脳出血は「穿通枝」で起こる―高血圧性脳出血の最多部位、被殻を英語で押さえる
第119回医師国家試験 A問題 第3問
国試問題にチャレンジ
Which of the following is the most common site of hypertensive intracerebral hemorrhage?
- a.Amygdala
- b.Hippocampus
- c.Hypothalamus
- d.Putamen
- e.Red nucleus
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
高血圧性脳出血は、主幹動脈からほぼ直角に分岐する細い穿通枝動脈に高い圧がかかり、リポヒアリノーシスや微小動脈瘤(Charcot-Bouchard動脈瘤)を経て破綻することで起こります。そのため被殻、視床、皮質下、小脳、橋といった穿通枝の灌流域に好発し、最多はレンズ核線条体動脈が灌流する被殻(約40%)、次いで視床(約30%)です。英語問題では視床(thalamus)と視床下部(hypothalamus)の取り違えに注意し、脳幹では中脳ではなく橋に多いことも押さえておきましょう。部位ごとに共同偏視の向き、瞳孔所見、麻痺の有無などの症候が異なり、高齢者の皮質下出血ではアミロイド血管症も鑑別に挙がります。血管の構造から好発部位を理解しておくと、症候から出血部位を推定する臨床的な思考に直結します。
解答・解説
正解はdです
和訳
高血圧性脳出血の発生部位として最も多いのはどれか。 a 扁桃体 b 海馬 c 視床下部 d 被殻 e 赤核
考え方
高血圧性脳出血は、長期間の高血圧によって脳の深部を灌流する細い穿通枝動脈(直径100〜300 µm程度)が傷むことで起こる。穿通枝は太い主幹動脈からほぼ直角に分岐するため、主幹動脈の高い圧が減衰せずに直接かかりやすい。その結果、血管壁に硝子様変性や類線維素壊死(リポヒアリノーシス)が生じ、微小動脈瘤(Charcot-Bouchard動脈瘤)が形成されて破綻すると考えられている。 このため出血は穿通枝の灌流域、すなわち被殻、視床、橋、小脳(歯状核付近)、大脳皮質下に集中する。なかでも最も多いのは、中大脳動脈から分岐するレンズ核線条体動脈の灌流域である被殻で、高血圧性脳出血の40%前後を占める。次いで視床が30%前後と多い。選択肢のうち好発部位に該当するのは被殻のみである。
選択肢考察
- ×a. Amygdala
誤りである。扁桃体は側頭葉内側に位置する大脳辺縁系の構造で、恐怖・不安などの情動や情動に結びついた記憶に関与する。高血圧性脳出血の好発部位ではなく、この部位の出血はまれである。
- ×b. Hippocampus
誤りである。海馬は側頭葉内側にある大脳辺縁系の構造で、新しい記憶(エピソード記憶)の形成に重要である。後大脳動脈の閉塞による脳梗塞や、低酸素・てんかんによる障害を受けやすい部位として知られるが、高血圧性脳出血はまれである。
- ×c. Hypothalamus
誤りである。視床下部は間脳の一部で、自律神経系の統合、体温・摂食・飲水の調節、下垂体ホルモン分泌の制御などを担う。高血圧性脳出血の好発部位は「視床」であり、名前の似た「視床下部」と取り違えないよう注意する。視床下部単独の出血はまれである。
- ○d. Putamen
正解である。被殻は大脳基底核を構成する核の一つで、淡蒼球とともにレンズ核をつくる。中大脳動脈の穿通枝であるレンズ核線条体動脈に灌流され、この血管は高血圧性変化を受けやすいため、被殻出血は高血圧性脳出血のなかで最も頻度が高い(約40%)。血腫が隣接する内包に及ぶと、対側の片麻痺・感覚障害が生じ、病側への共同偏視(病巣をにらむ)を伴うことが多い。優位半球では失語を伴う。
- ×e. Red nucleus
誤りである。赤核は中脳被蓋にある神経核で、小脳からの出力(歯状核赤核路)を受け、運動の協調に関与する。障害されると振戦や対側の不随意運動(Benedikt症候群など)をきたすことがあるが、高血圧性脳出血の好発部位ではない。脳幹で高血圧性出血が多いのは中脳ではなく橋である。
高血圧性脳出血の好発部位と頻度の目安
被殻(約40%)>視床(約30%)>皮質下・小脳・橋(それぞれ約10%)。おおむね4:3:1:1:1と覚えるとよい。
部位別の特徴
・被殻出血:レンズ核線条体動脈。対側片麻痺・感覚障害、病巣側への共同偏視、優位半球で失語。 ・視床出血:視床膝状体動脈・視床穿通動脈。対側の感覚障害(後に視床痛を残すことがある)、片麻痺、眼球の内下方偏位(鼻先を見つめるような眼位)。脳室穿破や水頭症を起こしやすい。 ・橋出血:脳底動脈の傍正中枝。急速な意識障害、四肢麻痺、両側の著明な縮瞳(pinpoint pupil)、高熱、呼吸異常。予後不良。 ・小脳出血:上小脳動脈の分枝(歯状核付近)。激しい回転性めまい、嘔吐、起立・歩行困難(体幹失調)。麻痺は目立たない。血腫が大きく脳幹圧迫や水頭症をきたす場合は手術(開頭血腫除去)の適応となる。 ・皮質下出血:高血圧性もあるが、高齢者では脳アミロイド血管症(アミロイドアンギオパチー)が原因として重要で、再発を繰り返しやすい。若年者では脳動静脈奇形なども考える。
病態
慢性高血圧 → 穿通枝の血管壁変性(リポヒアリノーシス)→ 微小動脈瘤(Charcot-Bouchard動脈瘤)→ 破綻。急性期は血腫拡大を防ぐため収縮期血圧を140 mmHg未満程度まで速やかに下げることが推奨されている。
POINT
・高血圧性脳出血の最多部位は被殻(約40%)、次いで視床(約30%)である。 ・被殻出血はレンズ核線条体動脈の破綻で、内包障害による対側片麻痺と病巣側への共同偏視が特徴である。 ・好発5部位:被殻、視床、皮質下、小脳、橋。脳幹では中脳ではなく橋に多い。 ・「視床」と「視床下部」を混同しない。 ・高齢者の皮質下出血ではアミロイド血管症を考える。
