StudyMed医師国家試験

補う・解除する・締める・支える―4分類で解くショック治療の組合せ

第110回医師国家試験 G問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第110回 G問題 第18問

ショックの原因とその対応の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.敗血症 ―― 大量輸液
  2. b.大量出血 ―― 副腎皮質ステロイド投与
  3. c.緊張性気胸 ―― 陽圧換気
  4. d.肺血栓塞栓症 ―― ジギタリス投与
  5. e.高カリウム血症 ―― 硫酸マグネシウム投与

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、ショックの原因ごとに正しい初期対応を選ぶ問題だ。コツは、原因を血行動態の4分類に当てはめて「何が起きているから、何をすべきか」を考えること。まずショックとは何か、定義から確認しよう。
医学生医学生
血圧が下がった状態、というイメージです。
ドクタードクター
血圧低下は大事な所見だけど、本質ではないんだ。ショックは組織への酸素供給が需要に追いつかず、細胞の代謝が障害される急性循環不全の状態。意識障害や乏尿、乳酸値の上昇といった臓器低灌流のサインが問題になる。そのうえで、循環血液量減少性、心原性、心外閉塞・拘束性、血液分布異常性の4つに分けて考える。
医学生医学生
救急の講義で習いました。出血は循環血液量減少性、緊張性気胸と肺塞栓は心外閉塞・拘束性、敗血症は血液分布異常性ですね。
ドクタードクター
その通り。そして治療は「減っているものは補う」「詰まっているものは解除する」「広がった血管は締める」「ポンプが弱ければ支える」と整理できる。では敗血症ではどうして大量輸液が必要なのかな。
医学生医学生
血管が広がっているなら、むしろ昇圧薬で締めるのが先かと思ってしまいました。
ドクタードクター
良い疑問だ。敗血症では炎症性メディエーターで末梢血管が拡張するだけでなく、血管透過性が亢進して水分が血管外に漏れ出す。だから相対的にも絶対的にも循環血液量が足りない。そこでまず細胞外液を急速に大量投与するのが初期蘇生の基本で、国際ガイドラインでは低灌流があれば最初の3時間で30 mL/kg以上の晶質液が提案されている。それでも平均動脈圧65 mmHg以上を保てなければ、ノルアドレナリンを併用する。
医学生医学生
なるほど、輸液で器を満たしてから、足りなければ血管を締めるという順番なんですね。
ドクタードクター
そう。ただし過剰輸液は肺水腫などの害もあるので、輸液反応性を見ながら量を調整する。血液培養をとったうえでの早期の抗菌薬投与と感染源コントロールも同時に進めるのを忘れずに。では大量出血に副腎皮質ステロイド、という組合せは?
医学生医学生
出血なら失った血液を補うのが先で、ステロイドで止血できるわけではないですよね。
ドクタードクター
正解。治療の柱は補充と止血だ。太い静脈路から細胞外液を入れ、赤血球液、新鮮凍結血漿、血小板をバランスよく輸血しながら、手術や動脈塞栓術で出血源を止める。ステロイドが出てくるのは、輸液と昇圧薬に反応しにくい敗血症性ショックや副腎不全によるショックなどだ。
医学生医学生
緊張性気胸に陽圧換気は、呼吸が苦しいなら換気を助けるのは良さそうに見えます。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。緊張性気胸では損傷部が一方向弁になって胸腔内に空気がたまり続け、縦隔が健側に偏位して大静脈が圧迫され、静脈還流が減ってショックになる。ここで陽圧をかけると胸腔にさらに空気を押し込み、悪化させてしまう。必要なのは「詰まりの解除」、つまり胸部X線を待たずに臨床診断で緊急脱気し、胸腔ドレナージを行うことだ。
医学生医学生
OSCEの外傷シナリオで、頸静脈怒張、患側の呼吸音減弱、気管偏位をセットで確認するよう練習しました。
ドクタードクター
まさにその所見で疑う。次に肺血栓塞栓症にジギタリスはどうかな。
医学生医学生
ジギタリスは心房細動のレートコントロールの薬なので、血栓そのものには効かないと思います。
ドクタードクター
その通り。肺血栓塞栓症は肺動脈が閉塞して右心系の圧が急上昇し、左心に戻る血液が減ってショックになる。治療は抗凝固療法として未分画ヘパリンが基本で、ショックを伴う重症例では血栓溶解療法、カテーテル治療、外科的血栓摘除、PCPSなどを考える。これも「詰まりの解除」だ。
医学生医学生
高カリウム血症に硫酸マグネシウムは、なんとなく電解質つながりで正しそうに見えてしまいました。
ドクタードクター
似た響きにだまされやすいところだね。硫酸マグネシウムはtorsades de pointesや子癇に使う薬だ。高カリウム血症の緊急対応は3段階。まずカルシウム製剤で心筋膜を安定させる。次にGI療法やβ2刺激薬吸入でカリウムを細胞内に移す。最後にループ利尿薬、カリウム吸着薬、血液透析で体外に除去する。
医学生医学生
カルシウムは心臓を守るだけで、カリウム値自体は下がらないんでしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。だから移動と除去もセットで行う必要がある。最後に臨床の注意点をまとめよう。ショックの徴候として蒼白・冷汗などの5Pがあるけれど、敗血症の初期やアナフィラキシー、神経原性ショックでは皮膚が温かいwarm shockのことがある。神経原性ショックでは頻脈にならず徐脈になるのも特徴だ。出血量の目安には心拍数を収縮期血圧で割ったショック指数を使い、1.0でおよそ1Lの出血と見積もる。
医学生医学生
手が温かいからショックではない、とは言えないんですね。分類ごとに治療の方向が正反対になることもあるので、最初の見立てが本当に大事だと感じました。
ドクタードクター
その通り。陽圧換気のように、ある分類では有用な処置が別の分類では致命的になりうる。目の前のショックがどの分類かを素早く判断することが、救急での初動を決めるんだ。

