StudyMed医師国家試験

尿道から届くか、根こそぎ取るべきか―経尿道的手術が第一選択になる疾患の見極め方

第110回医師国家試験 B問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第33問

経尿道的手術が外科的治療の第一選択となるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.腎細胞癌
  2. b.尿管癌
  3. c.膀胱結石
  4. d.前立腺癌
  5. e.前立腺肥大症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、泌尿器科の代表的な疾患のうち、どれが経尿道的手術を外科的治療の第一選択とするかを選ぶ問題だ。考えるときの軸は2つ。1つは尿道から内視鏡で病変に届くかという解剖学的な到達性、もう1つは良性疾患なのか悪性腫瘍の根治手術なのかという治療目的だ。まず、経尿道的手術とはどんなものか説明できるかな。
医学生医学生
尿道から膀胱鏡や切除鏡を入れて、皮膚を切らずに病変を切除したり砕いたりする手術ですよね。泌尿器科の臨床実習でTUR-Pを見学しました。
ドクタードクター
その通り。代表的なのは前立腺肥大症に対するTUR-P、膀胱癌に対するTUR-BT、結石に対する経尿道的砕石術だ。では、内視鏡で届く範囲という観点から、腎細胞癌はどうだろう。
医学生医学生
腎臓も尿路の一部なので、尿管鏡を腎盂まで進めれば届くような気がします。
ドクタードクター
そこが引っかかりやすいところだね。尿管鏡が届くのは腎盂や腎杯の内腔までで、腎細胞癌は腎実質、主に近位尿細管上皮から発生する腺癌だ。尿路の内腔に顔を出している腫瘍ではないから、内側から削り取ることはできない。治療の基本は腎をGerota筋膜ごと一塊に摘出する根治的腎摘除術で、4cm以下程度の小さな腫瘍なら腎機能温存のため腎部分切除術が推奨される。
医学生医学生
なるほど、内腔から見えるかどうかがポイントなんですね。では尿管癌は尿路上皮から出るので、尿管鏡で取れそうですが。
ドクタードクター
いい推論だ。実際、小さく低悪性度の腫瘍や、腎が1つしかない人などでは尿管鏡でのレーザー焼灼が選ばれることもある。ただそれは限られた症例での腎温存治療だ。尿路上皮癌は同じ側の尿路に多発・再発しやすいから、対側腎の機能が保たれていれば、腎・尿管全長と膀胱カフを一塊に取る腎尿管全摘除術が標準なんだ。
医学生医学生
病理の講義で、尿路上皮癌は多中心性に発生すると習いました。だから全部まとめて取るんですね。
ドクタードクター
その理解でいい。ここで大事な原則を押さえよう。悪性腫瘍の根治手術は、周囲の組織を含めて臓器ごと一塊に摘出するのが基本で、内腔から削るだけでは根治性が確保しにくい。例外が筋層非浸潤性の膀胱癌に対するTUR-BTだ。では前立腺癌はどうかな。
医学生医学生
前立腺なら尿道が貫いているので、TUR-Pで削れば取れるのでは……と一瞬思いましたが、癌だと全摘ですよね。
ドクタードクター
そう。しかも前立腺癌の約7割は直腸側の辺縁域に発生するから、尿道側から削っても病変に届かない。直腸診で触れやすいのもそのためだ。限局性前立腺癌の手術は前立腺と精嚢を一塊に取る根治的前立腺全摘除術で、今はロボット支援下が主流だね。TUR-Pは進行癌の排尿困難に対する姑息的処置として行われることがある程度だ。
医学生医学生
対して前立腺肥大症は、尿道を取り囲む移行域が大きくなるから、内腔から削りやすいわけですね。
ドクタードクター
まさにそれが正解の1つ目だ。良性の過形成が前立腺部尿道を圧迫しているから、内腔側から腺腫を切除すれば閉塞が解除される。標準術式がTUR-Pで、最近はホルミウムレーザー前立腺核出術、いわゆるHoLEPも広く行われているが、これも経尿道的手術だ。もう1つの正解が膀胱結石だね。
医学生医学生
膀胱内の異物だから、膀胱鏡で砕いて取り出せばいいということですね。でも腎結石みたいに体外衝撃波結石破砕術は使わないんですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。膀胱結石は大きく硬いことが多く、膀胱内で動いて焦点を合わせにくいので、体外衝撃波結石破砕術は通常適応にならない。膀胱鏡を入れてレーザーや空気圧式の砕石装置で砕き、鉗子や洗浄で取り出す経尿道的膀胱砕石術が第一選択だ。非常に大きいものでは膀胱切石術を選ぶこともある。
医学生医学生
膀胱結石って、そもそもなぜできるんでしょうか。
ドクタードクター
多くは前立腺肥大症や神経因性膀胱による残尿・尿うっ滞が背景にある。だから結石を取るだけでなく、原因疾患の治療も再発予防に欠かせない。実は膀胱結石の合併は前立腺肥大症の手術適応の1つでもあるんだ。
医学生医学生
2つの正解がつながっているんですね。前立腺肥大症はいきなり手術ではなく、まず薬ですよね。
ドクタードクター
その通り。α1遮断薬、PDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬などの薬物療法がまず行われ、効果不十分な場合や、尿閉、膀胱結石、水腎症、反復する尿路感染などを合併した場合に手術を考える。最後に臨床の注意点として、従来の単極式TUR-Pでは非電解質の灌流液が血管内に吸収されて希釈性の低ナトリウム血症、いわゆるTUR症候群を起こすことがある。生理食塩水を使える双極式やレーザー手術の普及はこの対策でもあるんだ。
医学生医学生
術中や術後に意識障害や血圧変動が出たら、まずナトリウム値を確認するということですね。CBTでも出そうです。
ドクタードクター
国家試験でも頻出だよ。まとめると、尿路の内腔から届く良性の閉塞や異物は経尿道的手術、悪性腫瘍は一塊に摘出が原則で、例外は筋層非浸潤性膀胱癌のTUR-BT、と整理しておこう。

