎回同じくらいの低値なら、それはその人にとっての普段の値である可能性が高い。逆に、以前は正常範囲だったのに最近下がってきたのなら、何かが起きている可能性を考えて精査を進める。だから「以前の検査結果との比較が重要です」も適切な説明だ。経時的な変化をみるのは、血液検査に限らず診断の基本なんだよ。
医学生医学生
健診は1か月前なので、今の値がどうなっているかも確認したいです。
ドクタードクター
その通り。白血球数はウイルス感染症の回復期などで一時的に減ることがあるから、受診当日に再検査して、低値が続いているのか一過性だったのかを確かめる。「本日も同じ検査をしましょう」も妥当だね。再検査で正常範囲に戻っていれば、経過観察で済むことが多い。
医学生医学生
白血球の総数だけでなく、内訳も見たほうがいいですか。
ドクタードクター
とても大事な視点だ。白血球数が少ないとき、病的意義を左右するのはどの種類が減っているかなんだ。特に感染防御の中心である好中球の絶対数、つまり白血球数に好中球の割合をかけた値が保たれているかを確認する。一般に1,500/μL未満を好中球減少とする。分画を調べれば、芽球のような異常細胞が末梢血に出ていないかもわかる。だから「白血球の種類を調べましょう」も適切だね。
医学生医学生
そうなると、誤っているのは「骨髄の検査が必要です」ですね。血液内科の実習で骨髄穿刺を見学しましたが、患者さんはかなりつらそうでした。
ドクタードクター
正解。骨髄穿刺や骨髄生検は、白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、悪性リンパ腫の骨髄浸潤などを診断するための侵襲的な検査だ。ほかの血球の異常も症状もなく、白血球がわずかに下回っただけの段階で、いきなり必要と告げるのは段階を飛ばしすぎている。患者さんに不必要な不安を与えることにもなるね。
医学生医学生
では、どんなときに骨髄検査を考えるんでしょうか。
ドクタードクター
血球減少が進行している、あるいは高度である場合、赤血球系や血小板も含めて2系統以上が減っている場合、末梢血に芽球などの異常細胞が出ている場合、原因が説明できない血球減少が続く場合などだ。そういう所見がそろってきて初めて検討する検査なんだ。
医学生医学生
骨髄検査の前に、ほかの原因も探す必要がありそうですね。
ドクタードクター
そう。白血球減少の原因は骨髄の病気だけではない。問診では、抗甲状腺薬や抗菌薬、抗てんかん薬などの服薬歴、最近の感冒様症状、関節痛や皮疹など全身性エリテマトーデスを疑う症状を確認する。身体診察では脾腫の有無も見る。肝硬変などによる脾機能亢進や、ビタミンB12・葉酸の欠乏でも白血球は減るんだ。
医学生医学生
OSCEの医療面接でも、検査値の異常があったら薬剤歴を必ず聞くように練習しました。
ドクタードクター
その習慣は実臨床でもそのまま役に立つよ。特に抗甲状腺薬による無顆粒球症は、発熱や咽頭痛で急に発症することがあるから注意が必要だ。軽度の異常には負担の少ない検査から段階的に、明らかな異常には迅速に、というメリハリを意識しよう。

まとめ

基準値は健常者の約95%が含まれる範囲として統計的に定められたもので、健常者でも一定の割合で範囲外の値をとるため、白血球数3,800/μLのような軽度の低値だけで病気とは判断できません。初診時には、過去の検査結果との比較、受診時の再検査、白血球分画による好中球絶対数や異常細胞の確認を行い、あわせて服薬歴や膠原病を疑う症状、ほかの血球系の値、脾腫の有無を確認します。骨髄検査は侵襲的な検査であり、進行性・高度の血球減少、2系統以上の減少、芽球の出現、説明のつかない持続などがある場合に初めて検討するもので、初診時にいきなり必要と説明するのは誤りです。検査値の異常を基準値の意味から捉え直し、負担の少ない手順で病的意義を見極める姿勢は、健診後の外来診療やプライマリ・ケアの基本となります。

解答・解説

正解はeです

所見の整理

43歳の女性で、自覚症状についての記載はなく、健康診断で白血球数3,800/μLを指摘されて受診している。健診の基準値4,000~8,000/μLに対して、下限をわずか200/μL下回っているにすぎない。白血球以外の項目(赤血球・ヘモグロビン・血小板など)に異常の記載はない。

考え方

基準値(基準範囲)は、健常者集団の測定値の中央約95%が入る範囲として統計的に定めたものである。したがって健常者でも約5%(下側だけでも約2.5%)は範囲から外れる。わずかな逸脱が1回あっただけでは、病的なのか、個人差や測定誤差・一時的な変動の範囲なのかは判断できない。 そこで初診時にまず行うのは、負担の少ない手順で病的意義を見極めることである。具体的には、(1) 過去の健診結果と比べて、以前から同程度の値なのか(その人にとっての普段の値)、最近になって下がってきたのかを確認する、(2) 再検査を行い、低値が持続しているか一過性かを確認する、(3) 白血球分画(好中球・リンパ球・単球・好酸球・好塩基球の割合)を調べ、どの系統が減っているのか、異常な細胞が出ていないかを確認する、の三つである。あわせて、問診(服薬歴、最近の感冒様症状、関節痛・皮疹などの膠原病を疑う症状)や、赤血球系・血小板の値の確認も行う。 骨髄検査は侵襲を伴う検査であり、上記の評価で血液疾患が疑われた場合に初めて検討するものである。本問は「誤っている説明」を選ぶ問題であり、段階を飛ばして初診時から骨髄検査が必要と告げる説明が不適切である。

