熱源はラインにあり?―「血液」と「先端」の二本立てで迫るカテーテル関連血流感染症
第109回医師国家試験 E問題 第34問
国試問題にチャレンジ
カテーテル関連血流感染症の診断に必要な検査はどれか。2つ選べ。
- a.鼻腔培養
- b.咽頭培養
- c.血液培養
- d.穿刺部皮膚培養
- e.カテーテル先端培養
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
カテーテル関連血流感染症(CRBSI)の診断は、血液培養で血流感染を証明し、カテーテル先端培養でその菌がカテーテル由来であることを示す二本立てで行います。末梢血培養とカテーテル先端培養で同一菌が検出されれば診断でき、カテーテルを温存する場合はカテーテル採取血と末梢血の陽性化時間差(DTP)などで評価します。鼻腔・咽頭培養は保菌や上気道感染の評価、刺入部皮膚培養は常在菌の影響が大きく、診断の根拠にはなりません。治療は原則カテーテル抜去と適切な抗菌薬投与で、カンジダ血症では眼内炎、黄色ブドウ球菌菌血症では感染性心内膜炎の検索も必要です。「何を証明すれば診断になるか」を分解して考える姿勢は、院内感染症全般の診療に通じる基本となります。
解答・解説
正解はc, eです
カテーテル関連血流感染症(CRBSI:catheter-related bloodstream infection)は、血管内に留置したカテーテル(とくに中心静脈カテーテル)に微生物が定着し、そこから血流へ菌が侵入して菌血症・敗血症を起こす病態である。中心静脈カテーテルを留置中の入院患者が明らかな感染巣のないまま発熱した場合、まず疑うべき院内感染症の一つである。
診断の考え方
CRBSIと診断するには、次の2点を示す必要がある。 (1) 血流感染が実際に起きていること → 血液培養で菌を検出する。 (2) その菌の由来がカテーテルであること → カテーテル(先端)から同じ菌を検出する。 すなわち「末梢静脈から採取した血液培養」と「抜去したカテーテル先端の培養」で同一菌種(同じ薬剤感受性パターン)が検出されれば、カテーテルが感染源の血流感染と判断できる。カテーテルを抜去しない場合は、カテーテル内腔から採取した血液と末梢血の培養を同時に行い、陽性化までの時間差や菌量の比を比較する方法もある。 したがって診断に必須なのは血液培養とカテーテル先端培養であり、保菌の評価や上気道感染の検査、常在菌が混入しやすい皮膚表面の培養は診断の根拠にならない。
選択肢考察
- ×a. 鼻腔培養
誤り。鼻腔(主に鼻前庭)の培養は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの保菌の有無を調べるスクリーニングに用いられる。鼻腔にMRSAがいても、それは「定着している」ことを示すにすぎず、血流感染やカテーテルの感染を証明するものではない。CRBSIの診断には用いない。
- ×b. 咽頭培養
誤り。咽頭培養は、A群β溶血性レンサ球菌による咽頭炎・扁桃炎の診断や、保菌の評価などに行う検査である。咽頭には多くの常在菌が存在し、カテーテルとも血流感染とも直接の関係はないため、CRBSIの診断には役立たない。
- ○c. 血液培養
正しい。血液培養は、血液中に菌が存在すること(菌血症)を直接証明する検査であり、血流感染症の診断に不可欠である。抗菌薬投与前に、皮膚を十分に消毒したうえで2セット以上(好気ボトル・嫌気ボトルを1セットとする)採取する。CRBSIを疑う場合は、少なくとも1セットは末梢静脈から採取し、もう1セットをカテーテルから採取して比較することも多い。末梢血とカテーテル由来の検体で同じ菌が検出されることが診断の根拠となる。
- ×d. 穿刺部皮膚培養
誤り。カテーテル刺入部の皮膚には表皮ブドウ球菌などの常在菌が存在するため、培養で菌が検出されても血流感染の原因菌とは断定できない。また刺入部に発赤や膿などの局所感染徴候がなくても、カテーテル内腔からの感染などでCRBSIは起こりうるため、皮膚培養が陰性でも否定はできない。刺入部に排膿があれば膿の培養は参考になるが、CRBSIの診断に必須の検査ではない。
- ○e. カテーテル先端培養
正しい。抜去したカテーテルの先端(約5 cm)を無菌的に切断して培養し、カテーテルに菌が定着していたことを証明する。寒天培地上で先端を転がす半定量培養(Maki法)で15コロニー以上が検出され、かつ末梢血培養と同一菌であれば、カテーテルが感染源と判断できる。血液培養と組み合わせることで「血流感染があり、その由来がカテーテルである」ことが示される。
CRBSIの概要
・感染経路:刺入部の皮膚から皮下トンネルに沿ってカテーテル外側面を菌が移動する経路(留置早期に多い)と、接続部(ハブ)の汚染からカテーテル内腔を伝わる経路(長期留置で多い)がある。輸液自体の汚染や他の感染巣からの血行性定着もありうる。 ・主な原因菌:コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌など)、黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)、腸球菌、グラム陰性桿菌、カンジダ属。高カロリー輸液中はカンジダ血症に注意し、カンジダ血症では眼内炎の有無を眼科で確認する。 ・リスク因子:中心静脈カテーテル(とくに大腿静脈からの挿入)、長期留置、高カロリー輸液、頻回のライン操作、免疫不全など。
診断方法のまとめ
・カテーテルを抜去する場合:末梢血培養とカテーテル先端培養で同一菌を検出する。 ・カテーテルを温存する場合:カテーテル採取血と末梢血を同時に採取し、カテーテル採取血のほうが2時間以上早く陽性化する(DTP:differential time to positivity)、あるいは定量培養でカテーテル採取血の菌量が末梢血より明らかに多い(3倍以上)ことを確認する。
治療の原則
・感染が疑われるカテーテルは原則として抜去する(とくに黄色ブドウ球菌、緑膿菌、カンジダなどでは抜去が強く推奨される)。 ・抜去だけで済ませず、原因菌と重症度に応じた適切な抗菌薬(抗真菌薬)投与を行う。MRSAを想定する場合はバンコマイシンなどを用いる。 ・黄色ブドウ球菌菌血症では感染性心内膜炎などの合併を評価する。
予防
挿入時のマキシマルバリアプリコーション(帽子・マスク・滅菌ガウン・滅菌手袋・大型滅菌ドレープ)、クロルヘキシジンによる皮膚消毒、不要になったカテーテルの速やかな抜去、ハブ操作時の消毒の徹底などが重要である。
POINT
・CRBSIの診断は「血流感染の証明(血液培養)」と「カテーテル由来であることの証明(カテーテル先端培養)」の二本立て。 ・末梢血培養とカテーテル先端培養で同一菌が検出されれば診断できる。 ・鼻腔・咽頭培養は保菌や上気道感染の評価、刺入部皮膚培養は常在菌の混入が多く、診断の根拠にならない。 ・治療は原則カテーテル抜去+適切な抗菌薬投与。
