StudyMed医師国家試験

縦で割るか、横で割るか―四分表で迷わない感度・特異度・適中度

第108回医師国家試験 H問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第108回 H問題 第15問

ある疾患に関する検査結果を表に示す。 (単位:人) 疾患 有 無 検査 陽性 80 20 陰性 10 90 正しいのはどれか。

  1. a.感度は0.80である。
  2. b.特異度は0.82である。
  3. c.偽陽性率は0.90である。
  4. d.陽性適中度は0.89である。
  5. e.陰性適中度は0.10である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の定番、2×2の四分表から検査の性能指標を計算する問題だ。計算そのものは割り算だけだけど、落とし穴は「何を分母にするか」。ここを整理できれば、どんな数字が来ても迷わなくなるよ。
医学生医学生
感度と陽性適中度って、名前は覚えているんですが、いつもどっちがどっちか混ざってしまいます。
ドクタードクター
そういう人は多いね。まず4つのマスに名前をつけよう。疾患ありで検査陽性が真陽性、疾患なしで陽性が偽陽性、疾患ありで陰性が偽陰性、疾患なしで陰性が真陰性。この表では疾患の有無が縦の列、検査結果が横の行に並んでいる。
医学生医学生
疾患ありは80と10で90人、疾患なしは20と90で110人ですね。検査陽性も陰性もちょうど100人ずつです。
ドクタードクター
その通り。ここで大事なルールがある。感度と特異度は「疾患の有無」、つまり縦の列で割る。適中度は「検査結果」、つまり横の行で割る。感度は、病気の人のうち何割を陽性と拾えたか、という指標だよ。
医学生医学生
じゃあ感度は80を90で割って約0.89ですね。0.80と書いてある選択肢は、80を陽性者の100で割ってしまった値でしょうか。
ドクタードクター
鋭いね。まさにそれが陽性適中度の値で、分母の取り違えを狙った選択肢だ。逆に陽性適中度は0.89とする選択肢もあるけど、これは感度の値を入れ替えたもの。陽性適中度は陽性者100人のうち本当に病気の80人だから0.80になる。
医学生医学生
特異度は、病気でない110人のうち陰性と出た90人なので、90÷110で約0.82。これが正解ですね。
ドクタードクター
正解。特異度は「病気でない人を正しく陰性と言える力」だ。では偽陽性率0.90という選択肢はどうかな。
医学生医学生
偽陽性率は病気でない人のうち誤って陽性になった割合だから、20÷110で約0.18です。1から特異度を引いた値とも一致します。
ドクタードクター
完璧。0.90は陰性適中度の値なんだ。陰性適中度は検査陰性の100人のうち本当に病気でない90人だから0.90。選択肢の0.10は、陰性者のうち実は病気だった10人の割合で、見方が逆になっている。
医学生医学生
CBTの問題演習でも、数字だけ見ると全部どこかで出てくる値なので、引っかかりやすいと感じました。
ドクタードクター
出題者は、表から作れる数字をわざと別の指標に当てはめてくるからね。だから毎回「この指標は誰の中での割合か」を言葉にしてから計算するのが一番確実だよ。
医学生医学生
縦で割るのが感度・特異度、横で割るのが適中度。言葉で言うと、病気の人の中での話か、検査結果が出た人の中での話か、ということですね。
ドクタードクター
いいまとめだ。ここから発展知識。感度と特異度は検査そのものの性能だから、集団の有病率に左右されない。一方、適中度は有病率に大きく影響される。有病率の低い一般住民の検診では、偽陽性が相対的に増えて陽性適中度が下がるんだ。
医学生医学生
地域医療の実習で、検診で要精査になった人の多くが結局異常なしだったと聞いたのは、そういう理由もあるんですね。
ドクタードクター
そう。臨床では、感度の高い検査は陰性なら疾患を除外しやすく、特異度の高い検査は陽性なら確定しやすい、と使い分ける。カットオフ値を動かすと感度と特異度はトレードオフになり、それを図にしたのがROC曲線だ。さらに陽性尤度比は感度÷(1-特異度)で、この表なら約4.9。尤度比も有病率に依存しないから、検査前確率から検査後確率を見積もるときに役立つよ。
医学生医学生
国試では計算、臨床では解釈、どちらにも分母の意識が効いてくるんですね。
ドクタードクター
その通り。分母を言葉で確認する習慣が、統計問題でも患者さんへの説明でも土台になるんだ。

まとめ

四分表の問題では、感度・特異度は疾患の有無(列)で、陽性・陰性適中度は検査結果(行)で割る、という分母の区別が最重要です。本問では感度80÷90≒0.89、特異度90÷110≒0.82、偽陽性率20÷110≒0.18、陽性適中度80÷100=0.80、陰性適中度90÷100=0.90となり、特異度0.82が正しい記述です。誤りの選択肢は感度と陽性適中度の入れ替えなど、表から作れる別の値を当てはめたもので、指標の定義を言葉で確認してから計算すれば避けられます。感度・特異度は有病率に左右されない一方、適中度は有病率に依存し、低有病率の検診集団では陽性適中度が下がる点も重要です。尤度比やROC曲線とあわせて理解しておくと、検診の評価や日常診療での検査結果の解釈に直結します。

