病気を治すための「ごはん」は保険で出る―公的医療保険の給付範囲を一本の軸で整理する
第109回医師国家試験 G問題 第2問
国試問題にチャレンジ
公的医療保険の給付対象となるのはどれか。
- a.正常分娩
- b.入院中の食事
- c.職場の健康診断
- d.地域住民への健康教育
- e.インフルエンザの予防接種
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクター
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ドクターまとめ
公的医療保険の療養の給付は、業務外の疾病・負傷の治療を対象とするのが基本であり、病気ではない正常分娩、予防目的の健康診断・予防接種・健康教育、業務上の傷病(労災保険が担当)は原則として対象外です。入院中の食事は治療の一環である栄養管理・食事療法とみなされ、入院時食事療養費として給付され、患者は標準負担額のみを自己負担します。正常分娩には出産育児一時金が支給され、帝王切開などの異常分娩は保険給付の対象となる点、職場健診は労働安全衛生法による事業者負担、インフルエンザの定期接種は予防接種法のB類疾病で市町村が実施主体である点もあわせて押さえておきましょう。「疾病の治療に直結しているか」という軸で制度を整理しておくと、各種給付や他制度との関係を理解しやすくなり、患者さんへの費用説明など臨床現場でも役立ちます。
解答・解説
正解はbです
公的医療保険の給付の基本的な考え方
我が国の公的医療保険(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度など)は、被保険者が業務外の「疾病・負傷」を負ったときに、その治療に必要な医療を給付することを基本としている。診察、検査、薬剤、処置・手術、入院、看護などが「療養の給付」として現物給付される。 したがって、次のものは原則として医療保険の療養の給付の対象外となる。 ①疾病ではないもの:正常な妊娠・分娩、美容整形など ②疾病になる前の予防・健康づくり:健康診断、予防接種、健康教育など ③業務上・通勤途上の傷病:労働者災害補償保険(労災保険)が対応する 予防や健診はそれぞれ別の法律と財源(事業者負担、市町村事業など)で担われている。
正解を導く考え方
選択肢のうち、疾病の治療と直結しているのは「入院中の食事」だけである。入院中の食事は治療の一環(栄養管理・食事療法)として位置づけられ、入院時食事療養費として医療保険から給付される。患者は1食あたり定額の標準負担額のみを自己負担する。
選択肢考察
- ×a. 正常分娩
正常な妊娠・分娩は疾病ではないため、医療保険の療養の給付の対象外であり、分娩費用は原則として自費となる。その代わり、医療保険からは出産育児一時金(現金給付)が支給され、分娩費用の大部分をまかなえるしくみになっている。一方、帝王切開や吸引分娩などの異常分娩、妊娠高血圧症候群・切迫早産などの治療は疾病に対する医療として保険給付の対象となる。
- ○b. 入院中の食事
入院中の食事は、疾病の治療に必要な栄養管理・食事療法の一部とみなされ、医療保険から入院時食事療養費として給付される(現物給付)。患者は1食ごとに定められた標準負担額だけを自己負担し、残りは保険者が負担する。低所得者には標準負担額の減額措置がある。なお、療養病床に入院する65歳以上の患者では、食費と居住費(光熱水費)を合わせた入院時生活療養費が給付される。
- ×c. 職場の健康診断
職場の一般健康診断(雇入れ時健診、定期健康診断など)は労働安全衛生法に基づき、事業者に実施が義務づけられており、費用は事業者が負担する。疾病の治療ではないため、医療保険の療養の給付の対象ではない。なお、健診の結果で異常が見つかり、医療機関で精密検査や治療を受ける段階になれば、それは医療保険の対象となる。
- ×d. 地域住民への健康教育
地域住民への健康教育は、健康増進法などに基づき、市町村や保健所などの行政が健康づくり・生活習慣病予防を目的として行う保健事業である。費用は公費(行政の予算)でまかなわれ、個人の疾病の治療ではないため、医療保険の給付対象とはならない。
- ×e. インフルエンザの予防接種
予防接種は疾病の予防であり、医療保険の給付対象外である。インフルエンザの予防接種は、予防接種法上のB類疾病として、65歳以上の者(および60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器機能やHIVによる免疫機能に一定の障害がある者)が定期接種の対象となり、市町村が実施主体として費用の一部を公費負担する。それ以外の者では任意接種であり、原則自費となる。
医療保険の主な給付
・療養の給付(現物給付):診察、薬剤・治療材料、処置・手術、在宅療養、入院・看護など。患者は医療費の一部(原則3割、義務教育就学前2割、70〜74歳2割、75歳以上は1割〜3割)を窓口で負担する。 ・入院時食事療養費、入院時生活療養費 ・保険外併用療養費(評価療養・選定療養など、保険診療と保険外診療を併用する場合) ・高額療養費(自己負担が一定額を超えた分の払い戻し) ・訪問看護療養費、移送費 ・現金給付:出産育児一時金、出産手当金(被用者保険)、傷病手当金(被用者保険)、埋葬料(費)など
給付対象外のものと、それを担う制度
・正常分娩 → 医療保険から出産育児一時金(現金給付)で補填 ・職場の健康診断 → 労働安全衛生法(事業者負担) ・特定健康診査・特定保健指導 → 高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、医療保険者が40〜74歳の加入者に実施する。保険者が行う保健事業であって、療養の給付ではない点に注意する。 ・地域住民の健康教育・健康相談 → 健康増進法(市町村) ・予防接種 → 予防接種法(定期接種は市町村が実施主体) ・業務上・通勤災害 → 労災保険 ・美容目的の医療、差額ベッド代(特別の療養環境の提供)など → 自費(差額ベッド代は選定療養として保険診療と併用可)
POINT
・公的医療保険の療養の給付は「業務外の疾病・負傷の治療」が対象。 ・正常分娩、健診、予防接種、健康教育は給付対象外(正常分娩には出産育児一時金が支給される)。 ・帝王切開などの異常分娩は保険給付の対象となる。 ・入院中の食事は入院時食事療養費として保険給付され、患者は標準負担額のみ自己負担する。 ・職場健診は労働安全衛生法で事業者負担、インフルエンザ定期接種は予防接種法のB類疾病(65歳以上など)。
