A-aDO2は「肺の通知表」―肺胞気式で低酸素の原因を見分ける
第111回医師国家試験 E問題 第69問
国試問題にチャレンジ
室内空気で呼吸している患者の動脈血ガス分析のデータを示す。 pH 7.40,PaCO2 32Torr,PaO2 71Torr。 大気中の酸素分圧を150Torrとした場合の肺胞気-動脈血酸素分圧較差〈A-aDO2〉を求めよ。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第1位を四捨五入すること。 解答: ①② Torr
対話形式の解説
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ドクターまとめ
A-aDO2は肺胞気酸素分圧(PAO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)の差で、PAO2は肺胞気式PAO2=PIO2-PaCO2/0.8で求めます。本問では150-32/0.8=110Torrから71Torrを引き、A-aDO2は39Torrとなり、若年健常者のおおむね10Torr前後以下と比べて明らかに開大しています。低酸素血症のうち吸入気酸素分圧低下と肺胞低換気ではA-aDO2は正常、拡散障害・換気血流比不均等・シャントでは開大し、シャントは高濃度酸素投与でも改善しにくいのが特徴です。酸素投与中はFIO2に応じてPIO2を計算し直す点にも注意が必要です。A-aDO2の計算は、低酸素血症の原因が「換気量の問題」か「肺のガス交換の問題」かを見極める基本的かつ強力な手段であり、血液ガス読解の土台となります。
解答・解説
正解は39 Torrです
考え方
肺胞気-動脈血酸素分圧較差〈A-aDO2〉は、肺胞内の酸素分圧(PAO2)と動脈血の酸素分圧(PaO2)との差であり、A-aDO2 = PAO2 − PaO2 で表される。PaO2は動脈血ガス分析で実測できるが、PAO2は直接測定できないため、肺胞気式(簡易式)を用いて理論的に求める。
肺胞気式
PAO2 = PIO2 − PaCO2 / R ・PIO2:吸入気(気道に入って加湿された空気)の酸素分圧。室内空気では (760 − 47) × 0.21 ≒ 150 Torr となる。本問ではこの値が「大気中の酸素分圧150 Torr」として与えられている。 ・PaCO2:肺胞気の二酸化炭素分圧(PACO2)は動脈血のPaCO2とほぼ等しいので、PaCO2で代用する。 ・R:呼吸商(酸素消費量に対する二酸化炭素産生量の比)。通常0.8とする。
計算
① PAO2 = 150 − 32 / 0.8 = 150 − 40 = 110 Torr ② A-aDO2 = PAO2 − PaO2 = 110 − 71 = 39 Torr 小数点以下は生じないので、答えは39 Torrである。
結果の解釈
室内空気吸入下のA-aDO2は、若年健常者ではおおむね10 Torr前後以下で、加齢とともに少しずつ大きくなる。39 Torrは明らかに開大しており、肺胞から血液への酸素の受け渡し(ガス交換)に障害があることを示す。なお本例はpH 7.40と正常だがPaCO2が32 Torrと低く、過換気の状態にある。過換気によってPAO2が上がっているにもかかわらずPaO2が71 Torrにとどまっている点からも、肺そのものの酸素化障害が示唆される。
A-aDO2の意義
低酸素血症(PaO2低下)の原因は、①吸入気酸素分圧の低下(高地など)、②肺胞低換気、③拡散障害、④換気血流比不均等、⑤シャント(右→左短絡)に大別される。 ・①②ではPAO2そのものが低下しているため、PaO2も同じだけ下がり、A-aDO2は正常に保たれる。 ・③④⑤は肺胞から血液への酸素の移行過程の障害であり、PAO2が保たれていてもPaO2が低下するため、A-aDO2が開大する。 したがって、A-aDO2を計算することで、低酸素血症が「換気量の問題」か「肺のガス交換の問題」かを区別できる。例えば、薬物中毒や神経筋疾患による低換気ではPaCO2が上昇してPaO2が低下するがA-aDO2は正常であり、間質性肺炎(拡散障害・換気血流比不均等)、肺塞栓症(換気血流比不均等)、肺動静脈瘻(シャント)などではA-aDO2が開大する。
シャントと他の機序の区別
拡散障害や換気血流比不均等による低酸素血症は酸素投与で比較的よく改善するが、シャントでは酸素化されない血液が直接動脈側に混ざるため、高濃度酸素を投与してもPaO2の改善が乏しい。
PIO2の求め方
大気圧760 Torrから37℃での飽和水蒸気圧47 Torrを差し引き、酸素濃度(FIO2)を掛ける。室内空気(FIO2 0.21)では約150 Torrとなる。酸素投与時はFIO2を変えて同様に計算する。
POINT
・A-aDO2 = PAO2 − PaO2 ・PAO2 = PIO2 − PaCO2 / 0.8(室内空気ではPIO2 ≒ 150 Torr) ・室内空気なら簡易的に A-aDO2 ≒ 150 − PaCO2 / 0.8 − PaO2 ・正常は若年でおおむね10 Torr前後以下。加齢で開大する ・A-aDO2開大:拡散障害、換気血流比不均等、シャント ・A-aDO2正常の低酸素血症:肺胞低換気、吸入気酸素分圧低下
