その数値、栄養で動きますか?―栄養アセスメントで「仲間外れ」を見抜く
第108回医師国家試験 E問題 第10問
国試問題にチャレンジ
成人の栄養状態の評価において有用性が低いのはどれか。
- a.腹囲
- b.血小板数
- c.血清アルブミン値
- d.BMI〈Body Mass Index〉
- e.血清総コレステロール値
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
成人の栄養アセスメントは、低栄養と過栄養の両面を、身体計測、食事摂取状況、生化学検査、臨床所見を組み合わせて評価します。BMIと腹囲は体格や内臓脂肪蓄積を、血清アルブミンは中長期の蛋白栄養状態を、総コレステロールはエネルギー・脂質摂取や肝での合成能を反映するため、いずれも栄養評価に有用です。一方、血小板数は骨髄での産生、脾臓での貯留、消費・破壊によって主に決まり、全身の栄養状態の指標としての有用性は低いと考えられます。短期の変化にはrapid turnover protein、免疫能の目安には総リンパ球数を用い、アルブミンは肝疾患や炎症でも低下する点に注意が必要です。指標ごとに「何を反映して動くのか」を理解しておくことは、入院患者の栄養管理や生活習慣病の評価など、幅広い臨床場面で役立ちます。
解答・解説
正解はbです
栄養状態の評価(栄養アセスメント)は、低栄養(やせ・蛋白エネルギー栄養障害)と過栄養(肥満・メタボリックシンドローム)の両方向を見きわめるために行う。代表的な手段は、①身体計測(身長・体重・BMI・体重変化率・腹囲・上腕周囲長・皮下脂肪厚など)、②食事摂取状況の調査、③血液・生化学検査(血清アルブミン、rapid turnover protein、総コレステロール、末梢血リンパ球数、ヘモグロビンなど)、④臨床所見(浮腫、筋萎縮など)である。 本問では、各指標が「栄養の過不足を反映して動くかどうか」を考えればよい。腹囲・BMIは体格や脂肪蓄積を、血清アルブミン値や総コレステロール値は蛋白・エネルギー摂取量を反映する。一方、血小板数は骨髄での産生、脾臓での貯留、末梢での消費・破壊によって主に決まり、栄養状態との関連は乏しい。したがって有用性が低いのは血小板数である。
選択肢考察
- ×a. 腹囲
腹囲(臍の高さで測定するウエスト周囲径)は内臓脂肪の蓄積量をよく反映する身体計測値であり、過栄養の評価に有用である。わが国のメタボリックシンドローム診断基準では、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上(内臓脂肪面積100cm²以上に相当)を必須項目としている。
- ○b. 血小板数
血小板数は骨髄の巨核球による産生、脾腫による貯留、DIC(播種性血管内凝固)や免疫機序による消費・破壊などで決まり、栄養の過不足ではほとんど変動しない。高度の葉酸・ビタミンB12欠乏で汎血球減少の一部として減少することはあるが、これは特定の微量栄養素欠乏の所見であり、全身の栄養状態を評価する指標としては用いられない。したがって有用性が低い。
- ×c. 血清アルブミン値
アルブミンは肝臓で合成される主要な血漿蛋白で、蛋白・エネルギー摂取が不足すると合成が低下し血中濃度が下がる。3.5g/dL未満は低栄養を疑う目安とされ、栄養評価の代表的な指標である。ただし半減期が約2〜3週間と長いため中長期の栄養状態を反映し、短期の変化はトランスサイレチン(プレアルブミン)、トランスフェリン、レチノール結合蛋白などの rapid turnover protein で評価する。肝硬変、ネフローゼ症候群、炎症でも低下する点には注意が必要である。
- ×d. BMI〈Body Mass Index〉
BMIは体重(kg)÷身長(m)²で算出する簡便な体格指数で、日本肥満学会の基準では18.5未満を低体重、18.5以上25未満を普通体重、25以上を肥満とする。低栄養・過栄養の双方のスクリーニングに広く用いられ、有用である。筋肉量と脂肪量を区別できない点が限界である。
- ×e. 血清総コレステロール値
総コレステロールは食事からの脂質・エネルギー摂取量や肝臓でのリポ蛋白合成能を反映し、低栄養では低下、過栄養では上昇しやすい。低値(概ね150mg/dL未満など)は低栄養の手がかりとなり、栄養評価の指標として用いられる。なお、脂質異常症や動脈硬化リスクの評価ではLDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリドを分けて評価する。
栄養アセスメントの主な指標
身体計測:身長、体重、BMI、体重減少率(6か月で10%以上や1か月で5%以上の減少は有意な低栄養を示唆)、腹囲、上腕周囲長(筋肉量の指標)、上腕三頭筋部皮下脂肪厚(体脂肪量の指標)。 生化学検査:血清アルブミン(半減期約2〜3週)、rapid turnover protein(トランスサイレチン約2日、トランスフェリン約7〜10日、レチノール結合蛋白約0.5日)、総コレステロール、末梢血総リンパ球数(免疫能の指標で、低栄養で減少)、ヘモグロビン。 主観的評価:SGA(主観的包括的評価)など、病歴と身体所見から総合的に判定する方法もある。
低栄養の型
マラスムス型はエネルギー・蛋白ともに不足し、著明なやせを呈するが血清アルブミンは比較的保たれる。クワシオルコル型は主に蛋白が不足し、体重減少は目立たないが低アルブミン血症と浮腫を生じる。
血小板数が変動する主な原因
産生低下(再生不良性貧血、白血病、骨髄異形成症候群)、分布異常(脾腫)、破壊・消費亢進(免疫性血小板減少症、DIC、血栓性微小血管症)など、栄養とは別の機序による。
POINT
・栄養評価は身体計測(BMI、体重変化、腹囲など)と生化学検査(アルブミン、rapid turnover protein、総コレステロール、リンパ球数)を組み合わせて行う。 ・血清アルブミンは中長期、rapid turnover protein は短期の栄養状態を反映する。 ・腹囲は内臓脂肪蓄積(メタボリックシンドローム)の指標:男性85cm以上、女性90cm以上。 ・血小板数は栄養状態の指標にはならない。
