StudyMed医師国家試験

eGFRに必要なのはあと1つ―クレアチニンと「筋肉」の関係で読み解く推算式

第111回医師国家試験 C問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第111回 C問題 第11問

eGFRを求めるために血清クレアチニン値と性別の他に必要なのはどれか。

  1. a.血圧
  2. b.血糖
  3. c.体重
  4. d.尿酸
  5. e.年齢

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は腎機能の指標、eGFRの問題だ。日常診療の採血結果に当たり前のように載っている数字だけど、どんな情報から計算されているかを知っておくと、その値の限界も見えてくる。鍵になるのは「クレアチニンがどこで作られるか」だよ。
医学生医学生
eGFRは推算糸球体濾過量ですよね。腎臓内科を回ったとき、採血結果に自動で表示されていたのでそのまま見ていました。
ドクタードクター
多くの人がそうだね。まず基本から。GFRを最も正確に測るのはイヌリンクリアランスだ。イヌリンは糸球体で自由に濾過され、尿細管で再吸収も分泌もされないから、そのクリアランスがGFRに等しくなる。ただ持続点滴や採尿が必要で手間がかかるから、日常診療では血液データから推算する式を使うんだ。
医学生医学生
日本人向けの式は、血清クレアチニン値に何かを掛け合わせる形だったと思います。体重も入っていましたっけ?
ドクタードクター
そこが今回の落とし穴だ。日本人向けのeGFRcrの式に入る変数は、血清クレアチニン値、年齢、性別の3つだけ。具体的には194×クレアチニン値の−1.094乗×年齢の−0.287乗で、女性はさらに0.739を掛ける。だから正解は年齢だ。
医学生医学生
なぜ年齢と性別が必要なんでしょうか。
ドクタードクター
クレアチニンは筋肉で作られる代謝産物で、産生量は筋肉量に左右される。筋肉量は加齢とともに減り、女性は男性より少ない傾向がある。つまり同じ血清クレアチニン値でも、高齢の女性と若い男性では腎機能の意味が違う。その差を補正するために年齢と性別が式に組み込まれているんだ。
医学生医学生
なるほど。生理学の講義で「クレアチニンは筋肉の量を反映する」と習ったのがここにつながるんですね。でも筋肉量なら、体重のほうが直接反映しそうに思えます。
ドクタードクター
自然な疑問だね。でもeGFRは体表面積1.73m²あたりに標準化した値として算出されるから、体重や身長は式に入らない。体重を使うのはCockcroft-Gault式、つまり推算クレアチニンクリアランスのほうだ。(140−年齢)×体重÷(72×クレアチニン値)で、女性は0.85を掛ける。
医学生医学生
CBTの勉強のとき、その2つを混同していました。体重を使うのはCockcroft-Gault式、と覚えておきます。
ドクタードクター
それで大丈夫。Cockcroft-Gault式は今でも薬物投与量の調整で使われることがあるから、臨床でも出会うよ。残りの選択肢も確認しておこう。血圧と血糖はどうかな。
医学生医学生
どちらもCKDの原因や増悪因子ですよね。糖尿病性腎症は透析導入の原因疾患で一番多いと習いました。でも式には入らない。
ドクタードクター
その通り。どちらもCKD診療で厳格に管理すべき項目だけれど、eGFRの計算には使わない。尿酸はどうだろう。
医学生医学生
腎機能が落ちると尿酸が上がるので関係はありそうですが、これも推算式とは無関係ですね。
ドクタードクター
正解。高尿酸血症はCKDの進行との関連も指摘されているけれど、eGFRの算出には用いない。「病態として関係があること」と「計算式に入ること」を区別するのがこの問題のポイントだ。
医学生医学生
クレアチニンが筋肉量に左右されるなら、寝たきりの高齢者などではeGFRがずれそうです。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。筋肉量が極端に少ない人――やせた高齢者、長期臥床、四肢切断など――ではクレアチニンが低めに出て、eGFRcrは腎機能を過大評価しやすい。逆に筋肉量の多いアスリートなどでは過小評価しやすい。そういうときに役立つのがシスタチンCを使ったeGFRcysだ。
医学生医学生
シスタチンCは筋肉量の影響を受けにくいんですよね。その式も年齢と性別は使うんですか。
ドクタードクター
使うよ。シスタチンCは全身の有核細胞でほぼ一定の速度で作られるので筋肉量に左右されにくいけれど、推算式には年齢と性別が入る。最後にCKDの分類も押さえておこう。GFR 60未満、または蛋白尿など腎障害の所見が3か月以上続けばCKDで、重症度は原因疾患、GFR区分のG1からG5、蛋白尿区分のA1からA3を組み合わせて評価する。G3は45を境にaとbに分かれる点も忘れずに。
医学生医学生
eGFRの数字をそのまま信じるのではなく、患者さんの体格や筋肉量を見て解釈する必要があるということですね。
ドクタードクター
その通り。式の中身を知っていれば、その数字が信頼できる場面とそうでない場面を見分けられる。腎排泄の薬の投与量を決めるときには特に意識してほしい。

