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黄疸は「抱合の前か後か」で決まる―ビリルビン代謝で読み解く間接型と直接型

第109回医師国家試験 E問題 第35問

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第109回 E問題 第35問

間接ビリルビン優位の黄疸を呈するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.総胆管結石
  2. b.溶血性貧血
  3. c.Rotor症候群
  4. d.Gilbert症候群
  5. e.Dubin-Johnson症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、黄疸を間接ビリルビン優位と直接ビリルビン優位に分ける問題だ。暗記で片づけたくなるテーマだけど、ビリルビン代謝の流れを一本の線で描けば、どの疾患がどちらに入るか自然に決まる。着眼点は「異常がグルクロン酸抱合の前にあるか、後にあるか」だよ。
医学生医学生
生化学の講義で、ヘムからビリルビンができる流れを習いました。間接型が非抱合型、直接型が抱合型でしたよね。
ドクタードクター
その通り。流れを確認しよう。老化した赤血球は主に脾臓のマクロファージで壊され、ヘムがビリベルジンを経て間接ビリルビンになる。これは水に溶けにくいので、血中ではアルブミンにくっついて肝臓へ運ばれる。肝細胞に取り込まれると、UGT1A1という酵素でグルクロン酸抱合を受けて水溶性の直接ビリルビンになり、MRP2という輸送体で胆汁中に出ていく。
医学生医学生
ということは、抱合より手前で詰まれば間接型、抱合より後で詰まれば直接型が増える、という理屈ですか。
ドクタードクター
まさにそれ。産生が多すぎる、取り込めない、抱合できない、が間接型。抱合はできたけれど分泌できない、胆汁が流れない、が直接型だ。では溶血性貧血はどちらだと思う?
医学生医学生
赤血球がたくさん壊れるので、間接ビリルビンが作られすぎて肝臓の処理が追いつかない……間接型ですね。
ドクタードクター
正解。遺伝性球状赤血球症や自己免疫性溶血性貧血などがそうだね。間接ビリルビンはアルブミンと結合していて糸球体で濾過されないから、尿中ビリルビンは陰性。一方で尿ウロビリノゲンは増える。LD上昇、ハプトグロビン低下、網赤血球増加がセットで見られるよ。
医学生医学生
総胆管結石は、内科の実習で閉塞性黄疸の患者さんを担当しました。褐色の尿と白っぽい便が印象的でした。
ドクタードクター
いい経験をしたね。あれは肝臓で抱合されて胆汁に出た直接ビリルビンが、胆管で堰き止められて血中に逆流する状態。だから直接型優位だ。水溶性なので尿に出て濃い色になり、腸に届かないので便が灰白色になる。ALPやγ-GTPといった胆道系酵素も上がり、超音波で胆管拡張が見えることが多い。
医学生医学生
残りは体質性黄疸の3つですね。正直、Rotor症候群とDubin-Johnson症候群がどちらだったか、いつも混乱します。
ドクタードクター
そこが一番の山場だね。まずGilbert症候群。UGT1A1遺伝子の変異で抱合能が健常者の3割程度に落ちる。抱合の段階の異常だから、間接型優位だ。体質性黄疸の中で最も多く、人口の数%にみられる。総ビリルビンは多くが5 mg/dL未満と軽度で、絶食や疲労、発熱、ストレスで黄疸が強くなるのが特徴だよ。
医学生医学生
試験前に徹夜して食事を抜いたら目が黄色くなった、という話を先輩から聞いたことがあります。もしかしてそれでしょうか。
ドクタードクター
Gilbert症候群ならありうる話だね。ほかの肝機能検査や肝組織は正常で、溶血もない。予後は良好で治療は要らない。一方、Dubin-Johnson症候群はMRP2の異常で、抱合済みのビリルビンを胆汁へ出せない。抱合の後の異常だから直接型。肝細胞に黒褐色の色素が沈着して、肝臓が黒く見える「黒色肝」が有名だ。
医学生医学生
Rotor症候群も直接型なんですか。
ドクタードクター
そう。Rotor症候群は、肝細胞が類洞側から抱合型ビリルビンを取り込み直す輸送体OATP1B1とOATP1B3がともに欠損していて、抱合されたビリルビンを肝細胞内に保持できず血中に増える。これも直接型で、Dubin-Johnson症候群と違って肝臓に色素沈着はない。
医学生医学生
体質性黄疸は、Gilbert症候群とCrigler-Najjar症候群が間接型、Dubin-Johnson症候群とRotor症候群が直接型、と2つずつに分ければいいんですね。
ドクタードクター
そのペアで覚えるのが効率的だ。Crigler-Najjar症候群はUGT1A1活性がほぼ欠損するI型と、高度に低下するII型がある。I型は新生児期から重い黄疸で核黄疸の危険があり、光線療法や肝移植が必要になる。II型は酵素誘導作用のあるフェノバルビタールで黄疸が軽くなるが、I型には効かない。
医学生医学生
新生児黄疸も間接型ですよね。小児科の実習で光線療法を見学しました。
ドクタードクター
そうだね。赤ちゃんはビリルビンの産生が多いうえにUGT1A1が未熟だから、間接型が増える。臨床で大切なのは、黄疸を見たら総ビリルビンだけでなく直接・間接の分画と尿中ビリルビンを確認すること。直接型優位なら胆道閉塞を見逃さないよう画像検査へ、間接型優位なら溶血の有無を調べる、と次の一手が変わるからね。

