「今日はどうされましたか」の後が勝負―初診の医療面接は“遮らない”から始まる
第108回医師国家試験 F問題 第3問
国試問題にチャレンジ
初診外来における医療面接について適切なのはどれか。
- a.解釈モデルは最後に聞く。
- b.身体診察中は病歴を聞かない。
- c.医師の自己紹介は省略してよい。
- d.冒頭では患者の訴えを遮らずに聞く。
- e.閉じられた質問〈closed question〉は使わない。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
初診の医療面接は、挨拶・医師の自己紹介・本人確認から始め、開かれた質問で主訴を尋ねたら、患者の訴えを遮らずに傾聴することが基本です。早期に話を遮ると本当の受診理由や心配事を取りこぼしやすく、遮らなくても多くの患者は1〜2分程度で話し終えるとされます。その後は焦点を絞った質問や閉じられた質問へ段階的に移り、解釈モデル・心配・期待は早めに確認して面接に生かします。身体診察中も声かけや病歴の確認を行ってよく、繰り返し・要約・共感といった技法や非言語的コミュニケーションへの配慮も重要です。医療面接の技術は診断の精度と患者医師関係の両方を支える、あらゆる診療科に共通する土台となります。
解答・解説
正解はdです
医療面接には大きく三つの目的がある。①診断に必要な情報を集めること、②良好な患者医師関係を築くこと、③患者への説明・教育や治療への動機づけを行うことである。初診外来は患者と医師が初めて出会う場なので、情報収集と同じくらい信頼関係づくりが重要になる。 初診の医療面接は、一般に次の流れで進める。 1.導入:挨拶、医師の自己紹介、患者の氏名確認(本人確認)、面接の目的や所要時間の説明、患者が話しやすい環境づくり 2.主訴と現病歴の聴取:開かれた質問で始め、患者の話を遮らずに傾聴する。その後、焦点を絞った質問や閉じられた質問で詳細を確認する 3.解釈モデル(患者自身の病気のとらえ方)、心配、期待の確認 4.既往歴、家族歴、生活歴、社会歴、系統的レビュー(全身の症状の確認) 5.要約と確認:聴いた内容をまとめて患者に確かめ、言い残しがないか尋ねる 6.身体診察への移行と、その後の説明 本問は、この流れの中で各選択肢の行動が適切かどうかを判断する問題である。特に、面接の冒頭では患者に自由に話してもらうこと、そして開かれた質問と閉じられた質問は状況に応じて使い分けるもので、どちらか一方を禁じるものではないことがポイントである。
選択肢考察
- ×a. 解釈モデルは最後に聞く。
解釈モデルとは、患者が自分の症状や病気の原因・意味・経過・望む治療などをどのように考えているかという、患者側の理解や受け止め方である。これを早い段階(主訴と現病歴を聴いた後など)で把握すると、患者の不安や受診の本当の理由が分かり、その後の質問や説明を患者の関心に沿って進められる。最後に回すと、面接全体に生かせず、患者の心配に応えられないまま面接が終わるおそれがある。
- ×b. 身体診察中は病歴を聞かない。
身体診察で新しい所見が見つかった場合など、診察しながらその部位の症状の経過や関連する病歴を確認することは有用であり、禁じられてはいない。また、診察中に「これから胸の音を聴きます」「ここは痛みますか」などと声をかけながら進めることは、患者の不安を和らげ、信頼関係を保つうえでも望ましい。
- ×c. 医師の自己紹介は省略してよい。
初診では患者は医師が誰なのかを知らない。医師が名乗ることは信頼関係づくりの第一歩であり、基本的な礼儀でもある。あわせて、患者の氏名をフルネームで名乗ってもらって本人確認を行うことは、患者の取り違えを防ぐ医療安全上の手順としても欠かせない。したがって自己紹介は省略すべきではない。
- ○d. 冒頭では患者の訴えを遮らずに聞く。
面接の冒頭では「今日はどうされましたか」などの開かれた質問で始め、患者が話し終えるまで遮らずに傾聴する。医師が早い段階で話を遮ると、患者が本当に伝えたかった訴えや心配事が語られないまま面接が進み、重要な情報を取りこぼす原因となる。医師は受診理由を話し始めた患者を20秒前後で遮ることが多いとする報告がある一方、遮らなくても多くの患者は1〜2分程度で話し終えるとされ、傾聴に時間がかかりすぎる心配は少ない。うなずき、相づち、視線を合わせるといった促しの技法を使い、話しやすい雰囲気をつくることも大切である。
- ×e. 閉じられた質問〈closed question〉は使わない。
閉じられた質問は「はい・いいえ」や一語で答えられる質問(例:「熱はありますか」)である。多くの情報や患者の思いを引き出すのには向かないが、症状の有無や程度を短時間で正確に確かめられ、鑑別診断の絞り込みには欠かせない。面接は開かれた質問で始めて全体像をつかみ、焦点を絞った質問、閉じられた質問へと段階的に移していくのが原則であり、閉じられた質問を使わないというのは誤りである。
質問法の種類
・開かれた質問(open-ended question):「どうされましたか」「その痛みについて詳しく教えてください」など、患者が自由に答えられる質問。情報量が多く、患者の考えや感情も引き出せる。面接の冒頭に適する。 ・焦点を絞った質問(focused question):「その頭痛はどのような痛みですか」など、テーマを限定しつつ自由に答えてもらう質問。 ・閉じられた質問(closed question):「はい・いいえ」で答えられる質問。確認や鑑別に有用だが、多用すると患者が話せなくなり、医師の思い込みに沿った情報しか得られなくなる。 ・中立的でない質問(誘導的な質問)や、一度に複数のことを尋ねる質問(重複質問)は避ける。
解釈モデルと関連事項
解釈モデルは、患者が病気の原因や意味、重症度、今後の経過、望む治療についてどう考えているかを指す。これとあわせて、患者の心配(何が不安か)、期待(受診で何をしてほしいか)、症状が日常生活に与える影響を確認することで、患者中心の医療につながる。
傾聴と共感の技法
・促し:うなずき、相づち、「それで?」などで話を続けてもらう ・繰り返し:患者の言葉をそのまま返し、理解していることを示す ・要約:話の内容をまとめて確認し、誤解を防ぐ ・共感:「それはおつらかったですね」など、患者の感情を受け止めて言葉にする ・沈黙:患者が考えをまとめる時間として尊重する
非言語的コミュニケーション
身だしなみ、座る位置(正面ではなく90度程度の斜めの位置が話しやすいとされる)、視線、表情、姿勢、声の大きさや速さ、言葉遣いにも配慮する。電子カルテの画面ばかり見ずに患者の顔を見て話すことも大切である。
POINT
・初診の医療面接は、挨拶・自己紹介・本人確認から始める。 ・冒頭は開かれた質問で始め、患者の訴えを遮らずに傾聴する。 ・開かれた質問から焦点を絞った質問、閉じられた質問へと段階的に移る。閉じられた質問も必要に応じて使う。 ・解釈モデル(患者の病気のとらえ方)、心配、期待は早めに確認し、面接に生かす。 ・身体診察中も声かけや病歴の確認を行ってよい。
