核まで隠す暗紫色の顆粒―血液塗抹で好塩基球を見抜く
第111回医師国家試験 E問題 第29問
国試問題にチャレンジ
末梢血白血球のWright-Giemsa染色標本(①~⑤)を別に示す。 細胞表面にIgEに対するレセプターを持ち,脱顆粒を起こしヒスタミンを遊離するのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
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ドクターまとめ
IgE受容体(FcεRI)をもち、アレルゲンによるIgEの架橋で脱顆粒してヒスタミンを放出するのは好塩基球と肥満細胞で、このうち末梢血中を循環するのは好塩基球です。Wright-Giemsa染色では、暗紫色の粗大な顆粒が核の上にも重なって核の形が見えにくいことが好塩基球の特徴で、橙赤色の顆粒と2分葉核をもつ好酸球との区別が重要です。好中球は淡いピンクの微細顆粒と分葉核、リンパ球は小型で濃染する円形核、単球は最大で切れ込みのある核と灰青色の細胞質が目印になります。好塩基球は通常白血球の1%程度以下と最も少ないものの、慢性骨髄性白血病では増加が特徴的で、病期判断の目安にもなります。白血球の形態と機能を結び付けて理解することは、血液像の読影からアレルギーの病態理解まで幅広く役立ちます。
解答・解説
正解はeです
末梢血の5種類の白血球(好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球)を形態で見分け、その機能と結び付けられるかを問う問題である。
設問の読み解き
設問の条件は二つある。「細胞表面にIgEに対する受容体をもつ」ことと、「脱顆粒によってヒスタミンを放出する」ことである。この二つを満たす細胞は、I型(即時型)アレルギー反応の実行役となる好塩基球と肥満細胞(マスト細胞)である。このうち末梢血中を流れているのは好塩基球であり、肥満細胞は組織に定着していて通常は末梢血に出てこない。したがって、5つの標本から好塩基球を選べばよい。
形態による見分け方(Wright-Giemsa染色)
・好塩基球: 暗紫色〜青黒色に染まる粗大な顆粒が細胞質を埋め、核の上にも重なるため、核の形がはっきり見えないことが多い(⑤) ・好酸球: 橙赤色に染まる大きく均一な顆粒が細胞質に充満し、核は2分葉のことが多い(②) ・好中球: 細胞質は淡いピンク色で微細な顆粒をもち、核は3〜5分葉の分葉核(③) ・リンパ球: 赤血球よりやや大きい小型の細胞で、円形の濃染する核が細胞の大部分を占め、細胞質はわずかで青い(①) ・単球: 白血球の中で最も大きく、核は腎臓形・馬蹄形・切れ込みのある形などをとる。細胞質は広く灰青色で、空胞をもつことがある(④)
I型アレルギーの機序
アレルゲンに感作されると、アレルゲンに特異的なIgEが産生される。このIgEは、好塩基球・肥満細胞の表面にある高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合する。再びアレルゲンが入ってくると、隣り合う受容体上のIgEがアレルゲンによって架橋され、細胞が活性化して脱顆粒する。その結果、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、血管透過性の亢進、平滑筋の収縮、粘液分泌の増加などを引き起こす。
選択肢考察
- ×a. ①
