StudyMed医師国家試験

DIP関節は「リウマチの圏外」―関節の分布で読み解く関節リウマチ

第111回医師国家試験 C問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第111回 C問題 第12問

関節リウマチで関節炎がみられないのはどれか。

  1. a.手関節
  2. b.股関節
  3. c.中足趾節関節
  4. d.中手指節関節
  5. e.遠位指節間関節

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、関節リウマチでどの関節が侵されるのか、逆にどこが侵されないのかを問う知識問題だ。ポイントは「関節炎の分布」。分布がわかると、手を診ただけで鑑別がぐっと進むようになるよ。まず、関節リウマチがどんな病気か簡単に言えるかな。
医学生医学生
滑膜に慢性炎症が起こる自己免疫疾患で、増殖した滑膜が軟骨や骨を壊していく病気ですよね。病理の講義でパンヌスという言葉を習いました。
ドクタードクター
その通り。30〜50歳代の女性に多く、手足の小関節から左右対称性・多発性に関節炎が始まるのが典型だ。具体的にはどの関節が好発部位だろう。
医学生医学生
手関節、MCP関節、PIP関節……それと足のMTP関節でしょうか。
ドクタードクター
よく押さえているね。手関節は最も侵されやすい関節の一つで、早期から腫脹や痛みが出る。中手指節関節、つまりMCP関節も代表的な好発部位で、進行すると指が小指側に傾く尺側偏位が起こる。中足趾節関節、MTP関節も手の小関節と並んで早期から侵されやすく、X線で骨びらんが早く出やすい部位でもあるんだ。
医学生医学生
足の指の付け根も診るんですね。てっきり手だけ見ればいいのかと思っていました。
ドクタードクター
そこは見落としやすいところだね。患者さんは「歩くと足の裏の前のほうが痛い」と訴えることもあるから、靴下を脱いでもらって診察するのが大事だよ。では股関節はどうかな。
医学生医学生
股関節は大きい関節なので、リウマチっぽくない気がします。
ドクタードクター
そう考えたくなるけれど、ここは注意が必要だ。股関節が初発部位になることは少ないものの、病気が進行すると膝・股・肩・肘といった大関節や、頸椎の環軸関節にも病変は広がる。股関節が破壊されて人工股関節置換術が必要になることもあるんだ。だから「関節炎がみられない」とは言えない。
医学生医学生
となると、残るのは遠位指節間関節、DIP関節ですね。リウマチではDIPは侵されないと聞いたことがあります。
ドクタードクター
正解。DIP関節は関節リウマチでは原則として関節炎を起こさない部位なんだ。実際、2010年のACR/EULAR分類基準でも、DIP関節は関節数を数える対象から除外されている。変形性関節症などとの重なりが大きいからだね。
医学生医学生
でもスワンネック変形ではDIP関節が曲がっていますよね。あれはDIPにも炎症があるからではないんですか。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。スワンネック変形はPIP関節の過伸展とDIP関節の屈曲、ボタン穴変形はPIP関節の屈曲とDIP関節の過伸展だ。どちらもDIPの肢位は変わるけれど、それはMCPやPIPの病変で腱のバランスが崩れた結果の二次的な変化で、DIP関節そのものに滑膜炎があるわけではないんだ。
医学生医学生
なるほど、形が変わっていても炎症の場所は別なんですね。では、DIP関節が腫れていたら何を考えればいいでしょうか。
ドクタードクター
代表的なのは2つ。1つは変形性関節症で、DIP関節の骨性の結節がHeberden結節、PIP関節ならBouchard結節だ。もう1つは乾癬性関節炎で、DIP関節を侵しやすく、非対称性の少関節炎、指全体が腫れるソーセージ指、爪の変化、付着部炎を伴うのが特徴だよ。
医学生医学生
整形外科の実習で、中年女性の指先の硬いこぶを見てHeberden結節だと教わりました。リウマチと間違えて受診される方もいると聞きました。
ドクタードクター
外来では本当によくある話だね。リウマチの腫れは滑膜の腫れだから柔らかく、Heberden結節は骨のように硬い、という触診の違いも役立つ。ついでに痛風も整理しておこう。痛風は第1MTP関節、つまり母趾の付け根に急性の単関節炎として初発することが多い。同じMTPでも、リウマチは対称性・多発性、痛風は急性・単関節という違いがある。
医学生医学生
分布と経過のパターンで、かなり鑑別できるんですね。
ドクタードクター
そう。最後に臨床での注意点をひとつ。進行したリウマチでは環軸関節の滑膜炎から環軸椎亜脱臼が起こることがあって、脊髄圧迫による神経症状の原因になる。全身麻酔の挿管で頸部を強く後屈させると危険なこともあるから、手術前には頸椎の評価を忘れないようにしよう。
医学生医学生
手の小関節の病気だと思っていたら、首まで気をつけないといけないんですね。麻酔科の実習で術前評価を見るときに意識してみます。

