StudyMed医師国家試験

言葉を使わずに「聞いています」を伝える―医療面接の非言語的コミュニケーション

第109回医師国家試験 C問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第109回 C問題 第5問

医療面接における非言語的コミュニケーションはどれか。

  1. a.語尾まで明瞭に発音する。
  2. b.患者が発した言葉を繰り返す。
  3. c.聞き取りやすい声の大きさで話す。
  4. d.患者の訴えに応じてうなずきながら聞く。
  5. e.専門用語を用いずに治療方針を説明する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接の基本、コミュニケーションの分類を問う問題だ。着眼点はシンプルで、それぞれの行為が「言葉を発することを前提にしているかどうか」。ここを見分けられれば迷わないよ。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習で「態度が大事」とよく言われましたが、どこまでが言語でどこからが非言語なのか、改めて聞かれると自信がないです。
ドクタードクター
まず定義から整理しよう。言語的コミュニケーションは「何をどんな言葉で伝えるか」、つまり話す内容や語彙の選び方、質問や説明の仕方に関わるもの。非言語的コミュニケーションは、表情、視線、うなずき、姿勢、身体の向き、患者との距離、身だしなみ、沈黙の使い方など、言葉を介さずに伝わるメッセージのことだ。
医学生医学生
そうすると、選択肢の中で声を出さずにできるのは、うなずきながら聞くことだけですね。
ドクタードクター
その通り、正解は患者の訴えに応じてうなずきながら聞くことだ。うなずきは身体の動きだけで「ちゃんと聞いていますよ」「理解していますよ」と伝えられる、典型的な非言語的コミュニケーション。患者さんは安心して話を続けやすくなるし、信頼関係、いわゆるラポールの形成にもつながる。
医学生医学生
でも、患者さんの言葉を繰り返すのも傾聴の技法として習いました。あれも非言語じゃないんですか。
ドクタードクター
よくある誤解だね。反復や言い換えは確かに傾聴を示す技法だけれど、医師が声に出して言葉を返すことで成り立つ。だから言語的な面接技法に分類されるんだ。開放型質問や要約、共感的な言葉かけと同じグループだと考えるといい。
医学生医学生
専門用語を使わずに治療方針を説明するのも、語彙の選び方の話なので言語的ということですね。
ドクタードクター
そう。インフォームド・コンセントでは欠かせない配慮だけど、言葉そのものを工夫しているから言語的コミュニケーションだ。
医学生医学生
語尾まで明瞭に発音することや、聞き取りやすい声の大きさで話すことはどうでしょう。声のトーンは言葉の中身とは別のような気もして、少し迷いました。
ドクタードクター
鋭い疑問だ。実は声の大きさや高さ、速さ、抑揚は、学術的には準言語、パラ言語と呼ばれ、非言語側に含める分類もある。ただ、この問題の文脈では、どちらも発話した内容を相手に確実に届けるための注意点として扱われていて、言葉を使わないうなずきとははっきり区別される。日本語は文末で肯定・否定や疑問が決まるから、語尾が不明瞭だと意味を取り違えられやすい、という実際的な意味もあるよ。
医学生医学生
なるほど、「声を出さなくても成立するか」で判断すれば、うなずきだけが残るわけですね。
ドクタードクター
そういうことだ。では、うなずき以外の非言語的な要素も押さえておこう。視線は適度なアイコンタクトが基本だけど、目をじっと凝視し続けると威圧感を与えるから、顔の中心付近をやわらかく見るくらいがいい。姿勢は患者さんの方へ身体を向けて、やや前傾すると関心が伝わる。座る位置は真正面より斜め90度くらいのほうが圧迫感が少ないとされているね。
医学生医学生
臨床実習で内科外来を見学したとき、電子カルテの画面ばかり見ている場面があって、患者さんが話しにくそうだったのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそこが臨床での注意点なんだ。非言語的なメッセージは言葉と同時に伝わっていて、言葉と態度が食い違うと、受け手は態度のほうを信じやすいと言われている。「何でもお話しください」と言いながら時計ばかり見ていたら、患者さんは話しにくくなるよね。
医学生医学生
言葉で丁寧に言うだけでは不十分で、態度と一致させないと逆効果になることもあるんですね。
ドクタードクター
その通り。腕組みも避けたいし、沈黙も上手に使えば患者さんが考えをまとめる時間になる。言葉と態度の両方で関心と受容を示すことが、結果的に正確な情報収集にもつながるんだ。

まとめ

医療面接のコミュニケーションは、話す内容や語彙・質問の仕方などの言語的コミュニケーションと、表情・視線・うなずき・姿勢・身体の向き・距離・身だしなみなど言葉を介さずに伝わる非言語的コミュニケーションに分けられます。患者の訴えに応じたうなずきは、声を出さずに「聞いている・理解している」と伝える典型的な非言語的コミュニケーションであり、ラポール形成に役立ちます。一方、患者の言葉の反復、平易な言葉での説明、明瞭な発音や適切な声量は、発話を前提とした言語的側の注意点として整理されます(声量や抑揚は準言語として扱われることもあります)。言葉と態度が食い違うと患者は態度のほうを信じやすいため、両者を一致させることが信頼関係の構築と正確な情報収集の土台になります。