①は小型で、円形の濃染する核が細胞の大部分を占め、細胞質がわずかなリンパ球である。リンパ球は獲得免疫の中心となる細胞である。B細胞は形質細胞に分化して抗体を産生し、T細胞は細胞性免疫(ウイルス感染細胞や腫瘍細胞の傷害など)や免疫応答の調節を担う。NK細胞は自然免疫として感染細胞や腫瘍細胞を傷害する。B細胞はIgE抗体を産生する側の細胞であり、IgE受容体を介して脱顆粒しヒスタミンを放出する細胞ではない。
- ×b. ②
②は橙赤色に染まる大型で均一な顆粒が細胞質に充満した好酸球である。好酸球は、寄生虫感染や、気管支喘息などのアレルギー性炎症の遅発相で増加し、炎症部位に集まる。顆粒には、主要塩基性タンパク(MBP)、好酸球陽イオンタンパク(ECP)、好酸球ペルオキシダーゼなどの組織傷害性のタンパクが含まれ、寄生虫の傷害に働く一方で、気道上皮の傷害など組織障害の原因にもなる。アレルギーに関わる細胞ではあるが、IgE受容体を介した脱顆粒でヒスタミンを放出してI型アレルギーの即時相を起こす主役ではない。
- ×c. ③
③は、淡いピンク色の微細な顆粒をもち、核が3〜5分葉した分葉核好中球である。好中球は末梢血の白血球の中で最も多く(40〜70%程度)、細菌感染の際に真っ先に動員される。細菌を貪食し、活性酸素やリソソーム酵素で殺菌する、自然免疫の主役である。IgE受容体を介してヒスタミンを放出する細胞ではない。
- ×d. ④
④は大型で、切れ込みのある核と広い灰青色の細胞質をもつ単球である。単球は血管外の組織に移動すると、マクロファージや樹状細胞へ分化する。貪食によって病原体や死細胞を処理するほか、抗原提示やサイトカイン産生によって免疫応答を調節する。IgE受容体を介した脱顆粒でヒスタミンを放出する細胞ではない。
- ○e. ⑤
⑤は、暗紫色に染まる粗大な好塩基性顆粒が細胞質を埋め、核の輪郭が見えにくい好塩基球である。好塩基球は細胞表面に高親和性IgE受容体(FcεRI)をもつ。受容体に結合したIgEがアレルゲンで架橋されると脱顆粒し、ヒスタミンやヘパリンなどを放出する。さらに、ロイコトリエンなどの脂質メディエーターやIL-4などのサイトカインも産生し、I型アレルギー反応を引き起こす。末梢血の白血球の中で最も少なく、通常は1%程度以下である。組織にある肥満細胞も同じくFcεRIをもち、同様の働きをする。
末梢血白血球の基準割合(おおよそ)
好中球 40〜70%、リンパ球 20〜40%、単球 3〜8%程度、好酸球 1〜5%程度、好塩基球 0〜1%程度
好塩基球と肥満細胞の比較
・好塩基球: 骨髄で成熟して末梢血を循環し、アレルギー性炎症の部位へ動員される。核は分葉する。 ・肥満細胞: 骨髄由来の前駆細胞が組織(皮膚、気道や消化管の粘膜、結合組織など)へ移行してから成熟し、組織に定着する。核は円形である。 ・どちらもFcεRIをもち、IgEの架橋によって脱顆粒し、ヒスタミンなどを放出する。
I型アレルギーの主な化学伝達物質
・あらかじめ顆粒に蓄えられているもの: ヒスタミン、ヘパリン、トリプターゼ(主に肥満細胞)など ・活性化後に新たに合成されるもの: ロイコトリエン(LTC4など)、プロスタグランジンD2、血小板活性化因子(PAF)、サイトカイン(IL-4、IL-13など)
好塩基球が増加する主な病態
慢性骨髄性白血病(CML)などの骨髄増殖性腫瘍、アレルギー疾患、甲状腺機能低下症など。CMLでは好塩基球の増加が特徴的で、移行期・急性転化を判断する目安の一つにもなる。
POINT
・IgE受容体(FcεRI)をもち、脱顆粒でヒスタミンを放出するのは、好塩基球(末梢血)と肥満細胞(組織)である。 ・好塩基球は、暗紫色の粗大な顆粒が核の上にも重なり、核の形が見えにくいのが特徴である。 ・好酸球は橙赤色の顆粒と2分葉核、好中球は淡いピンク色の微細顆粒と3〜5分葉核が特徴である。 ・好塩基球は白血球の中で最も少ない(通常1%程度以下)。
