StudyMed医師国家試験

ステロイドが効かなくなる抗結核薬―リファンピシンの「酵素誘導」を見抜け

第111回医師国家試験 E問題 第31問

国試問題にチャレンジ

第111回 E問題 第31問

抗結核薬のうち副腎皮質ステロイドの効果を減弱させるのはどれか。

  1. a.ピラジナミド
  2. b.イソニアジド
  3. c.リファンピシン
  4. d.エタンブトール
  5. e.ストレプトマイシン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は抗結核薬の薬物相互作用を問う問題だ。「ステロイドの効果を減弱させる」という言葉を、薬理学的にどう言い換えられるかがカギになる。まず、ステロイドは体内でどう処理されるか覚えているかな。
医学生医学生
肝臓で代謝されるんでしたよね。薬理学の講義でCYPが出てきた気がします。
ドクタードクター
その通り。プレドニゾロンなどのステロイドは、主に肝臓のシトクロムP450のひとつ、CYP3A4で代謝されて不活化される。では、CYP3A4の量が増えたらどうなるだろう。
医学生医学生
代謝が速くなって血中濃度が下がるので、効き目が弱くなる……つまり「効果減弱=CYP誘導」ということですね。
ドクタードクター
見事な言い換えだ。抗結核薬の中で強力な酵素誘導作用をもつ代表がリファンピシン。だから正解はリファンピシンになる。
医学生医学生
でもイソニアジドも肝障害を起こすので、肝臓の酵素に何か影響しそうに思えてしまいます。
ドクタードクター
いい疑問だね。肝障害を起こすことと、代謝酵素を誘導することは別の話なんだ。しかもイソニアジドはむしろ一部のCYPを阻害する方向に働き、フェニトインなどの血中濃度を上げることがある。ステロイドの効果を弱める薬ではないよ。
医学生医学生
イソニアジドといえば、末梢神経障害の予防にビタミンB6を併用するんでしたね。
ドクタードクター
そう、ピリドキシン欠乏による末梢神経障害が重要な副作用だ。イソニアジドはミコール酸合成を阻害する、抗結核薬の中核となる殺菌薬だよ。ではピラジナミドはどうかな。
医学生医学生
高尿酸血症が有名で、呼吸器内科の実習で痛風発作を起こした患者さんがいました。
ドクタードクター
よく覚えているね。ピラジナミドは酸性環境下の休止期の菌に強く効き、初期2か月に加えることで治療期間を6か月に短縮できる。副作用は肝障害と高尿酸血症で、酵素誘導作用はない。
医学生医学生
エタンブトールは視神経障害、ストレプトマイシンは聴力障害ですよね。どちらもCYPとは関係なさそうです。
ドクタードクター
その理解で合っている。エタンブトールは球後視神経炎による視力低下や赤緑色覚の異常が出るので、自覚症状の確認と定期的な眼科診察が大切だ。ストレプトマイシンはアミノグリコシド系で、第Ⅷ脳神経障害によるめまいや難聴、そして腎障害に注意する。ほぼ代謝されずに腎から排泄されるから、ステロイドの代謝にも影響しない。
医学生医学生
各薬剤の副作用を一つずつ押さえておけば、相互作用の問題でも消去法が使えますね。
ドクタードクター
そうだね。ここからは臨床での注意点だ。ステロイドを内服中の人に結核が見つかってリファンピシンを始めたら、何が起こりうると思う?
医学生医学生
ステロイドの効き目が落ちて、もとの病気が悪化するかもしれない……膠原病の患者さんだと再燃が心配です。
ドクタードクター
その通り。だからリファンピシン併用時にはステロイドを概ね2倍程度に増量する必要があるとされる。逆にリファンピシンを中止したときは、酵素誘導が徐々に消えてステロイドの効果が戻るので、量の調整が必要になる点も覚えておこう。
医学生医学生
同じ理屈で、ほかにも効きにくくなる薬がありそうですね。
ドクタードクター
たくさんあるよ。ワルファリン、経口避妊薬、シクロスポリンやタクロリムスといった免疫抑制薬、アゾール系抗真菌薬、多くの抗HIV薬などだ。ボリコナゾールとは併用禁忌になっている。移植後や膠原病の患者さんで結核を治療するときは、薬剤師と一緒に併用薬を必ず確認したい。
医学生医学生
CYP誘導薬はリファンピシンのほかにフェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、阻害薬はアゾール系やマクロライド系、グレープフルーツジュース、とCBTの前にまとめた覚えがあります。
ドクタードクター
その表がそのまま臨床で役立つ。リファンピシンでは尿や涙が橙赤色に着色すること、血小板減少やインフルエンザ様症状が出ることも合わせて覚えておこう。患者さんに尿の色が変わると事前に説明しておくと、不安を減らせるよ。

