StudyMed医師国家試験

陽性で決める、陰性で外す―SpPInとSnNOutで読み解く検査の使い分け

第109回医師国家試験 H問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第109回 H問題 第10問

診断の確定に有用なのはどれか。

  1. a.感度が高い検査が陽性のとき
  2. b.感度が高い検査が陰性のとき
  3. c.特異度が高い検査が陽性のとき
  4. d.特異度が高い検査が陰性のとき
  5. e.(1−感度)/特異度が0.1より低いとき

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、検査の性能を表す感度・特異度・尤度比が、診断を「確定する」のに役立つのか、「除外する」のに役立つのかを問う問題だ。定義を丸暗記するより、偽陽性と偽陰性がどれだけ起こるか、という視点で考えると迷わなくなるよ。まずは定義を確認しよう。
医学生医学生
感度は疾患がある人のうち陽性になる割合、特異度は疾患がない人のうち陰性になる割合、でしたよね。CBTの前に2×2表を何度も書きました。
ドクタードクター
完璧だね。裏返すと、1−感度が偽陰性率、1−特異度が偽陽性率になる。では「確定診断」とは、検査が陽性と出たときに、本当に病気だと言い切れることだ。そのために一番困るのは何だろう。
医学生医学生
病気でもないのに陽性になる、偽陽性ですか。
ドクタードクター
その通り。だから偽陽性の少ない検査、つまり特異度が高い検査が陽性と出たときに、疾患の存在を強く言える。これが正解だ。英語圏ではSpPIn、Specificityが高い検査がPositiveならrule Inと覚えるんだ。
医学生医学生
僕は最初、感度が高い検査が陽性なら確定できると思っていました。感度が高いほうが「よく当たる」イメージがあって。
ドクタードクター
そこが一番多い誤解だね。感度が高い検査は病気の人をほとんど見逃さないけれど、特異度が十分でなければ病気でない人も陽性に引っかける。陽性という結果だけでは確定できないんだ。だから感度の高い検査はスクリーニング向きで、陽性者に特異度の高い精密検査を追加して確定する、という流れになる。
医学生医学生
では感度が高い検査が陰性なら、偽陰性が少ないので病気を否定できる、ということですね。
ドクタードクター
そう、それがSnNOut、Sensitivityが高い検査がNegativeならrule Outだ。除外には有用だけれど、確定ではないから今回は不正解。では特異度が高い検査が陰性だったら?
医学生医学生
特異度が高くても感度が低ければ、病気の人が陰性になることは多いですよね。陰性だからといって否定もできない気がします。
ドクタードクター
その通り。確定には使えないし、それだけでは除外の根拠としても弱い。最後に、1−感度を特異度で割った値が0.1より低いとき、という選択肢はどうかな。
医学生医学生
数式が出てくると身構えてしまいます……これは尤度比でしょうか。
ドクタードクター
そう、陰性尤度比だ。疾患のある人で陰性になる確率が、疾患のない人で陰性になる確率の何倍か、を表す。小さいほど陰性結果が疾患を強く否定するから、0.1未満なら除外診断に有用とされる。確定に関わるのは陽性尤度比、感度を1−特異度で割った値で、これが10を超えると確定に有用とされるんだ。
医学生医学生
陽性尤度比は分母が偽陽性率なので、特異度が高いほど大きくなる。結局、確定には特異度が効くということですね。
ドクタードクター
見事なつながりだね。尤度比で考えると、SpPInとSnNOutがきちんと数式で裏づけられる。ここで、有病率との関係も押さえておこう。陽性的中率や陰性的中率はどうだったかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、的中率は有病率で変わると習いました。
ドクタードクター
その通り。感度・特異度・尤度比は検査そのものの性質で、原則として有病率に左右されない。一方、陽性的中率は有病率が高い集団ほど上がり、陰性的中率は下がる。だから同じ検査でも、健診の集団と症状のある外来患者とでは、陽性の重みが違ってくるんだ。
医学生医学生
検査前確率に尤度比をかけて検査後確率を見積もる、というのも臨床推論の授業で出てきました。
ドクタードクター
正確には、検査前オッズに尤度比をかけると検査後オッズになる、というベイズの定理の考え方だね。尤度比が1に近い検査は、結果が出ても確率がほとんど動かない。臨床では、見逃しが許されない疾患の除外には感度の高い検査を、治療方針を決める確定には特異度の高い検査を選ぶ。さらに、感度と特異度はカットオフ値を動かすと一方が上がれば他方が下がるトレードオフの関係にあって、ROC曲線で評価する。検査をオーダーするときは、その結果で何を決めたいのかを意識してほしい。

まとめ

特異度が高い検査は偽陽性が少ないため、陽性であれば疾患の存在を強く支持し、確定診断(rule in)に有用です(SpPIn)。逆に感度が高い検査は偽陰性が少ないため、陰性であれば疾患を除外(rule out)するのに有用です(SnNOut)。尤度比では、陽性尤度比=感度/(1−特異度)が10を超えると確定に、陰性尤度比=(1−感度)/特異度が0.1未満だと除外に役立つとされます。感度・特異度・尤度比は原則として有病率に依存しない一方、的中率は有病率に左右される点も重要です。検査の性質を理解し、目的に応じて使い分ける力は、無駄のない検査計画と的確な臨床推論の基礎となります。

