StudyMed医師国家試験

その数値、栄養で動きますか?―栄養アセスメントで「仲間外れ」を見抜く

第108回医師国家試験 E問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第10問

成人の栄養状態の評価において有用性が低いのはどれか。

  1. a.腹囲
  2. b.血小板数
  3. c.血清アルブミン値
  4. d.BMI〈Body Mass Index〉
  5. e.血清総コレステロール値

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は成人の栄養状態を評価する指標の問題だ。考え方のコツはシンプルで、「その指標は栄養の過不足に応じて動くかどうか」を一つずつ確かめること。それから、栄養評価は低栄養だけでなく過栄養も対象になる、という点も意識しておこう。
医学生医学生
栄養評価というと、やせや低アルブミンのような低栄養のイメージしかありませんでした。
ドクタードクター
そう思う人は多いね。でも栄養アセスメントは、やせや蛋白エネルギー栄養障害と、肥満やメタボリックシンドロームの両方向を見きわめるためのものなんだ。手段としては身体計測、食事摂取状況の調査、血液・生化学検査、浮腫や筋萎縮などの臨床所見を組み合わせる。
医学生医学生
身体計測ならBMIが一番身近です。体重を身長の2乗で割るんですよね。
ドクタードクター
その通り。日本肥満学会の基準では18.5未満が低体重、25以上が肥満で、低栄養と過栄養の両方のスクリーニングに使える。簡便で有用だけど、筋肉と脂肪を区別できないのが弱点だ。
医学生医学生
腹囲は栄養というより、メタボの診断基準のイメージが強いです。
ドクタードクター
まさにそこが過栄養の評価なんだ。臍の高さで測る腹囲は内臓脂肪の蓄積をよく反映し、わが国の基準では男性85cm以上、女性90cm以上が必須項目になっている。内臓脂肪面積100cm²以上に相当する値だね。だから栄養評価として有用だ。
医学生医学生
血液検査では血清アルブミンが代表ですよね。CBTの勉強で3.5g/dL未満が低栄養の目安と覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。アルブミンは肝臓で合成され、蛋白やエネルギーの摂取が不足すると合成が落ちる。ただし半減期が約2〜3週間と長いから中長期の状態を反映する指標で、短期の変化を見たいときはトランスサイレチン(プレアルブミン)、トランスフェリン、レチノール結合蛋白といったrapid turnover proteinを使う。
医学生医学生
アルブミンは肝硬変やネフローゼでも下がるので、低ければ必ず低栄養とは言えませんよね。
ドクタードクター
大事な指摘だ。炎症でも下がるから、解釈には病態の背景を考える必要がある。では総コレステロールはどうかな。
医学生医学生
脂質異常症の指標なので、栄養評価には使わないと思っていました。
ドクタードクター
ここが引っかかりやすいポイントだね。総コレステロールは脂質やエネルギーの摂取量、肝臓でのリポ蛋白合成能を反映するから、低栄養では下がり、過栄養では上がりやすい。低値は低栄養の手がかりになるので、栄養評価の指標として使われるんだ。
医学生医学生
そうなると、残る血小板数が栄養とは関係が薄い、ということですね。
ドクタードクター
正解。血小板数は骨髄の巨核球での産生、脾腫による貯留、DICや免疫機序による消費・破壊といった、栄養とは別の機序で主に決まる。だから栄養状態の評価における有用性は低い。
医学生医学生
でも、ビタミンB12欠乏では汎血球減少になると血液内科の講義で習いました。それなら栄養と関係しませんか。
ドクタードクター
鋭い質問だね。高度の葉酸やビタミンB12の欠乏で血小板を含む汎血球減少が起こることは確かにある。ただ、それは特定の微量栄養素が欠けたことを示す所見であって、全身の栄養状態を測る物差しにはならない。同じ血算でも、末梢血の総リンパ球数は免疫能の指標として低栄養で減少するので、栄養評価に使われる点とは対照的だよ。
医学生医学生
同じ血算の項目でも、使われるものと使われないものがあるんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。発展として、低栄養の型も押さえておこう。マラスムス型はエネルギーと蛋白がともに不足して著明にやせるけれど、アルブミンは比較的保たれる。クワシオルコル型は主に蛋白が不足し、体重減少は目立たないのに低アルブミン血症と浮腫が出る。
医学生医学生
浮腫で体重が保たれていると、BMIだけでは見逃しそうです。
ドクタードクター
その通り。だから体重減少率も重要で、6か月で10%以上や1か月で5%以上の減少は有意な低栄養を示唆する。上腕周囲長で筋肉量、上腕三頭筋部皮下脂肪厚で体脂肪量を見たり、病歴と身体所見から総合判定するSGA(主観的包括的評価)を使ったりもする。一つの数値に頼らず、複数の指標を組み合わせるのが臨床の基本だよ。

まとめ

成人の栄養アセスメントは、低栄養と過栄養の両面を、身体計測、食事摂取状況、生化学検査、臨床所見を組み合わせて評価します。BMIと腹囲は体格や内臓脂肪蓄積を、血清アルブミンは中長期の蛋白栄養状態を、総コレステロールはエネルギー・脂質摂取や肝での合成能を反映するため、いずれも栄養評価に有用です。一方、血小板数は骨髄での産生、脾臓での貯留、消費・破壊によって主に決まり、全身の栄養状態の指標としての有用性は低いと考えられます。短期の変化にはrapid turnover protein、免疫能の目安には総リンパ球数を用い、アルブミンは肝疾患や炎症でも低下する点に注意が必要です。指標ごとに「何を反映して動くのか」を理解しておくことは、入院患者の栄養管理や生活習慣病の評価など、幅広い臨床場面で役立ちます。