解答・解説

正解はdです

医療面接で医師と患者の間に交わされる情報は、言葉そのものによって伝わる部分(言語的コミュニケーション)と、言葉以外の手段で伝わる部分(非言語的コミュニケーション)に分けて考えることができる。 言語的コミュニケーションとは、話す内容・語彙の選び方・質問の仕方・説明の仕方など、「何をどのような言葉で伝えるか」に関わるものである。一方、非言語的コミュニケーションとは、表情、視線(アイコンタクト)、うなずきや相づちの身振り、姿勢、身体の向き、患者との距離、身だしなみ、沈黙の使い方など、言葉を介さずに相手へ伝わるメッセージを指す。 本問では、選択肢の行為が「言葉を発すること」を前提としているか、「言葉を使わない態度・動作」であるかを見分ければよい。発音、患者の言葉の反復、声量、平易な言葉での説明はいずれも発話を伴う行為であり、言葉を使わずに成立するのは「うなずき」だけである。

選択肢考察

  1. ×a.  語尾まで明瞭に発音する。

    誤り。語尾まではっきり発音することは、話し言葉を相手に正確に届けるための工夫であり、発話を前提とした言語的コミュニケーション上の注意点に位置づけられる。日本語は文末で肯定・否定や疑問が決まるため、語尾が不明瞭だと意味が取り違えられやすく、医療面接では重要な配慮である。

  2. ×b.  患者が発した言葉を繰り返す。

    誤り。患者の言葉をそのまま、あるいは要点を言い換えて返す技法は「反復(繰り返し)」や「言い換え」と呼ばれ、傾聴を示し、患者にさらに話を続けてもらうための言語的な面接技法である。医師が声に出して言葉を返すことで成り立つため、言語的コミュニケーションに分類される。

  3. ×c.  聞き取りやすい声の大きさで話す。

    誤り。適切な声量で話すことは、発話した内容を相手に確実に届けるための配慮であり、国家試験の文脈では言語的コミュニケーションの注意点として扱われる。なお、声の大きさ・高さ・速さ・抑揚などは、言葉の意味内容とは別に感情や態度を伝える要素として「準言語(パラ言語)」と呼ばれることもあるが、いずれにしても発話を伴う点で、うなずきのような言葉を使わない手段とは区別される。

  4. ○d.  患者の訴えに応じてうなずきながら聞く。

    正しい。うなずきは言葉を発することなく、身体の動きだけで「あなたの話をきちんと聞いている」「理解している」というメッセージを患者に伝える行為であり、典型的な非言語的コミュニケーションである。患者の話の流れに合わせてうなずくことで、患者は安心して話を続けやすくなり、情報収集が円滑になるとともに信頼関係(ラポール)の形成にもつながる。

  5. ×e.  専門用語を用いずに治療方針を説明する。

    誤り。医学用語を避けて患者が理解できる平易な言葉に置き換えることは、説明に使う語彙の選択に関する配慮であり、言語的コミュニケーションそのものである。インフォームド・コンセントにおいて患者の理解を得るうえで欠かせない姿勢だが、言葉を介している点で非言語的コミュニケーションには当たらない。

非言語的コミュニケーションの主な要素

・表情:穏やかな表情、患者の話の内容に応じた表情の変化 ・視線:適度なアイコンタクト。相手の目をじっと凝視し続けると威圧感を与えるため、顔の中心付近をやわらかく見るようにするとよい ・うなずき・相づちの身振り:話を受け止めていることを示す ・姿勢・身体の向き:患者の方へ身体を向け、やや前傾して関心を示す。腕組みや、電子カルテ画面ばかり見る態度は避ける ・距離・位置関係:近すぎず遠すぎない距離をとり、真正面よりも斜め(90度程度)に座ると圧迫感が少ない ・身だしなみ、沈黙の活用、タッチング(身体に触れること)など

言語的コミュニケーションに関する主な面接技法

・開放型質問(オープンクエスチョン)と閉鎖型質問(クローズドクエスチョン)の使い分け ・反復、言い換え、要約、確認 ・共感的な言葉かけ(「それはつらかったですね」など) ・専門用語を避けた平易な説明

両者の関係

非言語的なメッセージは言葉と同時に伝わり、言葉の内容と態度が食い違うと、受け手は態度の方を信じやすいとされる。例えば「どうぞ何でもお話しください」と言いながら時計ばかり見ていれば、患者は話しにくさを感じる。医療面接では、言葉と態度の両方を一致させて患者への関心と受容を示すことが、信頼関係の構築に重要である。

POINT

・非言語的コミュニケーション=言葉を使わずに伝わるもの(表情、視線、うなずき、姿勢、身体の向き、距離、身だしなみなど) ・発音、声量、患者の言葉の反復、専門用語を避けた説明はいずれも発話を伴うため、言語的コミュニケーションの注意点として扱う ・うなずき、アイコンタクト、前傾姿勢は傾聴の姿勢を示し、ラポール形成に役立つ

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。