StudyMed医師国家試験

2日前の頭痛は「予告」だった―突然の頭痛でまず撮るべき検査

第109回医師国家試験 F問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第109回 F問題 第22問

48歳の女性。頭痛を主訴に来院した。2日前に突然の頭痛が生じたが軽快したためそのままにしていた。本日,夕食中に再び後頭部痛が生じ,直後に嘔吐したため夫に付き添われて受診した。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。体温35.8℃。脈拍80/分,整。血圧152/88 mmHg。呼吸数16/分。SpO2 95%(room air)。神経学的所見に異常を認めない。血糖132 mg/dL。  まず行うべき検査はどれか。

  1. a.脳波
  2. b.腰椎穿刺
  3. c.頭部MRI
  4. d.脳血管造影
  5. e.頭部単純CT

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、突然起こった頭痛と嘔吐の患者さんに、最初にどの検査を行うかを問う問題だ。注目してほしいのは「突然」という発症様式と、2日前にも似た頭痛があったという経過。この2つが何を意味するのかを考えながら進めよう。
医学生医学生
意識も神経所見も正常なので、片頭痛のような一次性頭痛もありうるのかなと思いました。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも「突然発症」は一次性頭痛ではなく、二次性頭痛を疑う危険信号なんだ。なかでもまず考えるべきなのがくも膜下出血。ほかに脳出血、椎骨動脈解離、可逆性脳血管攣縮症候群なども候補に挙がる。
医学生医学生
脳神経外科の講義で「人生最悪の頭痛」と習いましたが、この患者さんはそこまで強く訴えていないですよね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。典型例はそう表現されるけれど、全員がそう訴えるわけではない。意識清明で神経所見のない軽症のくも膜下出血は珍しくなく、むしろこうした例こそ見逃されやすいんだ。
医学生医学生
では、2日前の頭痛が自然に治まったことには意味があるんですか。
ドクタードクター
ここが最大のポイント。動脈瘤から少量の出血が起こって生じる頭痛を警告頭痛、英語でsentinel headacheと呼ぶ。そのあとに大きな出血、つまり本出血が起こることがあって、今日の頭痛と嘔吐はそれかもしれない。時間的な余裕はない状況だよ。
医学生医学生
だとすると、一刻も早く出血を確認する検査が必要ですね。頭部単純CTでしょうか。
ドクタードクター
正解。頭部単純CTは数分で撮れて、急性期の出血は高吸収域として白く写る。脳底槽を中心にペンタゴン状や星形に広がる出血像が典型だ。発症から6時間以内なら感度はほぼ100%に近いという報告もある。造影は不要で、単純で評価するのがポイントだね。
医学生医学生
腰椎穿刺も、くも膜下出血の診断に使うと習いました。
ドクタードクター
使うけれど、順番は2番目。CTで出血が見つからないのに疑いが強いときに行って、血性髄液やキサントクロミーを確認する。最初にやらない理由は、頭蓋内圧が高いと脳ヘルニアを誘発しうること、穿刺の刺激で再破裂を招くおそれがあること、それに穿刺時の血液混入と区別しにくいことだ。
医学生医学生
MRIのほうが細かく見えるので、最初からMRIではだめなんでしょうか。
ドクタードクター
MRIはFLAIR像やT2*強調像で、数日たった出血や少量の出血を拾えることがあり、CTで判断に迷うときの補助として有用だ。ただ撮影に時間がかかって検査中の観察も難しく、すぐに撮れない施設もある。急性期の出血ならCTで十分に捉えられるから、最初はCTが優先される。
医学生医学生
脳血管造影は動脈瘤そのものを見る検査なので、診断が確定してからですね。
ドクタードクター
その通り。カテーテルによる血管造影は動脈瘤の部位や形を最も正確に評価でき、コイル塞栓術にもつながるけれど、侵襲的で再破裂の危険もある。最近はまず3D-CTAで動脈瘤を探すことが多いね。脳波はてんかんや原因不明の意識障害の評価に使う検査で、今回は出番がない。
医学生医学生
CTで出血を確認して、陰性でも疑いが強ければ腰椎穿刺かMRI、確定したら血管評価、という流れですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での注意点。くも膜下出血の多くは脳動脈瘤の破裂が原因で、再破裂は発症早期、特に24時間以内に多い。だから診断がついたら鎮痛・鎮静と降圧を行い、刺激を避けて再破裂を防ぐことが最優先。そのうえでクリッピング術かコイル塞栓術で動脈瘤を処置する。
医学生医学生
救急外来の実習で、CTを撮りに行く前から血圧管理を指示していた先生がいたのはそういうことだったんですね。
ドクタードクター
そう。さらに発症後4〜14日目ごろには脳血管攣縮による遅発性脳虚血が起こりうるし、正常圧水頭症を後遺することもある。治療後も気を抜けない疾患なんだ。そして何より、軽快した頭痛でも「突然だったか」を必ず聞くこと。それが見逃しを防ぐ一番の武器になる。