まとめ

ショックは組織への酸素供給が需要に追いつかない急性循環不全であり、循環血液量減少性・心原性・心外閉塞拘束性・血液分布異常性の4つに分けて治療を考えます。敗血症性ショックでは血管拡張と血管透過性亢進により循環血液量が不足するため、初期に十分な晶質液を投与し、反応が乏しければノルアドレナリンを併用し、早期の抗菌薬投与と感染源制御を行います。出血性ショックは輸液・輸血と止血、緊張性気胸は陽圧換気で悪化するため臨床診断で直ちに脱気・ドレナージ、肺血栓塞栓症は抗凝固療法と重症例での血栓溶解療法が基本です。高カリウム血症ではカルシウム製剤による心筋保護、GI療法などによる細胞内移動、透析などによる除去を行い、硫酸マグネシウムはtorsades de pointesや子癇に用います。「補う・解除する・締める・支える」という整理で分類と治療を結びつけることが、救急現場での的確な初期対応につながります。

解答・解説

正解はaです

ショックとは、組織への酸素供給が需要に見合わなくなり、細胞の代謝が障害される急性循環不全の状態である。血圧低下は重要な所見だが本質ではなく、末梢循環不全と臓器の低灌流(意識障害、乏尿、乳酸値上昇など)が問題となる。

病態による4分類

現在は、血行動態の異常に基づいて次の4つに分けて考えるのが一般的である。 1. 循環血液量減少性ショック:出血、脱水、熱傷など。前負荷が減る。 2. 心原性ショック:急性心筋梗塞、重症不整脈、心筋炎など。心臓のポンプ機能が低下する。 3. 心外閉塞・拘束性ショック:緊張性気胸、心タンポナーデ、肺血栓塞栓症など。心臓の外の原因で血液の流入・駆出が妨げられる。 4. 血液分布異常性ショック:敗血症、アナフィラキシー、神経原性(脊髄損傷など)。末梢血管が拡張して相対的に循環血液量が不足する。

