夜になると脚が騒ぎ出す―むずむず脚症候群の「4つの特徴」と眠りの中の足の動き
第108回医師国家試験 I問題 第2問
国試問題にチャレンジ
むずむず脚症候群について正しいのはどれか。
- a.レム〈REM〉睡眠と関係が深い。
- b.ドパミン遮断薬が有効である。
- c.加齢とともに患者数は減少する。
- d.脚の異常感覚は運動によって改善しない。
- e.足関節などの不随意運動が入眠後にみられる。
対話形式の解説
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医学生まとめ
むずむず脚症候群は、脚を動かしたい強い衝動と下肢の異常感覚が、安静で出現・増悪し、運動で軽快し、夕方から夜間に悪化することを特徴とする睡眠関連運動障害です。患者の大部分で、睡眠中に足関節の背屈などが周期的に反復する周期性四肢運動を合併し、これは主にノンレム睡眠の浅い段階で出現するため、レム睡眠との関係は薄いと理解します。病態には中枢のドパミン系機能低下と脳内の鉄不足が想定され、治療は鉄補充やドパミン作動薬、α2δリガンドで、抗精神病薬やメトクロプラミドなどのドパミン遮断薬はむしろ増悪因子です。中高年・女性に多く加齢とともに増加し、鉄欠乏、透析、妊娠が二次性の重要な原因となります。不眠を訴える患者で脚の症状と鉄の状態を確認する視点は、睡眠障害の診療で見逃しを防ぐうえで欠かせません。
解答・解説
正解はeです
むずむず脚症候群(restless legs syndrome:RLS、レストレスレッグス症候群。Willis-Ekbom病とも呼ばれる)は、主に下肢に「むずむずする」「虫がはうような」「じっとしていられない」といった不快な異常感覚が生じ、脚を動かしたいという強い衝動に駆られる睡眠関連運動障害である。 本問は、RLSの診断の核となる4つの特徴と、治療・疫学・合併症を正しく理解しているかを問うている。国際RLS研究グループ(IRLSSG)の診断基準の必須項目は次のように整理できる。 ①脚を動かしたいという強い欲求があり、通常は下肢の不快な異常感覚を伴う。 ②その欲求・異常感覚は、横になる・座るなどの安静時に始まるか増悪する。 ③歩く・脚を伸ばすなど体を動かすと、動かしている間は部分的または完全に軽快する。 ④夕方から夜間に出現・増悪する(日内変動がある)。 ⑤これらの症状が他の疾患や習慣的行動(こむら返り、体位による不快感、関節炎、下肢浮腫など)だけでは説明できない。 この「安静で悪化・運動で改善・夕方〜夜に悪化」という特徴が入眠を妨げるため、患者は不眠を訴えることが多い。さらにRLS患者の大部分(おおむね8割程度とされる)で、睡眠中に足関節の背屈や足趾の伸展などが周期的に反復する周期性四肢運動(periodic limb movements:PLM)が認められる。PLMは主にノンレム睡眠の浅い段階で出現し、中途覚醒の原因となる。 病態としては、中枢のドパミン神経系の機能低下と脳内の鉄不足が想定されており、ドパミン作動薬が効果を示すことや、鉄欠乏で症状が悪化することと整合する。これらの知識をもとに各選択肢を検討すると、入眠後に足関節などの不随意運動がみられるという記述(PLMの合併)が正しいと判断できる。
選択肢考察
- ×a. レム〈REM〉睡眠と関係が深い。
誤り。RLSの症状は入眠前の覚醒・安静時に出現するものであり、レム睡眠の病態とは直接関係しない。合併しやすい周期性四肢運動も主にノンレム睡眠(特に浅い段階)で起こる。レム睡眠と関係が深い疾患としては、レム睡眠中に筋緊張の抑制が失われて夢の内容どおりに体を動かしてしまうレム睡眠行動障害(Parkinson病やLewy小体型認知症の前駆症状として重要)や、入眠時レム期が出現するナルコレプシーが代表的である。本選択肢はこれらとの混同をねらったものと考えられる。
- ×b. ドパミン遮断薬が有効である。
誤り。RLSでは中枢のドパミン系の機能低下が関与すると考えられており、治療にはプラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン(貼付剤)などのドパミン作動薬が用いられる。逆に、抗精神病薬や制吐薬(メトクロプラミドなど)のようなドパミン遮断作用をもつ薬剤は、RLSを誘発・増悪させる代表的な薬剤であり、有効ではない。なお、ドパミン作動薬を長期使用すると、症状の出現時刻が早まり範囲が上肢などへ広がる「症状促進現象(augmentation)」が問題となるため、近年はガバペンチン エナカルビルなどのα2δリガンドを優先する考え方も広がっている。