解答・解説

正解はbです

検査の性能を表す指標を、2×2の四分表から計算する基本問題である。まず表の4つのマスを次のように整理する。 ・真陽性(疾患あり・検査陽性):a=80人 ・偽陽性(疾患なし・検査陽性):b=20人 ・偽陰性(疾患あり・検査陰性):c=10人 ・真陰性(疾患なし・検査陰性):d=90人 合計すると、疾患あり(有病者)は80+10=90人、疾患なし(非有病者)は20+90=110人、検査陽性者は80+20=100人、検査陰性者は10+90=100人、総数は200人である。 各指標は「何を分母にするか」を正しく押さえることが最も重要である。 ・感度、偽陰性率:分母は疾患ありの人(表の縦の列、a+c) ・特異度、偽陽性率:分母は疾患なしの人(縦の列、b+d) ・陽性適中度:分母は検査陽性の人(表の横の行、a+b) ・陰性適中度:分母は検査陰性の人(横の行、c+d) これに当てはめて計算すると、 感度=80÷90≒0.89 特異度=90÷110≒0.82 偽陽性率=20÷110≒0.18(=1-特異度) 偽陰性率=10÷90≒0.11(=1-感度) 陽性適中度=80÷100=0.80 陰性適中度=90÷100=0.90 となり、選択肢と照合すると、特異度0.82が正しい。 誤りの選択肢には、感度(0.89)と陽性適中度(0.80)の値を入れ替えたもの、陰性適中度(0.90)の値を偽陽性率に当てたもの、偽陰性率に近い値(0.10)を陰性適中度に当てたものが含まれている。縦(疾患の有無)で割るのか、横(検査結果)で割るのかを取り違えないことが要点である。

選択肢考察

  1. ×a.  感度は0.80である。

    感度は、疾患をもつ人のうち検査で正しく陽性と判定される割合で、真陽性÷(真陽性+偽陰性)で求める。本問では80÷(80+10)=80÷90≒0.89である。0.80は、分母を検査陽性者(80+20=100人)にして計算した陽性適中度の値であり、分母を取り違えている。

  2. ○b.  特異度は0.82である。

    特異度は、疾患をもたない人のうち検査で正しく陰性と判定される割合で、真陰性÷(偽陽性+真陰性)で求める。本問では疾患なしの人は20+90=110人、そのうち検査陰性は90人であるから、90÷110=0.818…≒0.82となり、記述は正しい。

  3. ×c.  偽陽性率は0.90である。

    偽陽性率は、疾患をもたない人のうち誤って陽性と判定される割合で、偽陽性÷(偽陽性+真陰性)で求める。本問では20÷110=0.181…≒0.18である。偽陽性率は1-特異度にも等しく、1-0.82=0.18と一致する。0.90は陰性適中度の値である。

  4. ×d.  陽性適中度は0.89である。

    陽性適中度(陽性的中率、陽性反応適中度)は、検査で陽性となった人のうち実際に疾患をもつ人の割合で、真陽性÷(真陽性+偽陽性)で求める。本問では80÷(80+20)=80÷100=0.80である。0.89は、分母を疾患ありの人(90人)にして計算した感度の値である。

  5. ×e.  陰性適中度は0.10である。

    陰性適中度(陰性的中率)は、検査で陰性となった人のうち実際に疾患をもたない人の割合で、真陰性÷(偽陰性+真陰性)で求める。本問では90÷(10+90)=90÷100=0.90である。0.10は検査陰性者のうち実際には疾患をもつ人の割合(10÷100)であり、陰性適中度とは逆の見方をした値である。

四分表と各指標の定義

疾患あり・検査陽性=a(真陽性)、疾患なし・検査陽性=b(偽陽性)、疾患あり・検査陰性=c(偽陰性)、疾患なし・検査陰性=d(真陰性)とすると、 ・感度=a÷(a+c):疾患のある人を陽性と判定できる割合 ・特異度=d÷(b+d):疾患のない人を陰性と判定できる割合 ・偽陰性率=c÷(a+c)=1-感度:疾患のある人を見逃す割合 ・偽陽性率=b÷(b+d)=1-特異度:疾患のない人を誤って陽性とする割合 ・陽性適中度=a÷(a+b):検査陽性の人が本当に疾患をもつ確率 ・陰性適中度=d÷(c+d):検査陰性の人が本当に疾患をもたない確率 ・正診率(精度)=(a+d)÷総数:本問では170÷200=0.85

各指標の性質

・感度と特異度は検査そのものの性能を表し、対象集団の有病率に左右されない。 ・適中度は有病率の影響を受ける。同じ検査でも、有病率が低い集団(一般住民の検診など)では偽陽性の割合が増えて陽性適中度が低下し、陰性適中度は上昇する。有病率が高い集団ではその逆になる。 ・感度が高い検査は、陰性であれば疾患を否定しやすい(除外診断向き)。特異度が高い検査は、陽性であれば疾患を確定しやすい(確定診断向き)。 ・カットオフ値を変えると、一般に感度と特異度は一方が上がれば他方が下がるトレードオフの関係にある。これを図示したものがROC曲線である。

尤度比

・陽性尤度比=感度÷(1-特異度)、陰性尤度比=(1-感度)÷特異度。本問では陽性尤度比=0.89÷0.18≒4.9となる。尤度比は有病率に依存せず、検査前確率から検査後確率を求める際に用いられる。

POINT

・感度・特異度は疾患の有無(縦の列)で割り、適中度は検査結果(横の行)で割る。 ・感度=真陽性÷有病者、特異度=真陰性÷非有病者。 ・偽陽性率=1-特異度、偽陰性率=1-感度。 ・陽性適中度=真陽性÷検査陽性者、陰性適中度=真陰性÷検査陰性者。 ・本問:感度0.89、特異度0.82、偽陽性率0.18、陽性適中度0.80、陰性適中度0.90。 ・適中度は有病率に左右されるが、感度・特異度は左右されない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。