解答・解説

正解はbです

栄養状態の評価(栄養アセスメント)は、低栄養(やせ・蛋白エネルギー栄養障害)と過栄養(肥満・メタボリックシンドローム)の両方向を見きわめるために行う。代表的な手段は、①身体計測(身長・体重・BMI・体重変化率・腹囲・上腕周囲長・皮下脂肪厚など)、②食事摂取状況の調査、③血液・生化学検査(血清アルブミン、rapid turnover protein、総コレステロール、末梢血リンパ球数、ヘモグロビンなど)、④臨床所見(浮腫、筋萎縮など)である。 本問では、各指標が「栄養の過不足を反映して動くかどうか」を考えればよい。腹囲・BMIは体格や脂肪蓄積を、血清アルブミン値や総コレステロール値は蛋白・エネルギー摂取量を反映する。一方、血小板数は骨髄での産生、脾臓での貯留、末梢での消費・破壊によって主に決まり、栄養状態との関連は乏しい。したがって有用性が低いのは血小板数である。

選択肢考察

  1. ×a.  腹囲

    腹囲(臍の高さで測定するウエスト周囲径)は内臓脂肪の蓄積量をよく反映する身体計測値であり、過栄養の評価に有用である。わが国のメタボリックシンドローム診断基準では、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上(内臓脂肪面積100cm²以上に相当)を必須項目としている。

  2. ○b.  血小板数

    血小板数は骨髄の巨核球による産生、脾腫による貯留、DIC(播種性血管内凝固)や免疫機序による消費・破壊などで決まり、栄養の過不足ではほとんど変動しない。高度の葉酸・ビタミンB12欠乏で汎血球減少の一部として減少することはあるが、これは特定の微量栄養素欠乏の所見であり、全身の栄養状態を評価する指標としては用いられない。したがって有用性が低い。

  3. ×c.  血清アルブミン値

    アルブミンは肝臓で合成される主要な血漿蛋白で、蛋白・エネルギー摂取が不足すると合成が低下し血中濃度が下がる。3.5g/dL未満は低栄養を疑う目安とされ、栄養評価の代表的な指標である。ただし半減期が約2〜3週間と長いため中長期の栄養状態を反映し、短期の変化はトランスサイレチン(プレアルブミン)、トランスフェリン、レチノール結合蛋白などの rapid turnover protein で評価する。肝硬変、ネフローゼ症候群、炎症でも低下する点には注意が必要である。

  4. ×d.  BMI〈Body Mass Index〉

    BMIは体重(kg)÷身長(m)²で算出する簡便な体格指数で、日本肥満学会の基準では18.5未満を低体重、18.5以上25未満を普通体重、25以上を肥満とする。低栄養・過栄養の双方のスクリーニングに広く用いられ、有用である。筋肉量と脂肪量を区別できない点が限界である。

  5. ×e.  血清総コレステロール値

    総コレステロールは食事からの脂質・エネルギー摂取量や肝臓でのリポ蛋白合成能を反映し、低栄養では低下、過栄養では上昇しやすい。低値(概ね150mg/dL未満など)は低栄養の手がかりとなり、栄養評価の指標として用いられる。なお、脂質異常症や動脈硬化リスクの評価ではLDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリドを分けて評価する。

栄養アセスメントの主な指標

身体計測:身長、体重、BMI、体重減少率(6か月で10%以上や1か月で5%以上の減少は有意な低栄養を示唆)、腹囲、上腕周囲長(筋肉量の指標)、上腕三頭筋部皮下脂肪厚(体脂肪量の指標)。 生化学検査:血清アルブミン(半減期約2〜3週)、rapid turnover protein(トランスサイレチン約2日、トランスフェリン約7〜10日、レチノール結合蛋白約0.5日)、総コレステロール、末梢血総リンパ球数(免疫能の指標で、低栄養で減少)、ヘモグロビン。 主観的評価:SGA(主観的包括的評価)など、病歴と身体所見から総合的に判定する方法もある。

低栄養の型

マラスムス型はエネルギー・蛋白ともに不足し、著明なやせを呈するが血清アルブミンは比較的保たれる。クワシオルコル型は主に蛋白が不足し、体重減少は目立たないが低アルブミン血症と浮腫を生じる。

血小板数が変動する主な原因

産生低下(再生不良性貧血、白血病、骨髄異形成症候群)、分布異常(脾腫)、破壊・消費亢進(免疫性血小板減少症、DIC、血栓性微小血管症)など、栄養とは別の機序による。

POINT

・栄養評価は身体計測(BMI、体重変化、腹囲など)と生化学検査(アルブミン、rapid turnover protein、総コレステロール、リンパ球数)を組み合わせて行う。 ・血清アルブミンは中長期、rapid turnover protein は短期の栄養状態を反映する。 ・腹囲は内臓脂肪蓄積(メタボリックシンドローム)の指標:男性85cm以上、女性90cm以上。 ・血小板数は栄養状態の指標にはならない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。