StudyMed医師国家試験

尿は食卓を映す鏡―24時間蓄尿で読み解く「本当の塩分摂取量」

第108回医師国家試験 B問題 第62問

国試問題にチャレンジ

第108回 B問題 第62問

慢性腎臓病の食事・生活指導のため,1日蓄尿検査を行った。尿量2,000 mL,尿中Na 128 mEq/L,尿蛋白70 mg/dL,尿クレアチニン50 mg/dLであった。  1日塩分排泄量から1日食塩摂取量を求めよ。  ただし,NaCl 1 gはNa 17 mEqに相当する。  また,小数点以下の数値が得られた場合には,小数点以下第1位を四捨五入すること(単位:g)。 解答:①② g

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、24時間蓄尿の結果から1日の食塩摂取量を推定する計算問題だ。ポイントは「尿に出たNaは、食べたNaとほぼ等しい」という考え方と、mEqからグラムへの換算の2つ。まず、なぜ尿から食べた塩の量がわかるのか考えてみよう。
医学生医学生
体内のNa量は一定に保たれているので、入った分だけ出ていく、ということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。食塩として摂ったNaは消化管からほぼすべて吸収され、体液量が安定している定常状態では、ほぼ同じ量が腎臓から尿中に排泄される。汗や便から失われるNaはふつう少ないから、1日分の尿中Naを測れば1日の摂取量を推定できるんだ。
医学生医学生
データがたくさん並んでいて、尿蛋白や尿クレアチニンも使うのかと思って焦りました。
ドクタードクター
国試ではよくある引っかけだね。食塩摂取量の計算に必要なのは尿量と尿中Na濃度だけ。まずは1日の尿中Na排泄量を出してみよう。
医学生医学生
濃度に量を掛ければいいので、128 mEq/Lに2 Lを掛けて256 mEq/日です。
ドクタードクター
正解。あとはこれを食塩の重さに直すだけだ。問題文の換算係数を使うとどうなる?
医学生医学生
NaCl 1 gがNa 17 mEqなので、256を17で割って約15.06、四捨五入して15 gですね。
ドクタードクター
その通り、答えは15 g。ところで、この17という数字の由来は説明できるかな。
医学生医学生
生化学の講義で習った気がします……NaClの式量が約58.5だからですか。
ドクタードクター
そう。1 gのNaClは1÷58.5で約0.017 mol、つまり約17 mmol。Naは1価の陽イオンだから17 mEqになる。逆に「Na 1 mEq=食塩約0.06 g」と覚えておくと、輸液の計算でも便利だよ。
医学生医学生
腎臓内科の実習で、CKDの患者さんに減塩指導をしているのを見学しました。15 gというのはかなり多いですよね。
ドクタードクター
かなり多いね。CKD患者の食塩摂取目標は1日3 g以上6 g未満とされていて、15 gはその2倍以上だ。下限が設けられているのは、過度な減塩で脱水や腎機能の悪化を招くおそれがあるからなんだ。
医学生医学生
使わなかった尿蛋白と尿クレアチニンには、どんな意味があるんですか。
ドクタードクター
いい質問だ。尿蛋白は70 mg/dLに20 dLを掛けて1日1.4 g。CKDの重症度分類では0.5 g/日以上が高度蛋白尿にあたる。尿クレアチニンは1日1.0 gで、筋肉量に応じてほぼ一定量排泄されるから、蓄尿に取りこぼしがないかの確認に使われるんだ。
医学生医学生
クレアチニンが少なすぎたら、蓄尿が不完全かもしれないということですね。
ドクタードクター
その通り。ほかにも、尿中尿素窒素を測ればMaroniの式で蛋白質摂取量も推定できる。蓄尿は食事指導の通信簿のようなものなんだ。
医学生医学生
外来で毎回24時間蓄尿をしてもらうのは大変そうです。
ドクタードクター
そうだね。だから随時尿のNaとクレアチニンの比から1日食塩摂取量を推定する簡易法も使われるけれど、精度は24時間蓄尿に劣る。また、大量の発汗や下痢があると尿中Naが減って摂取量を少なく見積もってしまうし、1日だけの蓄尿は食事のばらつきの影響も受ける。結果は患者さんの生活背景と合わせて解釈しよう。