解答・解説

正解はcです

検査の性能を表す指標(感度・特異度・尤度比)が、診断を「確定する(rule in)」のに役立つのか、「除外する(rule out)」のに役立つのかを問う問題である。

基本の定義

疾患あり・なしと検査陽性・陰性で2×2表をつくり、真陽性をTP、偽陽性をFP、偽陰性をFN、真陰性をTNとする。 ・感度 = TP /(TP + FN): 疾患がある人のうち検査が陽性になる割合 ・特異度 = TN /(TN + FP): 疾患がない人のうち検査が陰性になる割合 ・偽陰性率 = 1 − 感度、偽陽性率 = 1 − 特異度

確定と除外の考え方

特異度が高い検査は、疾患のない人をほとんど陽性にしない(偽陽性が少ない)。したがって、その検査が陽性と出たときは「疾患のない人がたまたま陽性になった」可能性が小さく、疾患が存在すると強く言える。つまり確定診断に役立つ。 一方、感度が高い検査は、疾患のある人をほとんど見逃さない(偽陰性が少ない)。したがって、その検査が陰性であれば疾患がないと強く言え、除外診断に役立つ。 英語圏ではこれを、SpPIn(Specificity が高い検査が Positive なら rule In)、SnNOut(Sensitivity が高い検査が Negative なら rule Out)という語呂で覚える。 本問は「診断の確定」を問うているので、特異度が高い検査が陽性となった場合を選ぶ。

選択肢考察

  1. ×a.  感度が高い検査が陽性のとき

    感度が高い検査は疾患を見逃しにくいが、特異度が十分でなければ疾患のない人も陽性になりうる(偽陽性)。そのため陽性という結果だけでは疾患の存在を確定できない。感度の高い検査はスクリーニングに向き、陽性者には特異度の高い精密検査を追加して確定するのが一般的な流れである。

  2. ×b.  感度が高い検査が陰性のとき

    感度が高い検査では偽陰性率(1 − 感度)が低いので、陰性であれば疾患がない可能性が高い。これは疾患の除外(rule out)に有用な状況であり、診断の確定ではない(SnNOut)。

  3. ○c.  特異度が高い検査が陽性のとき

    特異度が高い検査では偽陽性率(1 − 特異度)が低く、疾患のない人が陽性となることがまれである。そのため陽性結果が得られれば、疾患が存在する可能性は大きく高まり、確定診断(rule in)に有用である(SpPIn)。陽性尤度比(感度 /(1 − 特異度))も、分母の1 − 特異度が小さいほど大きくなるため、特異度の高い検査ほど陽性結果の診断的価値が高いことがわかる。

  4. ×d.  特異度が高い検査が陰性のとき

    特異度が高い検査でも、感度が低ければ疾患のある人が陰性となる(偽陰性)ことは多い。したがって陰性結果から疾患の有無を判断する根拠としては弱く、確定にも、それだけでは除外にも十分ではない。

  5. ×e.  (1−感度)/特異度が0.1より低いとき

    (1 − 感度)/ 特異度は陰性尤度比(LR−)である。これは「検査が陰性のとき、疾患のある人で陰性になる確率が、疾患のない人で陰性になる確率の何倍か」を表し、値が小さいほど陰性結果が疾患の存在を強く否定する。一般に陰性尤度比が0.1未満であれば、陰性結果によって検査後確率が大きく下がり、除外診断に有用とされる。確定診断に関係するのは陽性尤度比(感度 /(1 − 特異度))であり、これが10を超えると確定に有用とされる。

2×2表と主な指標

・感度 = TP /(TP + FN) ・特異度 = TN /(TN + FP) ・陽性的中率(PPV)= TP /(TP + FP): 陽性者のうち実際に疾患がある割合 ・陰性的中率(NPV)= TN /(TN + FN): 陰性者のうち実際に疾患がない割合 ・陽性尤度比(LR+)= 感度 /(1 − 特異度) ・陰性尤度比(LR−)=(1 − 感度)/ 特異度

尤度比の目安

・LR+ が10を超える: 陽性結果で検査後確率が大きく上がり、確定に有用 ・LR− が0.1未満: 陰性結果で検査後確率が大きく下がり、除外に有用 ・尤度比が1に近い: 検査結果が診断にほとんど影響しない

有病率との関係

感度・特異度・尤度比は検査そのものの性質であり、原則として有病率に左右されない。一方、陽性的中率・陰性的中率は有病率(検査前確率)に依存し、有病率が高い集団ほど陽性的中率が上がり、陰性的中率が下がる。

検査前確率と検査後確率

検査前オッズ × 尤度比 = 検査後オッズ という関係(ベイズの定理)により、検査結果から疾患の確率を見積もることができる。

臨床での使い分け

スクリーニングや見逃しが許されない疾患の除外には感度の高い検査を、治療方針を決めるための確定には特異度の高い検査を用いる。感度と特異度は、カットオフ値を動かすと一方が上がれば他方が下がるトレードオフの関係にあり、ROC曲線で評価する。

POINT

・特異度の高い検査が陽性 → 確定診断に有用(SpPIn)。 ・感度の高い検査が陰性 → 除外診断に有用(SnNOut)。 ・陽性尤度比 = 感度 /(1 − 特異度)、10を超えると確定に有用。 ・陰性尤度比 =(1 − 感度)/ 特異度、0.1未満で除外に有用。 ・的中率は有病率に依存するが、感度・特異度・尤度比は依存しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。