StudyMed医師国家試験

名前に惑わされるな―クラミジアからクリプトコッカスまで、微生物の「所属」を整理する

第110回医師国家試験 I問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第110回 I問題 第2問

微生物と生物学的分類の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.クラミジア ―― 細胞内寄生菌
  2. b.マイコプラズマ ―― 抗酸菌
  3. c.トキソプラズマ ―― 真菌
  4. d.ニューモシスチス ―― 原虫
  5. e.クリプトコッカス ―― 嫌気性菌

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、病原微生物がどの生物学的グループに属するかを問う基本問題だ。微生物は大きくウイルス、細菌、真菌、原虫、蠕虫に分けられる。名前が似ていたり、歴史的に分類が変わったりしたものが並んでいるから、まず「細菌か、真菌か、原虫か」を一つずつ確定させるのが着眼点だよ。
医学生医学生
微生物学の講義で一通り習ったはずなんですが、カタカナの名前が並ぶと急に自信がなくなります。
ドクタードクター
みんなそうだよ。ではまずクラミジアから。これは何の仲間かな。
医学生医学生
細菌ですよね。性感染症の原因として有名で、細胞の中でしか増えないと習った気がします。
ドクタードクター
その通り。クラミジアは宿主細胞の中でしか増殖できない偏性細胞内寄生菌だ。自分でエネルギーを十分につくれず、宿主細胞に依存して増える。感染型の基本小体として細胞に入り、細胞内で増殖型の網様体に変わって分裂し、また基本小体に戻って外へ出る、という独特の増殖環をもつ。人工培地では培養できないのも特徴だね。だからクラミジアと細胞内寄生菌の組合せが正解になる。
医学生医学生
では、マイコプラズマと抗酸菌の組合せはどうですか。「マイコ」という響きが結核菌と似ていて、一瞬迷いました。
ドクタードクター
まさにそこが引っかけ。抗酸菌はマイコバクテリウム属、つまり結核菌や非結核性抗酸菌のことだ。細胞壁にミコール酸などの脂質が多く、Ziehl-Neelsen染色で一度染まると酸やアルコールで脱色されにくい。一方、マイコプラズマは細胞壁をもたない非常に小さな細菌で、抗酸菌ではない。
医学生医学生
細胞壁がないから、β-ラクタム系が効かないんでしたね。小児科の実習で、マイコプラズマ肺炎の子にマクロライドが出されていました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。細胞壁合成を阻害する薬は標的がないから無効で、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系を使う。ちなみにマイコプラズマは主に気道上皮の表面に付着して増え、時間はかかるが無細胞の培地でも培養できる。そこが偏性細胞内寄生菌のクラミジアとの違いだ。
医学生医学生
トキソプラズマは真菌とされていますが、これは原虫ですよね。先天感染のTORCHで習いました。
ドクタードクター
正解。トキソプラズマはアピコンプレックス門の原虫で、ネコ科動物が終宿主だ。ネコの糞便中のオーシストや、加熱不十分な肉の組織シストを摂取して感染する。妊娠中の初感染では水頭症、網脈絡膜炎、脳内石灰化などの先天性トキソプラズマ症を、AIDSなど細胞性免疫が落ちた人ではトキソプラズマ脳症を起こす。
医学生医学生
ニューモシスチスは原虫と書かれていますね。昔の教科書では原虫扱いだったと聞いたことがありますが……。
ドクタードクター
そう、かつては形態から原虫と考えられていたけれど、リボソームRNAなどの遺伝子解析で真菌に分類されるようになった。ただし普通の真菌と違って細胞膜にエルゴステロールをほとんど含まないので、アムホテリシンBやアゾール系は効かず、治療と予防にはST合剤を使う。
医学生医学生
真菌なのに抗真菌薬が効かない、というのは覚えにくいですが印象に残ります。血液内科で免疫抑制中の患者さんにST合剤の予防投与がされていたのはそのためですね。
ドクタードクター
その通り。ニューモシスチス肺炎では血清β-Dグルカンが上昇するのも診断の手がかりだ。最後にクリプトコッカスと嫌気性菌の組合せはどうかな。
医学生医学生
クリプトコッカスは真菌なので、そもそも「菌」でも細菌の嫌気性菌ではない、ということですね。
ドクタードクター
その理解でいい。厚い莢膜をもつ酵母様真菌で、酸素のある環境で発育する。ハトなど鳥類の糞で汚れた土壌から吸入して肺に感染し、細胞性免疫低下者では髄膜炎を起こしやすい。髄液の墨汁染色で莢膜が透明な輪として見えること、莢膜抗原の検出が診断に役立つ。治療はアムホテリシンBとフルシトシンの併用、維持療法にフルコナゾールだ。
医学生医学生
整理すると、細菌のなかでも細胞内寄生菌、細胞壁欠如、抗酸菌といった性質ごとのグループがあって、その外側に真菌や原虫がある、という階層で考えればいいんですね。
ドクタードクター
そう。発展として、偏性細胞内寄生菌にはクラミジアのほかリケッチア(ツツガムシ病や日本紅斑熱)、コクシエラ(Q熱)がある。結核菌、レジオネラ、リステリア、サルモネラなどは細胞外でも増えられるがマクロファージ内で生き延びる通性細胞内寄生菌だ。CBTでもこの区別はよく問われるよ。
医学生医学生
クラミジアとマイコプラズマはどちらも非定型肺炎の原因で、β-ラクタム系が効かない点は共通ですが、理由は違うということですね。
ドクタードクター
その通り。そして臨床で大事なのは、分類が治療薬の選択に直結することだ。細菌なら抗菌薬、真菌なら抗真菌薬、原虫なら抗原虫薬、そしてニューモシスチスのような例外もある。「何の仲間か」を正確に押さえることが、適切な治療の第一歩なんだ。

