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1枚の書類が国の統計になる―死亡診断書と医師が交付する書類のルール

第109回医師国家試験 C問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第109回 C問題 第3問

正しいのはどれか。

  1. a.死産証書には父の氏名を記載する。
  2. b.死亡診断書は死因統計の資料となる。
  3. c.出生証明書は双生児の場合一枚に記載する。
  4. d.死体検案書は診療継続中の患者に対して交付する。
  5. e.診断書は自ら診察しないで交付することができる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医師が作成・交付する書類について問う問題だ。死亡診断書、死体検案書、出生証明書、死産証書、診断書。どれも医師になれば必ず書くものだけど、それぞれの「役割」「使い分け」「交付の前提」の3つを整理しておくと迷わない。まず、死亡診断書にはどんな役割があると思う?
医学生医学生
人が亡くなったことを証明する書類、というイメージです。死亡届と一緒に出すものですよね。
ドクタードクター
その通り。死亡診断書は死亡届と一体の用紙で、市区町村に提出される。役割は大きく2つあって、1つは人の死亡を医学的・法律的に証明すること。もう1つが見落とされがちなんだけど、国の死因統計の基礎資料になることなんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で人口動態統計を習いましたが、あの死因順位はここから作られているんですね。
ドクタードクター
そう。提出された死亡診断書の内容が人口動態調査で集計され、死因統計になる。だから「死亡診断書は死因統計の資料となる」というのが正解だ。統計では、死亡を引き起こした一連の出来事の起点となった疾患、つまり原死因が国際疾病分類(ICD)に基づいて集計される。
医学生医学生
だから死因欄には、直接死因からさかのぼって原因を書いていくんですね。
ドクタードクター
その通り。Ⅰ欄に直接死因、その原因、さらにその原因と因果関係の順に書き、Ⅱ欄に直接は関係しないが経過に影響した傷病を書く。「心不全」「呼吸不全」のような終末期の状態だけを書くと、何の病気で亡くなったのかが統計に反映されなくなってしまう。では、死体検案書との使い分けはどうかな。
医学生医学生
診療中の患者さんでも、亡くなったら死体検案書を書くことがあると思っていました。
ドクタードクター
そこは整理が必要だね。診療中の患者が、その診療していた病気、または関連する病気で亡くなった場合は死亡診断書。一方、診療中でなかった人の死亡や、診療中でも診ていた病気と無関係な外傷・中毒などで亡くなった場合は、医師が死体の外表を調べて死因を判断する、つまり検案をして死体検案書を作る。だから「死体検案書は診療継続中の患者に交付する」は誤りだ。
医学生医学生
臨床実習で見た用紙は、表題が「死亡診断書(死体検案書)」と併記されていました。
ドクタードクター
よく見ていたね。両者は同じ様式で、使わない方の表題を二重線で消して使うんだ。それから、検案して異状を認めたときは、医師法第21条により24時間以内に所轄警察署へ届け出る必要がある。
医学生医学生
診断書を自分で診察せずに書くのはダメ、というのも医師法でしたよね。
ドクタードクター
そう、医師法第20条の無診察治療等の禁止だ。自ら診察しないで診断書や処方せんを交付してはならず、自ら出産に立ち会わずに出生証明書や死産証書を、自ら検案せずに検案書を交付してはならない。だから「診断書は自ら診察しないで交付できる」は誤りだ。ただし書として、診療中の患者が最終診察から24時間以内に死亡した場合は、改めて死後診察をしなくても死亡診断書を交付できる。
医学生医学生
「24時間を過ぎたら必ず死体検案書」と覚えていたんですが、それも違いますか。
ドクタードクター
よくある誤解だね。24時間を超えていても、医師が死後に診察して、生前に診療していた傷病による死亡と判断できれば死亡診断書を交付できる。24時間というのは、死後診察を省略できるかどうかの線引きなんだ。
医学生医学生
残りの出生証明書と死産証書はどうでしょう。双子なら一枚にまとめて書けそうな気もします。
ドクタードクター
そう思いがちだけど、出生証明書は出生届と一体で、子ども1人につき1枚作る。双生児でも1人1枚ずつで、単胎か多胎かの別と、生まれた順番を記載する。届出は出生の日を含めて14日以内だ。
医学生医学生
死産証書に父の氏名がないのは、死産が母の側の出来事として扱われるからですか。
ドクタードクター
そういう理解でいい。死産は母体からの死児の娩出として扱われるから、死産証書に記載するのは母の氏名、妊娠週数、死産児の男女別、自然死産か人工死産か、胎児死亡の原因などで、父の氏名欄はない。対象は妊娠満12週以後の死産で、死産後7日以内に届け出る。
医学生医学生
届出期限も整理すると、出生は14日以内、死亡と死産は7日以内ですね。
ドクタードクター
その通り。最後にもう1つ、医師法第19条第2項で、診察・検案・出産立会いをした医師は、これらの書類の交付を求められたら正当な事由がなければ拒めない。書類は医師の重要な業務であり、特に死亡診断書は1枚1枚が国の保健医療政策を支える統計になる。丁寧に、正確に書く意識を持ってほしい。

まとめ

死亡診断書(死体検案書)は、人の死亡を医学的・法律的に証明するとともに、人口動態統計における死因統計の基礎資料となる書類です。診療中の患者がその傷病(関連傷病を含む)で死亡した場合は死亡診断書、それ以外は検案して死体検案書を作成し、両者は同一様式です。医師法第20条により無診察での診断書交付や無検案での検案書交付は禁止されますが、最終診察から24時間以内の死亡には死後診察を省略できるただし書があります。出生証明書は双生児でも1人1枚、死産証書(妊娠満12週以後)には母の氏名を記載し父の氏名欄はありません。原死因を意識して正確に死因を記載することが、信頼できる死因統計と公衆衛生施策の土台になります。