- ×c. 加齢とともに患者数は減少する。
誤り。RLSは小児から高齢者まで幅広くみられるが、有病率は年齢とともに上昇し、中高年に多い。また女性に多い傾向がある。加齢に伴い、鉄欠乏性貧血、慢性腎臓病(特に透析患者)、糖尿病などによる末梢神経障害といった二次性RLSの原因疾患が増えることも、患者数が増える一因である。
- ×d. 脚の異常感覚は運動によって改善しない。
誤り。体を動かすと異常感覚が軽快することは、RLSの診断基準の必須項目の一つである。患者は脚をさする、歩き回る、脚を伸ばすといった動作で症状を和らげようとし、動いている間は楽になるが、再び安静にすると症状がぶり返す。脚のマッサージやストレッチ、就寝前の軽い運動が非薬物療法として勧められるのも、この性質を利用したものである。
- ○e. 足関節などの不随意運動が入眠後にみられる。
正しい。RLSには高率に周期性四肢運動(PLM)が合併する。PLMは睡眠中に足関節の背屈、母趾の伸展、ときに膝・股関節の屈曲が0.5〜10秒程度持続し、およそ20〜40秒ごとに周期的に反復する不随意運動で、主にノンレム睡眠の浅い段階で出現する。本人は自覚しないことが多いが、微小覚醒や中途覚醒を引き起こし、熟眠感の低下や日中の眠気の原因となる。睡眠ポリグラフ検査(PSG)で前脛骨筋の筋電図を記録すると確認できる。すべてのRLS患者にみられるわけではないが、RLSの特徴としてよく知られた所見であり、他の選択肢が明らかに誤っていることからも本選択肢が正解となる。
むずむず脚症候群(RLS)の概要
・睡眠関連運動障害に分類される。日本での有病率は数%程度と推定され、女性・中高年に多い。 ・原因により、明らかな基礎疾患のない一次性(特発性、家族歴を伴うことが多い)と、基礎疾患に伴う二次性に分けられる。
二次性RLSの主な原因
・鉄欠乏(血清フェリチン低値):脳内の鉄はドパミン合成に必要なチロシン水酸化酵素の補因子であり、鉄不足がドパミン系機能低下につながると考えられている。 ・慢性腎臓病、特に透析患者 ・妊娠(特に妊娠後期。出産後に軽快することが多い) ・末梢神経障害(糖尿病など)、Parkinson病 ・薬剤:抗精神病薬、メトクロプラミド、抗うつ薬の一部、抗ヒスタミン薬など ・カフェイン、アルコール、喫煙は症状を悪化させる。
治療
・まず増悪因子の除去(原因薬剤の中止、カフェイン・アルコールの制限)と生活指導(就寝前の軽い運動・マッサージ)を行う。 ・血清フェリチンが低値(おおむね75 ng/mL未満が目安)であれば鉄剤を補充する。 ・薬物療法:ドパミン作動薬(プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン)、α2δリガンド(ガバペンチン エナカルビル、プレガバリンなど)。ドパミン作動薬は長期使用で症状促進現象(augmentation)を来すことがあるため、近年の海外ガイドラインではα2δリガンドや鉄補充を優先し、ドパミン作動薬は慎重に用いる方向にある。
周期性四肢運動障害(PLMD)との関係
・睡眠中の周期性四肢運動(PLM)そのものは、RLS患者の大部分でみられるほか、RLSのない高齢者でもしばしば認められる。 ・RLSがなく、PLMにより睡眠障害や日中の機能障害が生じている場合を周期性四肢運動障害(PLMD)と呼ぶ。 ・RLSは覚醒時の自覚症状(異常感覚と動かしたい衝動)で診断するのに対し、PLMは睡眠中の他覚的な運動であり、PSGで評価する点が異なる。
レム睡眠が関与する疾患との区別
・レム睡眠行動障害:レム睡眠中の筋緊張消失が障害され、夢の内容に沿って叫んだり手足を激しく動かしたりする。高齢男性に多く、α-シヌクレイノパチーの前駆症状として重要。 ・ナルコレプシー:日中の過度の眠気、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺を特徴とし、入眠時レム期がみられる。
POINT
・RLSの4大特徴:①脚を動かしたい衝動と異常感覚、②安静で出現・増悪、③運動で軽快、④夕方〜夜間に増悪。 ・睡眠中の周期性四肢運動(足関節背屈など)を高率に合併する。主にノンレム睡眠で出現し、レム睡眠とは関係が薄い。 ・病態はドパミン系機能低下と鉄不足。治療はドパミン作動薬・α2δリガンド・鉄補充であり、ドパミン遮断薬はむしろ増悪因子。 ・中高年・女性に多く、加齢とともに増加する。鉄欠乏、透析、妊娠が二次性の重要な原因。