まとめ

日本人向けのeGFRcrは、血清クレアチニン値・年齢・性別の3項目から算出され、女性では係数0.739を掛けます。クレアチニンは筋肉の代謝産物であり、加齢や性別による筋肉量の違いを補正するために年齢と性別が式に組み込まれています。eGFRは体表面積1.73m²あたりに標準化した値なので体重は不要で、体重を使うのはCockcroft-Gault式による推算クレアチニンクリアランスです。血圧・血糖・尿酸はCKDの原因や進行に関わる重要な因子ですが、推算式には含まれません。筋肉量が極端に少ない人ではeGFRcrが腎機能を過大評価しやすく、シスタチンCによるeGFRcysが有用であり、式の成り立ちを理解することが検査値を正しく解釈し、薬物投与量の調整やCKD管理に生かす土台になります。

解答・解説

正解はeです

eGFR(estimated glomerular filtration rate:推算糸球体濾過量)は、糸球体濾過量(GFR)を採血データなどから簡便に推定した値であり、慢性腎臓病(CKD)の診断や重症度分類(G区分)に用いられる。本来GFRはイヌリンクリアランスで実測するのが最も正確だが、手間がかかるため日常診療では推算式が使われる。

日本人向けの血清クレアチニンによる推算式(eGFRcr)

eGFRcr(mL/分/1.73m²)=194 × 血清クレアチニン値(mg/dL)^−1.094 × 年齢(歳)^−0.287 女性の場合はさらに × 0.739 とする。 この式に入る変数は「血清クレアチニン値」「年齢」「性別」の3つだけである。クレアチニンは筋肉で産生される物質で、その産生量は筋肉量に左右される。筋肉量は加齢とともに減少し、また女性は男性より少ない傾向があるため、同じ血清クレアチニン値でも年齢や性別によって腎機能の評価が変わる。これを補正するために年齢と性別が式に組み込まれている。したがって、血清クレアチニン値と性別のほかに必要なのは年齢である。 なお、算出値は標準体表面積1.73m²あたりに換算した値であり、体重や身長は式に含まれない。

選択肢考察

  1. ×a.  血圧

    高血圧はCKDの原因・増悪因子であり、CKD診療で厳格に管理すべき項目であるが、eGFRの推算式の変数には含まれない。

  2. ×b.  血糖

    糖尿病(糖尿病性腎症)は透析導入の原因疾患として最も多く、CKDの重要な背景因子であるが、血糖値はeGFRの算出には用いない。

  3. ×c.  体重

    eGFRは体表面積1.73m²あたりに標準化された値として算出されるため、体重は推算式に含まれない。体重を用いるのはCockcroft-Gault式による推算クレアチニンクリアランスであり、eGFRとは別の指標である。

  4. ×d.  尿酸

    高尿酸血症は腎機能低下に伴ってみられ、CKDの進行との関連も指摘されているが、eGFRの算出に尿酸値は用いない。

  5. ○e.  年齢

    日本人向けのeGFRcrの推算式は、血清クレアチニン値・年齢・性別の3項目で構成される(194 × Cr^−1.094 × 年齢^−0.287、女性は × 0.739)。加齢による筋肉量の減少でクレアチニン産生が減る分を補正するため、年齢は必須の変数である。シスタチンCを用いた推算式(eGFRcys)でも年齢と性別が必要である。

GFRの評価法

・イヌリンクリアランス:GFR測定の基準となる方法。イヌリンは糸球体で自由に濾過され、尿細管で再吸収も分泌もされないため、そのクリアランスがGFRに等しい。 ・クレアチニンクリアランス(Ccr):蓄尿で実測する。クレアチニンは尿細管からも一部分泌されるため、GFRをやや過大評価する。 ・eGFRcr:血清クレアチニン値・年齢・性別から推算する。 ・eGFRcys:血清シスタチンC値・年齢・性別から推算する。日本人向けの式は、男性で(104 × Cys^−1.019 × 0.996^年齢)− 8、女性は括弧内にさらに × 0.929 を掛けてから8を引く。シスタチンCは全身の有核細胞で一定の速度で産生され、筋肉量の影響を受けにくい。 ・Cockcroft-Gault式(推算Ccr):(140 − 年齢)× 体重(kg) ÷(72 × 血清クレアチニン値)、女性は × 0.85。体重を用いる点がeGFRと異なり、薬物投与量の調整に用いられることがある。

eGFRcrの注意点

クレアチニンは筋肉の代謝産物であるため、筋肉量が極端に少ない人(高齢のやせた人、四肢切断、長期臥床など)ではeGFRcrが腎機能を過大評価しやすく、筋肉量の多い人では過小評価しやすい。このような場合はeGFRcysが有用である。また薬物投与量を決める際には、体表面積で補正しない個人のGFR(mL/分)に換算して用いることがある。

CKDの定義と重症度分類

・定義:GFR 60mL/分/1.73m²未満、または蛋白尿など腎障害を示す所見のいずれか(あるいは両方)が3か月以上持続するもの。 ・GFR区分:G1(90以上)、G2(60〜89)、G3a(45〜59)、G3b(30〜44)、G4(15〜29)、G5(15未満)。 ・原因疾患(糖尿病、高血圧など)と蛋白尿・アルブミン尿の区分(A1〜A3)を組み合わせて重症度を評価する。

POINT

・日本人のeGFRcrは「血清クレアチニン値・年齢・性別」の3つで算出する(194 × Cr^−1.094 × 年齢^−0.287、女性 × 0.739)。 ・eGFRは体表面積1.73m²あたりの値であり、体重・身長は不要。体重を使うのはCockcroft-Gault式。 ・筋肉量の影響を受けにくい指標として、シスタチンCによるeGFRcysがある(これも年齢・性別を用いる)。 ・CKDの重症度はGFR区分(G1〜G5)と蛋白尿区分(A1〜A3)で評価する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。