まとめ

黄疸の病型は、ビリルビン代謝の異常がグルクロン酸抱合の前にあるか後にあるかで決まります。産生過剰や取り込み・抱合の障害では間接ビリルビン優位となり、溶血性貧血、Gilbert症候群、Crigler-Najjar症候群、新生児黄疸が代表です。抱合後の分泌・保持障害や胆道閉塞では直接ビリルビン優位となり、Dubin-Johnson症候群(MRP2異常、黒色肝)、Rotor症候群(OATP1B1/1B3欠損、色素沈着なし)、総胆管結石などの閉塞性黄疸が該当します。直接ビリルビンは水溶性で尿中に出るため、尿中ビリルビンの有無も鑑別の手がかりになります。代謝経路から病型を導く考え方を身につけると、暗記に頼らず黄疸の鑑別と次の検査を組み立てられるようになります。

解答・解説

正解はb, dです

黄疸は血中ビリルビンが増加して皮膚や眼球結膜が黄染する状態である。ビリルビンの代謝経路のどこに異常があるかによって、増えるビリルビンの種類(間接型か直接型か)が決まる。

ビリルビン代謝の流れ

(1) 産生:老化赤血球が主に脾臓のマクロファージで破壊され、ヘモグロビンのヘムがビリベルジンを経て非抱合型(間接)ビリルビンになる。間接ビリルビンは水に溶けにくく、血中ではアルブミンと結合して運ばれる。 (2) 肝細胞への取り込み:肝細胞の類洞側膜から取り込まれる。 (3) 抱合:肝細胞内でUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合を受け、水溶性の抱合型(直接)ビリルビンになる。 (4) 排泄:毛細胆管側膜の輸送体MRP2から胆汁中に分泌され、胆管を経て腸管へ排出される。

病型の考え方

・抱合より前(産生過剰、取り込み障害、抱合障害)の異常 → 間接ビリルビン優位。代表は溶血、Gilbert症候群、Crigler-Najjar症候群、新生児黄疸。 ・抱合より後(肝細胞からの分泌障害、胆汁うっ滞、胆管閉塞)の異常 → 直接ビリルビン優位。代表はDubin-Johnson症候群、Rotor症候群、肝内胆汁うっ滞、閉塞性黄疸(総胆管結石、膵頭部癌など)。 肝細胞障害(肝炎、肝硬変)では両者が上昇するが、多くは直接型が優位となる。本問では、抱合前の段階に異常がある疾患を選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  総胆管結石

    誤り。総胆管結石が胆管を塞ぐと、肝臓で抱合されて胆汁中に排泄された直接ビリルビンが腸管へ流れず、血中に逆流する(閉塞性黄疸)。したがって直接ビリルビン優位の黄疸となる。同時にALP・γ-GTPなどの胆道系酵素が上昇し、尿中ビリルビン陽性(濃い褐色尿)、便は灰白色調となる。腹部超音波で胆管拡張を確認することが診断の糸口になる。

  2. ○b.  溶血性貧血

    正しい。溶血性貧血(遺伝性球状赤血球症、自己免疫性溶血性貧血など)では赤血球が大量に破壊され、ヘモグロビン由来の間接ビリルビンが肝臓の抱合処理能力を上回って産生されるため、間接ビリルビン優位の黄疸となる。間接ビリルビンはアルブミンと結合しており糸球体で濾過されないため、尿中ビリルビンは陰性である(尿ウロビリノゲンは増加)。検査ではLD上昇、ハプトグロビン低下、網赤血球増加を伴うのが特徴である。