まとめ

病原微生物は細菌・真菌・原虫などに大別され、細菌はさらに細胞内寄生性、細胞壁の有無、抗酸性、酸素要求性などで分類されます。クラミジアは宿主細胞内でしか増殖できない偏性細胞内寄生菌で、人工培地では培養できません。マイコプラズマは細胞壁を欠く細菌で抗酸菌(マイコバクテリウム属)とは別物、トキソプラズマは原虫、ニューモシスチスは遺伝子解析により原虫から真菌へ分類が改められ、クリプトコッカスは莢膜をもつ酵母様真菌です。とくにマイコプラズマにβ-ラクタム系が無効なこと、ニューモシスチスは真菌でもST合剤で治療することなど、分類の知識は治療薬の選択に直結します。紛らわしい名前に惑わされず「何の仲間か」を確実に整理しておくことが、感染症診療の土台になります。

解答・解説

正解はaです

問われているテーマ

病原微生物がどの生物学的グループに属するかという基本知識を問う問題である。微生物は大きく、ウイルス、細菌、真菌、原虫(単細胞の寄生虫)、蠕虫(多細胞の寄生虫)に分けられる。細菌はさらに、形態(球菌・桿菌)、グラム染色性、酸素要求性(好気性・嫌気性)、細胞壁の性質(抗酸性)、生活の場(細胞内寄生性)などの観点で細かく分類される。

考え方

名前の響きが似ていたり、歴史的に分類が変わったりした微生物が並んでいるので、それぞれが「細菌・真菌・原虫のどれか」をまず確定し、そのうえで細菌なら性質の特徴を確認するとよい。 ・クラミジア:細菌(偏性細胞内寄生菌) ・マイコプラズマ:細菌(細胞壁を欠く最小級の細菌) ・トキソプラズマ:原虫 ・ニューモシスチス:真菌(かつては原虫とされた) ・クリプトコッカス:真菌(酵母様真菌) この整理から、正しい組合せはクラミジアと細胞内寄生菌である。分類が感染症の治療薬選択(抗菌薬・抗真菌薬・抗原虫薬)に直結する点も意識しておきたい。

選択肢考察

  1. ○a.  クラミジア ―― 細胞内寄生菌

    クラミジアは宿主細胞の中でしか増殖できない偏性細胞内寄生菌である。自分でATP(エネルギー)を十分につくれず、宿主細胞のエネルギーに依存して増える。感染力をもつ小型の基本小体(EB)として細胞に侵入し、細胞内で増殖型の網様体(RB)に変わって分裂し、再びEBとなって細胞外へ出るという独特の増殖環をもつ。人工培地では培養できない。代表的なものに、性感染症やトラコーマの原因となるChlamydia trachomatis、肺炎を起こすChlamydia pneumoniae、オウム病の原因となるChlamydia psittaciがある。治療にはマクロライド系やテトラサイクリン系など細胞内に移行しやすい抗菌薬を用いる。

  2. ×b.  マイコプラズマ ―― 抗酸菌

    マイコプラズマは細胞壁をもたない非常に小さな細菌であり、抗酸菌ではない。主に気道上皮の表面に付着して増殖し、細胞のない培地でも(時間はかかるが)培養できる点で、偏性細胞内寄生菌であるクラミジアとは異なる。細胞壁がないため、細胞壁合成を阻害するβ-ラクタム系抗菌薬は無効で、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系が用いられる。抗酸菌とは、細胞壁にミコール酸などの脂質を多く含み、いったん染まると酸やアルコールで脱色されにくい(Ziehl-Neelsen染色で赤く染まる)菌をいい、結核菌や非結核性抗酸菌などのマイコバクテリウム属が代表である。名前の似た「マイコバクテリウム」と取り違えないこと。