まとめ

突然発症の頭痛は一次性頭痛ではなく、くも膜下出血をはじめとする二次性頭痛を疑う危険信号です。数日前に自然軽快した頭痛は動脈瘤からの少量出血による警告頭痛の可能性があり、その後に致死的な本出血を起こしうるため、意識清明・神経所見正常でも油断できません。くも膜下出血を疑ったら最初に頭部単純CTを行い、陰性でも疑いが強ければ腰椎穿刺(キサントクロミー)やMRI(FLAIR・T2*)を追加し、確定後に3D-CTAや脳血管造影で動脈瘤を評価します。診断後は再破裂予防のための鎮痛・鎮静・降圧が最優先で、その後の脳血管攣縮や水頭症にも注意が必要です。検査の「順番」とその理由を理解しておくことは、救急外来で見逃しを防ぎ患者を救うための基本となります。

解答・解説

正解はeです

所見の整理

・48歳女性。2日前に突然の頭痛があったが自然に軽快した。 ・本日、夕食中に再び後頭部痛が突然起こり、直後に嘔吐した。 ・意識清明、体温35.8℃で発熱なし、血圧152/88 mmHgとやや高い。 ・神経学的所見に異常なし(麻痺や言語障害などの局所症状がない)。血糖は132 mg/dLで、低血糖による症状は否定的である。

鑑別診断の考え方

「突然」発症する頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛のような一次性頭痛(それ自体が病気である頭痛)ではなく、脳血管障害などが原因となる二次性頭痛をまず疑う危険信号である。代表はくも膜下出血であり、ほかに脳出血、椎骨動脈解離、可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)、下垂体卒中などが挙がる。 本例は、①突然発症の後頭部痛、②嘔吐を伴う、③発熱がなく髄膜炎・脳炎は考えにくい、④局所神経症状がなく、脳出血や脳梗塞のような脳実質の障害は目立たない、という特徴から、くも膜下出血を最も疑う。さらに2日前の一過性の頭痛は、動脈瘤からの少量の出血(minor leak)による警告頭痛(sentinel headache)と考えられる。警告頭痛のあとに大きな再出血・本出血を起こすことがあり、時間的余裕のない状況である。 なお、くも膜下出血でも意識清明で神経所見がない軽症例(Hunt and Hess分類のgrade I〜II程度)は少なくなく、こうした例こそ見逃されやすい。

まず行うべき検査

くも膜下出血が疑われたら、最初に行うのは頭部単純CTである。短時間で撮影でき、急性期の出血は高吸収域(白く写る)として描出されるため、脳底槽やシルビウス裂などの脳槽に広がる出血を確実に捉えられる。CTで診断が確定してから、動脈瘤の検索(CT血管造影や脳血管造影)に進む。CTで出血が見つからないが疑いが強い場合に、初めて腰椎穿刺やMRIを追加する。

選択肢考察

  1. ×a.  脳波

    脳波はてんかんの診断や、原因不明の意識障害(非けいれん性てんかん重積、代謝性脳症など)の評価に用いる検査である。くも膜下出血を診断する検査ではなく、本例のようにけいれんも意識障害もない患者で最初に行う意味はない。

