StudyMed医師国家試験

「物忘れ」も介護保険の対象―保険者・被保険者・認定の流れで読み解く介護保険制度

第111回医師国家試験 B問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第111回 B問題 第27問

介護保険について正しいのはどれか。

  1. a.被保険者は65歳以上である。
  2. b.介護保険料は全国一律である。
  3. c.主治医意見書には要介護度を記入する。
  4. d.認知機能の障害は介護保険の対象となる。
  5. e.地域包括支援センターは二次医療圏ごとに設置される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は介護保険制度の基本を問う問題だ。制度問題は暗記に見えるけれど、「誰が運営するか」「誰が加入するか」「要介護度を誰が決めるか」「相談窓口はどの単位で置かれるか」という4つの軸で整理すると、一気に解きやすくなる。まず、介護保険は何歳から加入するか覚えているかな。
医学生医学生
高齢者のための保険なので、65歳からだと思っていました。
ドクタードクター
そう考える人は多いんだけど、加入は40歳からなんだ。65歳以上が第1号被保険者、40歳以上65歳未満で医療保険に入っている人が第2号被保険者になる。だから「被保険者は65歳以上」という選択肢は誤りだね。
医学生医学生
40代や50代の人も介護サービスを受けられるんですか。
ドクタードクター
受けられるけれど条件がある。第1号被保険者は原因を問わず要介護・要支援状態なら給付対象だけれど、第2号被保険者は加齢に関連する「特定疾病」が原因の場合に限られる。末期がん、関節リウマチ、脳血管疾患、パーキンソン病関連疾患、初老期における認知症などの16疾病だ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、交通事故で障害を負った50代の人は介護保険の対象にならない、と聞いたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにその区別だね。次は保険料。介護保険は誰が保険者だったかな。
医学生医学生
国の制度なので、国が運営して保険料も全国共通…ではないんですね。
ドクタードクター
そう、保険者は市町村と東京23区の特別区だ。第1号被保険者の保険料は、各市町村が3年ごとに立てる介護保険事業計画のサービス見込量をもとに基準額を決め、所得段階に応じて設定する。高齢化率やサービス量が違えば保険料も変わるから、全国一律ではない。第2号被保険者の分も、加入している医療保険ごとに算定されて医療保険料と一緒に徴収される。
医学生医学生
次は主治医意見書ですね。臨床実習の総合診療科で、指導医の先生が書いているのを見ました。先生が要介護度を決めているのかと思っていました。
ドクタードクター
そこはよく誤解されるポイントだ。主治医意見書には、傷病名、障害高齢者や認知症高齢者の日常生活自立度、医学的管理の必要性、介護に関する意見などを書く。でも要介護度を記入する欄はないんだ。
医学生医学生
では、要介護度は誰が決めるんですか。
ドクタードクター
流れはこうだ。本人や家族が市町村に申請すると、認定調査員の訪問調査と主治医意見書の作成が行われる。それをもとにコンピュータで一次判定し、保健・医療・福祉の専門家でつくる介護認定審査会が二次判定をして、要支援1・2、要介護1〜5、非該当のいずれかに決まる。医師は判定の材料を提供する立場、ということだね。
医学生医学生
それで残ったのが、認知機能の障害が対象になるかどうかですね。身体が動けば介護はいらない気もしますが…。
ドクタードクター
そこがこの問題の正解だ。介護保険の給付は、身体機能の低下だけでなく、日常生活に介護や見守りが必要な状態全般が対象になる。要介護認定の調査項目にも物忘れや徘徊、意思の伝達といった認知機能・精神行動面の項目が含まれているし、主治医意見書にも認知症高齢者の日常生活自立度を書く。初老期の認知症が特定疾病に入っていることも、その裏付けだね。
医学生医学生
精神科の実習で見学したグループホームも、介護保険のサービスでした。歩ける方でも、見守りがないと火の始末や服薬ができない、という状況でした。
ドクタードクター
良い観察だ。認知症対応型共同生活介護、つまりグループホームは認知症に特化した介護保険サービスの代表例だよ。最後に地域包括支援センターはどうかな。
医学生医学生
二次医療圏ごと、というのは医療計画の単位なので、違う気がします。
ドクタードクター
その通り。二次医療圏は一般的な入院医療を完結させる単位で、都道府県の医療計画で使う枠組みだ。地域包括支援センターは市町村が設置主体で、おおむね中学校区程度の日常生活圏域を目安に、市町村内に1か所以上置かれる。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーが配置され、総合相談、高齢者虐待への対応や成年後見制度の活用支援といった権利擁護、介護予防ケアマネジメントなどを担っている。
医学生医学生
加入は40歳から、保険者は市町村、要介護度は審査会が決める、認知症も対象、センターは市町村が日常生活圏域ごとに置く、と整理できました。
ドクタードクター
完璧だ。臨床で大事なのは、主治医意見書は医師にしか書けず、その内容が二次判定に影響するという点だね。外来の短い診察では認知機能の低下や生活上の困りごとが見えにくいから、家族や訪問看護からの情報も踏まえて具体的に書くことが、患者さんが適切なサービスを受けるための第一歩になる。財源は給付費の半分が公費、半分が保険料で、利用者負担は原則1割、所得によって2〜3割という点も合わせて押さえておこう。