選択肢考察

  1. ×a.  「病気ではなくても4,000を下回ることがあります」

    適切な説明である。基準値は健常者の約95%が含まれる範囲として統計的に決められたもので、健常者でも一定の割合で範囲外の値をとる。白血球数には体質的な個人差があり、日内変動や運動・ストレスなどでも変化する。3,800/μLという軽度の低値だけで病気と決めつけることはできないので、患者の不安を和らげる意味でも妥当な説明である。

  2. ×b.  「以前の検査結果との比較が重要です」

    適切な説明である。過去の健診でも毎回同じ程度の低値であれば、その人にとっての普段の値(個人の基準値)である可能性が高く、病的意義は乏しい。逆に、以前は正常範囲にあった値が最近になって下がってきたのであれば、新たに何かが起きている可能性を考えて精査を進める必要がある。経時的な変化をみることは、血液検査に限らず画像検査などでも診断の基本である。

  3. ×c.  「本日も同じ検査をしましょう」

    適切な説明である。白血球数は、ウイルス感染症の回復期や一時的な体調の変化などでも一時的に減ることがある。1か月前の低値が一過性であったのか、現在も続いているのかを確かめるため、受診時に再検査するのは妥当である。再検査で正常範囲に戻っていれば、経過観察で済むことが多い。

  4. ×d.  「白血球の種類を調べましょう」

    適切な説明である。白血球数が少ないとき、病的意義を判断するうえで重要なのは、どの種類の白血球が減っているかである。とくに感染防御の中心となる好中球の絶対数(白血球数×好中球の割合)が保たれているかを確認する(一般に1,500/μL未満を好中球減少とする)。分画を調べることで、芽球(未熟な白血球)などの異常細胞が末梢血に出ていないかも確認でき、その後の鑑別の方向性が決まる。

  5. ○e.  「骨髄の検査が必要です」

    誤った説明であり、これが正解である。骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)は、白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、悪性リンパ腫の骨髄浸潤などを診断するための侵襲的な検査である。白血球数が基準値をわずかに下回っただけで、ほかの血球の異常や症状の記載もない段階で、いきなり行う検査ではない。再検査・白血球分画・過去の値との比較などを行い、血球減少の進行、複数系統の血球減少、末梢血への異常細胞の出現などがみられた場合に初めて検討する。

基準値(基準範囲)の考え方

基準値は、健常と考えられる人の集団で測定した値の分布の中央約95%(平均±2標準偏差に相当)を範囲としたものである。健常者でも約5%は範囲外となり、検査項目が多くなるほど、健常者でも「どれか1項目が範囲外」になる確率は高くなる。基準値から外れたこと自体が病気を意味するわけではなく、外れの程度、ほかの所見、経時的変化を合わせて判断する。

白血球減少をみたときの初期対応

1. 再検査で持続を確認する。 2. 白血球分画を調べ、好中球数・リンパ球数を算出し、異常細胞の有無を確認する。 3. 赤血球系(ヘモグロビン)と血小板も確認し、汎血球減少(3系統すべての減少)でないかをみる。 4. 過去のデータと比較する。 5. 問診と身体診察:薬剤(抗甲状腺薬、抗菌薬、抗てんかん薬、抗癌薬など)、最近のウイルス感染、膠原病(全身性エリテマトーデスなど)を疑う症状、脾腫の有無などを確認する。

白血球減少の主な原因

・体質的なもの:健常者でも白血球数が低めの人がいる。 ・感染症:ウイルス感染症、重症細菌感染症など。 ・薬剤性:抗甲状腺薬などによる無顆粒球症、抗癌薬など。 ・膠原病:全身性エリテマトーデスなど。 ・脾機能亢進症:肝硬変などによる脾腫。 ・ビタミンB12・葉酸欠乏(巨赤芽球性貧血)。 ・骨髄の疾患:再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、白血病、骨髄への腫瘍浸潤など。

骨髄検査を考慮する状況

進行性または高度の血球減少、2系統以上の血球減少、末梢血への芽球など異常細胞の出現、原因の説明がつかない血球減少が持続する場合などである。

POINT

・基準値は健常者の約95%が入る範囲であり、健常者でも外れることがある。 ・軽度の検査異常では、再検査・過去の値との比較・白血球分画で病的意義を評価する。 ・白血球減少では好中球の絶対数と、ほかの血球系の異常の有無が重要である。 ・骨髄検査は侵襲的な検査であり、血液疾患が疑われる段階になってから行う。初診時にいきなり行うものではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。