まとめ

副腎皮質ステロイドは主に肝臓のCYP3A4で代謝されるため、CYPを強力に誘導するリファンピシンを併用すると代謝が促進され、血中濃度が下がって効果が減弱します。そのためリファンピシン併用時にはステロイドを概ね2倍程度に増量する必要があるとされ、ワルファリン、経口避妊薬、免疫抑制薬、アゾール系抗真菌薬、抗HIV薬なども同様に効果が低下します。イソニアジド(末梢神経障害、ビタミンB6で予防)、ピラジナミド(高尿酸血症)、エタンブトール(視神経障害)、ストレプトマイシン(第Ⅷ脳神経障害・腎障害)には臨床的に問題となる酵素誘導作用はありません。「効果減弱=代謝促進=CYP誘導」と言い換えて考える習慣は、多剤併用が当たり前の臨床現場で相互作用を見落とさないための基本になります。

解答・解説

正解はcです

本問は抗結核薬の薬物相互作用、とくに肝臓の薬物代謝酵素に対する作用を問う問題である。 副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)は主に肝臓のシトクロムP450(CYP)の一つであるCYP3A4によって代謝・不活化される。したがって、CYP3A4を「誘導」する(酵素量を増やす)薬剤を併用すると、ステロイドの代謝が速まって血中濃度と作用時間が低下し、効果が弱まる。 抗結核薬の中で強力な酵素誘導作用をもつ代表がリファンピシンである。他の主要な抗結核薬(イソニアジド、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン)には臨床的に問題となる酵素誘導作用はない。したがって「ステロイドの効果を減弱させる抗結核薬」としてリファンピシンを選べばよい。 考え方としては、「効果を減弱させる=代謝を促進する=CYPを誘導する」と言い換え、CYP誘導薬の代表(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタールなど)を想起するとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  ピラジナミド

    ピラジナミド(PZA)は酸性環境下(マクロファージ内や乾酪巣内)で休止期の結核菌に強い殺菌作用を示し、初期2か月の強化期に加えることで治療期間を6か月に短縮できる重要な薬剤である。主な副作用は肝障害と高尿酸血症(腎での尿酸排泄を抑制するため)で、痛風発作を誘発することもある。CYPを誘導する作用はなく、ステロイドの代謝には影響しない。

  2. ×b.  イソニアジド

    イソニアジド(INH)は結核菌の細胞壁成分であるミコール酸の合成を阻害し、抗結核薬の中で最も強力な殺菌作用をもつ中心的薬剤である。副作用として肝障害と末梢神経障害が重要で、後者はビタミンB6(ピリドキシン)欠乏によるため、予防にビタミンB6を併用する。イソニアジドはむしろ一部のCYPを阻害し、フェニトインなどの血中濃度を上昇させる方向に働く。ステロイドの効果を減弱させる薬剤ではない。