まとめ

介護保険は市町村・特別区が保険者となる社会保険で、40歳以上が加入し、65歳以上の第1号被保険者は原因を問わず、40〜64歳の第2号被保険者は特定疾病が原因の場合に限って給付を受けられます。保険料は市町村や医療保険者ごとに算定されるため全国一律ではなく、要介護度は訪問調査と主治医意見書をもとに一次判定・介護認定審査会の二次判定を経て決まり、主治医意見書に要介護度そのものは記入しません。給付の対象は身体機能の低下に限らず、認知症などの認知機能障害で介護や見守りが必要な状態も含まれ、初老期の認知症は特定疾病の一つです。地域包括支援センターは市町村が設置し、おおむね中学校区程度の日常生活圏域を目安に置かれる、地域包括ケアの中核機関です。医師は主治医意見書を通じて認定に関わるため、制度の流れを理解しておくことが高齢患者の生活を支える診療につながります。

解答・解説

正解はdです

テーマ

介護保険制度(2000年施行、介護保険法に基づく社会保険)の基本的な仕組みを問う問題である。押さえるべき軸は、①誰が運営するか(保険者)、②誰が加入しサービスを受けられるか(被保険者と給付の条件)、③要介護度がどのように決まるか(要介護認定の流れ)、④地域の相談・調整拠点(地域包括支援センター)の設置単位、の4点である。

正解を導く考え方

介護保険は「市町村(東京23区を含む)が保険者となり、40歳以上の住民が加入し、要介護・要支援と認定された人に介護サービスを給付する」制度である。給付の対象となるのは、身体機能の低下に限らず、日常生活に介護や支援が必要な状態全般である。認知症などによる認知機能の障害で日常生活に支障があれば、要介護認定の対象となりサービスを受けられる。各選択肢を、加入年齢(40歳以上)、保険料の決め方(市町村ごと)、要介護度を決める主体(介護認定審査会)、地域包括支援センターの設置主体(市町村)と照らし合わせれば、正しいものが一つに絞れる。

選択肢考察

  1. ×a.  被保険者は65歳以上である。

    被保険者は40歳以上である。65歳以上の人が第1号被保険者、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人が第2号被保険者となる。第1号被保険者は原因を問わず要介護・要支援状態であれば給付を受けられるが、第2号被保険者は加齢に伴う「特定疾病」(16疾病。末期がん、関節リウマチ、初老期における認知症、脳血管疾患、パーキンソン病関連疾患など)が原因の場合に限って給付を受けられる。