まとめ

関節リウマチは滑膜の慢性炎症により関節が破壊される自己免疫疾患で、手関節、MCP関節、PIP関節、MTP関節といった小関節に左右対称性・多発性の関節炎を生じ、進行すると股関節や膝関節などの大関節、環軸関節にも及びます。一方、DIP関節は原則として侵されず、2010年ACR/EULAR分類基準でも評価対象から除外されています。DIP関節の病変をみたら変形性関節症(Heberden結節)や乾癬性関節炎を考え、母趾基部の急性単関節炎なら痛風を考えるなど、関節炎の分布は鑑別の強力な手がかりになります。スワンネック変形などのDIP関節の肢位異常は腱バランスの崩れによる二次的な変化である点もあわせて理解しておくと、手の診察から病態を立体的に読み取れるようになります。

解答・解説

正解はeです

関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、関節の滑膜に慢性炎症(滑膜炎)が起こり、増殖した滑膜(パンヌス)が軟骨や骨を破壊していく自己免疫疾患である。30〜50歳代の女性に多い。

RAで侵されやすい関節

典型的には手指・足趾の小関節から始まり、左右対称性・多発性に関節炎が生じる。好発部位は、手関節、中手指節関節(MCP関節)、近位指節間関節(PIP関節)、中足趾節関節(MTP関節)である。病気が進行すると、膝・股・肩・肘・足などの大関節や、頸椎(特に環軸関節)にも病変が広がる。

RAで侵されにくい関節

遠位指節間関節(DIP関節)はRAでは原則として関節炎を起こさない部位である。このためDIP関節に腫脹や変形がみられた場合は、RAよりも変形性関節症(Heberden結節)や乾癬性関節炎などを考える。 以上から、選択肢のうちRAで関節炎がみられないのはDIP関節である。

選択肢考察

  1. ×a.  手関節

    手関節はRAで最も侵されやすい関節の一つであり、発症早期から腫脹や疼痛をきたすことが多い。進行すると尺骨頭の背側への突出や手根骨の破壊・強直などがみられる。

  2. ×b.  股関節

    股関節は大関節であり、RAの初発部位となることは少ないが、病気が進行すると侵される。関節破壊が進むと高度の機能障害をきたし、人工股関節置換術の対象となることもある。RAで関節炎が起こり得る部位である。

  3. ×c.  中足趾節関節

    中足趾節関節(MTP関節)はRAの好発部位であり、手の小関節と並んで早期から侵されやすい。足趾の付け根の痛みとして自覚され、進行すると外反母趾や趾の脱臼・変形(槌趾など)をきたす。X線で骨びらんが早期に出やすい部位でもある。

  4. ×d.  中手指節関節

    中手指節関節(MCP関節)はRAの代表的な好発部位である。慢性的な滑膜炎により靱帯や腱が弛緩・偏位し、指の尺側偏位や基節骨の掌側亜脱臼といった特徴的な変形をきたす。

  5. ○e.  遠位指節間関節

    遠位指節間関節(DIP関節)は、RAでは原則として関節炎を起こさない。2010年米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会(ACR/EULAR)の分類基準でも、DIP関節は評価対象の関節から除外されている。DIP関節が侵される代表的な疾患は、変形性関節症(Heberden結節)と乾癬性関節炎であり、RAとの鑑別点となる。

RAの手指変形

・尺側偏位:MCP関節で指が小指側へ傾く。 ・スワンネック変形:PIP関節の過伸展とDIP関節の屈曲。 ・ボタン穴変形:PIP関節の屈曲とDIP関節の過伸展。 DIP関節の肢位異常は、PIP関節やMCP関節の病変に伴う腱バランスの崩れによる二次的なものであり、DIP関節自体に滑膜炎が起こるわけではない。

関節病変の分布による鑑別

・RA:手関節、MCP、PIP、MTP関節に対称性・多発性。DIP関節は侵されない。 ・変形性関節症(手指):DIP関節(Heberden結節)、PIP関節(Bouchard結節)、母指CM関節。 ・乾癬性関節炎:DIP関節を侵しやすく、非対称性の少関節炎、指全体が腫れる指趾炎(ソーセージ指)、爪病変、付着部炎を伴う。 ・痛風:第1中足趾節関節(母趾基部)に急性単関節炎として初発することが多い。

2010年ACR/EULAR分類基準

1か所以上の臨床的滑膜炎があり、他疾患で説明できない場合に、関節病変の数と分布、血清学的検査(リウマトイド因子・抗CCP抗体)、急性期反応物質(CRP・赤沈)、症状の持続期間(6週以上か)を点数化し、合計6点以上(10点満点)でRAと分類する。関節数を数える際、DIP関節・第1CM関節・第1MTP関節は変形性関節症などとの重なりがあるため除外される。

頸椎病変

RAでは環軸関節の滑膜炎により環軸椎亜脱臼をきたすことがあり、脊髄圧迫による神経症状を起こし得る。全身麻酔の挿管時など頸部の過度な前屈・後屈に注意が必要である。

POINT

・RAの好発部位:手関節、MCP関節、PIP関節、MTP関節(小関節に対称性・多発性)。進行すると大関節(膝・股など)や環軸関節も侵す。 ・RAではDIP関節は侵されない。 ・DIP関節を侵すのは変形性関節症(Heberden結節)と乾癬性関節炎。 ・RA特有の手指変形:尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。