まとめ

経尿道的手術は尿道から内視鏡を挿入して病変を切除・破砕する低侵襲手術で、尿路の内腔側から閉塞や異物を除けばよい良性疾患で第一選択となります。前立腺肥大症は尿道周囲の移行域に生じるためTUR-PやHoLEPで内腔から切除でき、膀胱結石は体外衝撃波結石破砕術が通常適応外であるため経尿道的膀胱砕石術が選ばれます。一方、悪性腫瘍の根治手術は臓器ごと一塊に摘出するのが原則で、腎細胞癌は根治的腎摘除術または腎部分切除術、尿管癌は腎尿管全摘除術+膀胱カフ切除、前立腺癌は根治的前立腺全摘除術が標準であり、筋層非浸潤性膀胱癌のTUR-BTが例外となります。TUR-Pの合併症であるTUR症候群(希釈性低ナトリウム血症)や、膀胱結石の背景に排尿障害があることも合わせて押さえておくと、泌尿器科の治療選択を体系的に理解できます。

解答・解説

正解はc, eです

経尿道的手術とは、尿道から内視鏡(膀胱鏡・切除鏡・尿管鏡)を挿入し、皮膚を切開せずに病変の切除・破砕・摘出を行う手術の総称である。代表例は、前立腺肥大症に対する経尿道的前立腺切除術(TUR-P:transurethral resection of the prostate)、膀胱癌に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)、膀胱結石・尿管結石に対する経尿道的砕石術(TUL:transurethral lithotripsy)などである。 正解を導くには、2つの観点で選択肢を絞るとよい。 1. 解剖学的な到達性:尿道から近い膀胱・前立腺部尿道の病変は内視鏡で扱いやすい。腎実質は内視鏡で到達して切除する対象にならない。 2. 治療目的との整合性:悪性腫瘍の根治手術は、周囲組織を含めて臓器ごと一塊に摘出するのが原則であり、内腔から削り取る経尿道的手術では原則として根治性が確保できない(例外は表在性の膀胱癌に対するTUR-BTである)。一方、良性疾患で尿路の内腔側から閉塞や異物を取り除けばよい場合には、低侵襲な経尿道的手術が第一選択となる。 この観点から、膀胱内の異物である膀胱結石と、前立腺部尿道を内腔から圧迫する良性腫大である前立腺肥大症が、経尿道的手術を外科的治療の第一選択とする疾患である。

選択肢考察

  1. ×a.  腎細胞癌

    腎細胞癌は腎実質(主に近位尿細管上皮)から発生する腺癌であり、尿路の内腔に発生する腫瘍ではないため、経尿道的に到達して切除することはできない。外科的治療の基本は、腎をGerota筋膜とその内側の腎周囲脂肪組織ごと一塊に摘出する根治的腎摘除術である。小径腫瘍(おおむね4cm以下のT1a)では、腎機能温存のため腎部分切除術が推奨される。いずれも開腹・腹腔鏡下・ロボット支援下で行う手術である。

  2. ×b.  尿管癌

    尿管癌は腎盂癌とともに上部尿路上皮癌に分類される。尿路上皮癌は同じ側の尿路に多発・再発しやすい(多中心性発生)ため、対側腎機能が保たれていれば、腎・尿管全長と尿管が膀胱に開口する部分の膀胱壁(膀胱カフ)を一塊に摘出する腎尿管全摘除術(+膀胱部分切除)が標準治療である。小さく低悪性度の腫瘍や、単腎・腎機能低下例では尿管鏡による内視鏡的切除・レーザー焼灼が選択されることもあるが、これは限られた症例に対する腎温存治療であり、第一選択とはいえない。