  2. ×b.  介護保険料は全国一律である。

    保険者は市町村(特別区を含む)であり、第1号被保険者の保険料は各市町村が3年ごとに策定する介護保険事業計画のサービス見込量に基づいて基準額を定め、さらに所得段階に応じて設定する。そのため保険料は市町村によって異なる。第2号被保険者の保険料は加入している医療保険(健康保険組合、国民健康保険など)の保険料と一緒に徴収され、医療保険者ごとに算定される。いずれも全国一律ではない。

  3. ×c.  主治医意見書には要介護度を記入する。

    主治医意見書は、申請者の傷病名、心身の状態(障害高齢者の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度など)、医学的管理の必要性、介護に関する意見などを主治医が記載する書類であり、要介護度を記入する欄はない。要介護度は、認定調査員による訪問調査の結果と主治医意見書の一部項目からコンピュータで一次判定を行い、それと主治医意見書・特記事項をもとに市町村の介護認定審査会が二次判定を行って決まる。医師は判定の材料を提供する立場である。

  4. ○d.  認知機能の障害は介護保険の対象となる。

    介護保険の給付は、身体機能の障害だけでなく、認知機能の障害によって日常生活に介護や見守りが必要な状態も対象とする。要介護認定の調査項目には認知機能や精神・行動障害(徘徊、物忘れ、意思の伝達など)が含まれ、主治医意見書にも認知症高齢者の日常生活自立度などを記載する。さらに第2号被保険者でも「初老期における認知症」は特定疾病に含まれており、認知症が介護保険の重要な対象であることがわかる。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)など認知症に特化したサービスも介護保険で提供される。

  5. ×e.  地域包括支援センターは二次医療圏ごとに設置される。

    地域包括支援センターは、市町村が設置主体となる(市町村から委託を受けた社会福祉法人などが運営する場合も多い)。おおむね中学校区程度の日常生活圏域を目安として、市町村内に1か所以上置かれる。複数の市町村をまとめた二次医療圏(一般的な入院医療を完結させる単位で、主に都道府県の医療計画で用いる)ごとに設置されるものではない。

介護保険の概要

・保険者:市町村および特別区。国・都道府県は財政面・運営面で支える。 ・財源:利用者負担を除いた給付費の50%を公費(国・都道府県・市町村)、50%を保険料(第1号・第2号被保険者)でまかなう。 ・利用者負担:原則1割(一定以上の所得がある人は2割または3割)。

被保険者

・第1号被保険者:65歳以上。要介護・要支援状態であれば原因を問わず給付対象。保険料は市町村が徴収(年金からの天引きが中心)。 ・第2号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者。特定疾病による場合のみ給付対象。保険料は医療保険者が医療保険料と一緒に徴収。

要介護認定の流れ

①本人・家族などが市町村に申請する。 ②認定調査員による訪問調査(心身の状態に関する基本調査項目と特記事項)と、主治医意見書の作成を行う。 ③コンピュータによる一次判定を行う。 ④介護認定審査会(保健・医療・福祉の専門家で構成)が二次判定を行い、要支援1・2、要介護1〜5、非該当(自立)のいずれかに判定する。 ⑤市町村が認定し、本人に通知する。

地域包括支援センター

地域包括ケアシステムの中核機関として、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)などが配置される。主な業務は、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待への対応、成年後見制度の活用支援など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントである。

POINT

・被保険者は40歳以上(第1号:65歳以上、第2号:40〜64歳の医療保険加入者で特定疾病が原因の場合のみ給付)。 ・保険者は市町村・特別区であり、保険料は市町村ごとに異なる。 ・主治医意見書に要介護度は書かない。要介護度は介護認定審査会が判定する。 ・認知症など認知機能の障害も介護保険の対象である(初老期の認知症は特定疾病)。 ・地域包括支援センターは市町村が設置し、日常生活圏域(おおむね中学校区)を目安に置かれる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。