  2. ×b.  腰椎穿刺

    腰椎穿刺は、頭部CTでくも膜下出血が確認できないものの臨床的に疑いが残る場合に行う二次的な検査である。髄液の血性・キサントクロミー(赤血球が壊れてできるビリルビンなどによる黄色調の変化。発症から数時間〜半日ほどで現れる)があれば、くも膜下出血を示唆する。最初に行わない理由は、頭蓋内圧が高い状態で髄液を抜くと脳ヘルニアを誘発する危険があること、穿刺の刺激や圧変化が動脈瘤の再破裂を招くおそれがあること、そして穿刺時の血管損傷による血液混入(traumatic tap)と区別しにくいことである。CTで血腫などの占拠性病変を否定してから考慮する。

  3. ×c.  頭部MRI

    MRIはFLAIR像やT2*強調像で、発症から日数が経ったくも膜下出血やCTで判別しにくい少量の出血を検出できることがあり、CTで所見がはっきりしない場合の補助として有用である。しかし撮影に時間がかかり、検査中の患者観察も難しく、救急外来ですぐに実施できない施設もある。急性期のくも膜下出血の検出は単純CTで十分に確実であるため、最初の検査としてはCTが優先される。

  4. ×d.  脳血管造影

    カテーテルによる脳血管造影(デジタルサブトラクション血管造影; DSA)は、破裂した脳動脈瘤の部位・大きさ・形を最も正確に評価でき、血管内治療(コイル塞栓術)の際にもそのまま行われる。しかし侵襲的な検査であり、検査に伴う再破裂の危険もある。くも膜下出血の診断をCTで確定させたあとに、動脈瘤の検索や治療方針の決定のために行う検査であり、最初に行うものではない。近年はまずCT血管造影(3D-CTA)で動脈瘤を検索することが多い。

  5. ○e.  頭部単純CT

    くも膜下出血を疑ったときの第一選択の検査である。数分で撮影でき、急性期の出血は高吸収域として明瞭に写るため、脳底槽を中心に五角形(ペンタゴン)や星形に広がる出血像を確認できる。発症から6時間以内であれば検出感度はほぼ100%に近いとされる。一方、時間がたつと出血が髄液で薄まり感度が下がるため、数日経過した例や少量の出血では見逃しうる。本例は本日発症しており、まずCTで出血の有無を確認するのが適切である。造影は不要であり、単純CTで評価する。

くも膜下出血の概要

・原因: 大部分(約80%以上)が脳動脈瘤の破裂である。ほかに脳動静脈奇形、脳動脈解離(特に椎骨動脈)、外傷などがある。 ・好発: 中年以降で、女性にやや多い。危険因子は高血圧、喫煙、過度の飲酒、家族歴など。 ・症状: 「突然の、今までに経験したことのない激しい頭痛」が典型だが、すべての患者がそう訴えるわけではない。嘔吐、項部硬直(発症直後は目立たないことがある)、意識障害を伴うことがある。 ・警告頭痛: 本出血の数日〜数週前に、少量の出血による比較的軽い頭痛が先行することがあり、見逃すと致死的な本出血につながる。

診断の流れ

頭部単純CT → (陰性だが疑いが強い場合)腰椎穿刺またはMRI(FLAIR・T2*)→ 確定後に3D-CTA、MRA、脳血管造影で動脈瘤を検索。

初期対応と経過

・再破裂の予防が最重要である。再破裂は発症後24時間以内、特に早期に多い。鎮痛・鎮静、降圧を行い、刺激を避ける。 ・治療: 開頭による脳動脈瘤クリッピング術、または血管内治療によるコイル塞栓術。 ・発症後おおむね4〜14日目には脳血管攣縮による遅発性脳虚血が起こりうるほか、正常圧水頭症を後遺することもある。

POINT

・突然発症の頭痛は二次性頭痛、特にくも膜下出血をまず疑う。 ・先行した一過性の頭痛は警告頭痛(minor leak)の可能性がある。 ・くも膜下出血を疑ったら最初に頭部単純CTを行う。 ・CT陰性でも疑いが強ければ腰椎穿刺(キサントクロミー)やMRI(FLAIR)を追加する。 ・脳血管造影は診断確定後の動脈瘤評価・治療のための検査である。 ・初期対応では再破裂予防(鎮痛・鎮静・降圧)が重要である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。