対応の考え方

ショックへの対応は、気道・呼吸・循環の安定化と並行して、原因に応じた治療を行うことが原則である。「減っているものは補う」(輸液・輸血)、「詰まっているものは解除する」(脱気・心嚢穿刺・血栓溶解)、「広がった血管は締める」(輸液に加えて血管収縮薬)、「ポンプが弱ければ支える」(強心薬・補助循環)と整理すると、各選択肢の組合せが妥当かを判断しやすい。本問では、血液分布異常性ショックである敗血症性ショックに対し、初期に十分な輸液を行うという組合せが正しい。

選択肢考察

  1. ○a.  敗血症 ―― 大量輸液

    正しい。敗血症では、感染に対する過剰な宿主反応によってサイトカインなどの炎症性メディエーターが放出され、末梢血管が拡張し、血管透過性が亢進して血管内の水分が血管外へ漏れ出す。その結果、相対的にも絶対的にも循環血液量が不足する(血液分布異常性ショック)。そのため初期蘇生では細胞外液(晶質液)の急速大量投与が基本で、国際ガイドラインでは低灌流のある患者に最初の3時間で30 mL/kg以上の晶質液投与が提案されている。輸液でも平均動脈圧65 mmHg以上を保てない場合は、第一選択の血管収縮薬としてノルアドレナリンを併用する。初期には末梢血管抵抗が低く心拍出量が保たれた温かいショック(hyperdynamic state)を示し、進行すると心機能も低下して冷たいショック(hypodynamic state)に移行することがある。なお、過剰輸液は肺水腫などの害もあるため、輸液反応性を評価しながら投与量を調整する。もちろん、血液培養採取後の早期抗菌薬投与と感染源のコントロールも同時に行う。

  2. ×b.  大量出血 ―― 副腎皮質ステロイド投与

    誤り。大量出血による循環血液量減少性ショックでは、失われた血液を補うことと出血を止めることが治療の柱である。まず太い末梢静脈路を確保して細胞外液を投与し、必要に応じて赤血球液・新鮮凍結血漿・血小板などの輸血を行う。大量輸血では凝固因子の希釈による凝固障害を防ぐため、血漿や血小板もバランスよく投与する。並行して出血源を検索し、外科手術や血管内治療(動脈塞栓術)などで止血する。副腎皮質ステロイドは出血性ショックの治療薬ではない(ステロイドが用いられるのは、輸液と昇圧薬に反応しにくい敗血症性ショックや、副腎不全によるショックなど)。

  3. ×c.  緊張性気胸 ―― 陽圧換気

    誤り。緊張性気胸では、胸膜の損傷部が一方向弁のように働いて胸腔内に空気がたまり続け、胸腔内圧が上昇する。これにより患側肺が虚脱し、縦隔が健側へ偏位して大静脈が圧迫され、静脈還流が減少してショック(心外閉塞・拘束性ショック)に陥る。ここに陽圧換気を行うと胸腔内へ空気がさらに押し込まれ、胸腔内圧が一層上昇して病態を悪化させるため、ドレナージ前の陽圧換気は避けるべきである。対応は、胸部X線写真を待たずに臨床診断(頸静脈怒張、患側の呼吸音減弱、気管の健側偏位、皮下気腫など)で直ちに減圧することであり、第2肋間鎖骨中線などからの緊急胸腔穿刺による脱気の後、胸腔ドレナージを行う。

  4. ×d.  肺血栓塞栓症 ―― ジギタリス投与

    誤り。肺血栓塞栓症は、主に下肢や骨盤内の深部静脈にできた血栓がはがれて肺動脈を閉塞する疾患で、肺循環障害と低酸素血症をきたす。広範な閉塞では右心系の急激な圧上昇により右心不全となり、左心への血液流入が減ってショックに至る(心外閉塞・拘束性ショック)。治療は、酸素投与や循環管理などの全身管理に加え、未分画ヘパリンによる抗凝固療法が基本であり、ショックを伴う重症例では血栓溶解療法(モンテプラーゼなどの組織プラスミノゲンアクチベーター)、カテーテル治療、外科的血栓摘除、PCPS(経皮的心肺補助)などを考慮する。ジギタリスは主に頻脈性心房細動の心拍数調節に用いる薬で、肺血栓塞栓症によるショックの治療には用いない。