解答・解説

正解はbです

医師が作成・交付する法的書類(死亡診断書、死体検案書、出生証明書、死産証書、診断書)について、その用途・記載内容・交付の条件を問う問題である。 整理のポイントは次の3点である。 1. 書類の役割:死亡診断書(死体検案書)は、人の死を医学的・法律的に証明する書類であると同時に、人口動態統計(死因統計)の基礎資料となる。 2. 書類の使い分け:診療中の患者が、その病気(関連する病気を含む)で亡くなった場合は死亡診断書、それ以外(診療中でない人の死亡、診療中の病気と関係ない死亡、外因死や異状死など)は死体を検案して死体検案書を作成する。 3. 交付の前提:医師法第20条により、医師は自ら診察しないで診断書・処方せんを交付してはならず、自ら検案しないで検案書を交付してはならない(無診察治療等の禁止)。 これらに加えて、出生証明書は子ども1人につき1枚作成すること、死産証書は母についての書類であることを押さえれば正解にたどり着ける。

選択肢考察

  1. ×a.  死産証書には父の氏名を記載する。

    死産証書に記載するのは、死産児の男女別、母の氏名、妊娠週数、死産のあった日時と場所、自然死産か人工死産かの別、胎児死亡の原因などであり、父の氏名を記載する欄はない。死産は母体からの死児の娩出として扱われるため、証書は母を基準に作成される。なお「死産」とは妊娠満12週以後の死児の出産をいい、死産の届出に関する規程に基づき、死産後7日以内に届け出る。

  2. ○b.  死亡診断書は死因統計の資料となる。

    死亡診断書(死体検案書)は、死亡届に添えて市区町村に提出され、その記載内容は人口動態調査を通じて国の死因統計の資料となる。死因は、直接死因からその原因をさかのぼって記載し、統計では「原死因(死亡を引き起こした一連の出来事の起点となった疾病・損傷)」が国際疾病分類(ICD)に基づいて集計される。死亡診断書は、①人の死亡を医学的・法律的に証明する、②死因統計を作成する資料となる、という2つの重要な意義をもつ。

  3. ×c.  出生証明書は双生児の場合一枚に記載する。

    出生証明書は出生届と一体の用紙で、子ども1人ごとに1枚作成する。双生児(多胎)の場合も1人1枚ずつ作成し、単胎か多胎かの別と、生まれた順番(第1子・第2子など)を記載する。戸籍上は出生した順に兄・姉となる。出生届は出生の日を含めて14日以内に提出する。

  4. ×d.  死体検案書は診療継続中の患者に対して交付する。

    診療継続中の患者が、その診療中の病気(またはそれに関連する病気)で死亡した場合に交付するのは死亡診断書である。死体検案書は、診療中でなかった人が死亡した場合や、診療中の患者でも診療していた病気と関係のない原因(外傷・中毒など)で死亡した場合に、医師が死体を検案(死体の外表を調べ、死因などを医学的に判断すること)して作成する。なお両者は同一の様式で、作成しない方の表題を二重線で消して用いる。

  5. ×e.  診断書は自ら診察しないで交付することができる。

    医師法第20条は「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない」と定めている(無診察治療等の禁止)。したがって無診察での診断書交付は許されない。ただし書として、診療中の患者が最後の診察から24時間以内に死亡した場合には、改めて死後診察をしなくても死亡診断書を交付できる。

死亡診断書と死体検案書の使い分け

・死亡診断書:自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病(関連する傷病を含む)で死亡した場合。 ・死体検案書:上記以外。診療中でない人の死亡、診療中の傷病と関係のない死亡、外因死など。 ・最終診察から24時間を超えて死亡した場合でも、医師が死後に診察して、生前に診療していた傷病による死亡と判断できれば死亡診断書を交付できる(「24時間を超えたら必ず検案書・警察届出」というのは誤解である)。 ・死体を検案して異状があると認めたときは、医師法第21条により24時間以内に所轄警察署へ届け出る。

医師が交付する主な書類と届出期限

・出生証明書:出生届と一体。出生の日から14日以内に届出(国外出生は3か月以内)。立ち会った医師・助産師などが作成する。 ・死亡診断書(死体検案書):死亡届と一体。死亡の事実を知った日から7日以内に届出。 ・死産証書(死胎検案書):妊娠満12週以後の死産が対象。死産後7日以内に届出。

死因記載の要点

死亡診断書では、Ⅰ欄に直接死因→その原因→さらにその原因と因果関係の順に記入し、Ⅱ欄に直接には関係しないが経過に影響した傷病を記入する。「心不全」「呼吸不全」などの終末期の状態だけを書くのではなく、それを引き起こした疾患を記載することが、正確な死因統計のために重要である。

交付義務

医師法第19条第2項により、診察・検案・出産立会いをした医師は、診断書・検案書・出生証明書・死産証書の交付を求められた場合、正当な事由がなければ拒んではならない。

POINT

・死亡診断書(死体検案書)は死亡の証明と死因統計の基礎資料という2つの役割をもつ。 ・診療中の傷病による死亡は死亡診断書、それ以外は検案して死体検案書(両者は同一様式)。 ・出生証明書は双生児でも1人1枚。 ・死産証書は母の氏名を記載し、父の氏名欄はない。死産は妊娠満12週以後。 ・医師法第20条:無診察での診断書・処方せん交付、無検案での検案書交付は禁止(24時間以内の死亡に関するただし書あり)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。