  3. ×c.  トキソプラズマ ―― 真菌

    Toxoplasma gondiiは真菌ではなく、アピコンプレックス門に属する原虫(単細胞の寄生虫)である。ネコ科動物が終宿主で、ネコの糞便中のオーシストや、加熱不十分な肉に含まれる組織シストを摂取して感染する。免疫正常者では無症状か軽いリンパ節腫脹で済むことが多いが、妊娠中の初感染では先天性トキソプラズマ症(水頭症、網脈絡膜炎、脳内石灰化など)を、AIDSなど細胞性免疫低下者ではトキソプラズマ脳症を起こす。治療にはピリメタミンとスルファジアジンなどの抗原虫作用をもつ薬を用いる。

  4. ×d.  ニューモシスチス ―― 原虫

    ニューモシスチス(ヒトに感染するのはPneumocystis jirovecii)は、かつては形態から原虫と考えられていたが、リボソームRNAなどの遺伝子解析により真菌に分類されるようになった。ただし一般的な真菌と異なり、細胞膜にエルゴステロールをほとんど含まないため、アムホテリシンBやアゾール系抗真菌薬は効かず、治療・予防にはST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)を用いる。AIDSや免疫抑制療法中の患者に重いニューモシスチス肺炎を起こし、血清β-Dグルカンが上昇する。

  5. ×e.  クリプトコッカス ―― 嫌気性菌

    クリプトコッカス(主にCryptococcus neoformans)は細菌ではなく、厚い莢膜をもつ酵母様真菌であり、嫌気性菌ではない(酸素のある環境で発育する)。ハトなどの鳥類の糞で汚染された土壌に存在し、吸入により肺に感染し、とくに細胞性免疫低下者では髄膜炎を起こしやすい。髄液の墨汁染色で莢膜が透明な輪として見えること、莢膜抗原(グルクロノキシロマンナン抗原)の検出が診断に役立つ。治療はアムホテリシンBとフルシトシンの併用、維持療法にフルコナゾールを用いる。なお、莢膜のためβ-Dグルカンは上昇しにくいことも知られる。

主な病原微生物の分類の整理

・ウイルス:DNAまたはRNAのどちらか一方の核酸をもち、宿主細胞の中でのみ増える。 ・細菌(原核生物)  一般細菌:黄色ブドウ球菌、大腸菌など。  嫌気性菌:酸素があると発育できない(または発育しにくい)菌。クロストリジウム属、バクテロイデス属など。  抗酸菌:結核菌、らい菌、非結核性抗酸菌(マイコバクテリウム属)。細胞壁に脂質が多く、Ziehl-Neelsen染色で赤く染まる。  細胞壁を欠く細菌:マイコプラズマ。  偏性細胞内寄生菌:クラミジア、リケッチア(ツツガムシ病、日本紅斑熱)、コクシエラ(Q熱)。  通性細胞内寄生菌(細胞外でも増えられるが、マクロファージ内でも生き延びる):結核菌、レジオネラ、リステリア、サルモネラ、ブルセラなど。 ・真菌(真核生物)  酵母様真菌:カンジダ、クリプトコッカス。  糸状菌:アスペルギルス、ムーコル、白癬菌。  その他:ニューモシスチス(かつて原虫とされた)。 ・原虫(単細胞の真核生物):トキソプラズマ、マラリア原虫、赤痢アメーバ、ジアルジア、クリプトスポリジウム、膣トリコモナス。 ・蠕虫(多細胞の寄生虫):回虫、アニサキス、エキノコックス、日本住血吸虫など。

紛らわしい名称に注意

・マイコプラズマ(Mycoplasma)は細胞壁のない細菌、マイコバクテリウム(Mycobacterium)は抗酸菌。 ・ニューモシスチスは真菌だが、抗真菌薬ではなくST合剤で治療する。 ・クラミジアとマイコプラズマはどちらも「非定型肺炎」の原因で、β-ラクタム系が効かない点で共通するが、無効の理由は異なる(クラミジアは細胞内寄生性、マイコプラズマは細胞壁欠如。なおクラミジアも典型的なペプチドグリカン細胞壁をほとんどもたない)。

POINT

・クラミジア、リケッチア、コクシエラは偏性細胞内寄生菌である。 ・マイコプラズマは細胞壁を欠く細菌で、抗酸菌ではない(抗酸菌はマイコバクテリウム属)。β-ラクタム系は無効。 ・トキソプラズマは原虫。 ・ニューモシスチスは遺伝子解析により原虫から真菌に分類が変わった。治療はST合剤。 ・クリプトコッカスは莢膜をもつ酵母様真菌で、細胞性免疫低下者に髄膜炎を起こす。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。