まとめ

体内のNa量が一定に保たれている定常状態では、1日の尿中Na排泄量はほぼ1日のNa摂取量に等しいため、24時間蓄尿から食塩摂取量を推定できます。本問では128 mEq/L×2 L=256 mEqを求め、NaClの式量約58.5に由来する換算係数(NaCl 1 g≒Na 17 mEq)で割ると約15 gとなり、尿蛋白や尿クレアチニンは計算に用いません。CKD患者の食塩摂取目標は1日3 g以上6 g未満であり、15 gは明らかな過剰摂取として減塩指導の対象になります。尿クレアチニンは蓄尿の完全性の確認に、尿蛋白は重症度評価に役立つなど、蓄尿は食事・生活指導の効果を客観的に評価する有用な道具です。単位換算の意味を理解しておくことは、輸液計算など臨床のさまざまな場面の土台になります。

解答・解説

正解は15 gです

考え方

食塩(NaCl)として摂取したNaは消化管からほぼ完全に吸収され、体内のNa量が一定に保たれている定常状態では、摂取した分とほぼ同じ量が尿中に排泄される(汗や便からの喪失はふつう少ない)。そのため、24時間蓄尿で1日の尿中Na排泄量を測定すれば、1日の食塩摂取量を推定できる。本問で必要なのは尿量と尿中Na濃度だけであり、尿蛋白と尿クレアチニンは計算には用いない。

計算過程

1. 1日尿中Na排泄量を求める。  尿量2,000 mL=2 L  128 mEq/L × 2 L = 256 mEq/日 2. 食塩量に換算する。  NaCl 1 gはNa 17 mEqに相当するので、  256 mEq ÷ 17 mEq/g ≒ 15.06 g 3. 小数点以下第1位を四捨五入する。  15.06 → 15 g したがって、1日食塩摂取量は約15 gと推定される。

換算係数の確認

Naの原子量は約23、Clは約35.5で、NaClの式量は約58.5である。NaCl 1 gに含まれるNaは1 ÷ 58.5 ≒ 0.0171 mol = 約17 mmolで、Naは1価の陽イオンなので17 mEqとなる。問題で与えられた「NaCl 1 g=Na 17 mEq」はこの計算に基づく。

結果の解釈

慢性腎臓病(CKD)患者の食塩摂取量の目標は1日3 g以上6 g未満とされており、15 gはその2倍以上の過剰摂取である。減塩指導が必要と判断される。

蓄尿検査からわかるほかの指標(本問のデータを用いた場合)

・1日尿蛋白排泄量:70 mg/dL × 20 dL(=2,000 mL)= 1,400 mg = 1.4 g/日。CKDの重症度分類では、蛋白尿0.50 g/日以上(または0.50 g/gCr以上)が高度蛋白尿(A3区分)にあたる。 ・1日尿クレアチニン排泄量:50 mg/dL × 20 dL = 1,000 mg = 1.0 g/日。クレアチニンは筋肉量に応じてほぼ一定量排泄されるため(成人でおおむね15〜25 mg/kg/日前後)、蓄尿が正しく行われたか(取りこぼしがないか)の確認に使われる。また尿蛋白/クレアチニン比は1.4 g/gCrとなり、随時尿で1日蛋白尿量を推定する際に用いる指標と一致する。 ・蛋白質摂取量の推定:尿中尿素窒素排泄量を用いたMaroniの式(推定蛋白質摂取量(g/日)=[1日尿中尿素窒素排泄量(g)+0.031 × 体重(kg)]× 6.25)で求められる。本問では尿素窒素が与えられていないため計算できない。

食塩摂取量の目標値

・CKD患者:1日3 g以上6 g未満(過度の減塩は脱水や腎機能悪化を招くおそれがあり、下限も設定されている) ・高血圧患者:1日6 g未満 ・日本人の食事摂取基準(2025年版)の目標量:成人男性7.5 g未満、成人女性6.5 g未満 ・日本人の平均摂取量は近年おおむね10 g前後で、目標値を上回っている。

推定の注意点

尿中Na排泄量は摂取量のおよそ9割前後を反映するとされ、大量の発汗や下痢があると実際の摂取量より少なく見積もられる。また1日だけの蓄尿では日ごとの食事内容のばらつきの影響を受ける。随時尿のNa・クレアチニン比から1日食塩摂取量を推定する簡易法もあるが、精度は24時間蓄尿に劣る。

POINT

・定常状態では1日尿中Na排泄量≒1日Na摂取量である。 ・1日尿中Na排泄量(mEq)=尿中Na濃度(mEq/L)×1日尿量(L)。 ・食塩換算:NaCl 1 g ≒ Na 17 mEq(NaClの式量約58.5)。つまり食塩摂取量(g)≒尿中Na排泄量(mEq)÷17。 ・本問:128 × 2 = 256 mEq、256 ÷ 17 ≒ 15.06 → 15 g。 ・CKDの食塩摂取目標は1日3 g以上6 g未満、高血圧では6 g未満。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。