  3. ×c.  Rotor症候群

    誤り。Rotor症候群は常染色体劣性遺伝の体質性黄疸で、肝細胞が類洞側から抱合型ビリルビンを再び取り込む輸送体(OATP1B1とOATP1B3)がともに欠損することで起こる。抱合はされるが肝細胞内に保持できず血中に増えるため、直接ビリルビン優位の黄疸となる。Dubin-Johnson症候群と異なり肝臓への色素沈着はなく、ICG(インドシアニングリーン)試験で排泄遅延を示す。予後は良好で治療は不要である。

  4. ○d.  Gilbert症候群

    正しい。Gilbert症候群は、UGT1A1遺伝子の変異(プロモーター領域の多型など)により肝臓のグルクロン酸抱合能が健常者の約30%程度に低下する体質性黄疸である。抱合が不十分なため、間接ビリルビン優位の軽度の高ビリルビン血症(多くは総ビリルビン5 mg/dL未満)を示す。体質性黄疸の中で最も頻度が高く、人口の数%にみられる。空腹(絶食)、疲労、発熱、ストレスなどで黄疸が増強し、肝機能検査の他項目や肝組織は正常で、溶血所見もない。予後は良好で治療は不要である。遺伝形式は主に常染色体劣性とされるが、ヘテロ接合でも軽度上昇を示すことがある。

  5. ×e.  Dubin-Johnson症候群

    誤り。Dubin-Johnson症候群は常染色体劣性遺伝の体質性黄疸で、毛細胆管側膜の輸送体MRP2(ABCC2遺伝子)の異常により、抱合型ビリルビンを胆汁中へ分泌できない。そのため直接ビリルビン優位の黄疸となる。肝細胞内に黒褐色の色素が沈着して肝臓が肉眼的に黒色調(黒色肝)を呈すること、尿中コプロポルフィリンの総量は正常だがI型の比率が著しく高いこと、経口胆嚢造影で胆嚢が描出されにくいことが特徴である。予後は良好である。

体質性黄疸の整理

間接ビリルビン優位(抱合障害) ・Gilbert症候群:UGT1A1活性が軽度低下(約30%)。最多。総ビリルビンは通常5 mg/dL未満。絶食・疲労で増悪。治療不要。 ・Crigler-Najjar症候群I型:UGT1A1活性がほぼ欠損。新生児期から高度の黄疸で核黄疸の危険があり、光線療法や肝移植が必要。フェノバルビタールは無効。 ・Crigler-Najjar症候群II型(Arias症候群):UGT1A1活性が高度低下。フェノバルビタール(酵素誘導)で黄疸が軽減する。 直接ビリルビン優位(排泄・保持障害) ・Dubin-Johnson症候群:MRP2異常。黒色肝。尿中コプロポルフィリン総量正常・I型が80%以上。 ・Rotor症候群:OATP1B1/1B3欠損。肝の色素沈着なし。尿中コプロポルフィリン総量が著増。ICG試験で排泄遅延。

間接型と直接型の鑑別のポイント

・尿中ビリルビン:直接ビリルビンは水溶性で尿に出るため、直接型優位の黄疸では陽性、間接型優位では陰性となる。 ・閉塞性黄疸では、腸へのビリルビン排泄が途絶えるため尿ウロビリノゲンは低下〜陰性、便は灰白色になる。溶血では尿ウロビリノゲンが増加する。

その他の間接ビリルビン優位の黄疸

新生児生理的黄疸(ビリルビン産生増加とUGT1A1活性の未熟性)、母乳性黄疸、無効造血(悪性貧血、サラセミアなど)、大量の血腫の吸収など。

POINT

・抱合前の異常(産生過剰・取り込み障害・抱合障害)→間接ビリルビン優位:溶血性貧血、Gilbert症候群、Crigler-Najjar症候群、新生児黄疸。 ・抱合後の異常(分泌・保持障害、胆汁うっ滞、胆道閉塞)→直接ビリルビン優位:Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群、閉塞性黄疸。 ・Gilbert症候群は最多の体質性黄疸で、絶食や疲労で増悪し治療不要。 ・Dubin-Johnson症候群は黒色肝とMRP2異常、Rotor症候群は色素沈着なし。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。