略称を開けば役割が見える―JICA・WHO・UNICEF・UNHCR・UNESCOの仕事を正しく結ぶ
第111回医師国家試験 E問題 第30問
国試問題にチャレンジ
国際機関と事業内容の組合せで正しいのはどれか。
- a.JICA ―― 専門家派遣による技術協力
- b.UNESCO ―― 児童の福祉・健康改善
- c.UNHCR ―― 二国間無償資金協力
- d.UNICEF ―― 政府開発援助
- e.WHO ―― 難民の帰還支援
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
国際機関の問題は、略称を正式名称に開くと役割が推測しやすくなります。UNICEFは子どもの生命・健康・福祉、UNESCOは教育・科学・文化、UNHCRは難民の保護と帰還・定住支援、WHOは保健医療全般を担います。JICAは日本のODAのうち二国間援助を実施する独立行政法人で、専門家派遣や研修員受け入れによる技術協力、円借款、無償資金協力を行うため、「JICA―専門家派遣による技術協力」が正しい組合せです。二国間援助と国際機関への拠出(多国間援助)を区別しておくと、ODAに関する選択肢にも惑わされません。国際保健の担い手を整理しておくことは、グローバルな健康課題を理解し、将来の多様なキャリアを考えるうえでも役立ちます。
解答・解説
正解はaです
国際保健に関わる主な機関について、略称・正式名称・主な活動を正しく結び付けられるかを問う問題である。 国際機関は英語の略称で呼ばれることが多いため、まず略称を正式名称に直してみると、その機関の役割が推測しやすい。 ・JICA(Japan International Cooperation Agency): 独立行政法人国際協力機構。日本の政府開発援助(ODA)のうち二国間援助を一元的に実施する。 ・UNESCO(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization): 国連教育科学文化機関。教育・科学・文化 ・UNHCR(Office of the United Nations High Commissioner for Refugees): 国連難民高等弁務官事務所。難民の保護と支援 ・UNICEF(United Nations Children's Fund): 国連児童基金。子どもの生命・健康・福祉 ・WHO(World Health Organization): 世界保健機関。保健・医療 このように整理すると、選択肢b〜eでは、事業内容が別の機関や別の主体の役割と入れ替えられていることがわかる。正しい組合せは、JICAと専門家派遣による技術協力である。 なお、JICAは国連などの多国間の国際機関ではなく、日本の独立行政法人である。本問では、国際協力を担う機関の一つとして同列に扱われている。
選択肢考察
- ○a. JICA ―― 専門家派遣による技術協力
JICA(国際協力機構)は、日本のODAのうち二国間援助を担う独立行政法人である。事業は大きく三つに分かれる。 ・技術協力: 専門家の派遣、開発途上国からの研修員の受け入れ、機材の供与など ・有償資金協力: 円借款 ・無償資金協力: 外務省が直接実施するものを除く 専門家派遣による技術協力はJICAの中心的な事業であり、組合せとして正しい。保健医療分野でも、感染症対策、母子保健、保健システムの強化などで専門家を派遣している。JICA海外協力隊(旧称: 青年海外協力隊など)の派遣もJICAが行っている。
- ×b. UNESCO ―― 児童の福祉・健康改善
UNESCO(国連教育科学文化機関)は、教育・科学・文化・コミュニケーションの分野での国際協力を通じて、世界の平和と安全に貢献することを目的とする国連の専門機関である(本部はパリ)。識字教育や基礎教育の普及、世界遺産の登録・保護などがよく知られている。児童の福祉・健康の改善を主な任務とするのはUNICEFであり、組合せが誤っている。
- ×c. UNHCR ―― 二国間無償資金協力
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、紛争や迫害によって故郷を追われた難民・国内避難民・無国籍者などを保護・支援する国連の機関である(本部はジュネーブ)。難民問題の恒久的な解決策として、自主的な帰還、避難先の国への定住(庇護国での社会統合)、第三国への定住を支援している。二国間無償資金協力は、日本政府(外務省およびJICA)が開発途上国に返済義務のない資金を供与するODAの一形態であり、国連の多国間機関であるUNHCRの事業ではない。
- ×d. UNICEF ―― 政府開発援助
UNICEF(国連児童基金)は、開発途上国や紛争・災害の被災地の子どもたちの生命・健康・福祉を守ることを目的とする国連の機関である(本部はニューヨーク)。予防接種の普及、栄養改善、安全な水と衛生、基礎教育、子どもの保護などに取り組んでいる。政府開発援助(ODA)は、各国政府やその実施機関が開発途上国に対して行う援助を指す言葉であり、特定の国連機関の事業名ではない。各国政府がUNICEFに拠出する資金は多国間援助としてODAに数えられるが、UNICEFの事業内容を表す組合せとしては誤りである。
- ×e. WHO ―― 難民の帰還支援
WHO(世界保健機関)は、「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的とする国連の専門機関である(1948年設立、本部はジュネーブ)。感染症対策(国際保健規則〈IHR〉の運用、パンデミック対応)、保健に関する国際基準の策定(国際疾病分類〈ICD〉など)、たばこ規制枠組条約(FCTC)、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進などを行う。難民の帰還支援はUNHCRの任務であり、組合せが誤っている。
主な国際保健関連機関の整理
・WHO(世界保健機関): 国連の専門機関で、保健分野全般を担う。本部はジュネーブ。WHO憲章の前文で健康を定義している。 ・UNICEF(国連児童基金): 子どもの生命・健康・栄養・教育・保護を担う。本部はニューヨーク。 ・UNHCR(国連難民高等弁務官事務所): 難民などの保護と支援を担う。本部はジュネーブ。 ・UNESCO(国連教育科学文化機関): 教育・科学・文化を担う。本部はパリ。 ・UNFPA(国連人口基金): 人口問題、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を担う。 ・WFP(国連世界食糧計画): 食糧支援を担う。 ・ILO(国際労働機関): 労働条件の改善、労働安全衛生を担う。 ・FAO(国連食糧農業機関): 農業・食糧生産・栄養を担う。FAO/WHO合同で食品規格(コーデックス)を策定している。 ・UNAIDS(国連合同エイズ計画): HIV/AIDS対策を担う。 ・世界銀行: 開発途上国への融資・開発支援を行う。
政府開発援助(ODA)の分類
・二国間援助(贈与): 無償資金協力、技術協力 ・二国間援助(政府貸付): 円借款などの有償資金協力 ・多国間援助: 国際機関への拠出・出資 日本では、二国間援助の実施はJICAに一元化されている(無償資金協力の一部は外務省が直接実施する)。
JICAの関連事業
専門家派遣、研修員受け入れ、JICA海外協力隊の派遣、国際緊急援助隊(JDR)の派遣事務など。
POINT
・JICA: 日本のODA(二国間援助)の実施機関。専門家派遣などの技術協力、円借款、無償資金協力を行う。 ・UNESCO: 教育・科学・文化 ・UNHCR: 難民の保護と帰還・定住の支援 ・UNICEF: 子どもの生命・健康・福祉 ・WHO: 保健医療全般 ・略称を正式名称に直すと、その機関の役割を推測しやすい。