  3. ○c.  膀胱結石

    膀胱結石の外科的治療の第一選択は、尿道から膀胱鏡を挿入し、レーザーや機械的・空気圧式の砕石装置で結石を細かく砕いて鉗子でつかみ出す、あるいは洗浄で排出させる経尿道的膀胱砕石術である。膀胱結石は大きく硬いことが多く、また膀胱内では結石が動いて焦点を合わせにくいため、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は通常適応とならない。非常に大きな結石では膀胱切石術(開腹あるいは経皮的)が選ばれることもある。膀胱結石は前立腺肥大症や神経因性膀胱などの排尿障害による残尿・尿うっ滞を背景に生じることが多く、再発予防のためには原因疾患の治療も必要となる。

  4. ×d.  前立腺癌

    前立腺癌の多くは尿道から離れた辺縁域(peripheral zone)に発生するため、尿道側から組織を削るTUR-Pでは病変に届かず、根治も得られない。転移のない限局性前立腺癌に対する外科的治療の第一選択は、前立腺と精嚢を一塊に摘出し、膀胱頸部と尿道を吻合する根治的前立腺全摘除術(現在はロボット支援下手術が主流)である。術後合併症として尿失禁や勃起障害がある。なお治療選択肢は手術のほか、放射線療法、監視療法(PSA監視療法)、内分泌療法などがあり、リスク分類や年齢に応じて選ぶ。TUR-Pは進行癌による排尿困難に対する姑息的処置として行われることがあるにとどまる。

  5. ○e.  前立腺肥大症

    前立腺肥大症は尿道を取り囲む移行域(transition zone)が良性に過形成し、前立腺部尿道を圧迫して排尿障害を起こす疾患である。肥大した腺腫は尿道の内腔側から到達できるため、外科的治療の第一選択は経尿道的手術であり、標準術式はTUR-Pである。従来の単極式TUR-Pは非電解質の灌流液を使うため、灌流液が血管内に大量に吸収されると希釈性の低ナトリウム血症(TUR症候群、水中毒)を起こすことがある。このため、生理食塩水を灌流液に使える双極式(バイポーラ)TUR-Pや、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)などのレーザー手術も広く行われているが、いずれも経尿道的手術である。なお、まずはα1遮断薬・PDE5阻害薬・5α還元酵素阻害薬などの薬物療法が行われ、効果不十分例や尿閉・膀胱結石・水腎症・反復する尿路感染などの合併例が手術適応となる。

主な泌尿器疾患の外科的治療の第一選択

・腎細胞癌:根治的腎摘除術(小径腫瘍では腎部分切除術) ・腎盂癌・尿管癌:腎尿管全摘除術+膀胱部分切除(膀胱カフ切除) ・膀胱癌:まずTUR-BTで切除し、深達度(筋層浸潤の有無)を病理診断する。筋層非浸潤性ならTUR-BT(+BCGや抗癌剤の膀胱内注入療法)、筋層浸潤性なら膀胱全摘除術+尿路変向術 ・前立腺癌(限局性):根治的前立腺全摘除術(または放射線療法など) ・前立腺肥大症:TUR-P、レーザー核出術(HoLEP)など ・膀胱結石:経尿道的膀胱砕石術

尿路結石の治療法の整理

・腎結石・上部尿管結石:大きさに応じてESWL、経尿道的尿管砕石術(TUL)、経皮的腎砕石術(PNL) ・中・下部尿管結石:TULまたはESWL ・膀胱結石:経尿道的砕石術(ESWLは通常適応外) ・10mm未満程度の尿管結石は自然排石を期待した保存的治療(飲水、鎮痛、α1遮断薬など)も選択される

前立腺の区域と疾患

・移行域(尿道周囲):前立腺肥大症の好発部位 → 尿道を圧迫しやすく、経尿道的に切除しやすい ・辺縁域(背側・直腸側):前立腺癌の好発部位(約70%)→ 直腸診で触れやすいが、尿道から離れている

POINT

・経尿道的手術が第一選択:前立腺肥大症(TUR-P)、膀胱結石(経尿道的砕石術)、膀胱癌の初回治療(TUR-BT) ・癌の根治手術は臓器ごと一塊に摘出するのが原則:腎細胞癌→腎摘除、上部尿路上皮癌→腎尿管全摘除+膀胱カフ切除、前立腺癌→前立腺全摘除 ・前立腺肥大症は移行域、前立腺癌は辺縁域に好発する ・膀胱結石にESWLは通常適応とならない。背景に排尿障害(前立腺肥大症など)があることが多い ・TUR-Pの合併症:TUR症候群(希釈性低ナトリウム血症)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。