  3. ○c.  リファンピシン

    リファンピシン(RFP)は細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼを阻害する殺菌的抗結核薬であり、同時に肝臓のCYP3A4をはじめとする薬物代謝酵素を強力に誘導する。その結果、併用されたステロイドの代謝が促進され、血中濃度が下がって効果が減弱する。このため、ステロイド投与中の患者にリファンピシンを開始する場合は、ステロイドをおおむね2倍程度に増量する必要があるとされる。同じ機序で、ワルファリン、経口避妊薬、シクロスポリン・タクロリムスなどの免疫抑制薬、アゾール系抗真菌薬(ボリコナゾールは併用禁忌)、多くの抗HIV薬(プロテアーゼ阻害薬など)の血中濃度も低下させる。そのほか、尿・汗・涙などの橙赤色着色、肝障害、血小板減少、インフルエンザ様症状なども知っておくべき特徴である。

  4. ×d.  エタンブトール

    エタンブトール(EB)は細胞壁のアラビノガラクタン合成を阻害する静菌的薬剤で、多剤併用療法において耐性菌出現を防ぐ役割をもつ。代表的な副作用は視神経障害(球後視神経炎)で、視力低下や色覚異常(とくに赤緑色覚の障害)、中心暗点を生じる。用量依存性で、早期に中止すれば多くは回復するため、「見えにくい」「かすむ」などの自覚症状の早期発見と定期的な眼科診察が重要である。酵素誘導作用はなく、ステロイドの効果には影響しない。

  5. ×e.  ストレプトマイシン

    ストレプトマイシン(SM)はアミノグリコシド系抗菌薬で、リボソーム30Sサブユニットに結合して蛋白合成を阻害する。筋注で用いられる。副作用は第Ⅷ脳神経障害(前庭障害によるめまい・平衡障害、蝸牛障害による感音難聴)と腎障害が重要で、高齢者や腎機能低下例では特に注意が必要である。肝臓での代謝をほとんど受けず腎から排泄される薬剤であり、CYPを誘導しないためステロイドの効果を減弱させない。

肺結核の標準治療

治療開始時は菌量が多く、薬剤感受性も判明していないため、耐性菌の出現を防ぐ目的で必ず多剤併用とする。標準治療(A法)では、初期2か月間をイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、ピラジナミド(PZA)にエタンブトール(EB)またはストレプトマイシン(SM)を加えた4剤で治療し、続く4か月間をINHとRFPの2剤で継続する(合計6か月)。PZAが使用できない場合(高度の肝障害、妊娠など)は、INH・RFP・EB(またはSM)で2か月治療した後、INH・RFPを7か月継続する(合計9か月、B法)。

主な抗結核薬の副作用のまとめ

INH:肝障害、末梢神経障害(ビタミンB6で予防) RFP:肝障害、橙赤色の尿・体液、血小板減少、薬物代謝酵素誘導による相互作用 PZA:肝障害、高尿酸血症 EB:視神経障害(視力低下、色覚異常) SM:第Ⅷ脳神経障害(めまい、難聴)、腎障害

CYP誘導と阻害

CYP誘導薬(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ含有食品など)は併用薬の血中濃度を下げる。逆にCYP阻害薬(アゾール系抗真菌薬、マクロライド系抗菌薬、グレープフルーツジュースなど)は併用薬の血中濃度を上げる。ステロイド、ワルファリン、免疫抑制薬、経口避妊薬はいずれもこの相互作用の影響を受けやすい代表的薬剤である。

POINT

・ステロイドの効果を減弱させる抗結核薬はリファンピシン(CYP3A4などの薬物代謝酵素を強力に誘導)。 ・リファンピシン併用時はステロイドを約2倍に増量する。 ・リファンピシンはワルファリン、経口避妊薬、免疫抑制薬、アゾール系抗真菌薬、抗HIV薬の効果も減弱させる。 ・副作用の対応:INH=末梢神経障害、PZA=高尿酸血症、EB=視神経障害、SM=第Ⅷ脳神経障害・腎障害。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。