  5. ×e.  高カリウム血症 ―― 硫酸マグネシウム投与

    誤り。高カリウム血症では心筋の静止膜電位が変化して、テント状T波、PR延長・P波消失、QRS幅拡大を経て、心室細動や心停止などの致死的不整脈に至る危険がある。緊急時の対応は次の3段階で考える。(1) 心筋膜の安定化:カルシウム製剤(グルコン酸カルシウムまたは塩化カルシウム)の静注。効果発現は数分と速いが、カリウム値自体は下がらない。(2) カリウムの細胞内への移動:グルコース・インスリン療法(GI療法)、β2刺激薬の吸入、アシドーシスがあれば炭酸水素ナトリウム。(3) 体外への除去:ループ利尿薬、陽イオン交換樹脂などのカリウム吸着薬、血液透析。硫酸マグネシウムは、QT延長に伴う多形性心室頻拍(torsades de pointes)や子癇発作の治療・予防に用いる薬であり、高カリウム血症の治療薬ではない。

ショックの徴候(5P)

蒼白(pallor)、虚脱(prostration)、冷汗(perspiration)、脈拍触知不能(pulselessness)、呼吸不全(pulmonary insufficiency)の5つを5Pと呼ぶ。ただし、敗血症の初期やアナフィラキシー、神経原性ショックでは末梢血管が拡張しているため、皮膚が温かく紅潮していること(warm shock)がある。神経原性ショックでは交感神経が遮断されるため、頻脈にならず徐脈を示すのが特徴である。

ショック指数(shock index)

心拍数÷収縮期血圧で計算し、1.0前後で約1L(循環血液量の約20%)、2.0で約2Lの出血が推定される。出血量の目安として用いられる。

分類別の代表的な治療

・循環血液量減少性:輸液、輸血、止血。 ・心原性:強心薬(ドブタミンなど)、血管収縮薬、原因治療(冠動脈の再灌流など)、IABP(大動脈内バルーンパンピング)やPCPS、補助人工心臓などの機械的補助。 ・心外閉塞・拘束性:緊張性気胸には胸腔穿刺・ドレナージ、心タンポナーデには心嚢穿刺、肺血栓塞栓症には抗凝固療法・血栓溶解療法。 ・血液分布異常性:敗血症では輸液+ノルアドレナリン+抗菌薬、アナフィラキシーではアドレナリン筋注(成人で0.3〜0.5 mg、大腿前外側)と輸液、神経原性では輸液と昇圧薬・アトロピン。

敗血症の定義(Sepsis-3)

敗血症は「感染症に対する制御不能な宿主反応による、生命を脅かす臓器障害」と定義され、SOFAスコアの2点以上の急上昇で臓器障害を判定する。敗血症性ショックは、十分な輸液を行っても平均動脈圧65 mmHg以上を保つのに血管収縮薬を要し、かつ血清乳酸値が2 mmol/L(18 mg/dL)を超える状態とされる。

POINT

・ショックは循環血液量減少性・心原性・心外閉塞拘束性・血液分布異常性の4つに分類して対応を考える。 ・敗血症性ショック:初期に十分な晶質液輸液、反応不良ならノルアドレナリン、早期の抗菌薬と感染源制御。 ・出血性ショック:輸液・輸血と止血。ステロイドは用いない。 ・緊張性気胸:陽圧換気で悪化する。臨床診断で直ちに胸腔穿刺・ドレナージ。 ・肺血栓塞栓症:抗凝固療法(ヘパリン)、重症例では血栓溶解療法。 ・高カリウム血症:カルシウム製剤で心筋を保護、GI療法でK+を細胞内へ移動、透析などで除去。硫酸マグネシウムはtorsades de pointesや子癇に使う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。