健診の場は「見つける」だけじゃない―3歳児健診で一次予防を見抜く
第109回医師国家試験 E問題 第36問
国試問題にチャレンジ
3歳児健康診査で実施される項目で一次予防はどれか。2つ選べ。
- a.尿検査
- b.視力検査
- c.歯磨き指導
- d.身長体重測定
- e.予防接種の実施確認
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
予防医学は、発生を防ぐ一次予防(健康増進・特異的予防)、早期発見・早期治療の二次予防、悪化防止やリハビリテーションの三次予防に分けられます。3歳児健診は全体としては二次予防の性格が強いものの、行為ごとに見ると、尿検査・視力検査・身長体重測定は既存の異常を見つける二次予防、歯磨き指導と予防接種の実施確認・勧奨は病気の発生を防ぐ一次予防に当たります。歯科領域でも、う歯の診察は二次予防、歯磨き指導やフッ化物塗布は一次予防と分類が変わる点が要注意です。3歳児健診は母子保健法に基づき市町村が実施する法定健診で、1歳6か月児健診とともに押さえておきましょう。「その行為は見つけるのか、防ぐのか」と考える習慣は、公衆衛生の問題全般を解く際の基本になります。
解答・解説
正解はc, eです
3歳児健康診査(3歳児健診)で行われる項目を、予防医学の3段階(一次・二次・三次予防)に当てはめて分類する問題である。
予防の3段階
・一次予防:病気がまだ起きていない段階で、発生そのものを防ぐ。生活習慣の改善や健康教育などの「健康増進」と、予防接種・事故防止などの「特異的予防」からなる。 ・二次予防:すでに始まっている病気や異常を、症状が軽いうち(あるいは無症状のうち)に見つけて治療につなげる。健診・検診(スクリーニング)による早期発見と早期治療がこれに当たる。 ・三次予防:発症した病気の悪化・再発を防ぎ、機能の回復や社会復帰を図る。リハビリテーションなどが含まれる。
考え方
健康診査は全体としては二次予防(早期発見)の性格が強い事業であるが、その場で行われる保健指導や予防接種の勧奨は一次予防に分類される。各項目について「すでにある異常を見つける行為か(二次予防)」「まだ起きていない病気を防ぐ行為か(一次予防)」を判断すればよい。検査・測定によって異常を発見する項目は二次予防、う歯(虫歯)の発生を防ぐための歯磨き指導や、感染症を防ぐための予防接種の確認・勧奨は一次予防となる。
選択肢考察
- ×a. 尿検査
誤り。3歳児健診の尿検査では、蛋白尿・血尿・糖尿などを調べ、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、先天性腎尿路異常などの腎・尿路疾患を自覚症状のないうちに見つけることを目的とする。すでに存在する疾患の早期発見であり、二次予防に当たる。
- ×b. 視力検査
誤り。3歳児健診での視覚検査は、弱視・斜視・屈折異常(遠視、乱視など)を早期に見つけるために行う。視覚の発達には感受性期(おおむね6〜8歳頃まで)があり、その間に発見して眼鏡装用などの治療を始めることが重要である。既存の異常を発見する行為なので二次予防である。近年は家庭での視力検査に加えて、屈折検査機器(フォトスクリーナー)による検査の導入が進められている。
- ○c. 歯磨き指導
正しい。歯磨き指導は、正しい歯磨き習慣を身につけさせることで、う歯(虫歯)や歯肉炎の発生を未然に防ぐための健康教育である。病気が起こる前に行う行為なので一次予防(健康増進)に分類される。なお、3歳児健診で行う歯科診察によるう歯の発見は二次予防、フッ化物歯面塗布は一次予防(特異的予防)に当たる。
- ×d. 身長体重測定
誤り。身長・体重の測定は、成長曲線(身体発育曲線)と照らし合わせて、低身長、やせ・栄養不良、肥満、さらには内分泌疾患や虐待・ネグレクトなどの背景を見つける手がかりとなる。すでに生じている発育の異常を発見する行為であり、二次予防である。
- ○e. 予防接種の実施確認
正しい。予防接種の接種歴を確認し、未接種のワクチンがあれば接種を勧奨することで、麻疹・風疹などのワクチンで防げる感染症の発生を未然に防ぐことにつながる。予防接種は一次予防のうち特定の疾患を対象とした特異的予防の代表であり、その実施確認も一次予防に位置づけられる。
3歳児健康診査の概要
・根拠法:母子保健法(第12条)。市町村に実施が義務づけられている。法定の幼児健診は、1歳6か月児健診と3歳児健診の2つである。 ・対象:満3歳を超え満4歳に達しない幼児。 ・主な項目:身体発育状況、栄養状態、脊柱・胸郭の疾病・異常、皮膚の疾病、眼の疾病・異常、耳・鼻・咽頭の疾病・異常、歯・口腔の疾病・異常、四肢運動障害、精神発達の状況、言語障害、予防接種の実施状況、育児上問題となる事項、その他の疾病・異常。 ・3歳児健診では、視覚・聴覚の検査や尿検査、精神発達・言語発達の評価が重視される(言葉の遅れや発達障害の気づきの場ともなる)。
予防の3段階の例(Leavell & Clarkの考え方に基づく)
・一次予防 健康増進:健康教育、栄養指導、運動、禁煙指導、歯磨き指導、生活環境の改善 特異的予防:予防接種、事故防止、職業病対策、フッ化物の利用、ヨード添加など ・二次予防 早期発見・早期治療:新生児マス・スクリーニング、乳幼児健診での異常の発見、がん検診、特定健康診査 ・三次予防 機能障害の進行防止・リハビリテーション・社会復帰支援
注意点
同じ「健診」の場で行われる行為でも、検査・診察による異常の発見は二次予防、保健指導・健康教育・予防接種勧奨は一次予防と区別する。たとえば歯科領域では、う歯の診察は二次予防、歯磨き指導やフッ化物塗布は一次予防である。
POINT
・一次予防=発生を防ぐ(健康増進:歯磨き指導・栄養指導など/特異的予防:予防接種・事故防止など)。 ・二次予防=早期発見・早期治療(健診での尿検査、視力検査、身長体重測定など)。 ・三次予防=悪化防止・リハビリテーション・社会復帰。 ・3歳児健診は母子保健法に基づき市町村が実施する。
